例年通りこの時期は色々あるので次の投稿はかなり遅れます。特に今年はいっぱいありすぎて逆に何から手をつければ良いのか分からない感じ。二月上旬には投稿できると良いなぁ……。
どうも琴里は七罪のリハビリと四糸乃への試練の期間をわざと重ねたらしい。
そうすることによって士道と二人きりになれる時間を作り出し、二人きりで濃密な時間を過ごし幸せに浸るというのが目的だろう。相変わらず狡猾極まる悪女である。
おまけに自分のプライドや性格によってその時間を無駄にしてしまわないよう、素直に好意を表し心のままに触れ合える白い方で迫ってくるという徹底ぶり。
そのおかげ――もといそのせいで昨日は初めて白い方の琴里とベッド(正確にはソファー)インできた。
しかしそれはあくまでも昨日の夜の話。
今日の夜はというと――
「んっ……ちゅ……おにぃ、ちゃぁん……」
――白い方の琴里と熱烈に唇を重ねあっていた。自室のベッドに腰かけた状態で琴里を膝に座らせ、互いに固く抱き合い呼気を荒げながら。
しかし別に士道はキスをしているわけではない。唇を重ね舌を絡め合ってはいるが正確に言えばキスではない。
「ふああぁぁぁ……は、っ……はぁ……」
絡み合っていた舌を解き、重ねあっていた唇を剥がし、閉じていた瞳を開く。
そうして目に入ったのは赤い瞳を蕩けさせた琴里の顔。半開きの唇の端から嫌らしく唾液を零し、興奮に頬を染めた悩ましい様子。
今回はリビングのソファではなく自室のベッドなので、このまま押し倒そうと抱え上げようと四つんばいにさせようと何の問題も無い。というかそうしたいのが心境だった。
だがその前に琴里を満足させる必要があり、士道はそのために必死に欲望を抑え付けて奉仕していた。
「はぁ……琴里、もう十分だろ……?」
「ま、まだぁ……もう一個……もう一個ぉ……!」
いやいやするように首を振り切ない顔でねだってくる白琴里。
黒い方ならともかく、白い方の琴里にそんな顔でねだられては嫌とは言えなかった。
「っ……これで最後だからな。終わったら壊れるくらい激しく抱いてやるから、覚悟しとけ」
「うん……覚悟っていうか、楽しみにしてるからなー……?」
白い方なのでドM百パーセントの琴里はむしろ嬉しそうに微笑む。
その反応に心底呆れながら、士道は琴里の差し出すものを受け取った。包装が解かれ白い棒が引き抜かれているせいで、ただの飴玉だけとなっている棒つきキャンディを。
「これで三個目じゃねぇかよ、全く……」
ぼやきながらそれを口に含み、舌の上で何度か転がす。すでに若干コーラ味の残ったイチゴの風味で満たされている口の中に、今度はレモンの爽やかな風味が広がっていく。
そして士道は雛鳥のように小さく口を開けて待機している琴里の肩に手を置くと――
「ん……ふ、う……ちゅ……」
――唇を重ね、舌を絡めあいながら二人で一緒に三つ目の飴玉を味わい始めた。
かなり濃厚な前戯の一種としてではなく、白琴里が願った愛し合うもの同士のイチャつきとして。
濃厚なイチャつきを行う少し前。この日は初めて白琴里と身体を重ね、なおかつそのすぐ後にお風呂でも身体を重ねた日の翌日だ。
誰かと出かける時以外は朝から夕方まで四糸乃と一緒にいられたが、沈黙を強いられている四糸乃の声は依然一度たりとも耳に出来ていない。もちろん七罪の方は声を聞くどころか顔すら見ていない。二人とも一生懸命頑張っているようで何よりだ。
二人の頑張りはある意味イコール士道の欲求不満に繋がるが、やはりこればかりは我慢するしかない。無論耐え難い寂しさではあるものの、幸いといって良いのか士道にはこの寂しさを和らげてくれるやつがいるのだ。
「おにぃぃぃぃちゃぁぁぁぁん!」
「うおおぉっ!? やっぱりきやがったな琴里! 今お前脳天を肘でかち割ろうとしただろ!?」
ただしその方法は多少過激。夕食後にソファーでまったりしていた士道は背後から頭をかち割られそうになったのですぐさま跳ね起きた。
振り向けばそこには天真爛漫な笑顔を浮かべて肘を振り下ろした状態の白琴里。避けなければ間違いなくクリティカルヒットしていただろう。
「まっさかー? これはボディランゲージで愛情を表現してるだけだよー。私を愛してるなら腕を広げて受け取って欲しいなー、おにーちゃん……」
「お前と違ってヴァイオレンスな愛情表現で喜ぶ趣味はないからお断りだ。あと恥ずかしそうにしながらさりげなく構えるのやめろ」
切ない顔で油断を誘いながらショルダータックルの構えを取っている琴里。
白い方なのに何やら殺気めいたもの感じ、士道の方も思わず身構えてしまう。
「愛してるぞおぉぉぉぉおにぃちゃあぁぁぁぁぁん!!」
「――っと!? やっぱりちょっと殺意感じるぞ!? 何怒ってんだよお前!?」
途端にタックルをかましてきた琴里の身体を寸前で受け止め、正面を向かせて背中側から抱きしめる形で拘束する。
抵抗の一つくらいしてくると思っていたものの、腕の中で琴里はすぐに大人しくなった。代わりに抱きしめられた状態で肩越しにこちらを振り返り、頬を膨らませて可愛く睨みつけてくる。
「うー……分からないのー? 胸に手を当ててよーく考えてみれば分かるはずだぞー」
「胸に手を……よし、分かった」
琴里の言葉どおり、士道は両胸に手を当てて考えてみた。小さいながらもふにふにしていて魅惑の触り心地を持つ琴里の胸に。
「そーそー、そうやって揉むように手を当てて――ってどうして私の胸に手を当てるのおにーちゃん!?」
「いや、お前が胸に手を当てて考えてみればって言ったからつい」
「ついで可愛い妹のおっぱいに手を出すなんておにーちゃんの人でなしー! 鬼畜ー! 私の口にあんなもの突っ込んだのもついなのかー!?」
「あんなもの……? ああ、もしかして朝のアレを怒ってんのか?」
頬を赤くして怒る琴里に胸をまさぐるのを止めて尋ねる士道。
たぶん朝食の時の目玉焼きを口に突っ込まれたのを根に持っているのだろう。確かに元が何か判別できないほど醤油やらマヨネーズやらソースやらでドロドロになって塩や砂糖が零れるカオスな物体を無理やり食べさせられれば根に持つのも当然だ。しかしあれは自業自得である。
「言っとくけどアレはお前が悪いんだからな。せっかく作った料理を無駄にするとこだったんだし」
「そんなことじゃないよー! せっかくのあーんなのに全然雰囲気無かったことを怒ってるんだぞー!?」
「そっちかよ!? ていうかお前アレをあーんにカウントすんのか!?」
予想外の答えに士道は仰天してしまう。確かにあーんしろとは言ったがまさかアレをカウントしているとは夢にも思っていなかった。
「当たり前だー! 大好きなおにーちゃんが自分の手で食べさせてくれるのにカウントしないお馬鹿がどこにいるのー!? 優しくあーんしてくれるなら私はおにーちゃんがくれるものなら何でも食べるぞー!?」
「今何でもって言ったな。よし、生ゴミ持ってきてやるから食ってみろ」
「ただしまともな食べ物と言えるものに限る!」
「アレだって一応まともな食べ物だったろ……それで? 本当にそれを怒ってんなら改めてあーんしてやれば機嫌直してくれるのか?」
「もうそれくらいじゃ私の怒りの炎は治まらないよー。どうせならもっと凄くておにーちゃんが誰にもしたことないようなこと、して欲しいなー……」
今まで元気いっぱいで受け答えしていた癖に急にしおらしくなる白琴里。
おまけに恥じらいながらも期待を瞳に湛え、士道を上目遣いに見つめてきている。こんなものどう考えても反則だ。こんな可愛らしさを前にして断れるわけがなかった。
「……分かった。何して欲しいか言ってみろよ」
「んー……口移し、とかどうかなー?」
「それでお前が機嫌直してくれるなら別に構わないぜ。けど口移しって言っても何を食べさせて欲しいんだ? 汁物ならまだしも固形物だとあんまり綺麗なもんにはなりそうにねぇぞ」
汁物ならそのまま唇を重ね合わせて流し込むだけで済む話だ。しかし固形物なら何度か咀嚼するとグチョグチョになってちょっと気持ち悪いことになってしまう。
しかし琴里はその辺りのことは最初から考えていたらしく、よくぞ聞いてくれたとでも言いたげな生意気な笑みを返してきた。
「ふっふっふ……私がおにーちゃんと口移しするのはこれだ!」
そしてどこからともなく取り出したのは琴里のトレードマークとも言えるものであった。要するに大好物の棒つきキャンディー。
ある意味予想通りで予想外でもあるという不思議な結果である。
「やっぱりいつものやつかよ……ていうかそれ一回口移ししてはい終わりってことには――」
「――なんない! 一緒に全部舐め終えるまで!」
「すっげぇディープなことになりそうだな! ていうかそれもう口移しってレベルじゃねぇだろ!?」
むしろ汁物や固形物よりもレベルが高い展開にさすがの士道も度肝を抜かれる
一緒に飴玉を味わうということは、互いの口内で舌を絡め唾液に塗れた飴玉を何度も受け渡しあうのだろう。そんなもの最早口移しの名を借りたディープキスだ。
しかしそのねっとりじっくりとした光景を思い浮かべると、不思議とディープキスよりも卑猥に感じられた。
「何でも良いから早く抱き合ってイチャイチャするぞおにーちゃぁぁん!」
「結局それが本音かよ! 分かったからとりあえず部屋行くぞ、部屋! 絶対イチャイチャだけじゃすまなくなるから!」
そんな風にイチャついて平穏無事に終われるわけがない。欲望の箍が外れ昨日と同じ展開になるのは火を見るよりも明らかだ。
同じ過ちを繰り返さないためにも、士道は答えを聞かず琴里の身体を抱き上げて強制的に運ぶことにした。
「わー!? おにーちゃんにベッドにつれこまれちゃうよー! 助けておまわりさーん!」
「はっはっは、諦めろ琴里。部屋は誰かさんのおかげで遮音効果はばっちりだからどんなに叫んだって誰も助けになんかこねぇよ! 観念しやがれ!」
「うん、分かった! でもまずは私が満足するまでいっぱい口移ししてもらうからな、おにーちゃん!」
「堕ちるの早すぎだろ!? もうちょっとくらい引っ張れよ!」
そんな変なかけあいをしながら、士道は琴里と共に自室へと向かった。
お姫様抱っこされていることが嬉しいのか、それとも存分にイチャイチャできることが嬉しいのか、琴里は腕の中で終始ご機嫌だった。
「全くもー、本当におにーちゃんはケダモノだなー」
「だからお前にだけは言われたくねぇよ、それ。止めたらもっともっとってせがんできたくせしやがって」
そして部屋でたっぷりねっとりイチャつき、そのまま欲望に身を任せて愛し合った後。昨日と同じく琴里と共に風呂で汗を流す穏やかな時間。
見た目も中身も子供っぽい白琴里だがその本性はドMで淫乱で性欲旺盛なため、今回もかなり激しい交わりとなってしまった。
しかしドS成分が存在しないためか、やはり一度も主導権を奪おうとはしてこなかった。終始受身でされるがままで大人しいものである。
まぁ下半身にその身体を乗っけてこちらが動かなければ自分で腰を振るくらいには積極的だったが。
「むー。そう言うおにーちゃんだって、何度も何度も私の身体をいやらしくペロペロチューチューしてきたくせに!」
「そ、それは……」
肩越しに振り返り頬を膨らませて睨みつけてくる琴里。
残念ながらそれは事実で何も言い返せなかった。ちなみに激しいのがお好みで生粋のドMである琴里相手だと自分の欲望を満たすための行為を好き放題できるので、ペロペロチューチューした場所の半分以上は胸元あたりである。
「……まぁ、どっちもケダモノってことで引き分けにしとくか。何か不毛な争いの気がするし」
「おー! 私たちケダモノ兄妹だー!」
「何でそんなに嬉しそうなんだよ、お前……」
むしろ悲しむべきだというのに湯船の中で諸手を上げてはしゃぐ琴里。
そんな無邪気な様子が呆れるよりも前に可愛らしく思えてしまうのは贔屓目というものなのだろうか。
「ほら、頭洗ってやるから一旦上がれよ」
「むむっ、私を先に上がらせて裸をじっくり見る気だな? その手にはのらないぞ、おにーちゃん」
「お前が膝の上にいるから上がれねぇんだよ。見られるのが嫌だったらさっさと下りやがれ」
湯船に二人で浸かるとどうしても密着せざるを得ないが、さすがに膝に乗せなければ浸かれないほどではない。琴里が膝の上に腰を下ろしているのは単に自分がそうしたかったからに違いない。
精神衛生的に多少危ない状況ではあるものの、ついさっき心行くまで欲望を満たしたので変に意識しなければ問題は無さそうだ。それに琴里相手だと若干興奮しにくい理由があるのでこれくらいは平気だろう。
「はーい。じゃあ私が先におにーちゃんのこと洗ってあげるねー」
「ああ、よろしくな」
濡れたバスタオルでちゃんと身体を隠しつつ上がる琴里に続き、士道も湯船から上がり定位置につく。
ただし今回は七罪や四糸乃の時ほど危険な状況ではないので、あえて鏡の方を向いて腰を下ろした。
「ふんふんふーん。よーし、おにーちゃんの頭を光輝くほど綺麗にしてあげるよー」
「ハゲるまで洗う気かお前。何時間やったらそうなるんだよ」
何か言われるかと思ったが別にそんなことはなく、むしろ鼻歌を歌いながらご機嫌な様子で洗髪を始める琴里。
正面の鏡に映っているのは腰を下ろして大人しく頭を洗われる士道の姿と、その頭でシャンプーを泡立てる琴里の姿。濡れたバスタオルが張り付き小柄な身体のラインを浮かばせている上、普段二つに括っている髪も今は下ろしているのでなかなかに刺激的な格好だ。
おまけに上気して赤く色付いた肌は水に濡れ、瑞々しさ満点の果物を連想させる状態。
これで恥じらいの表情を浮かべられたり身体を隠すような動きをされるとかなり困ることになるのだが、本人はそんなものとは無縁の無垢な子供のような(事実子供だが)無邪気な笑いを浮かべていたので心配の必要はなかった。
しかし無邪気に笑っていようとリボンが無かろうと白だろうと琴里は琴里。その本性は士道に引けを取らないほどエッチで嫌らしい女の子だというのだから驚きである。
「そーいえばおにーちゃん、前は私と一緒にお風呂入るの嫌がってたのにもう普通に一緒に入っちゃってるよねー」
「嫌がってたっていうか、不慮の事故を起したくなかったから遠慮してたっていうか……まぁ今は事故なんてほぼ毎晩起してるし気にする必要なくなったからな。それにどうせなら一緒に入ってもうしばらく一緒に過ごしてたいし」
「ふーん。じゃあおにーちゃんはエッチした後に七罪たちとも頻繁に一緒にお風呂入ってるのかー?」
鏡越しに七罪に似た半目を向けてくる琴里。焼きもちを焼いているのか若干視線に棘を感じる。
こんな露骨に焼きもちを焼いてくれるのも白琴里の特徴と言って良いだろう。黒琴里や七罪あたりは本当にごく稀にちょっと妬いてるような様子を見せてくれる程度だし、四糸乃に至っては嫉妬という感情が存在するかどうかすら疑わしいのでこんな風に妬かれるのはなかなか新鮮だ。
しかし残念ながら今回は妬かせる答えは用意していなかった。
「いや、さすがに危なそうだから七罪たちとはほとんど入ってねぇよ。ぐったりするほど相手させたのにその上風呂でも相手させることになったら絶対倒れちまうだろ? まぁ一緒に入りたいのは確かなんだけどな……」
以前まではそうでもなかったのだが、今は七罪や四糸乃とベッドを共にしても欲望が完全に満たされるまで抱いたりはしていない。七罪のフェロモンによって昂ぶった性欲を完全に満たそうとすれば七罪たちが耐えられそうにないからだ。壊れるとまではいかないもののしばらく動けなくなるくらいは確実だろう。
そして欲求不満の状態で一緒に入浴して、バスタオル姿で水の滴るエロイ身体を見ればどうなるかなど考えるまでもない。だからこそ二人とはほとんど一緒に入浴していないのだ。
士道の答えにやはり琴里は妬いてくれなかったが、代わりにちょっとした優越感の滲む微笑みを浮かべてくれた。何だか生意気だがこれはこれでありだろう。
「そっかー。つまりおにーちゃんが頻繁に一緒にお風呂に入れるのは私だけってことなんだなー」
「ああ、お前ならその辺は大丈夫だからな。ケダモノだから余裕で相手できるだろうし、七罪たちに比べるとほんの少しだけ興奮しにくいし」
「むっ? おにーちゃん、今のは聞き捨てならないぞー? 私が七罪たちよりも魅力的じゃないっていうのかー?」
琴里は泡を洗い流すための湯を風呂桶から士道の頭にかける寸前で手を止め、ムッとした表情で視線を注いでくる琴里。どうやら多少思うところがあったらしい。
「いや、そうじゃねぇって。小さい頃から一緒に過ごしてた分多少興奮しにくいってだけだよ。妹って認識が抜けたわけじゃねぇし……あとお前ちょっと子供っぽいしな」
「うー……何かそれでもちょっと悔しい気がするー」
子供っぽいことも含めて自覚しているのか一応納得したらしく、止めていた手を動かし頭の天辺からお湯をぶちまけてくる琴里。
しかしそのまま三度、四度と必要以上にお湯をぶっかけてきたのは不満の表れに違いない。
「別に悔しがる必要ねぇだろ。ちょっと興奮しにくいってだけでお前だって二人に負けず劣らずエロく見え……いや、まぁ……うん。エロく見えるぞ?」
「何か含みのある言い方だなー、おにーちゃん。本当にそう思ってるのかー?」
「あ、ああ、もちろんだぜ? おにーちゃんの言うこと信じてくれよ」
「むー……」
変な間を置いたせいか琴里は明らかに納得していない表情でむくれる。
間を置いた理由は今の琴里の様子があまり扇情的に見えず頷くのに躊躇ってしまったせいだ。
身体に張り付くバスタオル姿は確かに悩ましいものの、恥らう姿など見せず無邪気に笑い楽しそうに士道の頭を洗う様子からはぶっちゃけ色気とは無縁の無垢な幼さしか感じられない。
激しく愛を交えた後だという事実も相まってか、そんな性的なものとは真逆に位置する魅力で興奮しろというのは不可能な相談だった。
「ほら、むくれてないで早く背中も流してくれよ。終わったら代わってやるから」
とはいえ別に士道としては何か不満があるわけではない。
こんな子供っぽい様子も白琴里の魅力の一つだろうし、そのおかげで今は興奮せず平穏な時を過ごせているのだから。
それに一旦火が付けばこの子供っぽい白琴里こそが最もエロくなることを身に染みて理解しているので、今の琴里がどうこうはあまり関係の無いことである。
なので特に思うところも無く話題を終わらせたつもりだったのだが――
「っ……!?」
――ぷにっ、という柔らかな感触が二つ背中に広がったことで、話題が引っ張られていることが分かった。それもかなり行き過ぎた方向に引っ張られていることが。
「……どうかなおにーちゃん、気持ち良い?」
「ちょ、お前何やって……っ」
「ふふーん、私の身体でおにーちゃんの身体を洗ってあげてるんだぞー? これでも興奮しないっていうのかー? ほらほらー」
挑発染みた得意げな表情を浮かべながら、士道の背中にその胸の膨らみを当て擦るように身体を動かしている琴里。
やけに感触をはっきり感じ取れると思ったら、いつのまにか琴里の足元には濡れたバスタオルが広がり落ちていた。どうも裸の胸を直接当てているようだ。
こんな真似をしてくるとは女のプライド的なものを傷つけてしまったのかもしれない。
一瞬そう思って謝ろうとしたのだが、背中を滑る柔らかさの中にほんの僅かな硬さを感じたことで謝る気は失せてしまった。
プライドが傷つけられたのなら興奮していないでもっと頑張るべきではないだろうか。まぁ同じように興奮を催してきた士道が言えた義理ではなかったが。
「くっ……! あ、ああ、この程度じゃ全然だぜ? 身体――じゃない、顔洗って出直してきやがれ」
「やせ我慢は身体に毒だよー、おにーちゃん……? 自分に正直になろー……?」
「うあっ……!?」
自分に正直に段々と息を荒げ始めた琴里が、自身の膨らみを擦り付けながら士道の耳をペロペロ舐めてくる。明らかに単純にもう一回戦始めたがっているだけとしか思えない。
とはいえ素直にそれを口にせず士道をその気にさせようとしている辺り、やはりプライドの問題でもあるようだ。
もちろんとっくにその気になっているし、昨日は白い方の琴里の誘いは断らないと約束したばかりなので応えるのはやぶさかではない。
しかし黒い方ならともかく、普段は子供っぽい白い方の琴里に誘惑されて負けるのは何とも悔しい。なので士道は簡単には応えず頑張って堪えることにした。
「ぐっ、ぅ……いや、まだまだ……!」
「おにーちゃん、大好き……んっ……愛してるぅ……ちゅ……もう一回、エッチしよぉ……?」
「っ……!」
しかし黒い方の天の邪鬼さを知っている士道が、同一人物の白琴里にここまで素直に誘われては堪えることなどできなかった。
「くそっ、本当にケダモノだなお前! 身体中余すとこなく隅々まで綺麗にしてやるから覚悟しやがれ!」
「そこは普通俺の色に汚してやるとか言うところじゃないのか、おにーちゃん!? でもおにーちゃんを発情させられたからもうそれで良いやー!」
振り向き容赦なく押し倒すと、琴里は身体の下でやたら嬉しそうな笑顔を浮かべていた。
さっきは誘惑という背伸びした真似をしてきたくせに、今度はまたも子供っぽい純真な笑顔を。
「もーっ、おにーちゃんが二回も襲うからもうこんな時間だよー。もうちょっと場所と時間をわきまえて欲しいなー、全くー」
「だからお前が言うなお前が! ていうか二回ともお前のせいじゃねぇか!」
互いに寝巻き姿(琴里は二着目)でお茶を飲み水分補給をしながら、相変わらず自分を棚上げにした発言を零す琴里にお決まりのようなツッコミをいれる士道。
当然といえば当然なのだがお風呂場でも激しく愛し合った結果、時はすでに流れて夜はそれなりに更けていた。というかそれでもまだ十時を回っていない辺り、むしろ控えめな方と言っても過言ではないだろう。
ベッドでイチャつきそのまま愛し合い、更に一緒に入浴してイチャつきまたも愛し合う。これら全て琴里が望んだことなのだから、時間を食った責任は間違いなく琴里にあると言って良い。
「だってぇ、おにーちゃんのことが好きで好きで我慢できなかったんだもん……」
しかし頬を染めながら若干むくれた様子でこんなことを言われてしまえば、全てを許してやっても良い気分になってしまう。
それに琴里とはあまり一緒に過ごせてやれていないのだからよほどのことが無い限りは許してやるべきだろう。士道はその頭に静かに手を置き撫でてやった。
「まぁ、正直に言ったから許してやるよ。何だかんだで俺も同罪だろうしな。それより今夜はどうするんだ? さすがにあれだけやったらお前でも今日は十分だろ?」
今夜、というのは真夜中のこと。さすがにこの夜だけで二度も激しく愛し合ったのだから三度目は無くとも十分だろう。
少々特殊な体質を持っている士道と琴里ならやれないことはないが、疲労はそれなりに溜まるのだ。興奮を抑えられないなら仕方ないとして、意図的に興奮してまで行為に及ぶよりはゆっくり休んだ方が幾分か有意義な時間の使い方だろう。
それが分かっているかどうかはともかく、琴里はにっこり笑って頷いた。
「おー、今日はおにーちゃんにたっぷり愛してもらったからなー。もういろんな意味でお腹いっぱいだし今夜はもう十分だよー」
「そっか。具体的にどんな意味かは聞かないでおくな。どうせろくでもない意味だろうし」
「ろくでもないとは失礼だなー。美しい言葉で言えば私のお腹の中はおにーちゃんの愛で満たされてるんだぞー?」
「美しい言葉で誤魔化してもろくでもない意味に変わりないじゃねぇか。ていうか聞いてもいないのに答えんなよ……」
酷く心外だとでも言いた気にピンクのパジャマの上から自らの下腹部を撫で摩る琴里に、冷ややかな視線を向ける士道。
愛で満たされているのがお腹の中ではなく胸の中なら確かに美しい表現だったのかもしれない。部位が違うだけで何故こうも差が出るのだろうか。
「エッチな言葉を使ってストレートに言わなかっただけマシと思って欲しいなー。そもそもそれくらいいっぱい注ぐおにーちゃんにも問題があるんだぞー?」
「……そんな話は止めてゆっくりテレビでも見ようぜ。せっかく二人きりなんだしソファーで肩を寄せ合って仲良くさ」
「おー! それは名案だぞ、おにーちゃん!」
何一つ言い返せなかったので琴里が食いつく話題を提供して誤魔化し、話を強制的に切り上げる。
黒い方なら決して騙されず粘っこく責めてくるところだろうが、こちらは単純で騙されやすい白い方。
疑いの色を見せるどころか眩しい笑顔を浮かべて士道の腕に抱きつき、ソファーの方へ引っ張って行こうとしている。ちょろすぎていまいち達成感が無いのは黒い方のドS加減に慣れてしまっているからなのかもしれない。
「さてと、何か面白い番組でもやってるかな」
「んー、私は何か幸せな気分になれる映画とか見たいなー」
ソファーに腰を下ろし、士道はリモコンを手に取りチャンネルを回していく。
本当なら二人で肩を寄せ合って仲良くテレビ視聴に耽るつもりだったが、何故か琴里は隣には座らなかった。座らなかったものの――
「……何かお前すごく自然に膝枕してるな。ていうかいくら何でもさっきからずっとくっつきすぎだろ。そんなにイチャイチャしたいのかよ?」
――代わりに士道の膝に頭を乗せて寝転がっていた。俗に言う膝枕の状態だ。考え方にもよるが肩を寄せ合うよりもイチャつき度は高いと言える。
士道の疑問に対して琴里はテレビに向けていた顔をそのまま上に向け、むしろ不思議そうな顔で真っ直ぐ見つめてきた。
「えー、逆に聞くけどおにーちゃんはイチャイチャしたくないのー? 私とは身体だけのドライな関係なのかー?」
「そんなわけねぇだろ。たださすがにここまで甘えられるとは思ってなかったからちょっと調子が狂っただけだって。できれば俺もこんな風に過ごしたいって思ってるよ」
黒い方がアレなのでちょっと困惑しただけで、別に嫌だったわけではない。というかむしろ大歓迎である。
何だかんだで三人の女の子と肉体関係を築いてしまったものの、こんな風にイチャイチャしたことなどほとんどなかったからだ。
七罪は一応寂しさが積もりに積もれば甘えてくることはないでもないが、基本的には恥ずかしがりで遠慮がちなためここまで露骨に甘えてなどは来ない。欲が無い上に慈愛の女神である四糸乃に至っては、甘えてくることがないどころか逆にこっちが甘えてしまいたくなってしまう始末である。そしてもちろん黒い方の琴里は論外。
三人中三人が甘えとはほぼ無縁の状態なのだから、いっそ呆れてしまうほど甘えん坊でイチャつきたがる白琴里はある意味癒しとも言える存在だ。
ただこの白琴里を四人目としてカウントするべきなのか、ひっくるめて三人目にして真逆の存在である黒琴里をも癒しということにすべきなのか非常に悩む所なのだが。
「本当? じゃあこのままでも良いよねー? 足が痺れたってどかないからな、おにーちゃん」
「ああ、好きにしやがれ。その代わり好きなだけお前の頭を撫でさせてもらうからな」
にっこり笑って再びテレビに顔を向ける琴里の頭を撫でながら、士道も同様にテレビへと視線を向ける。足が痺れるくらいこの状態を維持することを強要されるならこれくらいの役得はあって良いだろう。
さらさらの触り心地と控えめな重さは、膝に猫を乗せてその背を撫でているような心地良い気分だった。もっともそれが猫ではなく愛する人なのだから心地良さは猫の比ではない。
「んー……おにーちゃんが撫でたいなら、お尻撫でたって良いよー……?」
しかしせっかくの落ち着いた心地良い気分を愛する人本人に台無しにされてしまう。
おまけにそれを憎むどころか興奮を煽られてしまったのがまた悔しかった。
「ひあぁう!?」
なので――ペチン!
おしおきと八つ当たりを兼ねてお尻に一発平手を叩き込んでおいた。何やら昨日も同じようなことをした気がする。
「……あんまりそういうこと言ってるとまた始めたくなっちまうだろ? 静かにイチャイチャ過ごしたいなら誘うようなこと言うんじゃありません」
「う、うー……ごめんなさい……」
赤い顔で叩かれたお尻を摩りつつ、思いのほか素直に謝る琴里。一応琴里も今はエッチなこととは無縁な時を過ごしたいらしい。
「でも……おにーちゃんにお尻叩かれて、ちょっとだけ……興奮、しちゃったかも……」
「お前……」
しかし身体の方は実に敏感というか欲望に忠実というか。最早呆れて言葉も出ない。
そういうことを素直に言う点はもちろん、お尻ペンペン一発で感じてしまうドM加減にもだ。確かにちょっと強めに叩いたが幾らなんでも感じすぎだ。
「なら気分が鎮められるような映画でも見ようぜ。ちょうどゾンビ映画特集やってるぞ」
「そこは普通雰囲気が出る恋愛映画とかじゃないのかー!? 私のパンツが別の意味で濡れちゃうぞー!?」
「お、ずいぶん古いなこれ。確かショッピングモールに立てこもるやつだったか?」
「早くチャンネル変えないと朝までしがみついて離さないからなー、おにーちゃん!?」
チャンネルをゾンビに変えた途端、すぐさま飛び上がって腕にしがみついてくる琴里。顔を青くして震えている辺り本当に怖がっているのだろう。
そのくせ逃げずにわざわざテレビの前に留まっている辺り、これはたぶん恐怖を堪えてでも士道と一緒に過ごしたいという願望の表れに違いない。
「それはそれで結構魅力的だけどしがみつくだけで終わりそうにねぇしな……分かった、お前が見たいもの選べよ」
「お、おー……もうゾンビじゃなければ何でも良いやー……」
ずっとしがみつかれているとこちらも催してしまいそうになるので、意地悪は止めてリモコンを渡す。
狙い通り恐怖で興奮など吹っ飛んでしまったらしく、琴里は再び士道の膝を枕にして大人しくなった。
ただし若干縮こまって震えを残している姿が非常に可愛らしく思えてしまい、士道の心の内にある欲望の一つが猛烈に刺激されてしまった。これが四糸乃なら保護欲や庇護欲の類だったに違いないものの、琴里にとっては少々不幸な結果だろう。
「うっ!? きゅ、急に猛烈に腹が減ってきて、女の子の新鮮な肉が食べたい気分に……!」
「お、おにーちゃん!? Tウィルスに負けちゃ駄目だぞ、おにーちゃん! 気を強く持たないとゾンビになっちゃうよー!?」
「あーもう駄目だ! お前を食ってやる琴里いぃぃぃぃぃぃ!」
「ぴゃああぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」
刺激された嗜虐心のままに、ゾンビのように琴里の指を口に含んで甘く歯を立てる。正直自分でも茶番としか思えない流れのおふざけである。
しかしそんなアホな触れ合いでも琴里は涙目でわりと本気の悲鳴を上げてくれた。実に弄りがいのある反応で楽しさに胸が踊ってしまう。
「これで私もゾンビになっちゃったのかー!? よくもやったなおにーちゃん! 仕返しに私もおにーちゃんを食べてやるー! がおー!」
「ゾンビ同士で共食いかよ!? 腐った肉食べてないで新鮮な肉食えって!」
眉を吊り上げ小さな歯で手に噛み付こうとしてくる琴里。そして実際に噛まれたり、あるいは取っ組み合いになったり。傍から見ると何やってんだこいつら的なアホな触れ合いである。
しかし士道にとっては紛れも無く二重の意味で愛する人との楽しく幸せな触れ合い。それはきっと琴里も同じだろう。
七罪や四糸乃なら決してしてこないような触れ合いを心から楽しみながら、士道は琴里と一緒に二人きりの夜を過ごしていった。多少歯型と唾液に塗れた若干おかしな夜を。
「すー……すー……」
「……寝ちまったか。まぁ、アレだけはしゃいだんだし当然か」
おふざけを終えて二人でゆっくりテレビを見て過ごしていると、いつのまにやら琴里は膝の上で寝息を立てていた。
さすがに短時間の内に二度も激しく熱い触れ合いを交わしたせいで、ケダモノの琴里も疲れてしまったのだろう。色々大人染みていたりするところもあるが、何だかんだでまだ子供なのだからこれは仕方ない。
「寝るならちゃんとベッドで寝ろよ、全く……」
起してしまわないよう慎重にその身体を抱え、お姫様抱っこで運んでいく。抱え上げた時に多少身じろぎしていたものの幸い目を覚ますことは無かった。
琴里の部屋へと辿りついた士道はベッドにその小柄な身体を静かに横たえ、髪を二つに結ぶ白のリボンを解いてやった。そうして長髪が邪魔にならないようにしつつ、首元までシーツをかける。
「おやすみ、琴里……愛してるぞ?」
そして耳元で愛を囁き、その額に軽く口付ける。
一緒に寝るのも悪くは無いがまだ寝る準備は終えてない。歯も磨いていないし、リビングなどの灯りは消していない。なので琴里を起さないようこっそり部屋を出て行こうとしたのだが――
「ん、琴里……?」
――いつのまにやら服の裾を琴里に掴まれていた。
目を覚ました琴里に引き止められたのかと思いきや、まだ眠っているらしく無防備な寝顔を晒している。その手を外すのは難しくないものの、眠りながらも士道を引き止めようとする可愛らしい姿に抵抗の意思は無くなってしまった。
「……せっかくだし一緒に寝るか。ちょっと邪魔するぜ、琴里」
微笑ましさによる頬の緩みを感じながら、静かに琴里の隣へとお邪魔する。
下心は何もないのだが何だか夜這いをかけているような変な気分だった。
「ん……ぅ……」
「おっと、起しちまったか……?」
むずがるような声を零し身を捩る琴里の姿にそんな懸念を覚えるも、どうやら杞憂だったらしい。琴里は士道の胸に身を寄せる感じの寝返りを打っただけで目を開きはしなかった。
「えへへ……おにーちゃぁん……」
その代わり胸に顔を埋めてきて甘ったるい寝言を零していた。
背中に手を回し抱きしめてやりながらその顔を覗き込むと、これでもかというほど幸せいっぱいの緩んだ寝顔が広がっていた。あまりの可愛らしさに胸が締め付けられて痛みを覚えるほどの幸せいっぱいの寝顔である。
「……こいつ本当に寝てるんだろうな? 何だよこのあざとい可愛さ。本当に襲っちまいたくなるだろうが……」
「っ……うーん……おにーちゃぁん……愛してるよぉ……」
可愛らしい寝姿に欲望を含んだ独り言を零すと、まるでそれを聞いていたかのように更に可愛い寝姿を晒す琴里。寝言で士道への愛を口にして、服の胸元を握り締めてしがみついてくる。
もしや本当に寝ているふりをしてるのではないだろうか。疑わしく思った士道はちょっと確かめてみることにした。
「そういやこいつ場所さえ考えればいつでもオーケーとか言ってたな。なら今から寝込みを襲って滅茶苦茶にしちまっても良いってことだよなぁ?」
「っ……!」
あえてはっきり聞こえるようにゲスいことを口にすると、琴里の身体が一瞬びくっと震える。
これだけならまだ偶然とか無意識の反応とかで納得しても良かったが、可愛らしかった寝顔が必死にニヤニヤ笑いを堪えているかのような残念な笑みになっていたので無理だった。こいつ確実に狸寝入りを決め込んでいる。
「よーし、まずは眠ってるお姫様を起してやらないとな。やっぱりお姫様の目覚めさせ方って言ったらキスしかないよな」
「っ……!」
わざとらしくそんなことを言いながら、琴里の顎に軽く指をかけて顔を上げさせる。
最早ニヤニヤを堪えるのが難しいらしく、表情は完璧に崩れて精々目を閉じているくらいにしか寝顔を再現できていなかった。むしろその反応にこちらがニヤニヤしてしまうほどだ。
「あー、けどこいつ疲れて寝ちまったんだし今はゆっくり休ませとくか。それにぐっすり寝てるんだし起すのはかわいそうだからな。仕方ねぇ、残念だけど俺も寝るか。おやすみ琴里」
「えぇーっ!?」
そしてキスする寸前で思い直したふりをして、士道も寝たふりを決め込む。
相当ショックだったのか琴里は普通に声を上げていたが、今の士道はぐっすり眠っているので反応などしてやらない。
「う、うーん、良く寝たー! あ、おはようおにーちゃん! 私はぐっすり眠って元気いっぱいだぞー!」
「う、うーん……ぐー……ぐー……」
「駄目だよ、おにーちゃん! 寝たら死んじゃうぞー!? ゾンビになっちゃうぞー!? だから早く起きておにーちゃぁぁぁぁん!」
泣きそうな声で必死に士道の身体を揺り動かし、未だゾンビネタを引っ張る琴里。今度は士道がニヤつくのを我慢する番だった。
「むー……まさか、本当に寝ちゃったのかー? おにーちゃんはエッチしたかったんじゃないのかー?」
それはお前の方だろというツッコミを必死に抑え込み、狸寝入りを続ける。
目を閉じているせいで何も見えないが、琴里が不満げな表情を浮かべているということは手にとるように分かった。
「仕方ないなー、こうなったらお姫様のキスで優しく起してあげるぞー?」
そしてやはり兄と同じ発想に行き着く妹。きっと先ほどまでの士道と同じく、ニヤニヤ笑っていることだろう。
同じ発想に行き着くことを予想していた士道はこの時を待っていたのだ。琴里が目覚めのキスをする瞬間にその身体を抱き寄せ、逆に唇を奪ってやろうと。
なので士道は琴里の吐息が唇を撫でるその瞬間に備えたのだが――
「むぐっ……!? ぐ、ぅ――ぶはぁっ!?」
――鼻を摘まれ唇を塞がれたせいで息苦しさに飛び起きざるを得なかった。
「おー、一気に目が覚めたみたい。おはようおにーちゃん」
「殺す気かお前!? お姫様のキスはどうしたんだよ!?」
「うー、だっておにーちゃんキスしてくれなかったもん……」
呼吸を整える士道の前で頬を膨らませて不満を露にする琴里。やはり狸寝入りはキス待ちだったらしい。
「寝てるふりしてキスを待つお姫様とか聞いたことないしな。どうせ最初から狸寝入りだったんだろ?」
「違うよー。目が覚めたのはおにーちゃんが部屋に運んでくれてるあたりからだよー」
「そこかよ。てっきり疲れてぐっすり眠ってると思ってたけど意外と眠り浅かったんだな」
「疲れて眠ったわけじゃないよー? おにーちゃんの膝枕があんまり気持ちよくてうっかり眠っちゃっただけだもん。おにーちゃんだって四糸乃に膝枕してもらったらうっかり寝ちゃいそうでしょー?」
「それはありえそうだな、うん」
間違いないので一瞬の迷いも無く頷く。
心のオアシスたる四糸乃に膝枕されては眠気がなくとも確実に落ちるに違いない。仮にそれ単体で落ちなくとも全てを癒す微笑みを浮かべた四糸乃に頭を優しく撫でられれば一発で意識を持っていかれるだろう。
「だよねー。だから私は別に疲れてるわけじゃないんだよー、おにーちゃん。疲れてるわけじゃないんだからなー?」
ほんのり頬を赤らめながらも疲れているわけではないと強調して口にする琴里。無論強調する理由は考えるまでも無かった。
「あーもう、本当にびっくりするくらいケダモノな奴だな。少しは控えようって気がねぇのかよ、全く……」
「毎日違う女の子といっぱいイチャイチャして、いっぱいエッチなことしてるおにーちゃんには言われたくないぞー、全くー……」
「そりゃもっともだ。ならその分お前といっぱいイチャイチャして、いっぱいエッチなことすれば許してくれるか?」
ヤキモチを露に不機嫌そうな顔で見上げてくる琴里の頭へと手を伸ばし、下ろした髪を梳くような形で撫でていく。
安心感でうっかり落ちてしまっただけなら琴里はまだまだ満足していないだろう。せっかく二人きりで過ごせる貴重な時間なのだから、きっと疲れ果てるまで楽しみたいに違いない。
「……ちゃんといっぱいしてくれないと、絶対許さないからなー?」
「分かってるよ、それくらい。お前が満足するまでどっちも好きなだけやってやるから――途中でへばったりするんじゃねぇぞ?」
「それはこっちの台詞だぞー、おにーちゃん。今夜は朝まで寝かせないからなー?」
「だからそれは普通男が言うべき台詞だろ。本当にこのケダモノ妹は……」
生意気に妖艶な笑みを浮かべ誘惑してくる白琴里。
黒い方なら大人の女染みた魅力を醸し出していただろうが、残念ながら白い方では子供っぽさが先立ち大人の魅力はほぼなかった。まぁこれはこれで悪くない。
「そこまで言うなら手加減なんてしてやらねぇからな。きやがれ、琴里!」
「おー!」
士道が両腕を広げると琴里は満面の笑みで胸に飛び込んできた。そして士道からのキスを求めひたすらに自らキスを繰り返し、舌と唇で徹底的に甘えてくる。あれだけイチャつきエッチしてもまだ足りないとは本当にケダモノである。
そしてそんな琴里に呆れながらもどうしようもない愛しさを覚え、挙句キスで興奮を覚えてしまう士道もやはりケダモノ。
なのでケダモノはケダモノらしく本能に忠実となり、そのまま士道は琴里と共に心行くまで愛と快感を貪りあっていった。無論本当に早朝までノンストップで続いたことは言うまでもない。
これは酷い……その一言に尽きるお話。
忘れている方もいるかもしれませんがTウィルスネタは原作一巻でもあったネタ。まぁそのままのウィルスネタで使われたわけではないですけど。ちなみに個人的にはTよりもGが好きです。変身の過程が好き。
更新停止期間の執筆状況の進捗はどれくらいの頻度で活動報告に載せるべきか
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