脱衣ポーカーの続き。
前編ですでにどっちもアウトなくらい剥がれている気がしないでもない。もうこうなったら七罪にも脱いでもらった方が幸せになれそう……。
「あら、なかなか良い手札ね」
『ふむふむ、これはなかなか……』
肌色成分多めなポーカー勝負、その四戦目。手札を見るなりまたしても二人はさも悪くなさそうな声を零す。
とりあえず士道にはハッタリなのかどうかは分からなかった。そもそも極力見ないように努力しているので細かな表情の判別はできないし、そこまでじっくり見ようとすればもっと下の方を凝視してしまいかねない。
『オッケー。よしのんは二枚』
「なら私は三枚よ」
「ああ、二枚と三枚だな……」
カードを配る時も視線はなるべく下に向け、床にじっと目を凝らす。何せ右には制服姿なのにスカートとパンツのない義妹が、左には一組のソックスとセクシーなパンツのみの慈愛の女神がいるのだ。どちらを見ても背徳感は上限突破のヤバイ光景である。
『もーっ、士道くんったらそんな穴が開くほど床見てないでもっと四糸乃のエロイ身体を見ようよー。言ってくれれば四糸乃は隠さずぜーんぶ見せてくれるよー? ね、四糸乃?』
「士道さん……私の身体、見たいですか……?」
「すげぇ見たい――あ、今の無し。聞かなかったことにしてくれ、四糸乃。お願いだから」
「は、はい……」
穢れの無い澄んだ声音で非常に魅力的な質問をされ、馬鹿正直に頷いてしまう。優しい四糸乃はお願いを聞いて今の一言を無かったことにしてくれた。
「何か士道、いっぱいいっぱいね……」
「女の半裸程度でそこまで興奮するなんてチェリー気分が抜けていないんじゃないかしら? 純情で喜ばれるのは女だけで男はキモイだけよ」
「そ、そんなことないです。私は純情な士道さんも良いと思います……」
「守備範囲が広いわね、四糸乃。でも覚えときなさい。外面がどうだろうと一皮剥けば男は皆ケダモノなのよ」
『あっはっはっ。まあ男の子はその方がむしろ健全だと思うよー。さてさて、どうする琴里ちゃん。レイズする?』
理解ある言葉で話を切り上げ、勝負に戻る『よしのん』。
どうもこの脱衣ポーカーはどちらかがレイズしなければ自動的に一枚同士の賭けになるらしい。そして琴里と四糸乃の残り衣服の枚数は合計で八枚。つまりどちらもレイズしないまま続くなら最高でもあと七回戦はあるということ。ちょっと前とは逆にどっちでも良いからじゃんじゃんレイズしろ、と心の中で念を送る士道を責めることは誰にもできないはずだ。
「私はしないけどあなたがレイズするならコールしても良いわ。安心しなさい、四糸乃。あなたのその嫌らしいパンツは最後に引ん剥いてあげるから」
『ほほーう、自信満々だねー。じゃあよしのんもブラは最後にしてあげるよ。レイズ!』
「そ、そんなに攻めて大丈夫なの、よしのん?」
心の中でガッツポーズを取る士道とは裏腹に、七罪は不安気な声を零す。大変救いのある判断なことはさておき、確かに衣服が残り三枚しかないのに攻めの姿勢を崩さないのはどうかと思う。
『大丈夫だよ、七罪ちゃん! 四糸乃は見られて恥ずかしい身体してないからね!』
「や、そういう意味じゃなくて……でも確かにすごくエロイ身体してるわよね……」
「……お前最近美九に似てきたんじゃねぇか、七罪?」
何やら聞き捨てなら無いことが聞こえたのでちょっとだけ顔を上げて対面の七罪に指摘する。別に言葉だけなら気にはしなかったのだが、若干興奮したような声音が混じっていたので流すに流せなかった。
「……しにたい」
すると心当たりがあるのか顔を青くして突っ伏す。
まあそんな風にしっかり拒絶している間はまだ大丈夫だろう。逆に言えば受け入れてしまったらもうおしまいだが。
「……フォールド。自分と同じタイプを相手にすると疲れるわ」
「ワンペアか。よくそんな手でハッタリかませるな、お前……」
絶望する七罪の傍ら、琴里が降参を示して手札を開示する。ノーペアよりはマシだが4のワンペアで良くあそこまで啖呵を切れるものだ。
『四糸乃はスリーカードだよ! そんじゃーセーラー服を脱いでもらおうかな。何か脱がさないでって言われてるけどよしのんは容赦なく脱がすよ!』
「何年前の歌のことを言っているのよ、あなたは……」
ぶつくさ言いながらもルールには従いセーラーを脱ぎ去る琴里。下から表れたのは子供っぽい白いブラウス。透け透けでエロかったりしない普通のものなので士道としても安心のデザインだ。
ちなみに四糸乃のブラウスはセーラーに続けて剥がれていたのであまり目立たなかったものの、明らかに透け透けの危険物であった。ここまで徹底しているといっそ清々しい。
「これで残り枚数は私が四枚、四糸乃が三枚。思ったよりも良い勝負になっているわね」
『そうだねー。じゃあそろそろウォーミングアップは止めて本気出していこうよー?』
「ええ、そうね。私もいい加減身の危険を感じて気が気でないし、早いとこ決着をつけましょうか。もちろん勝利を飾るのは私だけどね」
まさかの今までは準備運動発言。しかも琴里も同じく本気を出していなかったらしい。とはいえ琴里はともかく、四糸乃を賭けチップ扱いしている『よしのん』は最初から本気を出せと言ってやりたい。
「もう何でも良いからさっさと終わってくれ……カード配るぞ……」
「士道がだいぶグロッキー……」
しかし実際に口から出てきたのは単なる泣き言。七罪の同情を孕んだ言葉を聞き流しつつ、五戦目開始のためにカードを配る。
そろそろ本気を出すという言葉は嘘ではなかったらしい。二人は手札を確認してもわざとらしい感想は零さず、無言で相手の表情を窺っていた。
とはいえ琴里は余裕の笑みを崩さず、四糸乃は終始恥らっていてほぼ読めず、『よしのん』に至ってはそもそも表情筋が存在しないので読むことは不可能。故に本気と言ってもここからは互いの運が大いにものを言う勝負だ。
「……一枚」
『よしのんも一枚』
お互いに一枚ずつ手札を捨て、士道にカードの交換を催促してくる。
どちらもキープしている手札は四枚。高ランクの役が揃っているためいらない一枚を捨てたのか、それとも新たな一枚で完成する高ランクの役を揃えようとしているのか。
『レーイズ!』
「……コール」
『よしのん』のレイズ宣言にコールする琴里だがその表情は固い。これで負ければ衣服は残り2枚に剥がれ逆転されるのだからさすがに緊張しているのだろう。
七罪と共に固唾を呑んで見守る中、まずは琴里の手札がオープンされた。
「……ストレートよ」
現れたのは4から8のストレート。五枚中三枚のマークが同じなのはフラッシュを狙っていたからか、それとも偶然か。琴里なら前者の可能性が高そうだ。
これに対し『よしのん』の手札は――
『ふふーん、よしのんの勝ちだね!』
「ふ、フラッシュです……!」
「四糸乃っ、見えてる見えてる!」
一枚のジョーカーを加えた輝かしいダイヤのフラッシュ。
逆転した事実が嬉しいのか可愛いことに四糸乃はちょっと興奮気味だ。喜ぶのは結構なのだが胸元のガードが疎かになっているのでちょっと勘弁して欲しい。
『そんじゃーブラウスにソックスのかたっぽを脱いでもらおっかなー。ブラは最後に士道くんに外させてあげるからねー?』
「くっ……!」
ここで初めて琴里の表情から余裕が消え、焦りが表れる。初戦で流れを掴んだはずなのに土壇場で逆転されてしまったのだからその反応も当然だ。しかも場合によっては次の一戦で決着がつく可能性もある。
おまけに負ければこの場の全員でベッドに直行することを余儀無くされるので絶対負けたくないのだろう。色々アレな性癖を持っている琴里だが一対一で愛し合うことを何よりも好んでいるのは分かっている。しかしもう全員でも良いからベッドに入りたいというのが今現在の士道の本音だ。それくらい目の前に広がっている光景の破壊力はヤバイ。そしてどうせなら七罪にも脱げと言いたい。
「まさか私がここまで追い詰められるなんてね。最初に少し遊びすぎたかしら……」
悔しげに言い放ち、色気の欠片も無い豪快な脱ぎ方でブラウスを脱ぎ捨て、黒のソックスも片方打ち捨てる琴里。そんな無様な様子を見て『よしのん』は不気味に笑っていた。
『ふっふっふ……もうすぐ、もうすぐだよ士道くん。あと少しでよしのんと士道くんの野望が果たされるからねー?』
「いや、別にそれは俺の野望じゃねぇし……」
『そんな細かいことはどうでも良いんだよ! さあ士道くん、早くカードを配るんだ!』
「お、おう……」
野望達成間近で興奮気味の『よしのん』に気圧され、手早くカードを配る。
そうして始まる六戦目。もうどちらも初見の手札を見て無駄口を叩かない。そして琴里が形作っていた余裕の笑みも完璧に消え去り、今や視線で射殺せそうなくらい真剣な表情だ。さすがにもう後が無いと自覚しているのだから当然かもしれない。
「……一枚」
『よしのんは三枚!』
手堅く一枚の琴里と、そこそこ交換の『よしのん』。ドローを終えてもやはり自分の手札に関する感想は飛んでこない。お互い無駄だと分かっているから手札に関しては何も言わないのだ。
「……それでどうするのかしら、よしのん? 私は後二枚剥がれれば敗北よ。あなたがレイズして勝てればそれで決着。ただもし負ければ四糸乃が二枚剥がれて残り一枚。そうなればフォールドもできなくなって後がなくなってしまうわね」
しかしここからは言葉で互いを牽制する時間。手札から一枚を抜き取り、ゆらゆらと揺らしながら怖いくらいに優しい声音で琴里は言う。
自分の手札が悪いから『よしのん』に降りて欲しいと思っているのかもしれないが、コイツの場合はあえてそう思わせて誘っているだけで実は途轍もなく良い手札と言うこともあり得る。迂闊に攻め込めば思う壺だ。
『そうなんだよねー。でも、だからこそここはガンガン攻めるべきじゃないかなー。どうせ負けたって四糸乃が士道くんに辱められるだけだからよしのんが失うものは何も無いしねー?』
「うわぁ……」
「とうとうぶっちゃけやがったな、よしのん……」
この発言には士道どころか七罪もドン引きだ。四糸乃を賭けチップ扱いしていると思ったら間違いなくその通りであった。
まあお互い納得してやっているなら他人がとやかく言うことではないが、とりあえず四糸乃はもうちょっと自分を大事にした方が良いと思う。
「そう。ならレイズするのかしら?」
『うーん……いいや、今回はこのまま行くよ。琴里ちゃん、顔つきがちょっと変わってきてるからね。嫌な予感がするよ』
士道と同じく『よしのん』も琴里の顔から余裕が消え去ったことに気付いたらしい。今までガンガン攻めていたのにここで初めて慎重な姿勢を見せた。
「そう、なら勝負よ。お先にどうぞ?」
「スリーカード、です……」
四糸乃がびくびく公開した手札はJのスリーカード。それなりに高ランクの手札なのに自信が無さ気に見えるのは琴里の鋭い視線に晒されているせいに違いない。
「ふっ……」
しかし鋭さは唐突に嘲笑うような笑みへと変わり、対する手札が公開される。左手の四枚にはAと10のツーペア。そして右手の一枚はジョーカー。つまるところフルハウスで琴里の勝利だ。
『おおーう、危ない危ない。迂闊に攻めてたら四糸乃はパンツ一枚になってたね……』
「ふふっ。英断だったわね、よしのん。さあ四糸乃、どっちでも良いからソックスを一枚脱ぎなさい」
「は、はい……」
額の汗(浮かんでないけど)を拭う真似をする『よしのん』の傍ら、四糸乃は片方のソックスを脱いでいく。
当然ながらその間胸元はフルオープンで大変素晴らしい光景であった。目を逸らそうと思ったのについガン見してしまった士道を責められる者はいるだろうか。いや、いない(反語)。
「これでどっちもソックスかたっぽに下着かたっぽで条件同じだし、もうここまで来たら次で最後にした方が良くない? 士道、もう肉食獣みたいな目してて怖いんだけど……」
『やーん! 士道くんがよしのんの柔肉を狙ってるぅー!』
士道の様子がだいぶ不安らしく、七罪は控えめに手を挙げそんな提案をする。
くねくねと身を捩る『よしのん』はさておき、次で決着がつくのは士道にとっては非常に救いのある提案だ。ただし次で最後ということは勝負からは降りられず、駆け引きもほぼゼロの運勝負と化す。こんな崖っぷちで琴里がそんな勝負を受け入れるかは未知数だ。
「……そうね。いい加減この馬鹿げた格好も寒くて嫌になってくるし、次でケリをつけましょうか」
などと心配していたがわりとあっさり受け入れた。
確かに部屋の中でエアコンをかけているとはいえ、八割方肌を晒しているのだからそろそろ身体も冷えてくる頃合だ。まあ色々とアレな性癖を持っている琴里の場合、士道に見られて逆に身体が火照ってきているということも考えられなくも無い。
『降参不可能強制レイズの問答無用の最終決戦ってわけだね。最後の最後で百パー運頼みの勝負ってのも面白いし、よしのん日頃の行いが良いから自信あるよー?』
「あら、奇遇ね。私も日頃の行いの良さには自信があるわ。品行方正で由緒正しい妹キャラと自負しているもの」
「……何もツッコミ入れないの、士道?」
「そう思うんならお前が言え、七罪。俺はもう俺の中の薄暗い衝動を抑え込むのに精一杯だ……」
こんな馬鹿げた勝負を提案する『よしのん』の日頃の行いが良いわけがないとか、サディストでマゾヒストな癖に品行方正とか寝言は寝て言えとか色々思ったが、残念ながら士道には口に出す余裕がなかった。ついでに言い回しに気を遣う余裕も。
「耶倶矢みたいなこと言ってるし。相当重傷ね、これ……」
『仕方ないよー。士道くんは今女の子の口から出たギャグじゃなくて女の子に口に突っ込みたくて堪らないんだもん。まー、一番突っ込みたいのはいわゆる下のお口なんだろうけどさ。ね、士道くん?』
「うわぁ……!」
「あー、はいはい。特に七罪の口にな。じゃあこれが最後の勝負だぞ?」
「何でこの状況で私!? ていうか本当でも否定くらいしなさいよ!?」
『よしのん』による相当危ない下ネタと士道の適当な相槌により、七罪は顔を真っ赤にして喚く。その反応が実に可愛らしくて邪な心が洗われていくような気分だ。どうやらこの場の七罪は士道にとって四糸乃以上の心のオアシスだったらしい。
まあ視線をちょっと左右にやればあっというまに心は汚れてしまうので、洗浄の意味があるかどうかは甚だ疑問である。
『おおっ!? これは……』
「へぇ……」
そしてついに最終戦。降参不可能で駆け引きが無いせいか、今回は琴里も『よしのん』も自分の手札を目にして素直に感嘆の吐息を零していた。ここに来てハッタリをかます意味は無いので実際に手札は充実しているに違いない。これは最終決戦に相応しい高ランク同士の戦いになりそうだ。
『……二枚!』
「同じく二枚よ」
最後のドローはお互いに二枚。表情判別不可能の『よしのん』はともかく、琴里は心なしか表情が固めだ。負ければ皆で強制大乱交なのだから無理も無い。
『おおーっ! きたよ、これ!』
「わあっ……!」
「ど、どうした四糸乃?」
ドロー後の手札を目にした途端、何と赤くなって縮こまっていた四糸乃までもが驚愕に目を見開く。今までほとんど表情は読めなかったのにここに来てそんな反応をするとは、まさか相当とんでもない役が揃ったのだろうか。
「そ、その様子だとなかなか強力な手を揃えられたようね、四糸乃?」
「は、はい、凄いです……!」
『よっしゃ! やっぱりよしのんの日頃の行いが良いおかげだね!』
興奮気味の四糸乃に気圧されているのか何故か若干どもる琴里。そして胸を張って踏ん反り返る『よしのん』。まるで自分の勝利を確信しているかのごとき自信に満ち溢れた姿だ。表情があれば間違いなくドヤ顔をしているに違いない。
「それが事実かはさておき、これで決着ね。私をここまで追い詰めたこと誉めてあげるわ、よしのん。だけど最後に勝つのはこの私よ」
代わりというわけでもないだろうが琴里の方が勝ち誇ったドヤ顔を決める。
更には手札を左に三枚、右に二枚に分け、身体の前で両腕を交差させて無駄なポーズまで決める徹底振り。今更ハッタリをかます意味も無いのでこちらも相当な役が揃ったのだろう。もっとも士道は驚嘆の声を零した四糸乃の方(主に顔と胸元)を見ていたので琴里が自分の手札を見た時の表情は見逃しているのだが。
『ふっふっふ、それはどうかなー? 追い詰められたウサギはジャッカルより凶暴だからねー』
「ふふっ。威勢が良いわね、四糸乃。恨みは無いけどこれであなたを裸に剥いてあげるわ。士道に弄ばれて無様にイキ狂いなさい」
『それはこっちの台詞だよー、琴里ちゃーん。これからみーんなで琴里ちゃんの身体を弄繰り回してあげるから心の準備をしておいてねー?』
「これで最後だ! ショーダウン!」
色々と妖しい言葉の応酬に耐えられなかったため、ディーラー権限で強制的に切り上げさせる。無粋かもしれないがもういっぱいいっぱいなのでこれくらいは許して欲しかった。
「先行は譲るわ、よしのん。最後の足掻きを見せてみなさい」
『それじゃあお言葉に甘えちゃおっかなー。見よ! よしのん最強の手札を!』
「これ、です……!」
そうして四糸乃が公開した手札は10からAのストレート。
それだけなら特に驚くに値しない手札だがマークが問題だ。マークはあろうことか全てスペード。つまりこれは単なるストレートではなく、ストレートフラッシュでもないポーカー最強の手札。
「ろ、ロイヤルストレートフラッシュだと!?」
「しかもジョーカー無しのナチュラルロイヤル……!?」
最後の最後でとんでもない役が出てきたため思わず興奮も忘れて見入ってしまう。
イカサマを疑いたい手札だが四糸乃がいる以上『よしのん』はイカサマなどできないだろうし、トランプを持ってきたのは他ならぬ琴里。『よしのん』に細工や仕込みができるわけがない。これは間違いなく自身の運だけで揃えた手札ということだ。
この最強の手札に対し、琴里は――
「――ふふっ、ふふふふふ……あはははははは!」
「こ、琴里……?」
何故か突然笑い出した。してやられたとでも言う様に二枚のトランプを手にした右手で額を押さえながら、それなりに長い間。
大乱交確定という事実に気が触れたのではないかと一瞬心配した士道だが、長い哄笑を終えた琴里の赤い瞳には幸いにも意思の光が存在していた。
「はぁ……まさかこの土壇場でそんな手を揃えるなんてね。ええ、認めてあげるわよしのん。あなたの勝負強さを」
『イェーイ! よしのんがナンバーワンだね!』
「あら、誰がナンバーワンだと言ったのかしら。よしのん、あなたは一つ忘れているようね。ロイヤルストレートフラッシュが最強の役ではないということを」
『……ま、まさか』
はしゃいでいた『よしのん』だが琴里の極めて穏やかな指摘を受け、唐突に凍りつく。同時に士道も、そして対面の七罪さえも息を呑んでいた。何故なら自分たちの予想が正しければとんでもない展開が待ち受けているから。
「このポーカーはトランプ54枚全てを用いたルール。当然ジョーカーも二枚入っている。だから真に最強の手札はもう一つだけ存在するのよ」
回りくどい言い方をしつつ、琴里は左手の三枚を撫でるように素早く床へ並べる。その三枚はマークは全て違うが、数字は全て同じ6。
「とくと見なさい、これが真の強者の手札よ」
そこへ右手の二枚が並べられる。どんなカードとしても扱えるワイルドカード――二枚のジョーカーが。
6が三枚にジョーカーが二枚。一見するとフルハウスだがその程度の役ではない。これこそがポーカーで唯一無二の最強の手札。
「ふぁ、ファイブカード……!?」
『そ、そんな馬鹿なー!』
開いた口が塞がらなくなる士道と、某叫びの絵画の如く両手で頬っぺたを潰す『よしのん』。ジョーカーが二枚手札にあることがイカサマ臭いが、それを言ったらナチュラルロイヤルフラッシュもイカサマ臭い。
何より琴里はすでにブラとソックス一枚ずつという無防備に過ぎる格好なのだ。服に仕込もうにもその服は無いし、胸元に仕込もうにも――いや、これは琴里の名誉のために言わずに置くべきか。
「普通ここは空気読んで負けるとこでしょ……ていうか最後の勝負でロイヤルストレートフラッシュ対ファイブカードとか絶対おかしくない?」
「あら、あなたはもしかして全員で乱交したかったの? 意外な趣味をしてるのね」
「べ、別にそういうわけじゃないけど……」
「なら私の勝利を喜び称えなさい。私こそがこのポーカーの勝者、トランプの女王よ」
手早く制服を着直した琴里はそんな誇張し過ぎな台詞を口にしつつ、手札で自らを扇いで偉そうに踏ん反り返る。
いつのまにやらその手札は士道の山札と四糸乃の手札、そして捨てたカードを回収した54枚の手札と化していた。確かにファイブカードとロイヤルストレートフラッシュだけでは飽き足らず、全てのカードを回収し我が物とする貪欲さは女王と言えるかもしれない。それに琴里の場合はお姫様よりも女王様の方が遥かにお似合いだ。
「さて、分かってるわねよしのん。敗者は勝者の命令をどんなことでも聞かなければならない。そしてもう一つ。敗者はそこのケダモノの餌となるのよ」
その証拠に今度はわざわざ立ち上がり、眼下で呆然とするしかない士道と四糸乃(と『よしのん』)を見下ろしてくる。
その表情はやはりとんでもないドヤ顔。ただ思いのほか勝負に熱くなってしまったのか若干顔が赤い。トランプで扇いでいるのは単純に熱を冷ますためなのかもしれない。
『うう……分かってるよ、琴里ちゃん。よしのんは潔く負けを認めてこの身をハラペコのオオカミさんに捧げるよ。さあ二人とも、この場はよしのんに任せて逃げるんだ!』
「うおっ!? いや、捧げるのはお前じゃなくて四糸乃だろ……!?」
存外素直に負けを認め、自己犠牲を体現するかのように自ら顔面に張り付いてくる『よしのん』。自己犠牲は美しいがこの光景、傍から見れば四糸乃が士道にアイアンクローをかましていると取れなくも無い。
「さあ、早く逃げるわよ七罪! よしのんの犠牲を無駄にしてはいけないわ!」
「えーと……とりあえず、三人でごゆっくり……」
視界が覆われほぼゼロの中、琴里と七罪がドタバタ部屋を出て行く音が聞こえた。
これで部屋の中には士道と四糸乃、そして『よしのん』の二人(三人?)きりだ。幼女同士の脱衣ポーカーに大変劣情を刺激されてもう我慢ならない士道と、ソックス片方にセクシーなパンツのみの四糸乃という、先の展開が火を見るよりも明らかな状態の。
「士道さん……す、好きなだけ、召し上がってください……」
おまけに顔から『よしのん』が離れて待っていたのは、恥らう四糸乃の上目遣いという反則技。おまけにとても魅力的なお許しまでその小さな口から紡がれる。
こんな状態でノーと言える男がいるだろうか。いや、いない(反語。二度目)。
士道は最後の意地でニヒルな笑みを一つ浮かべ、すでに限界が来ていた理性を手放した。
「……ねぇ、琴里。ちょっと良い?」
ハラペコのオオカミの部屋から二人で逃げおおせた後、階段下まで来たところで七罪は思い切って声をかけた。
「あら、何かしら?」
「その……本当にイカサマしてないの? そりゃあよしのんのナチュラルロイヤルもかなり怪しいけど、あっちは四糸乃がいるからイカサマなんて絶対できないだろうし……」
そしてイカサマの有無を尋ねる。
最終戦がナチュラルロイヤル対ファイブカードなど明らかに出来すぎだ。士道のおかげでだいぶ前向きになったとはいえ根は後ろ向きで疑い深い七罪だ。はっきり言ってどちらか片方はイカサマしたと思っている。
しかし『よしのん』がイカサマするにはどんな方法でも四糸乃の許可を取らねばまず不可能。無論四糸乃が許可など出すはずも無いので『よしのん』は白。つまり黒は琴里の方となる。なお、紛らわしいが体色やリボンの色の話ではない。
「仮に私がイカサマしていたとして、それを正直に話すと思っているのかしら?」
「別に今更告げ口なんてしないわよ。今から士道のとこ行ったら四糸乃の邪魔することになるし、告げ口したら恨まれそうだし……」
告げ口した場合の自分の身に降りかかるであろう復讐を考え、思わず青ざめてしまう七罪。
『よしのん』に聞いた話では何と士道への復讐のために映画館で四糸乃を抱かせたとのことだ。一応周囲に見つからないよう最低限の気は遣ってやっただろうが、それでも信じられないくらい恐ろしい仕打ちである。似たような仕打ちが待ち受けていると分かっていて告げ口するような度胸は残念ながら持ち合わせていない。
琴里は震える七罪を見てしばし黙考していたが、心からの反応だと分かったのだろう。白を切るのを止めてイカサマ――もといイタズラっぽい笑みを露にした。やはり七罪が気付かなかっただけで普通にイカサマしていたらしい。
「お利巧さんね。良いわ、特別に教えてあげる。だけどその前にあなたの考えを聞かせてみなさい。私はどんなイカサマをしたと思う?」
「えっと、トランプ持ってきたからソレ自体に何か細工してると思うんだけど、調べた感じだと何もおかしなところなかったのよね……んー……」
「ふふっ……」
頭を悩ませる七罪の前で琴里は不敵に笑うとポケットに手を突っ込み、回収したトランプ54枚を取り出す。そして種も仕掛けもありませんと言うかの如く綺麗に広げて裏表を見せてくる。そして広げた時と同じく綺麗に閉じると、そのままトランプ全てを両手で包んで隠してしまう。
ポーカーでイカサマと言えば、やはり服の中にトランプを仕込むのが一般的だ。最初から仕込んでいなくともトランプの回収ごとに一枚くらいキープするのも琴里ならわけはないはず。ただ最後の方は仕込む服そのものが無かったのでこの手は使っていないことになる。ならば一体どんなイカサマをしてファイブカードというとんでもない役を揃えたのか。
「常識に囚われていたら分からないわよ。自分ならどうするかを考えてみなさい」
「えっ、私なら? そりゃあトランプ仕込むなんてバレそうで面倒な真似せずにトランプそのものを変えるわよ」
七罪ならトランプを服に仕込む必要など無い。ちょっと精霊の能力を使えばファイブカードもナチュラルロイヤルも思いのままだ。
だが士道ならともかく琴里の能力ではそんな真似はできないはずだし、そもそも明らかにイカサマ不向きの能力だ。できそうなのはたぶん炎でトランプを燃やし尽くしてゲームを無かったことにするか、後はちょうど今両手で包んでやっているように――
「……あっ!」
――熱でトランプを暖めることくらい。
「ふふっ、気付いたわね」
ニヤリと笑い、両手で包んでいた山札を手札として広げる琴里。
つい先ほどまでは何の変哲も無かった54枚のトランプは、何と一枚残らず全てジョーカーという百パーセントワイルドなイカサマの極致と化していた。
「ジョーカー以外のトランプ全52枚に、熱に反応する特殊な処理を施してあるのよ。50度以上の熱を加え続けると十数秒絵柄がジョーカーに変わるわ」
「最高に性質の悪いイカサマでしょこれ!? どの口で真剣勝負とか言ったのよ!?」
「勝つために万事を尽くすのは当然のことでしょう? あと私はイカサマ無しとは言ってないわ」
「えぇ……」
いっそ清々しくらい卑怯な物言いにさすがに七罪もちょっと引いてしまう。今琴里が54枚のワイルドカードを団扇にして自分を扇ぎ、カードを冷やして元の絵柄へ戻していく光景も相まって。
最終戦のアレは勝ち誇っている故の行動かと思いきや、熱したトランプを冷やすための行動だったらしい。となると全てのトランプを回収したのもイカサマファイブカードを混ぜて証拠を隠滅するためだったに違いない。
「本当に良い性格してるわね……でもこれ結構危険なイカサマじゃない? 相手が2枚ジョーカー持ってる時にやったらバレるかもしれないし。そりゃあまあ、ジョーカーが2枚手札にある確率とか相当低いだろうけど……」
「そうね。相手の手札が確認できない限りはそのリスクから逃れられないわ。相手の手札が確認できない限りは、ね」
「あれ、琴里……?」
意味あり気な所で言葉を切った琴里がその足で洗面所へ向かったので、気になった七罪もついていく。遅れて洗面所に入ると琴里は鑑の前に立ち、指で大きく開いた瞳にもう片方の指を近づけていた。さしずめコンタクトを外すように。
「ちょっと待った。琴里ってコンタクトしてたっけ? ていうか、もしかして……!?」
「イカサマが一つとは限らないでしょう? トランプにはもう一つ別の処理を施してあるのよ。この特殊なコンタクトを通して裏からトランプを見ると絵柄が透けて見えるっていう処理をね。そのせいで四糸乃の手札がロイヤルストレートフラッシュになったのが見えた時はちょっと動揺したわ……」
「うわぁ……!」
まさかの度を越したイカサマ二段構えに今度こそ七罪もドン引きする。
つまるところ琴里にはずっと四糸乃の手札が見えていたということ。恐らくそれによってジョーカーが必要か否か、変化させても問題ないかどうかを確かめて計画的にイカサマしていたに違いない。四糸乃の表情が読みにくいことなど関係なかった。全ては最初から琴里の手の平の上だったのだ。
「も、もしかして、あんなに追い込まれたのも演技だったりする?」
「ふふっ、もちろんよ。余裕過ぎるとあからさまに怪しいでしょう? まあ士道は最初からイカサマを疑っていたみたいだけれど」
「じゃあ、ブラとソックスだけに剥がれたのも予定通り……?」
この質問には勝ち誇った笑みも一瞬引きつる。
どうやら後半の逆転劇は琴里にも予想外だったらしい。その事実に何となく七罪は安堵を覚えた。
「……思ったよりも追い込まれたし、最後はずいぶんと肝が冷えたわ。もし自力でスリーカードが揃えられなかったならジョーカーを使っても負けていたものね。ま、結果的には勝利の女神は私に微笑んだってとこかしら?」
「イカサマ許容する勝利の女神とか絶対ろくな奴じゃなさそう……」
とりあえず女神とは名ばかりの穢れた存在に違いない。七罪が知る女神の神聖さに当てられればたちまち浄化されてしまうくらいに。
ただその神聖な女神は『よしのん』が勝負に敗北したため、今現在士道の澱んだ欲望の全てを一身に受けている真っ最中のはず。それで神聖さが失われたりはしないものの、代わりに意識が失われて気絶してしまうことは大いにあり得る。
果たして四糸乃は大丈夫なのだろうか。安心安全の<ラタトスク>製イカサマコンタクトをケースに収める琴里の傍ら、七罪は不安に思いながら天井を見上げた。
「ごめんな、四糸乃……またやっちまった……」
理性を手放してからおよそ数時間後、士道は額に手を当て後悔に呻いていた。
理由は単純。隣には一糸纏わぬ姿の四糸乃が意識を失くしてぐったりと横になっているから。幼女二人のストリップに抱いた興奮が収まるまで慈愛の女神に甘えたらこの結果である。
『気にしなくて良いんだよー、士道くん。四糸乃は士道くんに遠慮なんてしてもらいたくないんだからね。むしろここから更にヤっちゃったって構わないよー?』
「まあそれが唯一の救いだよな。ていうかやっぱ出てきたな、よしのん……」
突如四糸乃が身体を起し光の無い瞳で見つめてくるものの、以前もあったことなので特に驚きは無かった。意識の無い四糸乃に代わって『よしのん』が身体を動かしているのだ。
唯一の救いというのは四糸乃が士道に望んでいる触れ合いの中に、欲望の全てをぶつけることもギリギリ含まれている事実。いつもその小さな身体が心配で欲望を抑え気味にしていたのだが、それを自分に遠慮していると思わせてしまったので心情的には余さずぶつけてくれたことを嬉しく思っているはずだ。もっとも四糸乃は絶賛気絶中なので今のところ確認の術はない。
『あーあ、にしてもまさか負けるなんて思わなかったよー。こりゃ絶対いけるし皆でイけるって思ったのになー……』
「そのことだけどお前どう思う、よしのん? 琴里の奴イカサマしたと思うか?」
さらりと混ぜた下ネタは無視してそれを尋ねてみる。
イカサマに関しての監視は七罪に任せていたのだが結局どうだったのかは聞きそびれてしまった。とはいえ何も言いださなかったということは少なくとも現行犯のイカサマは無かったはずだ。少なくとも七罪に分かる範囲では。
『んー、どうかなー? 分かんないけどこれだけは自信を持って言えるよ。士道くん、バレなきゃイカサマじゃないんだよ?」
「やっぱお前も琴里と同じタイプだな、よしのん」
『あはははっ! やだなーそんな褒めないでよ、士道くーん!』
「いや、褒めてねぇし……」
けらけら笑う『よしのん』は四糸乃の指先で士道の鼻をつんと押してくる。可愛い所作だが四糸乃の瞳に光も無いし表情も無いのでいまいち惹かれない。とはいえあったらあったで惹かれすぎて再び襲いかかるかもしれないのでこの方が安全である。
『ま、ぶっちゃけよしのんは勝ち負けなんてどうでも良かったからね。イカサマがあろうとなかろうと些細な問題さ』
「本当にどうでも良かったのか? お前日頃から皆でヤりたがってるじゃねぇか」
『だって勝てばよしのんの野望が達成されるのはもちろん、負けても得になることがあるのは分かってたからね。二人のロリっ子のストリップで高まった興奮の全ては、よしのんが負けた場合は四糸乃に叩き込まれることになるわけだし。実際ぜーんぶ叩き込んでくれたよねー、士道くーん?』
「お前も琴里に負けず劣らず狡猾な奴だよな、よしのん……」
勝てば自分と士道の得になり、負けても自分と四糸乃の得になる。つまり結果的にはどう転んでも『よしのん』の得になる。こんな出来レースを用意するとは見事としか言いようが無かった。
おまけにあえてエロい下着を身に付けさせて士道の目を釘付けにさせ、四糸乃を恥ずかしがらせることで表情を読めなくする奇策まで用意していたのだから恐れ入る。
『勝てば士道くん大歓喜のロリっ子祭り! 負ければ四糸乃がハッピーな遠慮無いあつーく激しいエッチ! どっちに転んだってよしのんは嬉しい限りで万々歳だもんね!』
「こんなんでもちゃんと四糸乃のことを考えてるから性質悪いよな、こいつは……」
『んー、何か言った?』
「いや、何も。それよりどうすんだよ? お前が負けたってことはまた琴里におかしな命令されて四糸乃が恥ずかしい目に合うんだぜ?」
『そんなこと言ってー? 本当は士道くんだって恥ずかしい目に合う四糸乃が見たいんでしょー? ストリップする四糸乃をチラチラ見てたの知ってるよー?』
「くっ……!」
反論できず、そして前屈みになってシーツの隙間から胸元を覗かせてくる四糸乃の姿から視線を逸らせず、悔しさに歯噛みするしかない。
だがアレは仕方ないことだと士道は自分自身に言い聞かせた。あんな素晴らしい光景から完全に視線を外すことができる男がいるとすればそいつはもう悟りを開いているに違いない。
『でもどっちかって言うと琴里ちゃんの方ばっかり見てた気がするなー。やっぱり悔しそうな顔してるのがお好みー?』
「まあ黒琴里に限ってはそうかもな。あいつの生意気な表情が悔しさに歪むとことか堪らないぜ」
『おーっと、士道くんったら超ドS! だったら士道くんもよしのんみたいに同じ罰ゲーム有りで勝負ふっかけてみたらー?』
「勝率無茶苦茶低そうだし負けた時が怖いしなぁ……あっ、ていうかずっと忘れてたけど俺琴里に命令できるんだったな。何でも一つだけ」
『よしのん』の提案に士道はだいぶ前の出来事を思い出した。それは初めて琴里と肌を重ねる夜の少し前のことだ。自分をベッドで屈服させることができればどんなに屈辱的な命令だろうと聞いてやる。できなければ逆にそっちが命令を聞け、と琴里は大いに自信に満ち溢れた賭けを持ちかけてきたのだ。無論所詮は生娘だったのであっさりくっころ展開になったのは言うまでもない。
まさか今の今までこんな魅力溢れる事実と権利を忘れていたとは。どうやら密度の濃い日々だったので記憶の彼方に追いやられていたらしい。
『何ぃっ!? ちょっと士道くん、どうしてそんな大事なこと忘れてたのさ!?』
「食いつき方すげぇな、よしのん!? 色々あって忘れちまってたんだよ!」
聞き捨てならなかったのか『よしのん』と四糸乃の顔が鼻先スレスレまで突撃してくる。こんな超近距離だと暗い目をしている四糸乃も怖いし、パペット故の無表情の『よしのん』もなかなかに恐ろしい。
『その権利をよしのんに譲るんだ、士道くん! 大丈夫! 悪いようにはしないよ!』
「百パー乱交目的だろ、お前! 絶対に譲らねえからな! これは俺が琴里に屈辱を与えて泣いて許しを乞わせるためのもんだ!」
どんな屈辱的な命令だろうと容赦なく下せる権利を渡すなど以ての外。ドSの士道としては琴里に色々やらせてみたいことがあるのだ。例え同じエロイ趣味で繋がったマブダチであり、愛し合う恋人の一人であり、かつて共に琴里を辱めた戦友である『よしのん』にでも権利は絶対渡せない。
『ええーい、分からず屋め! こうなったら力尽くで奪い取ってやる! とりゃーっ!』
「おわっ!? やめろ、よしのん! これ以上四糸乃の身体に負担かけさせんな!」
すでに疲労と快感で気絶してしまうくらい疲弊している四糸乃の身体を乱暴に扱えないと分かっているからだろう。諦めが悪いことに『よしのん』は四糸乃を士道に飛びつかせてきて、容赦の無い取っ組み合いを仕掛けてきた。当然力づくで引き剥がすという乱暴な真似ができない以上、されるがままになるしかない。
しかしもしかするとこういう触れ合いこそが四糸乃の望むものなのかもしれない。大切にし過ぎているせいか基本的に頭を撫でたり抱きしめたりという触れ合いが多く、こんな風に犬猫のじゃれ合い染みた取っ組み合いなどしたことが無い。四糸乃が喜ぶ可能性があるならやってみるのも一興というものだろう。
と、士道は現実逃避気味にそんなことを考えていた。素っ裸で右腕の関節を極めてくる無表情の四糸乃という、わけの分からない姿が目に映るせいで。
脱衣ポーカー終了。
何かラタトスクがグールズみたいな書き方になってしまいましたが気にしない方向で。今の環境がどんなものかは知りませんが、果たしてデッキトップが確認できる程度のイカサマが役に立つのか……。
次回はエッチな話の予定です。たぶん琴里か七罪の。どんなプレイかは……まあその時のお楽しみというやつで。
更新停止期間の執筆状況の進捗はどれくらいの頻度で活動報告に載せるべきか
-
1ヵ月
-
2ヵ月
-
3ヵ月