※この作品はR-18です。

士道クリミナル   作:サイエンティスト

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 ※Mの方が喜びそうな展開あり。

 前回のアレとは違って注意書きが無くても大丈夫かと思いましたが、念のために付けておきます。今回は終始士道さん視点。





△四糸乃デュプリケイション

 

 

 

 

「お、おぉ……」

 

 思わず感嘆の声を零し、士道は食い入るように画面を凝視する。

 今士道が見ているのは『よしのん』がこちらに向けている携帯だ。その画面の中では四糸乃と七罪が濃厚な口付けを交わす非常に情熱的な映像が繰り広げられていた。二人の荒い吐息と悩ましい水音もしっかり記録されていて臨場感もばっちりだ。

 何よりも琴里と四糸乃の時のような半ば一方的で虐めに近い口付けではなく、お互いへの愛に溢れる口付けなのが素晴らしい。まあ若干七罪の表情がいろんな意味で危ないのが気にはなるが。

 

『どーう、士道くん? 小さな女の子二人があつーいベーゼを交してる光景は?』

「あ、ああ、そうだな。これは美九に見せられないのが本当に残念だな……」

 

 女の子が大好きで中でもやたらに七罪を気に入っている美九が、この素晴らしい光景を目にすることができないのは残酷としか言い様が無い。

 ただ実際に美九がこの光景を目にしたら鼻血を吹いて倒れそうな気がするので、そこを考えると見せられないのは幸いというべきかもしれない。

 

「……ところでよしのん、俺の携帯にその動画送ってくれるか?」

 

 とはいえ士道が見る分には全く問題ない。だからこそできることなら動画が手元に欲しかった。見ていると興奮するような癒されるような不思議な気持ちになれる光景であるが、何度でも見たい素晴らしい光景なのは確かだったから。

 

『もー、しょうがないなぁ――と見せかけて削除ぉー!』

「ああぁぁぁぁぁぁぁっ!? よ、よしのんお前、なんて事しやがる!?」

 

 しかしあろうことか『よしのん』はその動画を目の前で消去してしまう。即座に携帯を奪うも時すでに遅し。最早アルバムに動画は残っていなかった。

 怒りを込めた視線を向ければ、絶望に打ちひしがれる士道を嘲笑うように『よしのん』は不気味に笑っていた。

 

『ぬっふっふ。あの光景をもう一度見たいなら目の前で四糸乃と七罪ちゃんに実演してもらうしかないよー? よしのんの言ってる意味は分かるよねー?』

「ああ、分かってるよ! 要するにまた三人でヤろうって話だろ!?」

『そーそー。大体四糸乃も七罪ちゃんも三人でするのはオッケーなのに、何が悲しくて録画映像で楽しまなくちゃならないのさー。意地で守ってる一線なんか踏み越えて皆で乱れまくろうよー。きっと楽しいよー?』

「お前がそういうこと言いまくるから躊躇ってるってとこもあるんだぞ、よしのん……」

 

 ぬっと身を乗り出し、表情が無いのにあくどい笑顔に見える顔を鼻先にまで近づけてくる『よしのん』。

 もちろん楽しいだろうことは七罪と四糸乃、そして四糸乃と琴里を同時に頂いた経験から容易に察しが付く。しかしだからといって三人でしよう、などと言えるほど士道は穢れきっているわけではなかった。というかそこまで穢れたくは無かった。

 

「あ、あの、勝負の続きをしませんか?」

「おっと、そうだな。それじゃあ今度は俺が引く番か」

 

 さすがに四糸乃も七罪とディープなキスを繰り広げる光景を見られて恥ずかしいのか、若干頬を赤らめた状態で勝負の続きを促してくる。

 何にせよ『よしのん』のペースに乗せられるのはよろしくないため、さっさと勝負に戻って箱に手を突っ込む。『よしのん』が舌打ちしていたような気がするもののそれは無視だ。

 

「よし、これだ!」

 

 しばらく漁ってから紙を引き抜き、開いて内容の確認に移る。

 四糸乃が書いた命令なら間違いなく実行できると断言できるものの、今現在この箱の中身は一枚を除いて全て『よしのん』が書いた命令が入っている悪魔の箱。だからこそ士道はどんな命令が書いてあっても心穏やかに対処しようとしたのだが――

 

「悪い、これは無理だ」

 

 ――内容を確認した瞬間、即座に紙を破り捨てる。

 命令を拒否できるというたった一回の貴重な権利を使ってしまったものの、やむを得ないものだったので惜しくは無かった。何故ならそこに書かれていた命令は常軌を逸したものだったからだ。四糸乃を朝まで激しく犯せという、正気を疑う内容の。

 

『おーっと。士道くんがたった一回しか使えない命令を無視する権利を使っちゃったよー? 一体紙には何が書いてあったのかなー?』

「お前分かってて言ってるだろ、よしのん。さすがにこんなこと四糸乃にはできねぇよ」

 

 底無しの性欲を持つ壊れるほどに抱いても平気な琴里ならともかく、儚げで強く抱いたら壊れてしまいそうな四糸乃を同じ扱いで抱くことは絶対に無理だ。

 ちなみに破り捨てた紙の内容は見せていないものの、四糸乃はぽっと頬を染めて黙りこくっていた。この反応からすると大体命令の内容は察しが付いているらしい。

 

『四糸乃はそういうことをして欲しがってるんだけどなー……まあいいや、どうせもう士道くんは拒絶できないしね。よしのんが用意した命令はまだ六枚もあるんだよー? クックック……』

 

 不気味に笑う『よしのん』の姿に思わず震え上がってしまう士道。『よしのん』による命令の書かれた紙はまだ六枚もあるというのに、もうすでに命令を拒否できないという現状には恐怖と不安しか覚えられない。

 一応拒否できないこともないのだが拒否すればその時点で勝負には敗北、四糸乃への愛が浅かったという結果になってしまう。実際には四糸乃が抱いている愛情に比べれば浅いことは否定できないものの、だからこそこういった場面では愛の深さを証明するべきだろう。つまりよほどの無理難題でなければ命令に従わなければならない。

 

「くそっ、今度はこれだ!」

 

 先ほどよりも慎重に箱の中を漁り、一枚の紙を抜き取る。中身が見えるわけではないので漁ったのは気分的な問題だ。

 緊張と不安に押しつぶされそうになりながら紙を開き、命令の内容を目にした士道は――

 

「うっ……!」

 

 ――その難易度の高さに思わず眉を寄せた。

 とはいえ実行不可能というわけでもないし、下手に罪悪感を覚えるような行動を求められているわけでもない。そもそもこれは四糸乃には一切害が及ばない内容なのだ。そう、四糸乃には。

 ならばすでに拒否権を使ってしまった以上、元より選択肢は存在しなかった。この程度のことで勝負を投げ出すわけにはいかない。

 

「な、何が書いてあったんですか……?」

 

 余程苦渋に満ちた顔つきをしていたのか、心配そうに尋ねてくる四糸乃。反応から察する限り、思い当たる命令は幾つもあるらしい。

 いずれにせよこんな命令も達成できないようなら、『よしのん』が用意した悪魔の如き残虐な命令の数々に打ち勝てるわけもない。覚悟を決めた士道は紙をその辺に放ると、腰を上げて部屋の外へと向かった。

 

『頑張ってねー、士道くーん! ちゃんと全部持ってくるんだよー!』

 

 自分で命令を用意しただけあって、その行動だけで内容を察したのだろう。戦地に向かう士道を『よしのん』は激励の言葉を以って送り出してくれた。

 まあそんな戦場に放り込んだのも、他ならぬ『よしのん』自身なのだが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「琴里、いるか!?」

 

 どうか白い方でありますようにという願いを込めつつ、力強く扉を開け放つ。命令遂行のために一旦部屋を後にした士道が訪れたのは、可愛い妹である琴里の部屋であった。

 琴里はちゃんと部屋の中にいたものの、突然士道が扉を開け放ったことに心底驚いたらしい。読んでいた雑誌を取り落とし、目を丸くしてこちらを見つめていた。白いリボンではなく、黒いリボンに結われたツインテールを揺らしながら。

 

「くそっ! 黒い方か……!」

 

 最悪の結果に絶望を隠せず、思わずその場に崩れ落ちてしまう士道。

 別に黒い方が嫌いとかそういうわけではないのだが、琴里からすればノックも無しに部屋に入ってきた挙句、悪態を吐いて黒リボンの自分を否定されたようなものなのかもしれない。顔を上げれば頬を引きつらせて怒りを表す、司令官モードの琴里の姿がそこにあった。

 

「……ノックも無しに無断でレディの部屋に入ってきた挙句、一目見るなり悪態を吐くなんて私にケンカを売っているのかしらね? 親しき仲にも礼儀ありって言葉を知らないのかしら?」

「あ、わ、悪い……俺もちょっと戸惑っててな……」

 

 今回は完璧に自分に非があるため、素直に頭を下げておく。

 それに今回の事情を考えるに、琴里にはなるべく下手に出ておいた方が得策なのだ。まあ得策と言っても黒琴里の性格を考えるに、むしろ焼け石に水的な結果になりそうな気もするが。

 

「……琴里、実はお前に頼みたいことがあるんだ」

「ふぅん……いつになく真剣な目付きね。良いわ、言ってみなさい」

 

 士道がどれだけ真剣なのかを瞳から理解したらしく、琴里はベッドに座り直して話を聞く姿勢を取る。

 ちなみに琴里はすでにお風呂に入ったようで、ピンクのパジャマ姿である。お風呂から上がったばかりならリボンをつけていなかったはずなので、タイミングが悪かったとしか言いようが無い。

 何にせよ今為すべきなのは、四糸乃への愛を証明するために命令を遂行すること。そのためならどんな犠牲も払うことを改めて決意し、士道は口を開いた。

 

「……お前の着てるパジャマとブラと、パンツが欲しい」

「……は?」

 

 呆けたような顔をして首を傾げる琴里だが、士道の方は至って大真面目である。

 何せあの時引いた紙に記されていた命令は『琴里ちゃんが今着ている服を下着に至るまで全部持ってくること』というものだったのだから。

 

「……身体も寄越せって言わないのかしら?」

「いや、今はお前が着てるものだけで良いって。まあ寄越す代わりに朝まで付き合えって言うなら、今夜でなけりゃ条件は呑んでやるよ」

 

 蔑みの視線を向けてくる琴里に対し、最大限譲歩する士道。

 琴里の性格から考えるともし条件が激しく抱くことなら、今夜の方がきっと印象は良いだろう。ただ今夜は四糸乃の番だし、何より『よしのん』が士道の理性を溶かすような命令を用意していないとも限らない。

 

「……幾ら発情期の猿みたいなあなたでも、いつでも抱かせてくれる女がいるのに私の衣服を求めるなんてちょっとおかしいわね。まずは理由を説明しなさい。話はそれからよ」

 

 さすがにあまりにも突拍子も無い頼みに軽蔑よりも興味が勝ったのか、尻を蹴って追い返すという真似はせずに理由を尋ねてくる。

 話を聞いてくれるのなら少なくとも命令の遂行は可能だろう。問題は代償に何を求められるかということだ。

 

「実は今ちょっと四糸乃と勝負してんだよ。お互いに色々命令し合って命令を聞けなかった方が負けっていうルールのな」

「ああ、なるほどね。理解したわ。どうせよしのんが命令したんでしょう? 私が着ている服を持ってこい、って」

「ああ、そうだよ。察しが良くて助かるぜ」

 

 少ない言葉だけで完全に予想が付いたらしく、琴里は呆れた顔で肩を竦める。

 一瞬変な命令を出された士道への同情からの呆れだと思ったものの、どうやらそれは勘違いだったらしい。次の瞬間、呆れ顔は意地の悪さを湛えたサディスティックな笑みと化していた。

 

「……つまり私が協力しなければあなたの負けは確定、ってことね?」

「あー、本当に察しが良いよなお前は……」

 

 やはりそこに気が付いてしまったドSの司令官様に対し、今度は士道が呆れる番であった。

 そう、琴里の協力が無ければ士道は『よしのん』からの命令を達成できないのだ。当然そんなおいしい状況を見逃す五河司令ではない。絶対に何かしらの条件を突きつけてくるのは火を見るよりも明らかだった。

 これがもしも黒琴里ではなく白琴里だったなら、有無を言わさず力づくで裸に引ん剥いて衣服を奪っていく所なのだが。

 

「お褒めに預かり光栄よ。さて、どうするか悩む所ね。あなたか四糸乃かで言えば僅差であなたを応援したいところだし、協力するのもやぶさかではないけれど……」

「た、頼む、琴里。協力してくれ」

「……それが人にものを頼む態度と言葉遣い? もっとそれ相応の頼み方というものがあるでしょう?」

 

 ベッドに腰かけたまま足を組み、お気に入りの棒つきキャンディーを取り出し尊大な態度を取る琴里。包装を解いたそれを口に咥えるのかと思いきや、まるで指揮棒のように扱い自らの足元を指し示す。

 相手がドSの化身だからこそ、言葉がなくとも意味は分かる。土下座して丁寧にお願いしろと、無言で促しているのだということが。

 

「お、お願いします……協力してください、琴里、様……」

 

 悔しいが今の士道には従う他に選択肢は無く、唇を噛んで屈辱に堪えながら頭を下げる。

 せめてもの抵抗として額を床に付けるのだけは避けようとしたが、そんな抵抗はお見通しだったのだろう。後頭部に何かが乗った感触を覚えた直後、そのまま下へ下へと力が加わり強制的に額を床に擦り付けさせられた。

 床に頬を付ける形になりながらも視線を上に向けてみれば、そこには右足をこちらに伸ばし、愉悦の笑みを浮かべる琴里の姿。どうやらコイツはあろうことか士道の後頭部を足蹴にしているらしい。

 

「ふふっ。そうよ、そういう風に頼めば良いの。良く分かっているじゃない、士道?」

「ぐ……くぅ……!」

 

 そのまま更にぐりぐりと踏みつけられ、屈辱を必死に噛み殺す。

 ここで琴里のご機嫌を損ねれば協力は取り付けられない。それはつまり四糸乃との愛情勝負の敗北を意味する。実際の愛の大きさでは四糸乃に太刀打ちできない以上、せめてこういった場面では勝利しなければならない。そのためにはこの悔しさに耐え忍ぶしかないのだ。例え今すぐ起き上がって琴里に襲いかかり、ひたすら後ろから犯してやりたい気分になろうとも。

 

「――だけど、まだ足りないわね。もっと誠意を見せてもらわないと」

「……誠意?」

 

 後頭部から足の感触が消えたため、ゆっくりと顔を上げる。

 これ以上の誠意とは一体何なのか。そんな疑問を頭に浮かべながら琴里を見上げていると、やはり愉悦に満ちた笑みが返ってきた。そして何故か後頭部ではなく、眼前に琴里の素足が伸ばされる。

 

「ええ、誠意よ。跪いたまま、私の足の裏を舐めなさい。そうしたら協力してあげるわ」

「っ……!」

 

 あまりの屈辱に屈辱を飛び越え、最早怒りすら覚える士道。

 だがその怒りを根性と理性、そして四糸乃への愛で強引に押さえ込む。コイツがとんでもないサディストであることは今に始まったことではないし、この程度は予想できなかったわけでもないのだから。

 まあそれでも素足で頬をぺしぺしと叩いてくる琴里に対して、怒りを完全に払拭することはできなかったが。

 

「ふふっ。その反抗的な目付き、堪らないわ。屈辱に打ち震えるあなたの姿を見るのは大好きよ?」

「この……サディストめ……!」

「そう言うあなたも同属なんだから私の気持ちは理解できるはずでしょう。さあ、その屈辱の浮かんだ美しい瞳のまま、私の足をたっぷりと舐めなさい?」

「くぅ……!」

 

 足で頬を叩いたかと思えば、今度は足の指で唇をぐりぐりと苛めてくる。

 年端も行かない少女、それも義理の妹の足とキスさせられた上、舐めることになるとは。何だか怒りを通り越してただただ惨めな気持ちになりかけてくる士道だった。唯一の救いは琴里が風呂上りなので衛生的にはだいぶマシというところか。 

 

「ほら、舌を伸ばしてよーく味わって舐めなさい。言っておくけど、これはむしろご褒美なのよ? 女子中学生の足の裏を舐められるなら喜んで跪く奴は掃いて捨てるほどいるでしょうね?」

「くそっ! 後で覚えてろよ、琴里……!」

 

 覚悟と復讐を決めた士道は一つ毒づいてから、跪いたまま両手で琴里の右足を支える。このまま握りつぶしてやりたいところだがその気持ちは必死に抑えこみ、躊躇いがちに舌を伸ばしていく。少しずつ縮まっていく距離はやがてゼロとなり――

 

「んっ……! ふふっ、良く出来たわね。士道?」

 

 ――士道の舌先は琴里の右足、その土踏まずに触れていた。

 一瞬悩ましい吐息を零してから、妙に優しげな声をかけてくる琴里。しかし触れ合わせた程度でドSのコイツが満足するわけはない。士道は触れさせた舌先を撫でるように動かし、屈辱を噛み締めながら土踏まずを味わっていく。

 

「そう、そうよ士道。その調子で、ゆっくりと足の裏全体を舐めなさい……あっ……!」

 

 妙に震えた声に舌を走らせながら視線を向けてみれば、琴里は何やら若干淫靡な表情を浮かべていた。恐らくは士道が自分に跪き足の裏を舐めているという事実と感覚に感じているのだろう。さすが底無しの性欲を持つドSの司令官様である。

 

「あぁ……! 良い……良いわ、士道! 悔しさに私を睨みつけながらも、逆らえずに私の足を舐めるその健気な姿……興奮を抑えきれないわ!」

「本当にドSだな、お前……!」

 

 兄に足の裏を舐めさせて性的な快感を覚えているらしい妹に対し、舐める傍ら毒づくことしかできない士道。

 実の所、足の裏を舐めてやるのは思ったより不快な行為ではなかった。吐き気を催すような味わいがあるわけでもなければ、鼻をつく悪臭が漂っているわけでもない。むしろどこか癖になる味わいと、爽やかと言っても差し支えない香りを覚えている。

 それらを決して悪くない、むしろ心地良いと感じている自分。士道はそれが足を舐めさせられている現状よりも悔しかった。

 

「ああ、足の指の間もお願いするわ。せっかくだから一本ずつ指をしゃぶって綺麗にしてもらいたいわね?」

「よし、お前後で絶対俺のをしゃぶらせてやる……!」

 

 非常にご満悦な笑みを浮かべる琴里の姿に、近い内に絶対その口に男の象徴を突っ込んでやることを心に決める。

 性格の問題なのか未だ琴里には口や胸でしてもらったことは無いため、その時には泣いて許しを乞い始めるまで無理やりにするのも良いかも知れない。ただ陵辱紛いの激しい抱き方でも途中からノリノリだったため、むしろ喜びそうな気がしなくもない。

 

「ほら、無駄口を叩いてないで続けなさい。右足が終わったら左足もあるんだから、精々舌の動きに磨きをかけて私を退屈させないようにして欲しいわね?」

「くそっ! お前本当に後で覚えてろよ!?」

 

 頬を足先でぐりぐりされながら、こうなったら『よしのん』と相談して琴里を辱める方法を考え、まだ使っていなかった命令権を用いて実行することも視野に入れる士道であった。

 まあ幼女塗れの4Pを強制できる権利を狙っている『よしのん』が協力してくれるかどうかは、若干怪しい所があるのだが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「持ってきたぜ、よしのぉん……!」

「あっ、士道さん。おかえりなさい」

 

 よくもあんな命令を書いてくれたなという怨嗟の声を上げつつ部屋に帰還すると、最初に出迎えてくれたのは四糸乃の優しい微笑みであった。

 だいぶ屈辱に塗れた時間を過ごした士道であるが、この尊い笑顔を目にしただけですでに報われた気分だ。まあ勝負はまだまだ続くはずなので、救われたわけではないのが悲しい所である。

 

『おかえりー、士道くん。思ったよりもちょっと時間かかったねー? もしかして黒い方の琴里ちゃんだったー?』

「ああ。白い方だったなら無理やり引っぺがして持ってくることもできたんだけど、黒い方相手だとさすがにな……」

 

 屈辱と引き換えに手に入れた戦利品を一応確認してもらうため、四糸乃に手渡しつつ対面に座り直す。

 言動はともかく終始下手に出て素直に従ったおかげで、めでたく琴里から着ていた衣服を譲ってもらえた。一応これで命令は達成なのだが、実はショーツだけは直前まで琴里が身に着けていたものではないためある意味達成はできていない。

 まあ琴里も嫌がらせでショーツだけ変えたわけではないはずなので、特に言うことはなかった。士道に足を舐められてあれだけ興奮していたのだから、穿いていたショーツが濡れてしまったのは容易に想像がつく。ついでに脱ぐ時は部屋を追い出されたので、その時にショーツだけすり替えたのだろう。

 ちなみにすり替えに気が付いたのは興奮の度合いから判断して濡れているはずなのに、受け取ったショーツは濡れていなかったこと。そしてブラやパジャマには温もりが残っているのに、ショーツには温もりが残っていなかったこと。これら二つの証拠からである。

 

『あの琴里ちゃんがこんなおいしいチャンスを逃すわけは無いよねー? 士道くんは一体何と引き換えに服をもらってきたのー?』

「そうだな……プライドと引き換えにもらってきた」

『うわー、何か凄い疲れた顔してるなー……これは後で琴里ちゃんに内容を聞かないといけないね!』

 

 がぜん興味が出てきたと言うように両手をぶんぶん振り乱す『よしのん』。

 一瞬『よしのん』なら内容を聞いただけで士道と同じ予測に行き着くのではないかと危惧したものの、その直後に四糸乃が温もりや染みまで確認することなく衣服を返してきたのでバレても問題はなさそうである。

 

「えっと、確かに琴里さんの服だと思います。それじゃあ、今度は私の番ですね……?」

 

 命令の達成を確認した四糸乃は、自分の箱に右手を突っ込み中身を漁り始める。

 ぶっちゃけた話、もう士道が用意した命令には四糸乃が実行できそうにないことなど無かった。士道の命令なら七罪とディープなキスまでしてくる四糸乃だ。最早何なら実行できないのかが全く考え付かないほどである。

 つまりここからは『よしのん』が用意した悪意と欲望に満ちた命令を士道が実行できるかどうかという、ただそれだけを突き詰めた勝負だ。なお、微塵も勝てる気がしないのは相手が相手なので仕方ないのかもしれない。

 

『どれどれ、何が書いてあるのかな――って、こんなの楽勝じゃん。ねー、四糸乃?』

「うん。えっと……ど、どうぞ?」

 

 引いた紙の内容を確認した四糸乃は、全く躊躇い無く自らのスカートをたくし上げる。ちょっと頬は赤くなっているが、逆に言えばそれだけだ。かなりローライズで今にも大切な所が見えそうな青色のショーツが、可愛らしいおへそと一緒に晒されている。

 もちろん士道が書いた命令は『パンツを見せてくれ』であり、もちろん目が離せずに釘付けになったのは言うまでもない。

 

「……うん。まあ、四糸乃ならそれくらいは楽勝だよな。知ってた」

『どうせならパンツの下も見せちゃおうかー? まあ士道くんのためなら四糸乃にはそれも楽勝だけどねー』

「ぬ、脱いだ方が、良いですか……?」

「いや、それは……後でな?」

「は、はい……」

 

 言っておかないと『よしのん』に乗せられて本当に脱ぎ始めそうだったので、しっかり断っておく。後でと言ったのは今夜が四糸乃の番だからであって、魅力に飲まれて辛抱堪らなくなり今にも襲いかかりたいからではない。決して。

 

「よし、今度は俺の番だな……」

 

 とりあえず四糸乃にたくし上げるのを止めさせてから、箱の中に手を突っ込んで中を漁る。

 この時点で箱の中身は『よしのん』が書いたものが五枚、四糸乃が書いたものが一枚。四糸乃が書いたものは難易度が圧倒的に低いと断言できるので外しても、あと五枚も高難易度の命令が残っている。しかも拒否権はすでに発動済み。お先真っ暗だが逃げるわけにはいかない。

 

「――これだ!」

 

 覚悟を決めて紙を引き抜き、開いて中を確認する士道。そこに記されていた内容は――

 

「……ああ、うん。やっぱり四糸乃は四糸乃だよな」

 

 ――実に容易く達成できる、四糸乃が書いた命令であった。残り一枚の優しい命令を引いてしまったためにこの後には地獄しか待っていないと分かってはいても、あまりにも欲の無い四糸乃に思わずほっこりしてしまう。

 

「あっ……」

 

 そして穏やかな心地を感じたまま、四糸乃の身体を引き寄せぎゅっと抱きしめる。

 腕の中で小さく驚きの声を零していた四糸乃だが、命令として書いたということは元々こうして欲しかったのだろう。すぐに身体から余計な力を抜くと、しなだれかかるように身を預けてきた。

 

「愛してるぞ、四糸乃。愛してる」

 

 その状態で耳元で愛を囁き、おまけに額に口付けて優しく髪を梳いてあげる。

 紙に書き記されていたのは『ぎゅっと抱きしめて、愛してるって言って欲しいです』という、わりと頻繁にやっている珍しくも無いことであった。まあそれをやっていた状況は大抵ベッドの中なので、もしかしたらそれ以外の状況でこんな風に愛を囁いて欲しかったのかもしれない。

 

「はい……私も、愛してます。士道さん……」

 

 同じように耳元に唇を寄せ、うっとりとした心地で愛の囁きを返してくる四糸乃。キスもしてくれたが、位置関係的に額ではなく頬への口付けであった。まあどこであろうとその愛らしさに変わりは無い。

 故に心に溢れてくる愛しさの赴くまま、四糸乃を抱きしめながら頭を撫でて温もりと感触に浸る。幸い四糸乃も士道と同じくこの瞬間を楽しんでいるようで、控えめとはいえねだるように手の平に頭を擦り付けてきた。

 その様子が実に可愛らしくて、このまま押し倒したくなってくる士道であった。

 

「よ、よし! そろそろ続きを始めようぜ、四糸乃!」

「は、はい。そう、ですね……」

 

 その欲望に負けない内に、腕の中から四糸乃を解放して距離を取る。

 もっと抱きしめていて欲しかったのか、四糸乃は素直に頷きながらもどこか残念そうに俯いてしまう。その姿がまたいじらしくてもう一度抱きしめたくなってくるものの、士道は何とかその気持ちを抑え込んだ。愛を証明するために愛を抑え込まなければいけないとは実に皮肉な話である。

 

『どれどれ、今度はどんな命令かな――って、これも四糸乃には楽勝過ぎて物足りないなー。まーいっか、やっちゃえ四糸乃!』

 

 紙を一枚引き、折り開いて内容を目にした瞬間真っ赤になる四糸乃。そして容赦なく指示を飛ばす『よしのん』。

 この反応からするとどうやら四糸乃はアレを引いたらしい。まあ真っ赤になっていても躊躇いは見えないので、この命令も余裕なら士道の用意した命令は本当に全てクリアできるはずだ。

 

「えっと……それじゃあ、失礼しますね……」

「あー、ちょっと待った四糸乃。それは時間がかかるっていうか、俺が時間をかけたいっていうか……とにかく、やるのは今じゃなくて大丈夫だ」

 

 真っ赤な顔で四つん這いになり、下腹部に右手を伸ばしてくる四糸乃を直前で制する。いざ命令を実行しようとしていた四糸乃は止められたせいで首を傾げて見上げてきた。

 士道が用意した命令は簡潔に言えば『奉仕してくれ』という内容である。それを今実行されたら頑張って抑えている欲望が弾け、間違いなく二、三時間くらいは時間を使うことになるだろう。さすがに勝負の真っ最中にそれは無粋すぎる。

 

「えっ? それで、良いんですか?」

「ああ。四糸乃なら躊躇い無くやってくれるって分かってるしな。ていうか俺が止めなかったら確実に今やってたよな?」

『そりゃあもちろんだよー。伊達にしょっちゅう士道くんにご奉仕してるわけじゃないしね。あんまり四糸乃を舐めないで欲しいなー、士道くん。あ、物理的に舐めるなら幾らでもやって構わないけどねー』

「ああ、はいはい。それじゃあ今度は俺の番だな」

 

 『よしのん』の軽口は聞き流し、さっさと箱から紙を引き抜く士道。躊躇いなど欠片も無いのは、すでに箱の中には『よしのん』の書いた命令しか残っていないからだ。最早備えるだけ時間の無駄である。

 

「よし、今度は一体何が――っ!?」

 

 だが命令の内容に目を通した時、士道は決意を固めていなかったことを後悔した。何故ならそこには四糸乃を朝まで激しく犯すことと同等か、それ以上に辛い仕打ちが書かれていたから。

 

『おおーっと? どうしたのかなー、士道くーん? まさかできない、なーんて言わないよねー?』

「士道、さん……?」

「くっ……!」

 

 紙を破り捨てたい気持ちを必死に抑えこむ士道に対し、ここぞとばかりに煽る『よしのん』。そして四糸乃は士道が震える手で握り締める紙を横から覗き込み、命令を理解してどこか緊張と怯えの混じった表情を浮かべていた。

 

『あー、これかー。これは士道くんには難しいだろうねー。さっき拒否してなければ何とかなったかもしれなくもないのに、運が悪いねー。あっはっは』

「士道さん……本当に、できないんですか?」

「四糸乃……だって、これは……」

 

 命令の内容を理解していながら、悲しそうな目で見上げてくる四糸乃。本当は実行して欲しいと思っているのが、その様子からはっきりと察することができる。

 だが士道が今引いた命令はあろうことか痛みを与えるものだ。それも身体を交え愛し合うことではないため、快感など無くただ純粋に痛いだけ。そんな行動をよりにもよって痛いのが嫌いな四糸乃に行わなければいけない。これなら多少は愛を感じさせてあげられる分、夜が明けるまで犯す方が幾分マシであった。

 

「痛いのは嫌いですけど、士道さんのためなら、我慢できます……だから、私を愛してるなら……お願いします、士道さん」

「っ、くぅ……!」

 

 そっと二の腕に触れ、求めてくる四糸乃。

 本人が望んでいるならやってあげるのが愛というものだろう。だが求めながらも痛みに怯えて微かに震えている四糸乃に対し、本当にこの命令を実行するべきなのか。むしろ実行しないのが愛というものではないだろうか。

 だが士道は元々四糸乃を愛していて、更には大切に扱いすぎている。『よしのん』に言わせれば過保護とも取れるくらいに。そして四糸乃自身がその扱いから脱したいと思っているのはすでに明らか。『よしのん』もそのために協力をしている辺り、恐らくこの命令は実行した方が四糸乃にも士道にもプラスになるのだろう。色々邪な企みを練ったり四糸乃に怪しげなことをさせたりする『よしのん』だが、誰よりも四糸乃のことを考えているのはわかっているのだから。

 つまりここで為すべきことは一つ。例えどれだけ良心が痛もうとも、四糸乃のために心を鬼にして従うこと。

 

「――ごめんな! 四糸乃っ!」

「っ、うっ……!」

 

 覚悟を決めた士道は良心の呵責に耐えるために握りこんでいた拳を振り上げ、それを――四糸乃の頭の天辺目掛けて振り下ろした。絶対に弱くは無い、それなりの勢いで。

 当然いきなり頭に拳骨を落された四糸乃は小さな苦痛の声を零し、閉じた目蓋の端にうっすらと涙を滲ませていた。

 

「大丈夫か、四糸乃!? ごめんな! 本当にごめんな!? 痛かったよな!?」

 

 そんな痛々しい姿を目にして、士道は即座に四糸乃の身体を抱きしめて頭を撫で擦ってあげる。

 四糸乃もかなり痛そうな反応を示していたが、士道の方も良心の呵責によって張り裂けそうなほどに胸が痛んでいた。それでもやるしかなかったのだ。何故なら士道が引いた紙には『四糸乃に拳骨一発(あんまり弱いともう一回)』と書かれていたのだから。

 

「だ、大丈夫、です……痛かったですけど、嬉しいです……士道さんに、叩かれちゃいました……」

 

 自分でも痛そうに頭を擦っている四糸乃であったが、声音にはどこか幸せそうな気持ちが含まれていた。

 士道に大切に扱われ過保護にされ過ぎている四糸乃からすると、今の拳骨は遠慮の無い関係への大きな一歩に思えるのだろう。そうでなければMでもない四糸乃が痛みで涙目になりながらも幸せそうに笑っている理由が説明できない。

 

『おー、まさか本当にやるとは思わなかったよー。てっきり降参すると思ってたんだけどなー』

「身を切る思いでやったんだぞ、よしのん……頼むからもう二度とあんなことやらせないでくれ……」

 

 幾ら四糸乃のためとはいえ士道には無理だと思っていたのか、『よしのん』が感心したような声を零す。

 もしも四糸乃が今よりも深い関係になるのを望んでいると『よしのん』から聞いていなければ、士道は間違いなくこの命令を達成できなかっただろう。まあ元はといえばそれを聞いていたからこそこんな勝負を吹っかけたのだが。

 

『んー、それは今後の士道くん次第かなー? さあ四糸乃、今度は四糸乃の番だよ』

「う、うん。それじゃあ、引きますね?」

 

 四糸乃の意識がある状態なせいか詳しいことは語らず、勝負を続けさせる『よしのん』。

 何にせよ今は士道も勝負に集中するべき時だと理解していた。すでに四糸乃が書き記した命令は無く、残っているのは『よしのん』が書き記した命令が四枚。備えても無駄だがだからといって投げやりになるわけにはいかない。

 

『さてさて、今度はどんな命令かな――って、これまーたよしのんのと被っちゃってるね。まあいっか。四糸乃、さっくりやっちゃいなよ』

 

 紙を一枚引き抜き四糸乃が内容を確認した所、『よしのん』は極めて救いのある言葉を口にした。『よしのん』と被っているということはつまり、士道が書き記したものと同じ命令を『よしのん』も用意したということだろう。しかも『また』ということは被っている命令が二つあるということ。

 元々士道は難易度の高い命令は用意していないので、間違いなくそれは士道自身にも実行可能なもの。そして男に下す命令ではないものを除外すれば、自然とその答えは予想できた。

 

「う、うん……士道さん、失礼します……」

 

 予想通り、四糸乃は正面から士道に身体を寄せてきた。胸にしな垂れかかる形で見上げてくる姿があまりにも愛らしく、思わずその背中に手を回して抱きしめてしまう。

 

「んっ……ちゅ……っ……」

 

 深い温もりと癖になる柔らかさを感じながら、始まるのは四糸乃による愛に満ちた深い口付け。唇の隙間から小さな舌先がおずおずと潜り込み、指を絡めて手を繋ぐように触れ合い絡み合う。

 四糸乃が引いた命令は極めて単純。『ディープキスしてくれ』という、何の変哲も無い愛の触れ合いだ。七罪とのキスを命令として用意したのは良かったのだが、それだと微妙に寂しかったので自分用も用意したというわけである。

 

「ぁ……ん、く……ふ、ぅ……」

 

 命令に従い、精一杯に深い口付けを行っている四糸乃。唾液も舌も満遍なく用いて、士道が望むディープな口付けを演出してくれている。

 色々あったせいで欲望が爆発しそうなので、士道も本当はこのキスは後に回してもらおうかと考えていた。だが士道はついさっきドSの司令官様の足の裏を舐めさせられ、あまつさえその指の一本一本までをもしゃぶらされたのだ。この場に限っては欲望を満たす行為ではなく、口直し的な意味合いでの癒しに近かった。

 

「ふぅ……ありがとな、四糸乃。もう十分だ」

「ふぁ……は、はい。分かりました……」

 

 屈辱に傷ついた心を存分に癒してもらい、抱いた四糸乃の体を優しく元の位置へと戻す士道。

 深い口付けにより理性は崩壊間近であり、上気した頬でどこか夢心地の表情を見せる四糸乃はそれを後押しするくらい悩ましかったが、何とか押し倒すことなく理性を保っていた。たぶん傷ついた心が癒されたことで得られたある種の満足感が歯止めをしてくれているのだろう。

 

『士道くん士道くん、実はよしのんからここで一つお知らせがあるんだ』

「ん、どうしたよしのん?」

 

 今度は士道の番なので箱に手を伸ばそうとした所、唐突に『よしのん』がそんなことをのたまう。手を引っ込めて話を聞く姿勢を取ると、『よしのん』は箱をペシペシと軽く叩きながら続けた。

 

『この箱の中には後四枚、よしのんが書いた命令が入ってるわけなんだけど……実はもう内容被っちゃってるんだよねー……』

「ああ、分かってるよ。どうせお前もディープキスしろとか書いたんだろ?」

『実はそれだけじゃないんだなー。士道くん、ルール説明の時に言ってなかったよね? 同じ命令を複数書くのはルール違反だ、なんて』

「……おい。よしのん、まさかお前――」

 

 最悪な展開を予想した士道は、危機感に突き動かされるまま箱を手に取り逆さにして中身を全てぶちまける。当然ながら中に入っていたのは折りたたまれた紙が四枚。すぐにそれらを全て開き内容を確認して――

 

「くそっ! やられた!」

 

 ――四糸乃の前だというのに、思わず悪態を吐いてしまった。何故なら四枚中の一枚がついさっきやった『四糸乃への拳骨』と一言一句同じ内容だったからだ。恐らく何が何でも四糸乃に遠慮の無い一撃を入れさせるつもりだったのだろう。

 だがそれだけなら士道も悪態を吐くつもりはなかった。残り三枚中の一枚はやはり『ディープキス』だったものの、これは何の問題も無い。残り二枚の内の一枚は『四糸乃の胸を揉む』でこれも被っていたがやはり問題は無い。

 問題は最後の一枚。そこには士道が拒否した『四糸乃を朝まで激しく犯す』という、存在の許せない命令がやはり一言一句同じ内容で書き記されていた。

 

『よしのんは優しいからね。士道くんがすでに実行したものと、士道くんの命令と被っちゃったものはもうやらなくて良いよ。まーその代わり、士道くんが拒否したものだけが残るんだけどね。くっくっく……』

「くっ……!」

 

 不気味に笑う『よしのん』の姿に、琴里の足を舐めた時に勝るとも劣らない屈辱を覚えてしまう。

 とはいえ今回は怒りではなく敗北感によるものだ。自分が仕掛けた勝負なのに何故か終始『よしのん』の掌の上だったことに対しての。

 

「拒否できるのは、一回までですよね……?」

『そうだよー、四糸乃。だから士道くんに残された道は二つだけ。四糸乃を朝まで激しく犯して四糸乃への愛を証明するか、降参して四糸乃への愛は大したことないものだって証明しちゃうか。士道くんはどっちを選ぶんだろうねー?』

「士道さん……」

 

 士道にじっと窺うような目を向け、答えを待っている四糸乃。その瞳に浮かんでいるのはある種の期待。きっと過保護に扱われていると感じている四糸乃からすれば、朝まで激しく犯されるのは遠慮の無い関係への大幅な前進と取れるに違いない。そうでなければ痛みに涙が滲むほどの拳骨を受けて幸せそうに笑うことなどできるわけがない。

 つまりここでは素直に命令を実行することが、四糸乃のためになるのだろう。そもそも一応は四糸乃のことを一番に考えている『よしのん』が伊達や酔狂でこんな命令を書いたとは思えない。やはり四糸乃のためを思って、そして自分も楽しむために書いたに違いない。

 非常に気が進まないし大いに罪悪感を覚えて実行することには無茶苦茶躊躇いがあるが、元はといえば四糸乃を大切に扱いすぎて過保護になっていた士道が原因と言える。自分に未だ壁があると感じさせてしまったその罪を、いい加減清算するべきなのかもしれない。

 

「……よしのん!」

『んー? 何かな、士道くん。大人しく負けを認めちゃうー?』

「朝まで激しくするっていっても、傷が残るようなことはしなくても良いんだよな?」

 

 念のため、士道はそれを尋ねておく。

 琴里に対して激しくする時は一切の加減無く、傷が残ることすらお構い無しにやっているが、それは琴里に肉体的にも精神的にも平気な事情(底無しの性欲とM気質)や能力(再生能力)があるからだ。それらを持たない四糸乃相手に、琴里と同じ激しさで襲い掛かることはさすがにできない。

 だからこそ一応尋ねてみたのだが、やはり『よしのん』もそこは理解しているらしい。あっさりと士道の言葉に頷いた。

 

『そうだねー。だけど優しくしちゃ駄目だよー? ちゃーんと犯すように乱暴に、士道くんの溢れんばかりの欲望を全部四糸乃に叩き込んで、四糸乃から溢れさせるくらいじゃないと認めないからねー?』

「それで四糸乃は大丈夫、なんだよな?」

『士道くんが思ってるよりも四糸乃は丈夫だし、覚悟だってあるんだよー。あとは士道くんの覚悟だけだね』

「……本当に良いんだな、四糸乃?」

「は、はい……覚悟は、できてます……」

 

 頬を染めながらも、瞳に確かな覚悟を湛えて頷く四糸乃。覚悟ができているのなら何だかんだ理由を付けて避けるのはもう無粋なだけだろう。

 しかしそれでも相手は四糸乃。故に士道は最後の確認も済ませておくことにした。

 

「本当に朝までやるぞ? 休ませて欲しいとか、止めて欲しいって言っても絶対聞かないぞ? それでも良いのか?」

「……はい。士道さんに、乱暴にされたいです……優しくされるだけじゃ、壁があるように感じますから……」

 

 そして返ってきたのは、聞き様によってはM気質があるとも取れる答え。

 だが『よしのん』によって四糸乃の心の内を語られた士道には、そんな気など更々無いと分かっていた。四糸乃は過保護に扱われている現状から脱し、真に士道と深い関係になることを望んでいるだけなのだから。

 どこか寂しそうに答えた四糸乃の表情に、士道もついに覚悟を決めた。

 

「……分かった。今更嫌だって言っても、遅いからな?」

「あっ……」

『おおーっ! 士道くんったら大胆!』

 

 四糸乃を乱暴にベッドへ押し倒し、衣服を破るような形で胸元を曝け出させる。そうして露になった下着を強引に捲り上げ、真っ白な膨らみを露出させる。

 若干恥ずかしそうに身を捩る四糸乃だが、士道はその右腕を掴んで悶えることすらできないようにした。今の士道は本能に支配された獣のように四糸乃を激しく犯そうとしているのだ。そこに優しさは欠片も無い。

 

「士道、さん……嫌というわけじゃないですけど、一つだけ……お願いを聞いてくれますか?」

「……何だ?」

「最初は、キスからでお願いします……」

「……ああ、最初だけだからな?」

 

 だがまあ、相手は愛と優しさの女神である四糸乃。その溢れ出る愛と優しさにいまいち獣になりきれない自分を感じながらも、士道は努めて激しく四糸乃を抱くのだった。琴里を相手にした時とは比べるべくも無いが、それは確かに激しい犯すような情事であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぅっ、もう朝か……」

 

 カーテンの隙間から差し込んでくるうっすらとした光を一瞥し、士道はベッドへと横になる。

 隣を見れば、そこには物言わぬ死体のように身体を投げ出しぴくりとも動かない四糸乃の姿。酷く心配になる姿だが若干呼吸が荒いことと、一糸纏わぬ身体に珠の汗を浮かべていることを除けば何の問題も無い。

 

「てっきり罪悪感で胸が痛むかと思ったけど、何かこう……妙な達成感があるな」

 

 昨夜、というかついさっきまで士道は本当に四糸乃を激しく犯していた。体勢を変えたりする時にいちいち許可は求めず、必要以上に四糸乃の身体を気遣うことも無く。

 今では四糸乃や七罪相手に欲望を完璧に満たす事は難しかったのだが、おかげで今回は琴里相手に激しく燃え上がった時のような心地良い疲労感と満足感を得られた。尤も妙な達成感を得ているのは気絶するように眠っている四糸乃が、疲労困憊の寝顔を晒しながらも満足気な微笑みを浮かべているからである。

 

「……これで良かったんだろ、よしのん?」

『オッケー! 四糸乃も凄く満足してるし、今回はよしのんから言うことは何も無いね! 士道くんも思ったよりも楽しめたんじゃない?』

「ま、まあ、それなりにな……」

 

 何気なく話しかけた所、四糸乃が目を開けて(ただし光は無い)サムズアップを返してくる。

 天使のような寝顔が一瞬で無表情に凍りつくのはなかなかに不気味な光景であるが、この光景も初めてでは無いのですでに士道も慣れを感じていた。返事に多少詰まったのは激しく四糸乃を犯したというのに、実際楽しめていた自分がいたからだ。琴里を相手にする時ほどではないとはいえ、激しく乱暴に抱いて楽しさを感じるとは士道もなかなかにひん曲がっていたらしい。

 

『これからもこの調子で頼むよ、士道くん。四糸乃は士道くんと七罪ちゃんみたいな関係になりたいんだからね?』

「事あるごとに変な所触られたりしたい……って意味じゃないよな、やっぱり。まあ、四糸乃のために努力するよ」

 

 今回やったことは拳骨したり犯したりと褒められたものではないが、四糸乃の満足気な寝顔を見れば間違いでなかったことは分かる。四糸乃だけでなく、士道も前よりお互いに距離が近くなった気分だった。まあ距離が遠かったのは主に四糸乃を過保護に扱っていた士道のせいなのだが。

 

「ああ、そうだ。よしのん、実はお前にちょっと頼みがあるんだ」

『えーっ、士道くんったらまだヤリ足りないのー? しょうがないなー、じゃあよしのんがスッキリさせてあげるよー』

「いや、違うから。それに四糸乃の身体は疲れてるんだし、これ以上負担かけるのは止めて大人しくしてろって」

 

 シーツの下にもぞもぞと潜り込み、士道の下半身を目指す四糸乃の身体を引きずり戻す。

 最後の方では最早意識があるのか無いのか判別し辛いほどに疲労困憊で、終わるなり糸が切れたように眠り始めた四糸乃だ。目が覚めた時には間違いなく筋肉痛と疲労で動けないだろう。それなのに『よしのん』は四糸乃の身体を動かしているあたり、無理をさせているのは確実である。

 なので士道はやたらに四糸乃を動かしたがる『よしのん』を尻目に、その身体をしっかりと横にならせた。ついでに風邪を引くといけないので、身体や顔に浮かぶ汗もティッシュで拭っていく。

 

『じゃあ頼みってなにー? よしのんに頼むならエロい頼みだと思ったんだけどなー?』

「……実はな、琴里が着てる服をもらう為に俺は無茶苦茶屈辱的なことをやらされたんだ。跪いてあいつの足の裏を舐めさせられる、っていう死にたくなるようなことをな」

『うわー、さすがは琴里ちゃん。容赦ないねー。士道くん悔しかったー?』

「そりゃあ悔しかったぜ。近い内に絶対復讐を誓うくらいにはな」

 

 まあ何が一番悔しいかというと、ドSの司令官様に足の裏を舐めることを強要されているのに、愛しい少女の肌を舐めている事実に胸を高鳴らせてしまう自分自身である。とはいえこれは言う必要が無いので士道は口にしなかった。

 

『あ、もしかして復讐の内容をよしのんにも考えて欲しいってことー?』

「ああ。最初は逆にあいつにも色々舐めさせようかと思ったけど、それだけじゃ気が治まらなくなっちまったんだよ。だからあいつも忘れてるかもしれない何でも一つ命令できる権利を使うつもりだ。お前は納得してくれないかもしれないけどな」

 

 以前その権利を持っていることを口にした所、『よしのん』はその権利を力づくで奪おうと意識の無い四糸乃の身体を用いて関節技を繰り出してきた。

 もちろん『よしのん』にその権利を渡してしまえば、七罪と四糸乃のロリっ子3Pに琴里を強制参加させて4Pにすることは目に見えている。3Pだって癖になってしまいそうなので避けているのに、そんなことになれば確実に堕ちてしまう。だから権利は決して渡せない。

 

『んー……よしのん的にはロリっ子三人とベッドの上でパーティを開くのに使って欲しい所だけど、士道くんは今回四糸乃のために頑張ってくれたからね。お礼と言っちゃあ何だけど協力してあげるよ』

「お、良いのか? ありがとな、よしのん。正直助かる。何とかしてあいつに俺が味わった屈辱を味わわせてやりたかったんだ……」

 

 思いのほか素直に協力を申し出てくれる『よしのん』。コミカルな見た目に反して実は琴里に匹敵するほど腹黒い『よしのん』が協力してくれるなら百人力である。やはり罪悪感を堪えて命令を実行したのは間違いではなかったらしい。

 

『士道くんったら執念深いなー。琴里ちゃんの足を舐めるのそんなに嫌だったのー?』

「舐めること自体はそんなでも無いけどな。ただアイツの態度が腹立たしくてさ……」

『まー琴里ちゃんはドのつくSだからねー。あ、じゃあ口直しに四糸乃の足の裏舐めて良いよー?』

 

 『よしのん』がそう口にすると共に、四糸乃の身体がこちらを向き素足が伸びてくる。シーツを蹴飛ばす形になったせいか、それとも身体を隠させる気が微塵も無いのか、四糸乃の身体の正面は余す所無く晒された状態だ。おまけに当人の瞳に光が無く表情も無いのでかなり背徳的な絵面である。具体的には催眠や洗脳という単語を思い浮かべるくらいには。

 

「四糸乃の足か……よし、じゃあ少しだけ」

 

 足の指をわきわきと動かし誘う、無表情かつ素っ裸の四糸乃の姿に抗えず、味見程度に舐めることを決める士道。一応口直しに関しては勝負の最中の口付けや情事の最中に四糸乃の身体を舐め回して行っていたのだが、それはそれでこれはこれだ。

 

『うひゃあっ! やーん、士道くんったらテクニシャン!』

 

 ぺろりと足の裏をひと舐めした途端、『よしのん』が嬌声を上げて身を捩る。

 一晩中激しく犯したせいで足の裏まで汗の味を感じたものの、四糸乃自身は眠っているせいか全くの無反応であった。もし起きていたならきっと恥ずかしがってくれただろうに。

 

「……何か、アレだな。全然悔しくも何ともないな。むしろ普通に嬉しい気がするぞ」

 

 そして四糸乃の足の裏を舐めた感想は、琴里の時とは正反対。屈辱など欠片も感じず、ただ四糸乃の肌を味わっている喜びが胸の内に沸いてくる。まあ相手が相手なのである程度予想はしていたのだが。

 

『そりゃー四糸乃だからねー。まー今は四糸乃が寝てるから何の反応も無いけど、起きてたら絶対士道くんは喜んで舐め回すくらいに良い反応をしてくれると思うよー?』

「……後でちょっと試してみるか。七罪にやるのも良さそうだな」

『そうだねー。七罪ちゃんなんかかなり良い反応してくれると思うよー?』

 

 たぶん反応で言えば四糸乃より七罪の方が楽しめるはずだ。最近の七罪は以前ほど自虐やネガティブに走らなくなったが、さすがに足の裏を舐めようとすれば確実に慌てふためき自虐に走って止めさせようとするだろう。自分の足の裏は汚いから食中毒を起こすとか何とか言って。

 士道としては七罪のああいった反応も可愛くて好きなので、是非ともやってやりたい気分である。

 

「まあそれは置いといて今は琴里の話をしたいとこなんだけど……お前は大丈夫なのか?」

『うーん……このまま士道くんとあまーい語らいをしつつ、琴里ちゃんを貶める相談をするのもやぶさかじゃないんだけど、さすがによしのんもそろそろ眠いんだよねー……』

 

 そう言って眠たげにボタンの眼帯を擦ってみせる『よしのん』。一見平気そうに見えるが四糸乃とは思考と記憶以外はほぼ全て共有しているはずなので、疲労や眠気を感じていても不思議ではない。

 

「ああ、もう早朝だもんな。それじゃあ話は後にして、今は少しでもゆっくり休もうぜ」

『そうだねー。それじゃあ士道くん、おやすみー』

「ああ、おやすみ。よしのん」

 

 士道に軽く口付けると、四糸乃の身体はそのままぱたりと横になる。顔を覗き見ればそこには凍りついたような無表情ではなく、いつも通りの可愛らしい寝顔が広がっていた。疲労困憊という様子でありながらも、極めて満足気な寝顔が。

 何だかんだで昨夜はだいぶ酷い真似をした気もするが、結果的にはこれでよかったに違いない。何故なら士道自身、以前よりも四糸乃と距離が近くなったように感じられたから。少なくとももう過保護だとは誰にも言わせない。

 

「まだまだ躊躇ったり戸惑ったりするだろうけど、これからはお前が望む関係になるよう頑張るからな、四糸乃」

 

 自らも隣へ横になり、気持ちを口にして四糸乃の身体を抱きしめる。小さくて華奢だが、壊れやすいわけではない愛しい少女の身体を。

 自己申告とはいえ七罪にはこれ以上無いほどの幸せを与えられた以上、次に考えるべきなのは四糸乃のこと。そして四糸乃は士道と遠慮の無い関係になることを望んでいる。ならば士道がすべきなのはそのために精一杯努力することだ。

 例え戸惑いや躊躇いを覚え、罪悪感に苛まれることになろうとも、四糸乃の幸せのために精一杯頑張ろう。士道は改めてそう心に誓い、ゆっくりと目蓋を閉じて眠りに落ちていった。

 どうやって琴里に痛い目を見せるかを、意識を失うその瞬間まで考えながら。

 

 

 

 





 笑わせるなよ、甘ったれども! 真に愛するなら壊せぇ!

 などという主君の遺命をエルボー染みた平手で叩き込む元赤騎士の言葉はさておき、愛情勝負はこれにて終了。四糸乃にはまだ実行していない命令が何枚かありましたが実行できないわけがないので結果的には引き分けで終わりました。
 ちなみに琴里の足の裏を舐めるシーンに関して、書いているときにちょっと気になったので以前ツイッターでアンケートを出してみた所、およそ八割の方々が喜んで琴里の足の裏を舐めるそうです。Mの紳士が随分多いなぁ……まあ私はSですが舐めますけどね。


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