引き続き非エロ話です。
自分の手を引く普段より大きな四糸乃の手にドキドキしながら、有名な玩具屋へと辿り着いた士道(七罪の姿)。そろそろ七罪と定時連絡をするべきなので、目的の玩具のコーナーが見つかったあたりでトイレへ向かう振りを装いその場を離れる。
一応携帯も外装は七罪の携帯と同じに変えてもらったので、四糸乃の傍で電話しても大丈夫と言えば大丈夫だ。とはいえずっと七罪として振舞っているのはなかなか辛いので、本人に電話する時くらいはいつもの口調で喋りたかったのである。
「もしもし、七罪? 今そっちはどんな状況だ?」
『……ランジェリーショップで下着選んでる』
「お前早速変な所にいるな。映画はどうしたんだよ?」
当初の予定では、美九と七罪は一緒に映画を観に行く予定であった。にも拘わらずいきなりの予定変更で謎のランジェリーショップである。一体どういう経緯でそこに向かうことになったのか。
『分かんない。後で行くかもしれないけど、この調子だとここと似たような店回るかもだから注意しといて』
「あ、ああ。それでこっちはちょっと玩具屋に来てるんだが……まあ、そことはだいぶ距離があるし今は大丈夫そうだな」
『玩具屋……?』
やはり七罪としても疑問に思う場所なのか、携帯の向こうで首を傾げている雰囲気が伝わってくる。
行った場所やその経緯、四糸乃とどんな話をしたかはもちろん説明する予定だ。しかしあまり長く四糸乃を待たせて不審に思われるわけにもいかないので、今は最低限場所を教える程度で済ませるしかなかった。
「……念のため言っとくけどエロい玩具の事じゃないからな?」
『わ、分かってるわよ、そんなこと……ところでさ、士道。話変わるんだけど、あんた美九に夜這いされたら襲わない自信ある? めっちゃエッチな下着姿で、こう、雌豹みたいなポーズで」
「…………………………」
何やらとんでもない事を尋ねてくる七罪。謎すぎる質問に理由を尋ねようと思った士道だが、その前に頭の中を卑猥な妄想が駆け巡り言葉が出なくなってしまう。
美九はちょっと子供っぽい所があるものの、そのスタイルは抜群である。おそらく七罪お姉さんにも引けを取らないレベルだ。そんな美九がエッチな下着姿で、雌豹の如きポーズを取って迫ってくる。現在失われている反応すべきモノが今ここにあれば、間違いなくギンギンに反応していた。
『……あの、ちょっと? もしもし? 聞こえてるわよね? もしもし?』
「……そっちも頑張れよ、七罪。じゃあまたな」
『無視すんな! 何よ、やっぱ巨乳が良いわけ!? どうせ私は寸胴――』
ちょっと素直に答えることができず、士道は何も聞かなかった振りをして電話を切った。何やら七罪が騒いでいたようだが、きっと美九にセクハラでもされているに違いない。
そんなわけで士道は可哀そうな七罪に対して適当に合掌してから、四糸乃の元へと戻った。
「四糸乃、どう? 何か良いものあった?」
「あ、はい。これなんかどうでしょうか?」
「あー、これ見たことあるわ」
色々と悪戯グッズを物色していたらしい四糸乃は、見本品らしいその内の一つをこちらに差し出してきた。板ガムのパッケージと、その中から一枚だけ飛び出たガムという悪戯する気満々の玩具を。
「こうやってガムを引き抜こうとすると――うおああぁぁぁぁぁぁっ!?」
せっかくなので乗ってあげようとした士道だが、予想外の悪戯にわりと本気の情けない悲鳴を上げてしまう。
ガムを引き抜こうとしたらネズミ捕りのように指をパチンと挟まれる。そんな想像をしていたというのに、あろうことかガムのパッケージの中から黒光りするおぞましい甲虫(の玩具)がにゅっと顔を出し、指先に乗ってきたのだ。七罪の口で汚い悲鳴を上げてしまうのも仕方のないことだった。
『おっ、七罪ちゃん良いリアクション。これは士道くんにも期待できそうだね』
「は、ははは……そう、ね。これはちょっとビビったわ……」
とはいえ七罪は怒ったりすると言葉がわりとガサツになるため、先ほどの悲鳴で疑われることはなかった。
もちろんこれは七罪だったから疑われなかっただけで、仮に琴里や四糸乃に化けている状態で先ほどと同じ悲鳴を上げていたら確実にアウトだ。次からは反射的な行動や反応にもなるべく気を付た方が良さそうだ。
「えっと……これも士道にアレをするためのソレなのよね?」
驚愕がまだ抜けきらず心臓が早鐘のように鼓動しているのを感じながら、士道は四糸乃たちにそんな問いを投げかける。
指示代名詞を二度使った非常にあやふやな問いになったのは、七罪がどこまで四糸乃たちの目的を知っているかが分からないからだ。以前四糸乃の悪戯に協力していたのでもしかしたら全て知っているかもしれないが、七罪なら四糸乃に頼まれれば理由も聞かずに協力しそうなので実際の所は分からなかった。一体何故これをさっきの電話で聞かなかったのか。
「はい。私が悪戯をするのは難しいことが分かったので、こういうものを使った方が良いってよしのんが教えてくれたんです」
『四糸乃は悪戯初心者で慣れないことがいっぱいだからねー。まずはこういうスタンダードで初心者向けなやつから慣らしていこうって思ったのさ』
あやふやな問いに特に疑問を抱く様子も無く答える、四糸乃と『よしのん』。
この反応からすると目的は七罪にも全て話しているのだろう。それならどこまでが知っていてもおかしくない情報か考えながら話す必要もなさそうなので、士道としても大助かりであった。
「……あのさ、前から思ってたんだけど四糸乃は何か迷走してない?」
そしてこの際なので、普段は口にできない問いを投げかける。
士道ともっと深い仲になりたい、という四糸乃の願いは理解できる。確かにちょっとだけ過保護な気もするし、大切に扱いすぎているのは事実だ。実際七罪や白琴里には息をするようにエロい悪戯をしているにも拘わらず、四糸乃にはそういった事はしていないのだから。
なので遠慮の無い深い関係になりたいという願いは理解できた。しかしそのために士道に悪戯を働こうとしている四糸乃の姿は、とても可愛らしいがどこか迷走しているとしか思えなかった。もっと他に方法がありそうな気もするのだが。
「……何のことですか?」
『んー、何のことかなー? よしのん難しいこと分からないなー?』
「よしのん……」
本当に何のことか分からないとでも言うように首を傾げる四糸乃と、明らかに分かっていて惚けている『よしのん』。どうやら諸悪の根源はいつもの小悪魔ウサギだったらしい。
とはいえ四糸乃の幸せを願っている『よしのん』が何の意味も無い行動を取らせるはずはない。一見迷走しているように見えても、様々な考えを巡らせた結果の『よしのん』なりの策なのだろう。
なので色々と気になったものの、それ以上詮索するのは止めておくことにした。これ以上詮索すると深淵を覗き込むようなぞっとする気分になりそうだったので、ちょっと怖くなったという理由もある。琴里ほどではないとはいえ『よしのん』の闇もそこそこ深いのだ。
『そんなどうでも良いことは置いといて、悪戯グッズではこれがよしのんイチオシだね! じゃじゃーん!』
誤魔化すように飛び切り明るく振舞いながら、『よしのん』が短い手に持った玩具を掲げる。
見た目は何の変哲もないナイフであったが、そこは例に漏れず悪戯グッズ。『よしのん』が四糸乃の首筋に刃先を立てて押し付けると、ナイフの刃の部分が柄の中へと引っ込んでいく。なかなかパンチの効いた悪趣味な悪戯グッズだった。
『士道くんはたくさんの女の子を侍らせてるからねー。こういうのを使って修羅場を演じると効くんじゃないかなー? あ、ちなみにこれ柄の中に別売りの血のりの入った袋を入れられるんだってさ。結構リアリティ出そうじゃない?』
「そ、それはちょっと悪趣味っていうか、冗談でもしちゃいけないタイプじゃない? さすがにお――士道も、凄く怒ると思うわよ?」
ちょっと語気が荒くなりそうなのを抑えつつ、度が過ぎるということを控えめに口にする。
さっきのGが出てくるガムの玩具は悪戯で済ませることができても、このナイフは別だ。血のりまで仕込んでしまえば、何も知らない人が見れば本当に刺したと思うだろう。幾ら何でも悪ふざけが過ぎる。
『そりゃあねー。でもそれくらいやれば四糸乃がすっごく悪い子だってことが士道くんに印象付けられるから、むしろ悪趣味であればあるほど効果的だね。何ならこのナイフで士道くん刺すより、四糸乃が七罪ちゃん刺す場面を見せた方が……ぬふふふ……』
「く、黒い! よしのん、黒い!」
しかし苦言を呈した士道に対し、返ってきたのはとんでもなく黒い発言。やはり『よしのん』の闇は深かった。
「七罪さんにも手伝って欲しかったんですけど、ダメですか……?」
「ダメってわけじゃないけど、本当にいくら士道でも怒ると思うわよ? もしかしたら手を上げるかもしれないし」
「わ、私はできれば、その方が……」
「おいおい……」
やはり四糸乃は相当迷走しているらしく、士道が怒って手を上げるかもしれないという言葉にぽっと頬を染めていた。お説教に加えてお仕置きの拳骨的な仕打ちをむしろ望むとは、やはり意外と重症かもしれない。
尤も四糸乃がこんな状態に陥っているのは、元を辿れば四糸乃を過保護に扱っていた士道のせいだろう。今は七罪として振舞っているとはいえ、さすがに自分が諸悪の根源ではこれ以上苦言を呈することはできなかった。
「……まあ、四糸乃がそれでいいなら私も協力するのは別に構わないけど?」
「ほ、本当ですか!? ありがとうございます、七罪さん!」
四糸乃は嬉しそうに笑いながら、士道の手(七罪の手)をぎゅっと握ってくる。相対的に大きく感じる四糸乃の手は何だかとても心地良く、思わず頬ずりしたくなるような柔らかさだ。
とりあえず元の姿に戻ったらその手にたっぷり頬ずりすることを心に決めて、士道は四糸乃と共に幾つかの悪戯グッズを抱えてレジへと向かった。
そんな経緯があり、士道は七罪の姿で四糸乃と昼ドラ的な修羅場を演じていたのである。
自身の演技力の問題でバレないか不安に思っていた士道だが、意外と問題なく騙せているため心底ほっとしていた。もちろん騙しているという罪悪感はあるのでどうにも胸が痛むものの、他ならぬ七罪のためなのだから仕方ない。なので罪悪感と戦いながら必死に七罪を演じていた。
『はい、オッケー! これなら士道くんも度肝を抜かれること間違いなしだね! 士道くんの顔が驚愕に歪む瞬間が今から楽しみだよー!』
そして今度は士道(七罪の姿)が四糸乃を玩具のナイフで刺す場面を演じ終え、『よしのん』監督が満足げに拍手を送ってくる。
正直見た目が七罪であるにも拘わらず酷い演技力であったが、あくまでも遊び染みた予行演習だったため疑いは持たれなかった。全く疑問に思われないというのは大いに助かるものの、七罪本人からすると少し寂しい気持ちもありそうだ。
「前から思ってたけどよしのんって結構Sよね」
『いやいや、よしのんは結構Mな方だよー? それはそうと、二人ともかなり血塗れだねー。七罪ちゃんなんか服着てたから余計に悲惨だよー』
「うーん、確かに。これは後で染みになりそう……」
士道はあえて服を着たまま刺されたので、衣服にはべっとりと血のりがついていた。ナイフに仕込まれた血のりの量を少なく見積もっていたこと。そして七罪の身体で勝手に服を脱ぐのは本人が嫌がりそうだったので、脱ぐのを渋ったのが理由である。
反面四糸乃は血のりの量を一度目撃している上、ここにいるのが実は士道だとは夢にも思っていないため、実に可愛らしい下着姿で演技に臨んでいた。それでもお腹のあたりはだいぶ血のりで汚れている。
正直なところ衣服の下にまでべとべとした感触が浸透してきているので、七罪には悪いが今すぐにでも服を脱いで洗い流したい気分だった。
「あの、七罪さん。一緒にシャワーを浴びませんか? このままだと七罪さんも気持ち悪いでしょうし、私も汚れを流したいです……」
「あっ、いいわねそれ。じゃあ一緒にシャワーを――一緒にっ!?」
そんな気分でいたところに四糸乃が提案をしてきたため、ノリッツコミのような形で頷き驚いてしまう。
一緒にシャワーを浴びるという事は四糸乃も裸になるということだし、士道も七罪の身体で裸にならなければいけないということだ。しかも身体を洗うためには身体にたっぷり触れなければならない。ちょっと自分の七罪印の胸を揉んだだけで怒った七罪からすれば、さすがに看過できないことだろう。
「はい、一緒にです。二人で、背中を流しっこしましょう……!」
「え、あ、いや、うーん……それは……」
一瞬耳を疑ったが、よくよく考えれば何も問題ない行為だ。士道と四糸乃はすでに身体の関係を持っている仲だし、裸を見たり触ったりは今更の話。何より七罪の姿でなく士道自身の姿で同じ状況になったとしても、四糸乃なら間違いなく一言一句違わぬ提案をするはずだ。本物の七罪の意志を無視すれば特に問題はないだろう。
しかしそれはそれとしてどうにも素直に頷くことができなかった。姿を偽っているという前提があるせいか、罪悪感を消せないのだ。何も知らず友達と仲良くシャワーを浴びる気でいる無防備な四糸乃の姿が、その罪悪感にこれでもかと拍車をかけていた。
『もーっ、今更何を恥ずかしがってるのさー。士道くんにたっぷり気持ち良くされて、お互いに乱れた姿を見せあった仲じゃなーい』
「それはそうなんだけど……うーん……」
ついでに言えば、四糸乃の艶姿を目にして耐えられるかが問題であった。
今の士道の身体には興奮でとんでもなくいきり立つモノは無いが、言ってしまえば無いだけだ。別に性欲が減退したわけではないし、興奮できなくなったわけでもない。むしろ四糸乃の下着姿に隠れて舌なめずりしてしまったくらいである。
なので七罪の姿をしていても絶対に襲わないという保証はなかった。そして四糸乃はあくまでも七罪と過ごしているとしか思っていないため、士道の前にいる時よりも酷く無防備で健康的なエロスが漂っているのだ。
今の士道の気分は、例えるなら温泉の女湯や脱衣所を覗いている感じである。端的に言って悪いことをしているようでちょっとドキドキしていた。
「七罪さん、一緒にシャワーを浴びましょう?」
「……あ、はい。喜んで」
『おっと、七罪ちゃん即堕ちだね!』
しかし邪気を浄化するような眩い微笑みで以て四糸乃が笑いかけてくれば、最早頷くことしかできはしない。覚悟を決めた士道は四糸乃に手を引かれるまま、洗面所へと歩いて行った。
後で真実を知った七罪が怒るかもしれないが、もうそれは仕方ない。今士道にできるのは努めて平静を装い、決してこの身体で四糸乃に襲い掛からないことだけだ。
「はぁ……あったかいですね、七罪さん」
「あ、はい。そうですね」
そして二人で仲良く裸になり、身を寄せ合ってシャワーを浴びる。
正直この時点でだいぶヤバかった。姿が七罪のものなので士道として認識されていないとはいえ、全く恥じらい無く肌を晒してシャワーを浴びる四糸乃の姿が非常に悩ましいのだ。気分は正に覗きか盗撮である。
しかもシャワーという都合上、どれだけノズルを上に固定しようが抱き合うように身を寄せ合わなければ一緒には浴びられない。つまりちょっと手を向ければ触れられる距離に、四糸乃の美味しそうな膨らみと張りの良いお尻が瑞々しさバッチリの状態で存在している。この状態でも堪えている士道はむしろ賞賛されるべきではないだろうか。
『七罪ちゃん大丈夫ー? 何かバグってない?』
「し、仕方ないでしょ。だって一緒にお風呂なら分かるけど、一緒にシャワーってかなり密着度高くない? その……エッチが終わった後に、お風呂場でイチャついてるみたいな感覚なんだけど?」
『ほうほう? つまり七罪ちゃんは四糸乃ともっと密着してイチャイチャしたいってことだね!』
「何でそうなる!?」
曲解も良いところの『よしのん』の発言に、演技も忘れて突っ込んでしまう。
確かにそういう気持ちはあるが、それはあくまでも元の姿の時だ。七罪の姿でそれをやったら決定的に違うし、何かに目覚めてしまいそうな気もする。実際士道が未だ自分を保っているのも、下半身に未知の疼きを感じているからという理由もあった。これは男として絶対に受け入れてはいけない感じの疼きである。
「えっと……こう、ですか?」
「ちょっ、四糸乃も実践しなくていいから!?」
しかし何も知らない四糸乃は『よしのん』に言われるまま、士道に背後から抱き着いてきた。小柄な四糸乃だが今は相対的に自分とほぼ同じ身体の大きさであるため、感じる温もりや柔らかさがまた普段とは異なりドギマギしてしまう。
『どうしたのー、七罪ちゃん? 何だか変に顔が赤いよー? もしかして、四糸乃にくっつかれて興奮しちゃった?』
「そ、そんなわけないでしょ!? えーと、その……四糸乃だって私みたいなのが自分に興奮するとか気持ち悪いわよね!? って――あの、ちょっと? 何してるの、四糸乃?」
図星を指されたので会心の七罪らしい返答をして誤魔化すが、『よしのん』はともかく何故か四糸乃は聞いていなかった。士道に背後から抱き着いたまま、あろうことか右手で身体をさわさわと撫でてくる。何かを確かめるように入念に。
「……七罪さん、何だか肌がとっても綺麗です」
「へっ!?」
そして、見事に普段の七罪の身体との差異を見抜かれる。
七罪曰く、こんな違いが分かるのは自分の身体を飽きるほど抱いた士道だけとのことだった。とはいえ3Pのことを思い返してみれば、四糸乃も何度か七罪と肌を重ねたことがある。これは七罪の考えが浅かったというより、そういった事実を失念して一緒にシャワーを浴びている士道の失敗だろう。
『んんー? 言われてみれば確かにこれは……四糸乃、胸の方も確認だ!』
「えっと……七罪さん、ちょっとだけ触っても良いですか?」
「えぇ!? いや、あの、それは……」
当然の如く胸の確認をさせようとする『よしのん』と、控えめながらも確認を取ってから触ろうとする四糸乃。
元の姿だったなら構わないと言う所だが、今の士道の身体は七罪の姿。確認を取るべきは七罪だろうし、仮に良いと言われても胸を揉まれたらおかしな気分になりそうなので正直拒否したいところだ。
「その、七罪さんさえ良ければ、私の胸を触っても良いですから……」
「マジかよ!? いや、違う! そういうことじゃなくて!」
喜び、ではなく友達同士で何をする気なのかという驚愕に声を上げる士道。
身体は現在女の子のものでも頭の中は煩悩塗れの男のものであるため、思わずお互いに胸を揉みあう四糸乃と七罪と言うとても百合百合しい絵面を想像してしまった。もちろんその光景自体は実に素晴らしいが、今重要なのはそこではなかった。
『もういいから触っちゃえ、四糸乃ー!』
「そ、その、失礼します……」
「~~っ!」
『よしのん』に促され、控えめながらも遠慮なく触ってくる四糸乃。七罪印の小さな膨らみに四糸乃のか細い指が僅かに埋まり、得も言われぬ感覚が士道を襲う。たぶん絶対負けてはいけないタイプのヤバい感覚である。
3Pだのお風呂場プレイだの色々とおかしなことをしている士道でも、さすがにメス堕ちする気だけは欠片も無い。故に士道は胸元を優しく弄る四糸乃の手と、下腹部の疼きを唇を噛み締めて必死に堪えるしかなかった。
『ふむふむ。どうやら胸も大きくなってるみたいだね。士道くんにいっつも揉まれてるおかげかな? でもそれなら四糸乃も大きくなってないとおかしいんだよね。揉まれた時間の差かなー?』
「う、うぅ……何だこれ……本当に、何だこれ……!」
『よしのん』が満足して四糸乃が解放してくれた時には、士道は浴室の床に崩れ落ちて泣き言を零してしまった。耐え難い下半身の疼きに頭が狂いそうなほどである。
どうやら女の子の方が感じやすいというのはデマではなかったらしい。まさか身を以ってそれを体験することになるとは夢にも思わなかったが。
『やっぱり恋する女の子はどんどんキレイになっていくんだねー。時間的に四糸乃ももうすぐだよ!』
「そ、そうなのかな……七罪さん、大丈夫ですか?」
「……ああ、うん。ありがとう、四糸乃」
四糸乃の手を借りて立ち上がる士道であったが、すでに精神はボロボロであった。こんな精神的辱めを受けるなら士織ちゃんに女装した方が遥かにマシだった。少なくともただの女装なら身体自体は士道のもので、男のものなのだから。
『じゃあ約束通り今度は七罪ちゃんの番だね。ほーら、四糸乃のマシュマロおっぱいを揉んじゃっていいよー? 何なら揉むだけじゃなくて、赤ちゃんみたいにしゃぶりついちゃう? 今日は七罪ちゃんには色々付き合ってもらったし、赤ちゃんプレイくらいしてあげるよー?』
「えっと……ど、どうぞ……?」
ちょっとイカれた『よしのん』の言葉を受け、四糸乃は胸を張るようにして仄かな膨らみを突き出してくる。
一体何がどうぞなのか。そして何故やたら恥ずかしそうに頬染めているのか。問いただしたいことは色々あったが、突っ込むと墓穴を掘りそうなのであえて何も尋ねないことにした。
「い、いや、それはその……良いです……はい……」
『そう? 七罪ちゃんったら欲が無いなー。士道くんなら遠慮なくしゃぶりついてくるのにー』
「そ、そんなことより、早くやることやって上がりましょ。何か私疲れてきたわ……」
他者を演じ続け、自らの欲望を抑えつける。かなりの無理を続けている士道は精神的に相当参っていた。これは後で七罪にたっぷりとお礼をしてもらわなければ割に合わないだろう。具体的には今さっき四糸乃にやれなかったこととか(赤ちゃんプレイではない)。
『そっかー。じゃあこの後は四糸乃の膝枕でお休みでもする?』
「え、マジ? いいの?」
しかしそこで『よしのん』が素晴らしい提案を口にする。四糸乃の膝枕で眠るという、疲れもストレスも一瞬で吹き飛びそうな提案を。
さすがに今の姿で胸を揉んだりしゃぶったりするのは躊躇われるが、膝枕くらいなら躊躇う理由などどこにもない。むしろ積極的にお願いしたい気分であった。
「はい。今日は七罪さんに付き合ってもらいましたから、それくらいでお礼になるのなら……」
無論四糸乃がダメというはずもなく、慈愛に満ちた微笑みで以て頷いてくれる。それは正に心のオアシスに相応しい姿であった。
「あ、はい。それじゃあ、お願いします……」
そんなわけで士道はシャワーを浴びた後、疲れた心を癒してもらうため四糸乃にたっぷり膝枕をしてもらった。
七罪に聞かせたら酷く悔しがりそうだと若干申し訳なく思いつつも、僅かな罪悪感など吹き飛んでしまうくらい素晴らしい至福のひとときであった。
「――ってことがあって、最終的には四糸乃の膝枕で昼寝した」
「え、何それ。私もしてもらったことないんだけど? ちょっとずるくない? てかめっちゃずるいふざけんな」
無事四糸乃との時間を乗り切り、七罪に出来事や会話内容を報告する夜。四糸乃に膝枕してもらったという事を話すと、予想通り七罪は嫉妬と羨望を露わにしていた。
あの後は特に何事も無く、そろそろ変身が解けそうだという七罪からの電話が来てお開きとなった。正直色々あって挫けかけたものの、あれが変身した士道だという事は四糸乃たちにバレていないようなので、結果としては大成功だ。
「ずるくない、役得だ。俺がどれだけ苦しんだかお前に分かるか?」
「……メス堕ちしかけたのよね」
「やめろ! 変なこと思い出させんな!」
にやりと嫌らしく笑いながら呟く七罪に、おぞましい感覚を思い出して叫びを上げる士道。四糸乃と一緒にシャワーを浴びた話をした時は当然七罪はかなり荒れたものの、女の子の身体故に沸き上がる未知の感覚に苦しんだことを伝えると、自然と怒りを収めてくれたのだ。
とはいえ四糸乃とイチャイチャシャワータイムにはかなり心惹かれるものがあったのか、どこか羨ましそうな顔をしているように見えた。それは友達との楽しい触れ合いを求めるが故のものであり、決して美九のような性癖からのものではないと願いたい。
「というか、お前の方こそどうだったんだ? 何かいきなり予定変更してランジェリーショップ行ってたろ?」
「あー……まあ、何があったかは想像に任せるわ。あんまり思い出したくない……」
「やっぱお前にこそ四糸乃の膝枕が必要かもな……」
士道をからかい楽し気に輝いていた緑の瞳が一瞬で死んだ魚のように濁ったため、それ以上尋ねるのは止めてあげた。何があったかは想像するしかないが、どうせ美九の事だ。七罪を着せ替え人形にして大いに楽しんだのだろう。その場に居合わせることができなかったのが酷く悔やまれる。
着せ替え人形にされたのであろう七罪を慰めてあげるため、そして素晴らしい光景を見られなかった自分自身を慰めるため、士道はとりあえず七罪の頭を撫でてあげた。七罪も癒しが欲しかったのか、特に何も言わずされるがままであった。
「……士道、一つ聞いても良い?」
「ん、何だ?」
しかし唐突に顔を上げ、真面目な表情で尋ねてくる。こちらも撫でるのを止めて真面目に聞く姿勢をとった所で、七罪は続けた。
「その……そろそろ、他の子と私たちみたいな関係になりたいとか思ってる?」
投げかけられたのは、他の精霊たちとも肉体関係を持ちたいかという問い。
これはなかなか答えるのが難しい問いであり、同時に気恥ずかしい思いを抱えてしまう問いであった。しかし一応士道の中で答えは出ているし、相手は七罪だ。気恥ずかしいが今更取り繕う相手でもないので、素直に口を開く。
「まあ、思ってないって言ったら嘘になるな。もちろん十香たちを幸せにしてやりたいって気持ちはあるけど、俺も男だからな。完全に下心が無いかって聞かれると、さすがに首は振れそうにないぜ……」
今までなら下心は(そんなには)無いと断言できたかもしれないが、どっぷり性の喜びと快楽に浸かってしまった今となっては無理だった。
愛する少女と肌を重ね、お互いに総てを曝け出し愛し合う。それがどれだけ幸せに満ちた素晴らしい事なのか、分かっているからこそ求めずにいることなどできはしない。士道の性欲も七罪のフェロモンによって亢進されたままの状態であり、こんな状態で清らかな関係を築いていくことなどできるわけがなかった。
「だから俺からそういうのを求めるのは不誠実だし、正直良くないと思ってる。琴里に命令されるまでは今のままでいようって思ってるよ。どのみちまだお前ら三人で手いっぱい――っていうか、琴里一人で手に余ってるからな。本当何なんだ、アイツ……」
「あれはたぶん特殊だと思うけど……」
ほぼ無尽蔵な性欲を持ち、気が狂っているとしか思えない性癖に塗れた義妹の事を思い浮かべ、二人揃って遠い目をしてしまう。
性欲が亢進している今の状態で何とか相手をできているのだから、もしも士道の性欲が素に戻ったら一体どうなるのか。あまりにも怖すぎて想像さえしたくなかった。
「……じゃあ向こうから襲ってきても、士道としては今は応える気はないってことね? 罪悪感もあるし、相手の子のためにも」
「ああ。下心から受け入れられたって嬉しくないだろうからな。お前だってそうだろ?」
「いや、私は……うーん……」
「そういえばお前は違ったっけな……」
頬を染めて微妙な答えを返す七罪に、ちょっと呆れながら始まりの時を思い出す。
元々自分自身に微塵も自信を持っていなかったため、自分に欲情した士道に対して七罪は結構嬉しそうにしていたのだ。そう考えると案外個々人の考え方によるのかもしれない。
「まあ、何となく言いたいことは分かったわ。士道がそう言うなら私もその方が良いと思うし……ところで士道、今夜はその……私の番、だったわよね?」
「ん? ああ、それがどうかしたのか?」
「その……辛いと思うけど、今夜は無しにしてくれない? あと、他の子の所行くのも無しで」
「……お前、さては何か企んでるだろ?」
唐突に話題を変えたかと思えば、以前にも聞いたようなお願いをしてくる七罪。
さすがに酷く既視感のある状況だったため、軽く流すことはできなかった。前回はこの発言の後、バニー姿の七罪お姉さんと化して襲ってきたのだ。絶対何か良い事――ではなく、良からぬことを考えているに違いない。
しかしそう考えた士道に対し、七罪が返してきたのは心底面倒くさそうな疲れ切った表情であった。
「企んでると言えば企んでるけど、好きでやってんじゃないわよ。全く……とにかくあんたは今夜、他の子のとこ行かず寝てなさい。分かった?」
「あ、ああ。やっぱ何か疲れてるな、お前。そんなに今日は大変だったのか?」
段々とお願いどころか命令に近い形になり、かなり雑な対応をされる。やはり今日の七罪は美九に一日振り回されて相当疲れているのだろう。
変身時間の問題もあったため士道と四糸乃の方は昼近くに用事が終わったとはいえ、七罪の方は朝から夕方までずっと美九に引きずり回されていたのだ。その上、四糸乃の膝枕という最高の癒しが無かったのだから疲れるのは当然だった。
「それもあるけど、最近何か妙に眠いのよね……ふあぁっ……」
そう言って乾いたあくびを零し、眠たげに目を擦る七罪。
どうやら眠そうなのは今日に限った話ではないらしい。元々七罪は目つきが悪いので分かりにくいため、ひょっとしたら士道が気が付けなかっただけかもしれない。
「寝不足か? 夜更かしせずにちゃんと夜寝た方がいいぞ?」
「それ、寝かせてくれない奴の台詞じゃないと思うんだけど……?」
「うっ……」
心配して提案したのだが、全く反論できない指摘がジトっとした視線と共に返ってくる。
七罪や四糸乃には加減しているとはいえ、それでも二時間くらいはたっぷりねっとり身体を重ねているのだ。確かに寝不足どうこうを指摘できるような立場ではなかった。
「じゃ、じゃあアレだ。今ちょっとだけ休んだらどうだ? ほら、膝枕してやるぞ?」
「えー……士道の膝枕……」
「嫌そうな顔するな。そりゃ四糸乃の膝枕とは比べるのもおこがましいだろうけど、無いよりはマシだろ?」
明らかにコレジャナイ的な顔をする七罪を、自らの膝を叩いて招く。
正直士道も男の膝枕には価値が無いと思っているが、かといって添い寝をして抱きしめてやると辛抱堪らなくなりそうなので今はダメだった。寝かせてくれない奴という指摘を受けたばかりなのだからなおさらである。
「……まあ、そうね。じゃあちょっとだけ横にならせてもらうわ。一時間くらいしたら起こして」
「結構ガッツリ寝る気だな、お前!?」
最終的に七罪も無いよりはマシと判断したようで、遠慮なく士道の膝を枕にして横になっていた。しかもちょっとだけという割には、一時間という膝が痺れそうなほどの時間眠る気である。
さすがに文句を言うべきかと悩んだ士道だが、気づいた時には膝の上で七罪が安らかな寝息を立てていたため、結局フルに一時間枕に徹するしかなかった。終わり際には膝が痺れていたのは言うまでもない。
性欲が爆発気味の士道にとって、愛する少女との夜の交わりができないというのは酷い苦行である。しかし他ならぬ愛する少女の頼みであるし、何より身体だけの関係ではないのだからそれを証明するためにも頑張って耐えるしかない。
そんなわけで士道は悶々とした気持ちを根性で捻じ伏せ、気合で眠りについていた。昼に四糸乃の膝枕で休んでいなければもっと楽に眠れたかもしれないが、あの場面で四糸乃の膝枕を拒否する選択肢など存在しなかった。例え夜に苦しむことになると分かっていても、心のオアシスからの膝枕という魅力には抗えなかったに違いない。
「――りん。だーりん。起きてくださいよー?」
「ん……んん……美九?」
悶々とした気持ちを抱えたまま眠りに落ちたせいか、どうもかなり嫌らしい夢を見ているようだ。気付けば身体の上にそれはもうエロい下着姿の美九が跨っており、微笑を湛えてじっと顔を覗き込んできていた。
何故美九なのかちょっと気になるものの、それはきっと今日一日の出来事のせいだろう。七罪の反応から美九が一体何をしたのか変な妄想を繰り広げていたし、何より七罪が口にしていたシチュエーションが衝撃的で忘れられなかったと言うのが大きい。美九にエッチな下着姿で夜這いされ、誘惑されたら云々の話だ。正に今この状況こそ、七罪の口にしたシチュエーションそのものの夢であった。本当にこれが夢ならば。
「はい、皆大好き美九ですよー。こんばんは、だーりん!」
「……っ!?」
元気に挨拶をしたかと思えば、士道に跨ったまま口付けをしてくる美九。
その際唇に感じたリアルな温もり、そして胸の上に押し付けられる形で広がった柔らかさの塊が、これは夢ではなく現実だとはっきり教えてくれた。
「ちょ、ちょっと待て。何で美九がここにいるんだ? しかもお前その格好……!」
「これですかぁ? 今日七罪さんと一緒にランジェリーショップに行って買ってきたんですよー? 似合ってますぅ?」
「そりゃもちろん似合ってる――じゃなくて! 何でそんな恰好でここにいるんだよ!?」
ようやく本当に夜這いをかけられているという現実に気が付き、身体を起こして後退る。そんな士道の前で美九は両手を頭の後ろに回して悩ましいポーズを取り、あまつさえ可愛らしいウインクまで飛ばしてきた。
美九が身に着けている下着は恐らくベビードールと言う類の見せるための下着であったが、露出度自体は低いものであった。見た目はゆったりとしたネグリジェに近いものの、代わりに生地が非常に薄い。暗い部屋の中でさえ美九のメリハリのある身体のラインがはっきり見て取れるほどだ。
もしも電気を付けたら一体何が見えるのか、ついそれを考えてしまいごくりと息を呑む士道だった。
「決まってるじゃないですかぁ。だーりんを誘惑するためですよー」
「ゆ、誘惑……!?」
「はい! というわけで、ここで真打ち登場です! どうぞ!」
驚愕に目を丸くする士道の上から、美九がベビードールの裾を翻して飛びのく。
スカートが翻るようなドキリとする光景を反射的に目で追ってしまう士道だが、美九の背後にいた人物の姿が目に入りそちらに視線を向けた。
「お前……」
「……何よ。笑いたいなら笑えば?」
そこには明らかに嫌そうな顔をした、同じくエロい下着姿の七罪がいた。
系統としては同じくベビードールだったが、一つだけ美九とは異なる点が存在した。もちろんそれはぺったんこな胸――ではない。何故か頭の上に鎮座している猫耳だ。どういった理由でそれを付けているのかは分からないが、確実に言えることは一つ。とても可愛らしく、よく似合っていた。
「いや。普通に似合ってるぞ、それ。凄い可愛いな。あとは尻尾があれば完璧だぜ」
「ですよねー! 警戒心の強い猫みたいな七罪さんには猫耳が似合うと思ったんですよー! さすがだーりん、分かってますね!」
「えっ、なにこいつら。息ピッタリじゃん……」
エロ下着と猫耳装備の七罪の姿に、思わず状況も忘れて美九と共にはしゃいでしまう士道。変な衣装は頼んでも着てくれない七罪だが、こういったアクセサリーくらいなら案外身に着けてくれるかもしれない。その内お願いしてみよう、と士道は場違いなことを考えていた。
「そこまで分かってるだーりんなら、二人がかりで攻めてしまえばイチコロですぅ! というわけで七罪さん、行きますよー!」
「えーと……まあ、そういうわけだから……」
「なっ!? お、おい!?」
しかしすぐに夜這いをかけられているという現実が戻ってくる。楽しそうに擦り寄ってくる美九と、あまり気乗りしない表情で近寄ってくる七罪。
今までわりと平静を装っていた士道だが、実は控えめに言ってかなりヤバい状況であった。悶々としたまま眠りについたせいで未だ性欲はグツグツ煮え滾っているし、目の前にいるのは悩ましい姿の魅力的な少女が二人。
おまけに片方はとんでもなく抜群のスタイルを誇り、もう片方は幼女の見本とでも言うべき自称寸胴体型。どちらもイける士道としては相乗効果で二倍以上の魅力に感じられた。しかも一人はすでに何度も身体を重ね、あまつさえ何度か3Pすらしたことがある関係なのだから余計に抵抗が薄かった。
このままではすでに頂いた七罪はともかく、美九の初めてを流れで頂いてしまう。それは士道自身が納得できないことであるし、何より許可も命令も無かったにも拘わらずそんなことをすれば琴里に殺されてしまう――
「……ん?」
そこまで考えた時、初めて違和感に気が付いた。欲望に理性が焼き切れる瀬戸際だと感じていたのに、自分がこの場で今初めて下半身を反応させたということに。
「ふふっ。我慢しなくて良いんですよー、だーりん? だーりんの思うがままにしちゃってください」
豊かな膨らみを揺らし、腕に押し付けてくる美九。士道はそれに大いに興奮していたが、肝心の下の方には全く響いていない。
頭では興奮しているのに身体が反応しないこの状態。そして今日七罪が口にしていた思わせぶりな質問。それらの情報から総てを悟った士道は、腕に抱き着いてる美九の身体をそっと押しやるのだった。
「……悪いな、美九。やっぱりこういう流れでそういうことはできない」
「そ、そんな!? こんなに可愛くて魅力的な七罪さんにひっつかれているのに、どうしてそんなに澄んだ表情ができるんですかぁ!?」
まさかこの状況から拒否されるとは思わなかったのか、美九は驚愕に目を見開く。それでも自分自身の魅力ではなく、七罪の魅力を全面に押し出している所は美九らしいと言えば美九らしい。
「実はこれでも結構ギリギリなんだけどな。ただやっぱりこういうことするなら、お前たちからやらせるんじゃなくて俺から誘わせて欲しいんだよ。ちゃんと雰囲気を作って、思い出に残る幸せな夜にしてやりたいからさ」
「だーりん……」
そうして努めて平静を装い、美九の目を見て語り掛ける。
どこか感動したように瞳を潤ませ、煌めかせる美九の姿は確かに魅力的だ。本来ならここまで落ち着いた行動はとれなかったかもしれないが、今は別だ。興奮はしていても襲いたいという欲求が沸いて来ないのだから。
「……分かりました。確かにだーりんから誘ってもらう方が、私としても嬉しいです。七罪さん、残念ですが今夜は一緒に帰りましょうか?」
「いや、そもそも私は最初から気乗りしなかったし。ていうかさりげなく私をお持ち返りしようとしてない……?」
幸い美九も考え直してくれたらしい。ベッドから降りると、七罪を小脇に抱えて帰り支度を始めていた。
「そういうわけですから、もうお暇させて頂きますね。おやすみなさい、だーりん」
「あの……私の扱い、マジで猫なのは何で……?」
頬に一つ口付けをしたかと思えば、小脇に抱えた七罪を押し付けるようにして強制的に同じ場所にキスさせる美九。頬に触れた二人分の感触にドキリとしたがやはり下の方は反応しなかった。尤も反応しないだけでギンギンに元気にはなっていたが。
「ふふっ。ますます惚れ直しちゃいましたよ、だーりん。誘ってくれる日を楽しみにしていますからね?」
「お、おう……」
そうして、七罪を抱えたまま上機嫌に去っていく美九。上手く平静を装い凌げたが、士道は内心冷や汗が止まらなかった。上手く行ったのは全て七罪のおかげと言って過言ではなかったから。
『はぁ……だーりん、思った以上に自制心が強くて上手くいきませんでしたぁ……』
『まあ私は別に上手く行かなくても良かったし……』
『えー? じゃあ七罪さんはこれからも一人寂しい思いを抱えて自分を慰めてしまうんですかぁ? そんなの絶対ダメですよぉ! 何なら美九が慰めてあげます!』
『え、やだ……』
部屋の扉の向こうから聞こえてくる二人の声に耳を澄ませ、完全に聞こえなくなるまで待つ。
このまま眠りにつきたいところだったが、士道はこれから苦行に向かわなければいけなかった。場合によってはむしろ楽で大いに楽しめるかもしれないとはいえ、現実はそこまで甘くない。
そのためどうか白い方であることを願いながら、琴里の部屋へと向かった。
「――ようこそ、士道。こんな夜更けに一体何の用かしら? それもこれでもかってくらい勃起させながら。いたいけな妹に夜這いでもかけたかったの?」
「分かってて言ってんだろ、お前……」
琴里の部屋へ足を踏み入れた所、待ち受けていたのは深夜にも拘わらずいつもの制服&軍服姿でベッドに腰かけた黒琴里。とりあえず悪態を吐いてみるものの、その姿を目にしただけで士道の下半身は今までの無反応が嘘のように反応していた。
やはりこの反応は十中八九琴里が使ったあの媚薬の作用だ。日中におかしな電話をしてきたあたり、七罪は美九が夜這いをかけることを知っていたため、琴里からあのおかしな媚薬を借りて対抗策を講じてくれたのだろう。今は襲われても応えられないと、士道がはっきり口にしたから。
興奮して襲い掛からないために媚薬を盛るというのは一見意味不明に見えるも、これは琴里にしか興奮できなくなる媚薬だ。それ以外の少女に関しては肉体的にはどう頑張っても興奮できないし、襲い掛かることができなくなる。美九の夜這いへの対抗策としてはこれ以上ないほど優秀だ。
唯一の欠点は下半身がそれはもう元気になってしまうことだが、そこは七罪がさり気なくカバーしてくれていた。自分の身体で美九の視界を遮り、いきり立つ士道の下半身を隠してくれていたわけである。これはしばらく七罪には頭が上がらなさそうだ。
「さあ、何の事かしらね。ところで士道、私と話すにはちょっと頭が高いとは思わない?」
「くっ……!」
とはいえ、今は琴里にも頭を下げなければいけないようだ。七罪が媚薬を借りたということは、当然琴里は全ての事情を把握しているに違いない。それはわざわざいつもの司令官の姿で待ち受けていた事からも明らかだ。
つまり今の士道の状況も理解しており、琴里が受け入れなければ士道は満たされない興奮にいつまでも悶々としなければならない。故にここは素直に従うしかなく、士道は屈辱を堪えながらも琴里の前に跪いた。下半身のモノがかなり邪魔で窮屈なため正座ではなく、右膝を付いて左膝を立てた状態で。
「あら、素直ね。素直な士道は好きよ?」
「っ……!」
ニヤリと笑いつつ、黒のソックスに包まれた足先でぐりぐりと士道の股間を弄ってくる琴里。やはり通常時の黒い方は心底ドSだった。
そして媚薬の効果は極めて強く、悔しいはずなのに琴里に触れられている事実だけで信じ難いほどの興奮が押し寄せてくる。このままではズボン越しに足先で弄られているだけで絶頂してしまいそうなほどに。
「こんなに勃起させて夜中に妹の部屋に来るなんて、一体何をするつもりだったのかしらね? ほら、正直に言ってみなさい。あなたは何がしたくて来たの?」
「そりゃあもちろん、お前をぶち犯したくて来たんだよ……!」
「でしょうね。アレを使ったってことは、私が相手をしてやらないとあなたは一生そのままだもの。これ以上ないほど発情しているのに発散できないなんて地獄よねぇ?」
「分かってるんだったら、さっさとヤらせやがれ……!」
耐え難い興奮を必死に堪えながら願うが、その願い方は琴里がお気に召すものではなかったらしい。鼻で笑ったかと思えば、更に強く足先を押しつけてきた。
「くっ……!」
「それが人にものを頼む態度? 今の状態を鑑みて一度目の無礼は許してあげるけれど、二度目はないわよ。もっと丁寧に頼みなさい、士道?」
「ど……どうか、お願いします。ヤらせてください……」
屈辱に耐えつつ、へりくだって懸命に願う。それも跪いた状態で、妹に足先で大切なモノを弄られながら。
その男としても兄としても極めて情けない姿はお気に召したようで、琴里は舌なめずりして一層笑みを深めていた。
「ちゃんと言えるじゃない。それで? あなたは一体誰とヤりたいの?」
「俺の目の前にいる、美少女とヤりたいです……とても聡明で賢くて、可愛くて色気もある世界一の妹とヤりたいです……」
「ふぅん、そう……」
興味なさげに振舞っている琴里だがだいぶ興奮しているらしく、スカートの奥に見える白のパンツには暗い部屋の中でも分かるほどの染みができていた。どうやら向こうも向こうで限界らしい。
考えてみればこの状況は一度琴里がセッティングしようとして、結果的に七罪に邪魔されてしまった状況の再現ともいえる。そこまで七罪が考えているかどうかは分からないが、士道の意思を尊重しつつ美九に疑惑を持たせず、更には琴里の機嫌も取っているのだからさすがという他にない。とはいえそこまで手と頭が回るなら、最初から美九の夜這いを止めて欲しかった。
「ま、及第点ってところかしらね。いいわ、来なさい。あなたのどす黒い欲望、私が全部受け止めてあげる」
そして自らネクタイを緩め、生意気に指で士道を招く琴里。
すでに限界だった士道の理性は即座に焼き切れ、何も考えずに琴里に襲い掛かるのであった。美九と七罪の艶姿に覚えた興奮と、美九の身体を味わえなかった悔しさをぶつけるように、どこまでも激しく。
琴里を欲望のままに貪る最中、当然ながら頭の中には他の何かなど微塵も存在する余地はない。だからこそ、なのだろう。翌朝あんなことになるとは、士道はこの時夢にも思っていなかった。
無事四糸乃も騙し通し、夜這いも切り抜けた士道さん(代償が無かったとは言ってない)。
何か不穏な終わり方ですがきっと大丈夫でしょう(適当)。そういえば四糸乃は3Pで何度か七罪とも肌を重ねていたような……うん、気のせいだな!
更新停止期間の執筆状況の進捗はどれくらいの頻度で活動報告に載せるべきか
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