「ん……もう朝か……」
普段通りに夜の営みを終え、そのまま愛する少女と眠りについた士道。うっすらと瞼に射してくる柔らかい朝の日差しに、自然と目が覚め呟きを零す。
昨夜も実に満足の行く夜であり、目覚めも気分も爽快だった。というか満足の行かない夜がそもそも無いので、基本的には起きた時は気分爽快だ。何より目が覚めた時、隣に愛する少女がいるという光景が素晴らしい。
向こうが先に目覚めていれば愛らしい微笑みで以て一日の始まりを彩ってくれるし、目覚めていなければ可愛らしい寝顔を存分に眺めて楽しむことができるのだ。どちらにせよ実に素晴らしい事であり、大いに安らぎと幸福感を感じられる。
「まだ寝てるか……まあ、そりゃそうだよな」
今回の起床ガチャでは『目覚めていない』の方を引いたらしく、隣を見れば愛する少女の安らかな寝顔が目に入る。幸せな夢でも見ているのか、微笑を湛えたまますやすやと気持ちよさそうな寝息を立てていた。
このままじっと眺めて楽しみたいところであったが、どうにも愛しさが溢れてきて堪えきれない。我慢できず、士道は愛する少女のさらさらの髪を撫で、そのまま優しく唇を奪った。
「ん……んぅ……」
「あー、やっぱ起こしちまったか……」
口づけが眠り姫に対する目覚めのキスになってしまったようで、愛する少女は瞼を震わせて小さな喘ぎを零す。幸せな夢を見ていたはずなのに、現実に引き戻してしまって非常に申し訳ない気分であった。
やがて少女は瞼を開き、若干ぼんやりとした瞳で士道をじっと見つめてくる。寝起きでまだ意識が定まらないのか、しばしそのまま固まっていたが――
「……おはようございます、だーりん!」
それは一種の溜めだったらしい。愛する少女――美九は、飛び切り幸せそうな笑顔で士道に抱き着いてきた。
夜這いを切り抜け無事秘密を隠し通すことができたというのに、美九とそういう関係になってしまったのにはもちろん深い理由がある。あるいはどうしようもない原因か。
『おはよー、士道くん! 今日も素晴らしい朝だねー!』
「おはよう、ございます……!」
美九の夜這いを七罪のおかげで切り抜けられ、迎えた早朝。朝食を共にするために訪れてきた四糸乃が、朝日の如く眩い笑みで挨拶を口にしてきた。
昨夜は少々肝を冷やしたものの、危機を乗り越え生じた興奮を余すところなく琴里にぶつけたため、気分爽快の素晴らしい朝だった。そこを四糸乃の太陽のような笑みが更に彩ってくれたのだから堪らない。最早理想と言って差し支えない朝である。
「ああ、おはよう。四糸乃、よしのん。朝飯はもうすぐできるからもうちょっと待っててくれるか?」
「あの、何かお手伝いしましょうか?」
「それは大丈夫だ。今七罪が手伝ってくれてるからな。それよりは美九の相手をしてやってくれ」
『ん、美九ちゃんいるの? そういえば誰かの靴があったような――』
首を傾げた『よしのん』に対し、士道が答えを口にする必要はなかった。何故なら当人が息を潜めて気配を殺し、四糸乃の背後からにじり寄ってきていたから。
「はーい! ここにいますよー!」
「きゃっ……!?」
『おわー!? よしのんの背後を取るとは、なかなかやるねー!』
そして満面の笑みで以て背後から抱き着く。さすがにこれには四糸乃はもちろんのこと、『よしのん』でさえ驚きを隠せていなかった。
昨夜の夜這いがある意味失敗に終わった後、どうやら美九は七罪の部屋に泊まっていたらしいのだ。深夜の夜道を一人で帰らせるよりは遥かにマシなのでそれは問題ないのだが、七罪としては心休まらない時間だっただろう。実際、今も朝食の支度を手伝ってくれている七罪は酷く眠そうな感じであった。
「じゃあ朝飯できるまで待っててくれよ? あと、あんまり四糸乃に変なことするなよ、美九?」
「分かってますよー。おはようございます、四糸乃さん! よしのんさん! おはようのチューです!」
「ひゃっ……お、おはよう、ございます……」
元気に返事をした割には一ミリも分かっていない感じの美九が、四糸乃の頬にキスをする。とはいえ頬に一回だけだったのから、分かっている上での行動なのかもしれない。他には何もしていないあたり、これでも美九の中で言う変なことはしていないのだろう。
とりあえず大丈夫そうなので、朝食の準備をするためにキッチンに戻った。
「ね、ねぇ、アレ大丈夫なの?」
「ん、何がだ?」
戻ってみれば、お玉片手にエプロン姿の可愛らしい姿の七罪が、ちょっと焦った感じの表情で出迎えてくれる。かなり苦い顔をしていため不思議に思って視線を辿ってみれば、そこには先ほどと変わらない四糸乃と美九の姿があった。
恐らく七罪は昨日の出来事がバレないか心配なのだろう。約束が被ってしまったため、自分に変身させた士道を四糸乃の方に送り込んでいたという秘密が。
確かにあの二人が話をしていれば決して低くない確率で昨日の話題が出て、運が悪ければそこから真実が明るみに出てしまうかもしれない。同じ時間に七罪が二カ所に存在したという事実は、さすがに怪しすぎて誤魔化しきれない。
だからといって会話を禁じることなどできないため、士道としてはバレてしまったらその時はその時だと割り切っていた。
「別に大丈夫だろ。万一バレても俺はお前に頼まれただけだから、責任は全部お前にあるしな」
「ちょっ、まさかの私一人だけ悪者!? ていうかそっちじゃない! アレよ、アレ!」
「アレ……?」
先程よりも焦った様子の七罪に、再度四糸乃たちの方を見る。そこにはやはりまだじゃれあっている四糸乃と美九の姿があった。一見何もおかしくない光景のはずだが――
「……むむっ? すんすん……」
「あ、あの……美九さん……?」
『えっ、何? どったの?』
何故か美九は可愛い女の子に抱き着いているにも拘わらず、真剣な面持ちをしていた。しかもそんな表情をしている割には、やっていることは四糸乃の首筋やら髪の毛やらに鼻を近づけ匂いを嗅ぐという奇行である。正直訳が分からなかった。
「実は昨日、あえて何も言わなかったんだけどさ……美九に私たちの関係がバレかけたのよね。私の身体についた士道の匂いと、士道の身体についた私の匂いで……」
「お前何でそんな大事なこと今更っ……!」
「だ、だって、誤魔化すための言い訳がめっちゃ恥ずかしかったから……」
だが七罪が爆弾発言を零したため、目の前で展開されている光景の危険性を即座に理解する。
正直匂いで分かるわけがないと言いたいところだが、以前十香に七罪が言うお互いの匂いを指摘されたという過去があるため、全くありえない話ではない。性知識に欠けるせいか十香はわりと簡単に誤魔化せたものの、美九を同じように誤魔化せるとは到底思えなかった。
「……バレたと思うか?」
「たぶん……美九の鼻は私と士道に関しては十香並みだし……」
かなりピンチな状況のため気になって朝食の準備など続けられず、二人でキッチンからリビングの様子を覗き見る。未だ美九は四糸乃の匂いを嗅ぎまくり、あまつさえ『よしのん』の匂いまでがっつり嗅いでいた。
しかしついに結論を出したのだろう。美九は瞼を閉じて小さく吐息を零すと、ある種神々しいと取れるような謎の表情のまま四糸乃の身体を離した。
「……四糸乃さん、最近だーりんのベッドに潜りこんだりとかはしませんでしたかぁ?」
「えっ……!?」
「あっ、これはもうダメそう……」
「ま、まだ分からないだろ! ほら見ろ、頼りになる奴がやってきたぞ!」
クリティカルな問いを投げかける美九に、頬を染めて明らかな反応をする四糸乃。そして足掻く気が全く感じられない七罪。
何だかもう九割五分くらいどうしようもない状況だったが、ここでとても頼りになる人物が現れた。我らが司令、五河琴里だ。まるで狙いすましたかのようにタイミングが完璧過ぎるのは、最早些細な問題である。
「おはよう、美九。朝からここにいるなんて珍しいわね? もしかして昨日は七罪の部屋にでも泊まったのかしら?」
「あっ、おはようございます、琴里さん。はい、昨日は七罪さんと一緒に一つのベッドで固く抱き合って眠らせて頂きましたぁ。最高の夢が見れましたよー? うふふふ……」
そう言って、悶えるように身体をくねらせ幸せいっぱいの微笑みを浮かべる美九。
ベッドで抱き合っていたくだりの七罪の反応がどのようなものか大変興味深かったものの、今はそんな状況ではないため何とか好奇心を押し殺す。それでもちらりと隣に視線をやり、げんなりした表情を確認するくらいはしてしまったが。
「きっと琴里なら何とかしてくれるだろ。そもそも皆にはバレないようにしろっていうのはアイツがまだこのままでいたいからだし、えげつない真似してでも絶対に騙し通すぜ。あいつはそういう奴だ」
「何かめっちゃ歪んだ信頼ね……でもさ、あんた昨日琴里と盛大にヤったはずよね? たぶん琴里の身体についてる士道の匂いは、私とは比べ物にならないくらい濃いと思うんだけど」
「あっ……」
絶望的な指摘を受け、最早二の句が告げられなくなる。
考えてみれば琴里は今一番美九に会わせてはいけない存在だった。七罪の匂いはさほどしないだろうが、それはもう濃厚な士道の匂いが染み付いているに違いない。
「そう。七罪にとってはきっと悪夢でしょうね……それで? あなたはどうしてさっきから私に抱きつこうとしているのかしら?」
「実はちょっとだけ確認させてもらいたい事があるんですよー? 痛くはしませんから、琴里さんの匂いを嗅がせていただけませんかぁ?」
やはり美九も疑いを持っているようで、すでに対象を琴里にロックオンしていた。抱き着いて匂いを嗅ごうとする美九と、ちょっと引き攣った余裕の笑みを浮かべながら後ずさりして逃げる琴里。リビングではテーブルを中心にそんな光景が繰り広げられていた。
「理由を聞くまでも無くお断りだけれど、一応聞いてあげるわ。どうして匂いを嗅ぐ必要があるの?」
「そうですねー。簡単に言うと、琴里さんからもだーりんの匂いがするか確かめたいんですぅ。何故か四糸乃さんからも、だーりんと七罪さんのとっても濃厚な香りがするんですよねー?」
『おっとぉ?』
さも疑問であるかのように首を傾げながら言う美九であったが、その表情は完全に全てを理解した上で口にしていることが分かる嫌らしい笑みだった。
最早疑いようはない。美九は真実に辿り着いてしまった。
「あー、うん。終わったわね――ふぎゃっ!?」
「お前が大切なこと言わないからだぞ! 何でこんな土壇場になるまで黙ってたんだよ!? うあっ、いてててっ!」
「う、うっさい! あんなこと言えるか、このロリコンハーレム女装野郎! 頬っぺた抓んなぁっ!」
その原因とも諸悪の根源とも言える、極めて大事な情報を口にしなかった七罪の頬っぺたを抓ってお仕置きする。向こうも向こうでお玉でポカポカ反撃を繰り出してきたため、キッチンでは非常に静かで無駄な争いが巻き起こっていた。
せっかく美九の夜這いを乗り切ったと思ったら翌朝にバレるという、昨夜の頑張りが完全に無に帰した状況である。一番頑張っていたのは士道ではなく七罪かもしれないが、それにしたってこれはない。予め教えてくれれば対策の立て様があったかもしれないというのに。
「………………そう。なるほどね。それはその、とても不思議ね?」
しかしリビングの状況が気になるので、すぐに争いを止めて覗き込む。頼りになる琴里も最早誤魔化す方法が見つけられないようで、明らかに狼狽えていた。
『あららー、さすがに琴里ちゃんも不測の事態にバグっちゃってるねー。もうゲロっちゃった方が良いんじゃない?』
「い、いえ、まだ誤魔化せるわ……」
「うーん。美九は確かにあんまり頭は良くないですけど、さすがにもう無理だと思いますぅ。まだ誤魔化そうとするなら、身体に直接聞いちゃいますよ~?」
そう口にして、何かを揉むような手つきでわきわきと指を蠢かしながら琴里に迫っていく美九。もちろん表情はアイドルがしてはいけないヤバい表情だ。
美九の恐ろしい姿に屈したのか、それともどうにもならない現状を受け入れたのか。渋い顔をしていた琴里はやがて大きなため息を零し、降参を示すように両手を上げた。
「はぁ……悔しいけど、その通りみたいね……」
「あの、ということは……美九さんも……?」
「ええ。こうなったら美九も引きずり込んで共犯にするしかないわね。全く、数日前の残り香程度にも反応するなんて、一体どんな鼻をしているのかしら……」
『イェーイ! ナイスバディのお姉さん枠の登場だね! これはプレイにも多様性が生まれて捗るってんもんだよー!』
酷く無念な気持ちを滲ませる琴里に対し、いまいちどう反応すべきか悩んでいる様子の四糸乃。そして何の憂いも躊躇いも無く喜びはしゃぐ『よしのん』。
どうやら見事に結末が確定してしまったようだ。もちろん美九がこんないかがわしい関係に加わるかどうかはまだ話題に上っていないが、折紙に次いで愛情表現に積極的な美九である。プレイの内容によっては合意の上で女の子をペロペロできるし、加わるかどうかなど正直考えるまでも無かった。
「えっと……おめでと、って言った方がいい? それとも、ざまぁ?」
「何でざまぁが選択肢にあるんだよ。というかお前はこれでいいのか? 俺と過ごせる時間が減るし、絶対美九にとんでもなくエロいことされるぞ?」
「まぁ、それは仕方ないでしょ。私ばっかり幸せになってたんだし、美九も加わるならちょっとは罪の意識も薄れるってもんよ。だから多少の不幸は受け入れないとね……あはは……」
嬉しそうな、それでいてどこか痛々しい乾いた笑みを零す七罪。慰めてやるべきかどうか非常に迷うところであったが、結局は放っておくことにした。その内美九と二人で七罪をじっくり愛してやりたいと思っている士道に、七罪を慰める権利など存在しなかった。
「えーと……とりあえず、話は学校終わってからでいいか? たぶんもの凄い長い話になるからさ」
「えー、夜までお預けですかぁ? そんなに焦らされたら、美九はどうにかなっちゃいそうですぅ……」
もうキッチンからこっそり覗いているわけにも行かないので、リビングに行って会話に参加する。
こんな早朝から話せるような内容では無いため話自体は後回しにしたかったのだが、どうにも美九は今知りたいらしい。もじもじとやたら官能的に身体を悶えさせつつ、恥ずかしそうに口元に手を当てていた。とはいえあくまで表面上の話である。
「頼むよ……あ、ほら。朝飯終わるまで七罪を膝に乗せてていいからさ」
「は? あの、ちょっと?」
『おおっと。よしのんはこの光景を前にも見たことがあるような……?』
ちょうどいいところに七罪がいたので、脇の下に手を入れてひょいっと持ち上げ、美九に賄賂としてプレゼントする。何だか抗議の声が上がったような気がしたが、ちょっと耳が遠くなっていて良く聞こえなかった。
「むむっ。交渉がお上手ですね、だーりん。分かりました。だーりんからの『あーん』も込みで手を打ちましょう」
幸い美九は要求を呑み、大人しく席についてくれた(七罪をしっかり抱き締めながら)。酷い抗議の視線をどこかから向けられている気がしたが、きっと気のせいだろう。
「ああ、分かった。それじゃあ俺は朝飯作りに戻るから、七罪は美九の相手を頼むな?」
「ううーん! だーりんの匂いと混ざり合った七罪さんの匂いはまた格別ですぅ! すー、はー……!」
「分かったわよ……」
あまり感情の感じられない答えが返ってきたのを確認してから、士道は朝食の準備を再開しにキッチンへと戻った。後ろで連続する深呼吸の音が聞こえたのはたぶん気のせいではない。
「……言っておくけど、説明は全部あなたがしなさい。私は許可を出した覚えも無いし、命令した覚えも無いっていうのに女を一人増やすんだから、当然の事よね?」
「お前わりと自分勝手な理由で秘密にさせてた癖に丸投げは無いだろ……」
キッチンに戻ったところ、酷く機嫌の悪そうな琴里が近づいてきてそう命じてくる。
独占欲の強い琴里としては、こんな不測の事態で関係を変化させることなど受け入れ難いのだろう。それに今までの関係では恋人たちの中で琴里が一番主導権を握っていたが、美九にまでそれが通じるとは思えなかった。ドSな性癖持ちの黒い方は主導権を握れなくなることにも苛立っているに違いない。
『あっはっは。大丈夫だよ、士道くん。よしのんも一緒に面白――ちゃんと説明してあげるからさ!』
「今面白おかしくって言おうとしたな、よしのん!?」
そして傍観者のような『よしのん』は、こんな状況でもひたすら面白がっているだけ。これは士道がしっかり説明しなければ、あることないことを美九に吹き込もうとするに違いない。どのように説明すべきかは予め考えておいた方が良さそうだった。
「あ、あの、士道さん。私も頑張って説明をしますから、元気を出してください……それと、朝ごはんの用意もお手伝いしますから……」
「……ああ。ありがとな、四糸乃。やっぱりお前は優しいよなぁ……愛してる……」
「きゃっ……は、はい。私も、愛してます……」
しかしやはり四糸乃だけは安定して心のオアシスであり、その優しさに堪らなく愛しくなった士道は何も考えずに四糸乃をかき抱くのであった。
尤もこんなに優しい女神のような子が、近い内に玩具のナイフを用いて七罪と修羅場を演じて見せるつもりだというのだから恐ろしい。癒しを得つつも末恐ろしいものを感じるせいか、いまいち心は温まらなかった。
「さて、それじゃあ説明してもらいますよー? 包み隠さず、ぜーんぶ話してくださいねー?」
そして学校での一日を終え、夕方から更にずるずると時間を引き延ばして夕食後。
最早これ以上引き延ばせないと観念した士道は、自室のベッドの上で美九と向き合っていた。もちろん七罪と四糸乃の姿もすぐ傍にあり、ある意味心強いと言えなくもない状況だ。
「わ、分かったよ。ただ、その前に一つこっちから質問いいか?」
「はい、何でもどうぞー?」
「……どうしても、この格好じゃないと駄目か?」
控えめに尋ね、自らの情けない姿を見下ろす。
そこにあったのはフリフリのメイド服に身を包んだ自分の姿。それもミニのスカートで短パンは無しという悪夢のような装いだ。だが真の悪夢はそこではない。今士道は女装ではなく、七罪の能力でマジに士織ちゃんにさせられていた。
当然男の象徴など綺麗さっぱり無くなり、身体の至る所が丸みを帯びていて喉ぼとけも見当たらない。変声機無しでも女声という死にたくなるような有様だった。
「うふふー。別に美九は怒っていませんけど、それでも飛びっきりの秘密を隠されていたのは事実ですからねー。なのでこれくらいは好きにさせて頂いても良いですよねー?」
「あ、ああ。そう、だな……」
当然これは士道が好き好んで女になっているわけではなく、話を始める前に美九が七罪にお願いをした結果だ。秘密を隠していた負い目のある士道たちは首を横に振ることはできず、観念してこんな姿になったのである。
「目が死んでるわよ、士織ちゃん……」
「そう言うお前もな、七罪……」
当然士道がこんな有様なのだから、七罪たちも似たようなものであった。美九の右腕に抱かれている七罪はスク水に二―ソックス、猫耳に猫尻尾と言う非常にマニアックな恰好をさせられているし、左腕に抱かれている四糸乃は可愛らしいウサ耳と悩ましい網タイツが似合うバニーガールの格好だ。
正直この場に限っては士道よりも美九の方が明らかにハーレムを築いていた。全員をこんな格好にさせた後、十分近く頬ずりしたりキスしたり匂いを嗅いだりして楽しんでいたのだ。ちなみに琴里はこの展開を予期していたのか、仕事があると言って夕方の段階で逃げている。未だに帰ってきてはいない。
『うーん。何か逆に四糸乃だけ普通な気がするなー……』
「えっ……へ、変、かな?」
「そんなことはありませんよー? 四糸乃さんも七罪さんも、とーっても可愛らしくて食べちゃいたいくらいですぅ! もちろんだーりんもですよ!」
「ありがとな、美九。でも毛ほども嬉しくないぜ……」
「右に同じ……」
七罪と四糸乃を左右に侍らせつつ、女体化させられてしまった士道に満面の笑みを向けてくる美九。紛れもなく美少女の笑顔なのに、これほど嬉しく感じられないのは初めての事であった。
「さてさて、それじゃあ単刀直入に聞きますねー? だーりんは、七罪さんや四糸乃さんとエッチなことをしてるんですかぁ?」
「マジで単刀直入だな……ああ、そうだよ。ついでに琴里ともな」
『あ、ちなみに順番は七罪ちゃん、四糸乃、琴里ちゃんの順だよー?』
いよいよ核心に迫ってきた美九に対し、どうせバレているので包み隠さず答える。正直こんなことを話さなければいけないのは辛いところだが、まさか四糸乃に助けを求めるわけにもいかない。
というか今この瞬間に至るまでは何とか引き延ばそうと足掻いてたはずなのに、今は正直もうどうでもよくなっていた。正真正銘女の子の士織ちゃんに変身させられていることを思えば、自身の性生活の暴露など痛くもかゆくもない。
「ほうほう。一体どういう経緯でそんなことになったんですか? 七罪さんたちの愛らしさに、だーりんが辛抱堪らず襲い掛かってしまったとか、そういうことですかぁ?」
「まあ、大体そんなとこだ。本当はもうちょっと複雑だけど、そこは逃げた奴に後で聞いてくれ」
「分かりました! 琴里さんにはどんな格好をしてもらいましょうかぁ……うふふふ……」
琴里だけこの羞恥攻めから逃げたことが癪なので、後で同じ目に合うことを期待してそう口にしておく。
尤も複雑な事情こと、七罪のフェロモン云々に関しては琴里が一番詳しいのも事実だ。何せ怪しげな媚薬を作り出しているくらいなのだから、少なくとも士道よりは断然詳しい。適材適所という言葉もあるし、それに関しての説明は琴里に任せるのが賢明だろう。決して琴里も自分たちのように辱めにあって欲しいから、という邪な理由だけではない。
「それで俺が七罪に対してやらかしちまったんだけど、七罪は何だかんだ受け入れてくれたんだよ。で、お互いに関係を隠しつつほぼ毎晩貪るように激しくヤってたんだけど……」
「ちょっ!? 他に言い方あるでしょ!?」
『そこである日、よしのんは気づいちゃったのさ! 七罪ちゃんの普段人には見せないところに、たっぷりキスマークがついていることにね!』
ぴょこぴょこと飛び跳ねるようにして主張する『よしのん』の姿に、士道は自らの失敗を思い出す。
あの頃の士道はチェリーを卒業したばかりであり、理性より興奮の方が頭の大部分を占める状態だったのだ。そんな状態で欲望のままに七罪を貪っていたため、キスマークが残ってしまったというわけである。一応今ではしっかり気を付けているので、少なくとも朝まで残るような痕はつけていない。
「なるほどー。そこで四糸乃さんも加わったわけですねー?」
「は、はい……私も、士道さんに……して、もらいたかったので……」
「きゃー! 四糸乃さんとっても可愛らしいですぅ!」
「うわ、何今の。超エロい」
「やっぱお前美九に似てきたぞ。気持ちは分かるけどな……」
「……しにたい」
ぽっと頬を染めて微かな羨望を口にした、可愛らしくも悩ましい四糸乃の姿。それに対して一応この場の全員が似た感想を抱いていたものの、そんな自分を受け入れたくないのか七罪は更に死んだ目をしてぐったりしていた。やはり美九と似ている、というのはよほどショックな言葉らしい。
『そんなわけで、士道くんはそこから毎晩二人のロリっ子をとっかえひっかえしてお楽しみになっていたのさ。そしてある晩は何と七罪ちゃんと四糸乃を同時に……』
「え!? 何ですかその夢のようなプレイは!? ちょっとその辺りを詳しく!」
「話進まないから後でな。で、その後琴里が最初から全部知ってたってことを教えてきやがったんだ。しかも度々覗いてたってことまでな。俺と七罪や四糸乃との夜を……」
当然の如く3Pの話題に食いついてきた美九だが、プレイの内容まで話していると埒が明かないので今話す気は無かった。そういったことは後日少しずつ語っていくべきだ。
「うぅ……何か思い出したら恥ずかしくなってきた……! あんな顔ばっちり見られてたとか死にたい……!」
「な、七罪さんの笑顔は、とっても可愛かったですよ……!」
琴里の話題になったことで、愛し合う姿を覗かれていた事実を思い出した七罪が顔を真っ赤にして俯く。七罪には悪いがスク水ニーソ猫耳猫尻尾という格好で恥ずかしがっているため、びっくりするほど興奮してしまう士道であった。
尤も興奮して立ち上がるモノが今は存在しないので、酷く虚しい気分だったが。
「それだけならまだ良かったけど、アイツ他の精霊を満足させられるかどうか俺のテクニックを確かめる、って言って自分を抱けって命令してきたんだぜ? 試験だ何だって言って。ツンデレ極まってるのも限度があるってもんだぜ」
「そうですねー。そこまで徹底しているなんてさすがは琴里さんですぅ」
「ま、あの時の琴里は処女だったから俺が楽にねじ伏せてヒィヒィ言わせたけどな? ついでに色々と俺への気持ちを口にさせたりして楽しんだぜ。何だかんだでアイツは俺のことが大好きだからな」
「どっちかっていうと、今はあんたがヒィヒィ言わされてる側よね……」
「お前、実は結構余裕あるんじゃないか……?」
死んだ目をしたり無駄に恥ずかしがっている割には、ちょくちょく突っ込みを入れてくる七罪。
とはいえどちらかと言えば士道がヒィヒィ言わされる側なのは否定できなかった。プレイ中に攻められて喘いでいるとかではなく、琴里の性癖や性欲に辟易している現状についての事だ。とりあえずそれらに関しては矯正不可能だと思い知ったので、確かにヒィヒィ言わされていると言っても過言ではない。
「まあ、琴里はあんな奴だから結局その試験に合格は出してくれなかったんだ。許可するまでは自分たちだけで我慢しろって言ってさ。しばらく俺を独り占めしたかった、っていうのが理由らしいけどな……」
「やーん! 琴里さんったらツンデレ過ぎて堪らないですぅ!」
『――というわけで! 四糸乃たちは士道くんとそれはもうめくるめく熱い夜を過ごす関係になったのさ! 説明終わり!』
七罪と四糸乃を両腕でかき抱きながら悶える美九の姿を尻目に、ついに説明が終了する。
細かい部分はあえて省略したが、そこは琴里の担当だ。琴里も何かおかしな恰好をさせられて、美九に好き放題弄ばれるべきである。結構狼狽しそうに思えるものの、狡猾な琴里はリボンを白い方に変えて対処するに違いない。リボンを変えないよう士道がしっかり見張らなくては。
「ふむふむ、なるほど。そういうことだったんですねー?」
しばし琴里のツンデレ加減に悶えていた美九も落ち着き、経緯を理解して深く頷く。それでも未だ七罪たちを離していないあたり、一体いつまでこの状態が続くのかは不明である。
「だーりんったら悪い子ですぅ。いたいけな女の子たちを好き放題に弄んでいたなんて……」
「それはちょっと語弊が……いや、無いな……」
『ないよねー。特に七罪ちゃんとか琴里ちゃんとか好き放題に触りまくってるもんねー。その癖四糸乃にはあんまり変なことしないし』
頬を膨らませてぷりぷりと諭してくる美九に対し、否定できる材料が見当たらず頷くしかない士道。さり気なく『よしのん』も不満を零しているので、二方向から責められて極めて居心地が悪かった。
「それも他の皆に隠れてだなんて。どれだけいけないことをしていたか分かっていますかぁ?」
「ああ、ちゃんと分かってる。でも七罪たちが、あまりにも可愛すぎてな……」
『うわー、まるで浮気男みたいな言い訳!』
「なるほど! じゃあ仕方ないですね!」
「自分で言っといて何だけどいいのかよ!? もっと他に何か言うべきことがあるんじゃないのか!?」
さすがにもうちょっと責めてくるかと思いきや、美九はあっさり納得してしまった。『浮気者』とか『女たらし』とか『ロリコン』といった罵詈雑言も覚悟していた士道としては、あまりにもあっさり許されいっそ物足りない気分であった。
「言うべきことですかー? うーん、特にないですねー。できることならだーりんを独り占めしたいっていう琴里さんたちの気持ちも分かりますし、いきなり全員とそういう関係になるのは辛いっていうだーりんの状況も想像できますし……」
「思ったよりも寛容だな、美九……じゃあこの格好もう止めても――」
「あっ、それはそれとして可愛いのでそのままでいてくださいねー?」
「あ、はい……」
しかし今の士道や七罪たちの格好を戻すのは許してくれないようで、華やかな笑顔で以て言い聞かされてしまう。
よくよく考えれば女体化させられてメイド服まで着させられているのだから、罵詈雑言が無くともだいぶ心に来る仕打ちだ。というかこんな仕打ちを受けるくらいなら思いっきり詰られた方がまだ良かった。
『んー? じゃあ美九ちゃんはこの不埒で淫らな関係には加わらないってことー?』
「そんなことは言ってません! むしろ加えてください! 私もだーりんにいっぱい愛されたいですし、七罪さんたちにいっぱいエッチなことがしたいですぅ!」
「ひっ……!」
「……っ!」
首を傾げた『よしのん』に対し、目の色を変えて力いっぱい断言する美九。いっそ惚れ惚れするほど煩悩丸出しの言葉に、その腕の中で七罪と四糸乃が身体を強張らせていた。明らかにターゲットが士道だけではないことが分かる発言なのだから、二人の反応も納得である。
『これでもかってくらい欲望塗れの発言だ! その飾らない潔さ、よしのんは大好きだよ!』
「ありがとうございますぅ! それでだーりん、美九の事も七罪さんたちのように愛してくれますかぁ?」
さすがにちょっとは恥ずかしいのか、美九はぽっと頬を染めて尋ねてくる(二人の幼女を抱きしめながら)。
士道としては下心を抱いた状態で受け入れるのは不誠実なので、できれば避けたいところだった。客観的に見ても美九は美少女で、非常にスタイルの良い魅力的な女の子。美九と肌を重ねて愛し合えるのなら、何も考えずに頷いてしまいたいところだ。そんな邪な考えを抱いている以上は、受け入れる資格などありはしない。
しかしここに至っては不誠実云々も資格云々も言っていられなかった。もう美九にはバレてしまったし、言わば弱みを握られたようなものなのだ。最早選択肢などありはしないし、下心を抜きにすれば士道も純粋に美九と愛し合いたかった。たっぷりと愛を伝え、幸せにしてあげたい。それこそが士道の役目なのだから。
「……ああ。お前が望むなら、俺は誠心誠意応えるよ。お前のことも、幸せにしてやりたいからな」
「女三人抱いてる癖に、もう一人増やすのが誠心誠意……?」
『しかも最近は3Pにも目覚めてるよねー』
「で、でも、士道さんは、誠実な人……だよ?」
「そこ、うるさいぞ。四糸乃以外」
やむなくできる限り誠実に頷いた士道だが、外野が少々うるさかったので全く台詞が決まらなかった。四糸乃だけはフォローしてくれたものの、言い方が微妙に疑問形だったような気もする。
「うーん……気持ちは嬉しいんですけど、せっかくなので飛び切りロマンチックな誘い方が良いですぅ。というわけでだーりん、テイクツーです!」
「こんな状況でロマンチックとかありえないだろ。酷い無茶ぶりだな……」
ただ美九的にはあまり好みの誘い方ではなかったらしく、やり直しを要求される。そもそも年端も行かない少女三人のハーレムを築いている男が、新たに別の女の子を加える時に使うロマンチックな台詞など果たして存在するのだろうか。
大いに頭を悩ませるものの、よくよく考えれば相手は美九。士道は特別とはいえ基本的に男は苦手で、女の子が大好きな美九だ。今も女の子を侍らせ、両手に花の状態。そんな美九がロマンチックだと感じるような誘い文句とは――
「――美九! 俺と一緒に可愛い女の子を、特に七罪をペロペロする関係になってくれ!」
「何で名指し!? しかも考えた末に出たロマンチックな言葉がそれ!?」
やはりこれしか存在しない。極めて真面目な表情を作り、真剣に美九の瞳を見据えながら口にした。当然と言えば当然だが、七罪からは大不評の誘い文句であった。
「だ、だーりん……何て情熱的な誘い文句……!」
「しかもそれでいいの!? え、本気!?」
とはいえ美九にとってはやはり最高にロマンチックな言葉だったらしい。瞳を潤ませ、頬をバラ色に染めて感動を露わにしていた。自分でやっておいてなんだが、士道自身も本当にこれでいいのかと少々呆れを覚えてしまった。
「分かりましたぁ! もう早速ペロペロしちゃいましょう! 四糸乃さんも交えて四人で!」
『おっと、よしのんを忘れちゃダメだよー?』
「はっ!?」
どうやら本当に感極まっているようで、美九は今にもこの場でおっぱじめようとする。しかも四人(プラス『よしのん』)でという、初めてにしてはあまりにも過激でアブノーマルなプレイを。さすがにこれには呆れを通り越してただただ驚愕するしかない。
「いやいやいや、初めてでいきなり4――じゃなくて、5Pとか頭おかしいでしょ! まずは普通に士道と一対一じゃない!?」
「はっ!? それもそうですね。だーりんの情熱的な言葉と、七罪さんたちのあまりの可愛らしさに我を忘れていましたぁ……」
『……ちっ』
七罪に何度か頬を叩かれ、美九は正気を取り戻したらしい。士道としても一安心であった。何か小悪魔が舌打ちしていたような気もするが、きっと空耳に違いない。
『んー、よしのんとしてはめっちゃ5Pをしたいんだけど、美九ちゃんは初めてだからねー。やっぱりしばらくは士道くんとマンツーマンの方が良いかなー? 士道くんのテク、もの凄いからね……』
「そ、そんなに凄いんですかぁ!? ごくり……!」
「いや、どうだろうなぁ……」
『よしのん』のアドバイスと意味あり気な台詞に、美九は畏怖のこもった瞳でこちらを見つめてくる。
正直なところ、士道としては自分のテクニックがどれほどのものかは良く分からなかった。琴里を屈服させることができたので少なくとも下手ではないはずだが、士道のことが世界一大好きで性欲が凄まじい琴里なら、案外並み程度のテクニックでも十分屈服させられたと思われる。仮に下手でもドMでもある琴里なら、焦らされていると好意的に解釈してくれそうだ。結局のところ琴里の反応は全く参考にならなかった。
『またまた謙遜しちゃってー。三人のロリっ子を相手に培われたテクは最早芸術の域だよー? 一番詳しいのは、やっぱり士道くんの初めてのお相手の七罪ちゃんかなー?』
「ん……ま、まあ確かにもの凄いわね。正直初めての時は童貞丸出しでかなり独りよがりだったけど、今はそういうの全然ないし……き、気持ちいいとこ、的確にねちっこく攻めてくるし……一体何度頭の中真っ白にさせられたことか……」
「は、はい……何も考えられなくなるくらいに、気持ち良くしてくれます……」
頬を染めながら答える二人だが、いまいち士道には実感が湧かない。それというのも七罪が言う通り最初が酷すぎたため、上手くなったというよりマシになったという感覚の方が強かったのだ。
確かに上達は感じているものの、さすがに『よしのん』の言葉は少々盛りすぎだった。七罪たちに関してはむしろ二人が敏感すぎるのが問題だと思われる。とはいえ士道自身、自らの技量を正確に把握できていないのは確かだ。
「だーりんはテクニシャンなんですねぇ……むむむ……」
「何で対抗意識燃やしてんだよ、美九……」
『まーそういうわけだから、しばらくは士道くんと二人きりの水入らずの方が良いと思うなー。もちろんよしのんは複数プレイ大歓迎だから、いつでも誘ってくれていいからね!』
「分かりましたぁ! 近いうちに皆でくんずほぐれつしましょう! それじゃあだーりん、美九は今夜に向けて色々と準備をしていますから、後でちゃんと来てくださいね?」
どうやら今現在話すべきことは全て終えたらしく、ようやく七罪たちを解放する美九。四糸乃は大丈夫そうだったが、七罪は解放された瞬間力なくベッドにぶっ倒れた。
当然と言うべきか何と言うか、美九は今夜隣の精霊用マンションの一室に泊まることになっている。準備云々の発言から考えるに、どうやら士道は数時間後にはまた新たな少女に手を出す不誠実な男にならなければいけないらしい。
しかし七罪に四糸乃、琴里の時点ですでに三人だ。二人以上の時点で確実に不誠実なのだから、三人と四人では違いなどあってないようなものだ。どのみちすでに前科塗れの酷く罪深い男なのだから、今更それが一つ増えた程度痛くも痒くもない。故に士道もついに覚悟を決めるのであった。
「ああ、分かった。零時くらいに行くから、美九も心の準備を済ませとけよ?」
「そんなものとっくにできてますよー。むしろ今から待ち遠しいくらいですぅ。それじゃあだーりん、またあとでお会いしましょうね?」
覚悟を決めた士道に対し、美九は最後に投げキッスを一つ飛ばしてから部屋を出て行く。
美九の様子は全く以ていつも通りであり、これから士道と一糸纏わぬ姿で身体を重ね、深く繋がりあうことに対する恥じらいや躊躇いは微塵も見受けられなかった。七罪や四糸乃とは全く異なる反応である。
始める前からあの様子では、美九を満足させるのは非常に難しそうだ。そもそも士道は年端も行かない小さな少女の身体を抱いた経験ばかりなため、もしかすると美九を相手にした場合致命的な失敗をしてしまうかもしれない。
自分の技量もいまいち良く分からないため、可能ならば本番の前に練習しておきたいところである。それもロリっ子ではなく、美九のような大人のお姉さん体型の子を相手に。今現在士道と深い仲になっている少女の中にそんな子はいないものの、幸いそんな子になれる子なら目の前で死んだように突っ伏している。
「七罪、ちょっと頼みがあるんだけどさ……」
「……予行演習したいから、あっちの私に変身して欲しいって?」
「あ、ああ……よく分かったな、お前……」
『さすがは七罪ちゃん! 士道くんと以心伝心だね!』
「す、すごいです、七罪さん……!」
とりあえず普通に切り出したところ、頼もうとしたことを的確に言い当てられてしまった。勘が鋭いとかそういう次元ではない七罪の鋭さに、士道はある種の怯えすら抱く。
尤も七罪は士道が初めて四糸乃との夜を迎える前、優しく抱いてあげられるよう自らの身体を練習台にさせたという過去がある。もしかすると美九に関しても最初から自分が練習台になるつもりだったのかもしれない。
「けど、嫌なら断ってくれていいぞ。はっきり言うと、ちょっと美九みたいな子を相手にするのは経験少ないから練習したいだけだからな。そんな理由で抱かれても嬉しくないだろ?」
「ん、別にそれくらいなら構わないわよ。あっちの私も一応私だし、琴里に変身するよりは百倍マシよ……」
「何かトラウマになりかけてるな、お前……」
七罪を気遣って飾らない本音を口にしたのだが、返ってきたのは酷い妥協と乾いた笑いだった。黒琴里の姿に変身させられ、白琴里に無理やりに3Pに参加させられた苦い記憶は未だ薄れていないらしい。
「それに練習って言っても、その……ちゃんと、愛してくれるんでしょ?」
「ああ。それはもちろんだ」
恥ずかしそうに頬を染めながらも、確かな期待の浮かぶ瞳を向けてくる七罪。
練習だろうが何だろうが、そこだけは間違いなく事実だ。だからこそ士道は迷いなく断言した。一瞬あまりの可愛らしさにこの場で襲い掛かりたくなったのは秘密である。七罪の格好はまだスク水ニーソ猫耳猫尻尾という誘っているとしか思えない格好なので、むしろ士道は堪えている方だ。まあ襲い掛かっても今の士道の身体には肝心のモノがないので、やりたいことはやれないのだが。
「じゃあ良いわ。その代わり、私を練習に付き合わせるからにはちゃんと美九の事ヒィヒィ言わせなさいよ?」
「お、おう。お前ちょっと恨み入ってるな……」
気持ち良くしてあげろという意味かと思ったが、どうやら違ったらしい。七罪は可愛らしいが酷くあくどい笑みを浮かべていた。たぶん意識を失うまで快楽攻めしてやれとか、そういう意味だろう。美九から受けた過剰なスキンシップに恨みが積もっているに違いない。
『よーし、それじゃあ今夜に向けて練習だね! 早速始めちゃおう!』
「いや、言いにくいけど3Pじゃないから四糸乃は不参加だぞ? ……いや、普通3Pの方が言いにくいだろ。何言ってんだ、俺……」
さりげなく四糸乃も混ぜようとした『よしのん』に対し、そう断りを入れる士道。そして一拍置いて自身の常識が若干狂いかけていることに気づき、頭を抱えてしまう。
今のは明らかに3Pは当然のような発言であった。どうやら『よしのん』のせいで士道もだいぶ毒されてしまったらしい。普通3Pはアブノーマルである。
「あっ、そ、そうなんですか? じゃあ私はお邪魔にならないように、戻りますね……?」
「何か四糸乃も3Pが当たり前みたいな反応してる――って、待って待って四糸乃! 服っ! 服戻すから!」
そうして部屋から出て行こうとする四糸乃を慌てて呼び止め、バニーガールの格好から元の姿に戻す七罪。その後に自分と士道の姿も元に戻したので、これで士道の大切なモノも完全復活だ。
とはいえ四糸乃と七罪の愛らしい姿はもっと見ていたかったので、機会があればまた先ほどと同じ格好をしてもらうのも良いかもしれない。数時間後に美九との初めての夜を控えている癖に、そんなことを心に決める心底邪な士道であった。
もちろん七罪たちに先ほどの格好をさせたとしても、士道自身も同じく士織ちゃんになる気はさらさら無かったが。
【朗報】美九、加入。
実は結構悩みました。せっかくここまでロリ一本で来たのだし、これはもう最後まで貫き通すべきでは? という考えもありました、ですが最終的には「美九がいないと士道さんと美九の二人がかりで七罪をペロペロすることができない」という理由が決め手となり加入が決定しました。
余談ですが加わるのに一番無理が無いのは折紙だったりします。あの人平気で盗聴器とか仕掛けてるから、むしろまだバレてないのが奇跡だよ。たぶん義妹が頑張ってると思われる……。
更新停止期間の執筆状況の進捗はどれくらいの頻度で活動報告に載せるべきか
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