※この作品はR-18です。

士道クリミナル   作:サイエンティスト

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 題名通りのアフターフォロー回。まあ美九も入って四人目だからそれくらいはね? 
 本来なら七罪が一番心配なはずだけど、案外琴里もそこそこヤバそうなのが気になる所……。


〇士道アフターフォロー

 

「――そんなわけで、ついに美九も俺たちの関係に加わっちまったから、一応改めて報告をしとくな? お前なら大丈夫だとは思うけど、喧嘩とかせずに仲良くしてくれると俺も嬉しいぜ」

「別に喧嘩はしないわよ。それに色々変なことされるからちょっと苦手ではあるけど、その……嫌いではないし……」

 

 自分たちの爛れた関係に美九が正式に加わった事実を語ると、七罪は若干恥ずかしそうに視線を逸らしながら、美九に対しての好意的な言葉を口にする。

 時は美九との朝チュンを済ませた当日の夜。そこそこ夜も深くなってきて性的な話をするにはばっちりな雰囲気だったため、士道は満を持して七罪に報告をしていた。今回は結構真面目な話もするつもりなので、七罪の部屋に上がった途端にお尻を撫でたり、髪に顔を埋めたりもしていない。ベッドの上できっちり向き合ってお話中だ。もちろん話が終わったらしっかり濃厚な触れ合いを楽しむ心づもりであるが。

 

「それで、美九の事はちゃんとヒィヒィ言わせてやったのよね?」

「ああ。何か予想外に美九が苛めたくなる感じだったせいで、勢い余って少し責め過ぎちまったけどな。初めての美九にドSって言われる程度には……」

「初めての相手にどんだけハッスルしてんのよ、あんたは……」

 

 かなり悪戯っぽい邪悪な感じの笑みを浮かべた七罪に対し、本当に美九の事は嫌いではないのか疑問に思いながらも答える。しかしせっかく七罪の望み通りにしてやったというのに、返ってきたのは呆れたような目つきだった。

 何故あそこまで苛めたくなったのかは正直良く分からないが、本人もかなり満足気だったので別に問題は無さそうだ。むしろあの美九が終始受け身だったことの方が士道には衝撃である。普段の様子を見ていると黒琴里ほどではないとはいえ、わりと攻めてきそうなイメージもあったのでなおさらだった。

 

「でも美九がたっぷり攻め立てられて腰が砕けたってんなら上出来ね。何かスカッとしたわ」

「そりゃ良かった。で、ここからが本題なんだけどさ――七罪、お前何か悩みとかあるか? 俺にしてほしい事とかないか?」

「え、何かいきなり優しい……どうしたのよ、突然? 何か企んでる?」

 

 真面目な話に移った瞬間、あろうことか疑いの目を向けてくる七罪。

 酷い反応だと思ったものの、マシになってきているとはいえネガティブな七罪には無理もない反応だろう。決して士道が常日頃からセクハラしまくっているせいで、人間不信ならぬ士道不信に陥っているのではないと思いたい。

 

「ほら、お前のフェロモンの効果が強まったのって毎回人数が増えた時だろ? だから今回もまた変なことが起こるかもしれないし、その前にお前の悩みとか不安とかを払拭できればって思ってさ」

 

 そう、真面目な話とはこれのこと。七罪の精神状態安定のためのアフターフォローだ。

 士道が自分から離れて行かないよう、士道が気持ち良くなれる身体に作り変わり、果ては士道だけに性的興奮を覚えさせるフェロモンまで創り出し、その効力を強めていた七罪だ。全て無意識とはいえ四糸乃と琴里が加わった時点でこんな有様なのだから、更に美九が加わったらもう何が起こるかなど想像もつかない。そのため何か起こる前にフォローにきたわけである。

 尤もほぼ即日で実行に移したのは、朝方に琴里からそれとなく注意を受けたからだったりする。琴里からしてもこれ以上おかしな事が起きるのは避けたいのだろう。

 

「あ、そういうこと。てっきりハーレム維持のためのご機嫌取りかって思ったわ」

「嫌な言い方するな。俺はお前のこと心配してるんだぞ? どうせまた自分は捨てられるんじゃないかとか、放置されるんじゃないかとか考えてそうだし」

 

 実際七罪はその手の不安を抱えていたからこそ、無意識に精霊の力を使ってしまっているのだ。まして今回関係に加わったのは、七罪お姉さんに勝るとも劣らない凄まじいスタイルを誇る美九。

 今までは七罪お姉さんに変身すれば、唯一の大人の女性の身体を持っているというアドバンテージがあった。そのためロリ塗れの関係の中でもそこそこ平気だったのだろう。しかし今回美九が加わったことで、いよいよ自分の存在意義が無くなったと考えても全く不思議ではなかった。というか元来七罪はそういう奴である。

 

「だから俺にしてほしいことがあれば何でも言ってくれ。できる限り叶えてやるからさ。もちろん悩みだって何とかしてやるから、遠慮しないで何でも吐き出してくれていいんだぜ?」

 

 何らかの変化を発生させないため、そして七罪を安心させるため、会心の笑顔で以てそう口にする。

 尤も八人の少女の唇を奪い、その内の四人の少女と身体を重ねているという事実を考えると、ハーレム維持のためのご機嫌取りと取られても仕方のない状況ではあった。まあ士道はしっかり全員を心から愛してるのでセーフだと思いたい。

 とにもかくにも、愛する七罪のためなら何でもするつもりだ。むしろ頼られるのも求められるのも嬉しいので、何を願われるか大いに期待していたのだが――

 

「あー、うん。気持ちは嬉しいんだけど、特にないわよ?」

「……は?」

 

 返ってきたのは願いも悩みも特にないという、どうしようもない答えだった。

 これが四糸乃あたりならまだ理解できる答えだが、相手は七罪だ。不安も願いも何もないなどという言葉が、本心なわけなど絶対にありえない。

 

「……いや、そんなはずないだろ。絶対何か色々不安に思ってるだろ? 正直に言えよ、七罪」

「いや、正直に言ってるんだけど? 別に今回は捨てられるとも思ってないし、今特に士道にしてほしいこともないし」

「嘘つけ! 歩くネガティブのお前が何にも不安に思ってないとかありえないだろ! それに今回加わったのは、まな板のお前とほぼ正反対の身体つきしてる美九なんだぞ!?」

「言ったわね? 今まな板って言ったわよね? 分かった。もう二度と触らせない」

「あっ!? わ、悪い! 冗談だ、冗談! だからそれだけは勘弁してくれ……!」

 

 あまりに信じがたい答えを返されたために我を忘れて禁句を口にしてしまい、七罪の機嫌を損ねてしまう。

 七罪に対してお触り厳禁など士道にとってはこの上なく惨い仕打ちであり、耐えられる自信は微塵も無かった。故に頭を下げて必死に謝り、身体ごとそっぽをむいてしまった七罪の怒りを何とか解こうと懸命に言葉をかけていくのであった。

 愛と温もりに飢えていたのは七罪のはずだったというのに、今ではこちらの方が触れ合いと温もりを求めているのだから本当に不思議である。とりあえず誠心誠意の謝罪を続けて七罪の魅力をひたすらに並べ立てて行くと、顔を赤くしながら食い気味に許してくれた。

 

「……で、本当に何も無いのか? 今なら何でも望みを叶えてやるぞ?」

「何でもって言われても……あっ。じゃあエロい悪戯するの止めてくれない?」

「悪い。それ以外で頼む」

 

 その要求を呑んだら先ほどのお触り厳禁とほぼ同義である。何でも叶えると言ったがものには限度というものがあった。

 

「……じゃあ、美九との3Pが嫌って言ったら止めてくれる?」

「悪い、それも除外してくれ」

 

 美九と二人で七罪をたっぷり愛してやるのは、現状一番楽しみにしているプレイだ。もちろん強制はしないが、かといって拒否されるわけにもいかなかった。

 

「……あの、じゃあ本当に何も無いわよ? というか、私のお願い聞く気全然無くない?」

「いや、ちゃんとあるけどこの二つは俺も譲れないぜ。お前にエロい悪戯するのは凄い楽しくて頻繁にやらないと落ち着かないし、美九と二人でお前をペロペロするのはちょっとした夢みたいなもんだからな」

「ねぇ、何か私に恨みでもあるの? それともただ単にドSなだけ?」

「もちろんドSなだけだ。けど、何にもないってのはさすがに困るな……」

 

 ジトっとした目で睨んでくる七罪の視線を流し、どうするべきか頭を悩ませる。

 確かに本人は願いも悩みも何も無いと言っているものの、それはあくまで自覚している範囲の話だ。無意識で怯えて色々やらかしている七罪の言葉を鵜呑みにして、フォローの必要性は無しと判断するわけにはいかない。

 これが琴里ならとりあえず(性的に)抱いてやれば解決しそうだが、相手は七罪だ。アレのように性欲が底抜けと言うわけでもないし、エッチなことが大好きというわけでもない。願いを推測しようにもなかなか難しいところであった。

 

「まあ一応考えてはおくから、とりあえず四糸乃のとこにでも行ったら? 少しは不安がってるかもしれないし、私と違って四糸乃には望みがしっかりあるでしょ?」

「なるほど、四糸乃か……」

 

 自分の事は後回しにしろという発言に思う所はあったが、同時に良い考えだと納得できる提案であった。四糸乃には士道に求めていることがしっかり存在するし、もちろん七罪の後は四糸乃の所にも行く予定だったのだ。

 それに四糸乃が目の前で色々と願いを叶えて貰っている場面を見せれば、七罪も触発されて何かお願いをしてきてくれるかもしれない。仮にそうでなくとも、少しは羨ましそうな顔をしてくれることだろう。ひょっとすると可愛らしい焼きもちを見せてくれるかもしれない。

 

「そうだな。よし、じゃあ四糸乃のとこ行くぞ、七罪」

「えっ、何で私も? わっ、ちょっ!? 何で小脇に抱えるわけ!? せめてもっとこう、お姫様抱っことかじゃない、普通!?」

 

 そうと決まれば善は急げ。何だか文句を言っている七罪を小脇に抱え、士道は四糸乃の下を目指して部屋を出るのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『いらっしゃーい、士道くん。それに七罪ちゃんも。なになに? もしかして押しかけ3P? もうっ、士道くんったらお盛んなんだからー?』

 

 快く士道たちを部屋に迎えてくれた四糸乃はともかく、それはもう下世話な言葉で迎えてくれる『よしのん』。

 隙あらば複数プレイを狙う姿勢は相変わらずであり、最近は士道自身もちょっと乗り気になってきたせいかとても嬉しそうである。

 しかしさすがに四糸乃に加えて七罪に琴里を交えた4Pだけはまだ躊躇われるため、それが士道としても最後の一線になりそうな感じだ。ここを越えたらもう最低最悪のゲス野郎でしかない。

 

「ははっ。魅力的な提案だけど今回はそれが用事じゃないんだ。悪いな、よしのん」

「今回は、って発言がもうだいぶ爛れてるわよね……」

 

 小脇に抱えていた七罪を降ろすと、ボソリと小さな呟きが耳に届く。

 一瞬反論しかけたものの、押しかけ3Pとやらに付き合わせた経験があっては反論など何一つ口にできなかった。

 

「悪いな、四糸乃。こんな時間に突然訪ねてきて」

「い、いえ、士道さんと七罪さんが一緒に訪ねてきてくれて、とっても嬉しいです……」

「あー、癒される。これだよ、これ。やっぱ四糸乃は可愛くて癒されるよなぁ」

「分かる。最高よね、本当に」

『おおっと、四糸乃の魅力に二人がメロメロに……イっちゃう? 押しかけ3Pイっちゃう?』

 

 あまりの眩さに浄化されそうなほど愛らしい笑みを浮かべ、喜びを露わにする四糸乃の姿に二人揃ってため息を零す。

 何だか小悪魔の誘惑の言葉が聞こえてきたものの、それは極力聞かないようにした。今夜の相手は琴里なので、ここで性欲を発散してしまってはこちらがヒィヒィ言わされることになってしまう。

 

「それで士道さん。私に、何か用ですか?」

「ああ。昨日、美九が俺たちの関係に新しく加わっただろ? それで七罪が何か不安に思ってまたやらかすんじゃないかって思って、色々悩みとか願いとか聞いてたんだよ。けど本人は何も思い浮かばないって言うから、先に四糸乃に聞きに来たんだ。四糸乃は何か無いか? 今悩んでることとか、俺にして欲しい事とか?」

「士道さんに、して欲しいこと……」

 

 何やらハッとした顔つきで、深く考え込む様子を見せる四糸乃。

 今までは無欲でわがままを言わない良い子代表の四糸乃だったが、今は士道と遠慮の無い深い関係になるために色々頑張っている最中だ。七罪と違ってしっかり望みがあるのだから、どんな願いを口にするか悩んでいるのだろう。

 

『じゃあロリっ子三人とよしのん、そして美九ちゃんを交えた空前絶後の6Pをしたいなー!』

「ははは。悪いけどお前には聞いてないぞ、よしのん? ていうか6Pって、もう何すればいいかわけ分かんなくなりそうだな……」

「もうそれ乱交って言った方が早くない?」

 

 悩んでいる様子の四糸乃に反して、安定の複数プレイを要求してくる『よしのん』。一応『よしのん』だって愛する少女(?)の一人なのだし、もちろん願い事だって可能な限り叶えてあげるつもりだ。

 ただし、それはあくまでも常識の範囲での話。6Pなどさすがの士道でも何をどうすれば良いのか想像もつかなかった。底抜けの性欲を持つ琴里が混じっているので余計に。

 

「えっと、その……な、何でも、良いんですか? それに、願い事は一つだけ、ですか……?」

「俺にできる事なら何でもいいぞ。それに数も別に決まってない。四糸乃が満足できるまで好きなことを言ってくれ」

 

 予想外に欲張りな発言をしてくる四糸乃にちょっと驚くも、窺うような上目遣いが可愛らしいので些細なことだった。七罪もこんな風に願いを口にしてくれればいいのだが。

 

「じゃあ、その……ぎゅっと、抱きしめて欲しいです……」

 

 しかし四糸乃の口から零れたのは、欲張りという言葉とは無縁の願い。あまりの可愛らしさに比喩的な意味での抱く行為に走りかける士道であったが、ごくりと唾をのむだけに留めて何とかその欲求は抑え込んだ。

 隣で七罪が冷めた目で視線を向けてきているあたり、何を考えたのか気付かれているらしい。相変わらず勘が良いというか、変なところで鋭い奴である。

 

「そんなことでいいのか? 分かった。それじゃ――」

「あっ……ふふっ、士道さん……」

「うっわ、超かわいい……」

『あーあ、よしのんだったらもっと有意義なお願いをするんだけどなー。まあ四糸乃は幸せそうだしこれでいっかー』

 

 要望通りにぎゅっと身体を抱きしめてあげると、四糸乃は腕の中で可愛らしい笑いを零す。

 どのような笑顔を浮かべているのかは士道からは見えないものの、横から自分たちを眺めている七罪の表情が結構緩んでいるため、かなり破壊力の高い笑顔を浮かべているらしい。もう携帯で撮影して是非とも送って欲しいところだ。もちろん今の七罪が浮かべている表情も含めて。

 

「士道さん……キス、してください……」

「本当可愛いお願いしかしてこないな、四糸乃。でもそれがお前の望みなら、好きなだけしてやるよ」

「んっ――」

 

 控えめで可愛らしいこのお願いを拒否することなどありえない。故に士道は四糸乃が望むまま、優しく口付けて愛しさを伝える。欲望が弾けたら困るので舌は使わず、唇を重ねるだけの口付けで。

 とはいえ四糸乃としてはそれで構わなかったらしい。幾度も触れ合わせる柔らかな唇の隙間からは、至福の吐息を零していた。

 

「えっと……じゃあ、私はこの辺で……」

「おっと、ちょっと待った七罪。お前もこんな風にしてほしいんじゃないのか?」

 

 目の前で抱き合って何度も唇を重ね合う士道たちの姿にいたたまれなくなったのか、それとも気を利かせようとしたのか。さりげなく席を外そうとする七罪を引き留め、身体を預けてきている四糸乃の姿をこれでもかと見せつける。

 席を外す理由がどちらであろうと、何か感じ入るものがあったのは間違いない。だからこそここで逃がすわけにはいかなかった。七罪には是非とも願いを口にしてもらわなければいけないのだから。

 

「えっ? いや、特には……」

 

 しかし返ってきたのはまたしても淡白で無欲な返答。これには士道だけでなく、腕の中の四糸乃も驚いて目を丸くしているのがはっきりと分かった。

 

「そ、そう、なんですか? 士道さんとキスしたいとか、抱きしめて欲しいとか、思ったりは……?」

「だって別に願わなくても士道の方からしつこいくらい抱き着いてくるし、何なら頻繁にキスしてくるし。あと変なところ触りまくってきたりもね……」

「何も願いがないのって、もしかして俺のせいか……?」

 

 頬を染めて口にしつつも、何故か最後でげんなりした表情を見せる七罪。

 どうやら無欲なわけではなく、士道が過剰なスキンシップを行っているからこそ満ち足りてしまっているらしい。これは思わぬ誤算だった。

 

「いいなぁ、七罪さん……」

『ねー。もっと四糸乃にもそういうことして欲しいよねー?』

 

 そして明らかに羨望の呟きを零す四糸乃と、若干棘を感じる聞こえよがしの呟きを零す『よしのん』。

 やはり七罪はともかくとして、四糸乃に対する接し方は今のままではいけないらしい。とりあえず明日から少し考えてみようと心に決める士道であった。

 

「そういうわけだから、私は部屋に戻るわね。あとは四糸乃をしっかり可愛がってやんなさいよ?」

 

 しかし今は七罪のこと。幾ら本人が必要ないと言っても、精神状態が乱れて色々やらかしている前科持ちの七罪だ。ここは満ち足りるどころか溢れ出すくらいには幸せを感じさせてやった方が、士道にとっても七罪にとっても最善に違いない。

 

「待った、七罪。じゃあこういうのはどうだ? 四糸乃、ちょっと耳貸してくれ」

「えっ? あ、はい」

 

 性的な方法以外でそれほどの幸福を感じさせるには、四糸乃の協力が必要不可欠。なので四糸乃に七罪を幸せにするための方法を語ると共に、協力を求めた。目の前でいきなり内緒話を始められたせいか、七罪がかなり不審な目つきをしていたがそこはスルーだ。

 

「頼めるか、四糸乃? 嫌なら断ってくれても良いぞ?」

「いえ、大丈夫です。むしろ私も、してみたいです……!」

 

 にっこり笑って極めて乗り気な四糸乃。ちょっと利用するようで罪悪感があったが、その反応で罪の意識はすっかり消え去った。四糸乃も楽しんでくれるなら皆がハッピーで何も言うことはない。

 

『なるほどー。でもさー、女の子を喜ばせるために他の女の子を使うなんて、ちょっと酷いんじゃなーい? あとでお詫びを要求しても構わないよねー?』

「ああ、もちろん。けど度を越した複数プレイは却下だからな?」

『ちっ……』

 

 先に予防線を張っておくと、『よしのん』は酷く感情のこもった舌打ちを零す。毎度のことながら虎視眈々とチャンスを窺う肉食獣のようでとても恐ろしい。

 

「というわけで、七罪。ほら、こっちに来い」

「え、やだ。何か怖いんだけど……」

 

 内緒話を終え、満を持して七罪を招くと何故か逆に後退る。

 別にエロいことをするわけではないしそのつもりもないのに、明らかに勘違いされていた。勘が鋭い癖に変なところで鈍い奴である。

 

「大丈夫だ、全然何も怖くないぞ。ほら、四糸乃も言ってやれ」

「心配しなくても大丈夫ですよ、七罪さん?」

「あ、はい。じゃあ行く」

「お前、四糸乃の言うことは素直に聞くよな……」

 

 四糸乃が一声かければ疑う様子は全く見せず、素直にベッドへと上がってくる。気持ちは分からないでもないが、信頼されていないように思えてちょっと傷つく士道であった。

 尤も普段の行いの差が大きいことは理解しているので、呟くように指摘することしかできなかったが。

 

「……で、何するわけ?」

 

 そうしてベッドの上に座り込んでいる四糸乃の隣に、同様に座り込む七罪。若干警戒気味に見えるのは士道が襲い掛かってくることを危惧しているのかもしれない。

 確かにベッドの上に可愛らしい幼女が二人もいるのだから、何も考えずに襲いかかりたくなってしまうところだ。今夜が性欲の化け物との逢瀬の夜でないのなら。

 

「はい、こうします……!」

「ひゃあっ!? え、ちょ、四糸乃!?」

 

 疑問に答えたのは四糸乃。七罪の身体を自分の方に向かせて、ぎゅっと正面から抱き着き濃厚なハグを繰り出す。四糸乃に対して微妙に怪しい感情を抱いている七罪は、当然のように顔を真っ赤にして慌てていた。

 

「ふふっ。七罪さんもぎゅっ、です」

「あわわわっ……!」

 

 四糸乃が更にぎゅっと抱きしめると、七罪は最早緊張しきった様子で固まってしまう。その両腕は四糸乃の背中側にあるものの、抱き返していいのか迷うようにふらふらとしていた。

 何度も3Pの中で肌を重ねあった相手だと言うのに、この初心な反応である。やはり四糸乃に対する怪しい感情を感じてしまうのは無理もない。ここは七罪の気持ちを汲んで、積極的に四糸乃との3Pに誘ってやるのが優しさというものだろう。士道はそう強引に解釈して、今後の3Pのための大義名分を得るのであった。

 

「そして、仲良く抱き合うお前らを俺が……」

「ひ、ひえっ!?」

 

 だが七罪に対してのハグはこれで終わりではない。七罪の背後に身体を寄せ、士道は抱き合う二人を丸ごとかき抱いた。二人の幼女を同時に腕の中に収める幸福感と背徳感が堪らず、何とも言えぬ達成感が沸き上がる。

 四糸乃の方も仲の良い友達である七罪とハグしながら士道に抱きしめられているため、かなり幸せそうだ。

 

「ふあ、ああぁぁ……!」

 

 もちろん一番幸せそうなのは七罪。もう慌てるのを通り越してろくに反応すらできなくなったようで、ぐったりと身体から力が抜けて完全にされるがままになっていた。

 抱きしめながら後頭部に顔を埋めてモフモフしても、抵抗どころか身動き一つない。普段ならギャーギャー騒いでくれるはずだというのに、あまりの幸福感にノックアウトされてしまったらしい。とりあえず士道はこれ幸いと七罪の髪に顔を埋めてモフモフしながら、たっぷり匂いを嗅いで楽しんだ。

 

『四糸乃と士道くんで七罪ちゃんをサンドイッチ! これ以上ない贅沢なハグだね! 七罪ちゃん、気分はどーう?』

「……もう、死んでも良いかも」

「予想外に重いこと言ってるぞ、コイツ……」

 

 ぽつりと零れた七罪の本音には呆れるしかないが、声音にはたっぷり幸福感が滲み出ていたので怒るに怒れなかった。少なくともそう思ってしまうほどの幸せに浸っているのは確かなのだから、そこに水をぶっかけるような真似をするのは無粋というものだろう。

 

「そ、それはダメですけど、眠るくらいならいいですよ?」

「そうだな。さすがに俺は今夜は一緒に寝てやることはできないけど、お前が眠るまでなら一緒にいてやれるぞ?」

 

 本音としては士道もこのまま三人で一緒に寝たいところだが、後が怖いのでそもそも眠れそうになかった。琴里に手錠をかけられ、寝室へと引きずられていく場面が容易に想像できてしまうからだ。寝室でどんな攻めを受けるかはあまり想像したくない。

 

「私は一緒に寝られますから、大丈夫ですよ? 七罪さん」

 

 とはいえ四糸乃はこのまま一緒に眠れるようで、にっこり微笑んで更に七罪にぎゅっと抱き着く。

 眠りにつくまで士道に添い寝をしてもらい、四糸乃と抱き合って仲良く眠る。七罪にとってはきっとこの上なく幸せなことに違いない。

 

「えっ? 何でこんな幸せなの? 何か後ですっごいしっぺ返しくらいそうじゃない、これ?」

 

 しかしどうも幸せ過ぎて逆に不安になってきているらしい。恐る恐る四糸乃を抱き返しながらも、そんなフラグが立ちそうな危ない発言を零していた。

 

「お前そんなこと言ってると本当に何か起こるぞ――」

「――何をしているんですかー、みなさーん! 私も混ぜてくださーい!」

「ひえっ!?」

「きゃっ!?」

『おっ、ちょうどいいところに! いいよいいよー! 美九ちゃんも混ざってみんなでやっちゃおう!』

「あーっ! 言わんこっちゃない!」

 

 瞬間、これ以上ないほどジャストタイミングで部屋の扉を開けて美九が現れ、ベッドで抱き合う士道たちに満面の笑みを浮かべて飛びついてきた。

 三人纏めて美九にかき抱かれ押し倒されてしまったのだから、士道たちだけでなくベッドが抗議の軋みを上げるのも仕方が無かった。

 

「あぁん! だーりんに七罪さんに四糸乃さんを一度に抱きしめられる欲張りセットが今ここに! 美九は感激ですぅ!」

「むぐぐぐ……!」

 

 そして士道、七罪、四糸乃の三人に順番に頬ずりをかまし、かと思えばそれぞれの頬にキスをしてくるというあらぶり具合。美九のテンションは完全に最高潮であった。

 反面自らフラグを立てて変なものを呼び出してしまった七罪は、士道と四糸乃にサンドされた状態で美九の豊満極まる膨らみを押し付けられる形になっているため、苦しそうにじたばたともがいていた。ちょっと羨ましくなってしまったのは秘密である。

 

「ていうか美九、昨日の今日でまた来てたのか。本当に狙ったようなタイミングで来やがったな……」

「うふふ、だーりんに会いたくてまた来ちゃいましたぁ。もしかして、だーりんには迷惑でしたか?」

「そんなわけないだろ? 俺も会いたかったよ、美九」

「んっ――」

 

 僅かに笑顔を曇らせた美九を、士道は優しい口付けで以て慰める。それ自体は世間一般でも恋人に対してよく見られる行動のはずだが、間に他の女の子二人を挟んだ状態なのはなかなか見られない光景だろう。

 なお、同時に三人から抱きしめられている七罪はついにもがく気力も無くなってきたようで、徐々に動かなくなっていった。さすがにそろそろヤバそうなので士道も四糸乃も揃って七罪を離したものの、不幸なことに美九の腕からは解放されていなかった。天国から一転地獄に落ちたような死んだ目をして、固く抱きしめられている姿が大いに哀愁を誘う。

 

「ふふっ、ありがとうございます。だーりん!」

『それで美九ちゃんの他の用事ってなーに? もしかして、七罪ちゃんや四糸乃をおいしく頂きに来たとかー? 七罪ちゃんはともかく、四糸乃は士道くんのためならオッケーだよ?』

「は、恥ずかしいですけど、頑張って我慢します……!」

 

 一体何を想像したのか、顔を赤くしながらも決意の漲る表情を浮かべる四糸乃。

 しかし七罪はともかく、確かに四糸乃なら頑張って我慢してくれることだろう。士道が喜んでくれるなら、自ら美九の毒牙にかかりに行くのも辞さないはずだ。そしてそのままされるがまま、美九に身体を弄ばれて快楽の世界へ――

 

「じゅるり……はっ!? すみません、危うく本当においしく頂いてしまうところでしたぁ……」

「……悪い、俺もちょっと手が出かけた」

「コイツら……いや、気持ちは分からないでもないけど……」

 

 欲望に正直な士道と美九に対し、七罪は呆れた様子ながらも理解の言葉を零す。程度と深さと種類の差はあれ、この場の全員が四糸乃に対して後ろ暗い欲求を抱えていることが証明された瞬間であった。

 僅かとはいえ『もういっそみんなで四糸乃を気持ち良くさせてあげればいいのでは?』という思いを抱いた士道を一体誰が責められようか。

 

「実は琴里さんから大切な話があるって言われて呼び出されたんです。お話自体はさっき終わったので、満を持してだーりんに会いに来ましたぁ。琴里さんがだーりんたちは皆で素敵なことをしているって言ってましたけど、まさかこんな欲張りセットな状況だとは思いませんでしたよぉ……!」

「何かもう当然のように覗いてんな、アイツ。前に覗くなって約束させた気がするんだけどな……」

 

 今更琴里に七罪たちとの情事を覗かれた程度で動じる士道ではないし、むしろ存分に見せつけてやろうという気持ちさえ沸き上がってくるが、さすがに約束を破られては良い気はしない。とりあえず後でキツイお仕置き(性的な)をすることに決定である。

 

「それより、大切な話って何だったわけ? もしかして、その……私に関係すること、だったり……?」

「うふふ、ぜーんぶ聞かせてもらいましたよー? だーりんがどうしようもなく好きすぎて、無意識にだーりん好みの身体に作り替えちゃった七罪さん?」

「う、うああぁぁぁぁっ!!」

 

 さすがに七罪も羞恥心が限界を迎えたようで、美九の腕に抱かれたままおかしな声を上げて縮こまる。

 身体の方の話もしたということは、当然フェロモン云々に関しての話もしたということだろう。実際腕の中の七罪を見下ろす美九の表情は、それはもう意味深で愛しそうな欲深そうな妖しい笑顔であった。

 しかし美九にその話をしたということは、琴里は美九と二人きりで話をしたということで――

 

「――あっ!? さてはアイツ、美九と二人きりで話をするために俺を遠ざけやがったな!? 自分が恥ずかしい格好してるとこ見られたくないからって!?」

 

 士道を正真正銘の士織ちゃんにさせて、四糸乃を色っぽいバニーガール姿にさせ、あまつさえ七罪をスク水猫耳ニーソ姿にさせた美九だ。秘密を隠していたという負い目を逆手に取り、琴里にもおかしな恰好を強制させたに違いなかった。

 衣装変更担当の七罪本人がここにいたとはいえ、美九なら本物の衣装を持ってくるくらいはやりかねない。それも踏まえて琴里は二人きりで話をしたのだろう。琴里がおかしな恰好をさせられている姿を見られなかったことが悔しい反面、再度士織ちゃんにさせられなくて安堵を感じている士道であった。

 

「私も本当は琴里さんに可愛い格好をしてもらいたかったんですけど、代わりにとっても素敵なものをもらったので許してあげましたぁ。早く実際に使ってみたいですぅ!」

「素敵なもの? 使う……? お、おい、美九。お前、まさか……?」

 

 酷く嫌な予感に見舞われた士道は、いつでも逃げ出せるように腰を浮かせながら尋ねる。もしも予感が正しければ、美九が貰ったものとはとんでもない危険物だからだ。しかも士道にとってのみという、狙い撃ちも良いところな代物に違いない。

 その予感を裏付けるように美九は悪戯っぽく笑い、琴里から貰った危険物を取り出した。あろうことか服の中に手を入れ、豊かな胸の谷間から。

 

「ふふふ。これ、ですよー?」

「ひっ……!」

 

 美九が取り出し、見せびらかすように軽く口付けたものは予想通りの危険物――対士道専用の媚薬の香水であり、逃げるために腰を浮かせていた士道は一目散に跳ね起きて壁際まで後退した。

 ブツは透明なままなので濃縮された原液なのか、それとも改良された新型なのかは区別がつかない。しかしどちらであろうととんでもない効果を催すことは、自分の身で体験した士道が一番良く知っていた。ついでに琴里のお尻を叩いて洗いざらい吐かせたので詳しい、という経緯もあったりする。

 

『おおーっ! それは士道くんを発情させちゃうとっても危ないお薬だね!』

「羨ましい、です……」

「えっ? ちょ、四糸乃……?」

 

 ただし恐怖しているのは士道だけらしい。四糸乃はむしろ瞳を羨望に輝かせているし、七罪はそんな四糸乃に目を白黒させている。無論『よしのん』は言わずもがなだ。

 あの媚薬を使われて危険なのはどちらかといえば女の子の方だというのに、ちょっと二人は冷静すぎである。

 

「み、美九! 間違ってもそれをここで使うなよ!? 大変なことになるからな!?」

「うん。フリじゃなくてマジでやめた方がいいわよ。ここにいる全員、ぶっ壊れるまで士道に犯されることになるから。でもまあ、三人いればギリギリ大丈夫かも……?」

「わ、私は……覚悟は、できています……!」

『ほらほら、美九ちゃん! プシュッと! 士道くんの鼻先に!』

「ひっ……!」

 

 こんな時に限って微妙に前向きな七罪に加え、覚悟が完了している四糸乃とノリノリの『よしのん』。

 このままでは本当に4P(『よしのん』を含めれば5P)が始まってしまいそうで、恐怖に腰が抜けた士道はただただ壁を背にして怯えることしかできなかった。別に皆ですること自体は一向に構わないのだが、理性が完全に溶けてしまうのさすがにごめんである。

 

「ふふふ。そんなに怖がらなくても大丈夫ですよー、だーりん。今夜は絶対に使わないことって、琴里さんに念を押されましたから」

『あ、そうなの? ちぇっ、残念だなー』

「そ、そうか。良かった……」

 

 美九の答えを聞いて、ほっと胸を撫で下ろす。さりげなく四糸乃と七罪も安堵を見せていた辺り、覚悟があってもやはり少々怯えがあったらしい。

 『今夜は使わないこと』と限定されているのは、単純に今夜は琴里が楽しむ日だからなのだろう。逆に考えればいつかは使ってみるつもりに違いなく、結局理性を溶かされる結末からは逃れられないわけである。とりあえず心底恐ろしいものを作り出してくれた琴里には、今夜たっぷりお礼参りをしなければならない。

 

「よし。じゃあ俺はそろそろこの辺で帰るな?」

「も、もう、帰っちゃうんですか……?」

「ごめんな、四糸乃。でもこれ以上ここにいると色々ヤバそうだからさ……」

「さては逃げる気ね、コイツ……」

 

 冷静さを取り戻した士道は、寂しげな顔をする四糸乃に激烈に胸を痛めながらも帰り支度を始める。その背に七罪の非難がグサグサと刺さるのがまた痛い。

 幾ら使うつもりが無いとはいえ、自分の理性を溶かしてケダモノにする媚薬と同じ部屋にいては気が気でなかった。そもそも自分に心と身体を許している少女たちが三人もこの場にいるという時点で、心底理性に悪いのだ。幾ら罪深い士道でも、媚薬を言い訳にして纏めて襲い掛かるほど恥知らずではなかった。

 

「分かりましたぁ! それじゃあだーりんの代わりに、私が七罪さんたちに添い寝をしてあげますね! さあ、皆でめくるめく熱い夜を過ごしましょう!」

『お、いいねー。じゃあ皆で士道くんと重ねたエッチなプレイのお話でもしよっかー?』

「え、えっと……映画館、でのこととかかな……?」

 

 添い寝をすると言う割にはかなりのハイテンションな美九。

 たぶん『よしのん』の言う通り、しばらくは皆でピンク色な体験の話を繰り広げるのだろう。その体験の当事者である士道としてはますます居心地が悪く、早々に退散しなければ酷い辱めを受けそうな気がしていた。

 

「まあ、アレだ。何か俺にしてほしい事とかがあったら、二人とも遠慮なく言ってくれて良いからな? 特に七罪はもっと何か色々考えておけよ?」

「じゃあ今すぐ私と四糸乃を助け出してくれない?」

「悪いな、それは無理だ」

 

 美九にがっちり囚われた状態で光の失われた瞳を向けてくる七罪に対して、酷な答えを返す。

 自分たちの関係をひた隠しにしていた負い目があるので、しばらくは美九の好きなようにさせるつもりであった。決して美九の胸元の深い谷間から覗く、媚薬の瓶が怖いわけではない。

 

「それじゃあ三人とも、おやすみ。愛してるぞ?」

「んっ――」

「ふぁ――」

「これはっ、七罪さんと四糸乃さんとの間接キッス! っ――!」

 

 最後に七罪、四糸乃、美九の順におやすみの口付けを贈る。当然ながら美九のテンションはまたしても跳ね上がっていた。この分だと七罪たちがピンク色な話をすると、美九は朝までハイテンションで寝られないかもしれない。

 というか一度に三人の少女におやすみのキスをする経験は士道としても初めてであり、美九ほどではないが少々昂る自分を感じていた。その気になれば三人纏めて襲ってしまえるのに実行しない辺り、まだ自制している方である。

 

「ん……おやすみ」

「はい、私も愛してます。おやすみなさい、士道さん……」

 

 ぽっと頬を染め、言葉少なに答える七罪。幸せそうな微笑みを浮かべ、応えてくれる四糸乃。

 襲い掛かりたくなる愛らしさに何とか耐えるものの、ここには三人目の美九もいるのだ。二人と同等かそれ以上の魅力を放つ返しをされたら、さしもの士道も理性を保てる自信は無かった。

 

「あぁん! だーりんの愛の言葉と熱い口付け! これを独占してきた七罪さんたちが羨ましいですぅ! ですから、だーりんとどんな風に愛を重ねてきたのか、お二人にはぜーんぶ話してもらいますよー?」

「は、はい……分かりました……」

「えぇ……」

 

 しかしテンション高めの美九は愛しさ云々よりも微笑ましさの方が強い反応であり、かろうじて理性は守られた。

 今回は大丈夫だったとはいえ、媚薬無しでも理性を突き壊しかねないのが士道の愛する少女たちの魅力である。

 

「ははっ。お手柔らかにな、美九?」

「はーい。おやすみなさい、愛しいだーりん!」

『おやすみー、士道くん! 琴里ちゃんによろしくねー!』

 

 思わず苦笑しながら部屋の扉に手をかける士道に対して、美九と『よしのん』が元気な返事を返してくる。そうして二人(と一匹?)揃って可愛らしい投げキッスを放ってきたので、それを受け取ってから部屋を出るのであった。

 クソ生意気で平然と約束を破るどうしようもない義妹に、手酷いお仕置きをしに行くために。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あら、士道。楽しい楽しい4Pはしなかったの? あなたのことだから三人纏めて襲い掛かって、凌辱の限りを尽くしているものだと思っていたわ」

 

 リビングへ入った士道を出迎えたのは、酷い決めつけの入ったわざとらしい驚きの声だった。見ればソファにどっかりと腰を下ろした司令官姿の黒琴里が、いつもの尊大極まる様相で面白がるようにこちらを眺めている。恐らく士道を待ち構えていたに違いない。

 

「仮にそうなっても合意の上だから凌辱じゃねぇよ。それよりお前、また俺たちのこと覗いてたな?」

「ええ、そうよ。けれどあくまでも職務上必要な事だから、仕方なく覗いていたのよ? 興味本位で覗いていたわけじゃないから、あなたに文句を言われる筋合いはないわ。そうでしょう?」

「ぐっ、仕事を言い訳にしやがって……!」

 

 流暢な返しに反論できず、悔しさに唇を噛むしかない。

 実際精霊たちの様子をつぶさに観察するのも、琴里の仕事の一つなのだ。例えそれを本人が私的な覗きの理由に使っていたとしても、正論という圧倒的な力で守られていてはどうすることもできなかった。

 

「あなたの的外れな恨み言はともかく、二人に対するフォローは成功しているみたいね。四糸乃はともかく七罪の方はかなり心配だったのだけれど、自己申告通り本当に精神状態は安定しているわ。むしろ七罪にしては安定しすぎってくらいよ」

「そうなのか? てっきり遠慮して嘘ついてるのかと思ってたぜ」

「不思議なことに少し前からかなりの高水準で安定してるのよ。時期を考えるにあなたと二人きりでの旅行に出かけた時ね。一体どんな心境の変化があったのかしらね?」

「さ、さあな?」

 

 何やら疑いの目を向けてくるため、思わず目を逸らしてしまう。思い当たることと言えば疑似プロポーズくらいしかなく、さすがにそれを口にするのは躊躇われた。

 しかしドSの琴里が真実を口にして糾弾してこない辺り、もしかすると何があったのかは本当に知らないのかもしれない。覗いている時と覗いていない時があるなら、琴里自身も多少は約束を守る気があるのだろうか。

 

「……そんなことより、お前はどうなんだ? お前も俺に何かしてほしい事とかあったりするのか?」

「私? どうして私にそんなことを聞くのよ?」

「そりゃお前だって一応俺の大切な人だからな。美九も加わって何だかんだでお前も思う所はあるだろうし、俺にできる範囲のことなら何でもしてやるよ」

「ふぅん? 良い心がけね。感心したわ」

 

 意外そうな顔をしていた琴里は、ニヤリとさも愉快そうに笑う。

 士道にとってはもちろん琴里も愛する少女の一人だ。美九が淫らな関係に加わったことで四糸乃と七罪に対するフォローが必要なら、琴里にだって必要なはず。何だかんだ色々憎まれ口を叩きつけてきている気がするものの、琴里も士道を深く愛していることに間違いは無いのだから。

 

「そうねぇ。もう少しオツムがマシになって欲しいとか、身長が百八十は欲しいとか、初遭遇の精霊に即座に股を開かせることができるくらい女の扱いに慣れてほしいとか……願いは色々あるけれど、どれもあなたに要求しても無駄なことよねぇ?」

「し、身長くらいなら何とかなるぞ! まあ、七罪の能力が、いるけどさ……」

 

 予想外に難易度の高い願いを並べ立てられたため、せめてもの抵抗に一つだけなら可能だと言い張る。しかし単身ではどのみち不可能であり、それを自分でも分かっているからこそ協力が必要だと付け足してしまう。

 というか意外と琴里の願いがマイルドであり、士道としてはかなり驚きだった。てっきりもっとネチョネチョドロドロした感じの性的なヤバいお願いをしてくると思っていたのだから。

 

「あなた自身の力でできることはなさそうね。そういうわけだから、私も特に要求は無いわ。ああ、でも強いて言うなら――」

「うおっ!?」

 

 そこで突如として琴里が立ち上がり、胸倉を引っ掴んできた。そのまま床に投げ飛ばされて踏みつけられるか、あるいはソファに投げ飛ばされて馬乗りになられるか。予想したのはそんな感じの展開だが、今回はそのどちらでもなかった。

 琴里は士道をグイっと引き寄せると、意志の強さが迸る赤い瞳でじっと士道を見つめてきた。惚れ惚れするほどに真剣な表情でありながら、ゾクリとするほどに大人の色香を漂わす笑みで。

 

「例えどれだけ女が増えようと、あなたの妹はこの私一人。それを絶対に忘れないこと。いいわね?」

 

 そして口にするのが、精いっぱいの独占欲なのだから堪らない。さすがに黒琴里にここまで言わせて、真那がいるから違うと指摘するほど野暮な士道ではなかった。

 

「……ああ、分かってる。俺の可愛い妹は、琴里だけだ」

「ふふっ。真那のことは口に出さなかったわね? 偉いわ、士道。ご褒美をあげようじゃない。んっ――」

 

 ニヤリと嬉しそうに笑い、ご褒美と称して唇を奪ってくる琴里。

 先ほどの七罪たちのやり取りを覗いていたということは、当然皆で抱き合って仲睦まじく過ごす光景も見ていたのだろう。やきもち焼きな琴里からすれば、なかなか腹に据えかねる光景だったに違いない。

 

「ちゅっ……っ、ぁ……は……!」

 

 その証拠に、琴里の口付けはそれはもう熱烈で激しいものだった。唇を触れ合わせるだけで終わりなわけがなく、舌を滑り込ませて士道の咥内をひたすらに蹂躙してくる。胸倉を掴んで引き寄せていることも含めて、相当暴力的な口づけだ。こんなキスをしてくるのは琴里くらいなものである。

 だからこそ、こちらも同様の激しさを返さなければ失礼というもの。故に士道は口付けを受けながら、こっそりとズボンのポケットに手を滑らせ――

 

「――は?」

 

 取り出した鎖付きの手錠を、琴里の両腕にカチャリと嵌めた。完全にキスに夢中になっていたようで、琴里は両手を手錠で戒められて更にワンテンポ置いてからその惨状に気が付いていた。

 

「……士道? これは一体何のつもりかしら? せっかく私がご褒美を与えてあげているのに、こんな真似をするだなんて」

「いや、せっかくだからお前への愛を身体にもしっかり教え込んでやろうかなって。七罪にも四糸乃にも美九にもしないくらい、熱く激しくたっぷりとな?」

「っ……」

 

 冷たい口調と蔑みの目を向けてきていた琴里だが、そう答えるとごくりと息を呑んだのがはっきりと分かった。微かに太ももを擦り合わせてもいるあたり、今夜はMな気分らしい。

 多少美九にもS心が刺激されたものの、やはり遠慮も容赦もなくそういったプレイに走れる相手は琴里だけなのだ。これだけは例え何人自分たちの関係に加わろうと変わらない、絶対不変の真理である。それを直接身体に刻み付けてやることほど、琴里が望む仕打ちは無いだろう。

 

「まあお前がそんなに嫌だっていうなら、別に止めてやっても良いぜ? どうする、琴里?」

 

 胸の内から溢れ出る嗜虐心を隠さず笑顔として浮かべながら、手錠の鍵を琴里の目の前にちらつかせる。尤も今の状況と琴里の様子を考えるに、答えは聞くまでも無く分かり切っていた。

 

「……ふん。冷静に考えれば四人も女を食ってるあなたが、キスごときで満足するわけがないものね。いいわ、特別にあなたの望む行為をご褒美にしてあげようじゃない?」

 

 鍵は受け取らず、嘲るような笑みを浮かべてそう言い放つ琴里。しかしどこか呼吸が荒く、頬もしっかり赤みを帯びている。そんなドSでありながらドMでもある業の深い義妹の頭を、士道は優しく撫で擦った。

 

「それでこそ俺の可愛い妹だぜ。それじゃあ今夜はたっぷり苛めてやるから、覚悟しとけよ?」

「まあ精々頑張りなさい。私はあなたの稚拙な攻めで容易く陥落するような弱い女じゃないわよ?」

 

 そして琴里の手錠に繋がる鎖を引いて、寝室へと歩き出した。例えどれだけ他の精霊が自分たちの関係に加わろうと、変わらぬ愛をしっかりと身体に刻んでやるために。

 尤も義理の妹に手錠をかけ、あまつさえ鎖を引いて歩かせているという士道の姿は、傍から見れば愛とは無縁の鬼畜外道にしか見えなかっただろうが。

 

 

 




 義妹に手錠をかけて寝室に連れ込み、エッチなお仕置きをする兄の鏡(屑)。何だかんだで美九が加わっても何一つ変化は無い模様。強いて言えば七罪の未来が前途多難であることくらいかな……まあ、四糸乃がいるので慰めて貰えるでしょう。うん。
 次回のお話は今のところ未定。さすがに士道さんと美九に食われる七罪のお話は早すぎるから……。

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