※この作品はR-18です。

士道クリミナル   作:サイエンティスト

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 四期の超進化した作画で描かれた七罪の可愛らしさに触発され、頑張って書き上げました。でも今回は七罪の話と言うより、出番が少ない人たちが出るお話かな……とどのつまりヤベー奴が出ます。


○七罪ピーピングフォト

 

 

「ふわあぁぁ……」

 

 二月二日。草木も眠る丑三つ時、七罪はぼんやりと目を覚ました。一つ欠伸を零し、重い瞼をゆっくりと開ける。

 

「ん……あったかい……」

 

 そしてすぐさま瞼を下ろし、再び眠りに落ちかける。

 しかしそれも仕方のない事だった。何故なら七罪は今、士道に抱きしめられているのだ。お互いに一糸纏わぬ姿で抱き合い、お互いの温もりを感じながら幸せな眠りにつくことができるのだから、二度寝の誘惑に抗う事などできるわけもなかった。

 

「……はっ!? ね、寝ちゃ駄目よ、私!」

 

 しかし今回は事情が事情なので、危ういところで誘惑に抗う。そうして七罪は士道の腕の中から静かに抜け出すと、士道がまだ眠っていることを確認してから、ベッドの下へと手を挿し込んだ。そこに隠した物を取り出すために。

 ベッドの下に隠された物と言えば、一般的にはいかがわしい本が思い浮かぶだろう。しかし残念ながらここは五河家に用意された七罪の部屋であるため、そんな物は存在しない。では何が隠されているのかというと――

 

「落ちる前に……落ちる前に、撮らないと……」

 

 ――シャープなデザインと美しさを兼ね備えた、小型のデジタルカメラ。七罪はそれを手に取り士道にレンズを向けると、パシャリと寝顔を撮影した。そう、要するに盗撮である。

 

「……よし。次は、アップで……今度は、斜めから……」

 

 更に一枚だけではなく、方向を変えて何枚も撮っていく。

 フラッシュ機能は予め切ってあり、シャッター音も切れる類のカメラのため、士道は気付くことなく幸せそうな寝顔を晒していた。それこそ盗撮で無ければ撮れないであろう、油断しきった馬鹿っぽい寝顔である。

 

「ふぅ……これでよし、っと……ふああぁぁっ……」

 

 納得のいく写真が撮れた七罪は、半ば寝惚けながらカメラをベッド下に戻した。

 そうして今度は逆に士道の腕の中へと戻り、こちらからぎゅっと抱き着いて温もりをたっぷり肌で感じる。あまつさえその逞しい胸板に顔を埋め、リズミカルな鼓動を聴きながらほっと一息つく。

 普段ならちょっと恥ずかしいが士道はまだ夢の中で気付いていないし、つい数時間前まではこの程度のことが可愛く見えるほど濃厚な触れ合いをしていたのだ。そのため若干羞恥心が麻痺している今の七罪には、この程度何の抵抗も無かった。

 

「全く……私、何でこんなことしてんのかしらね……?」

 

 とはいえ、それはあくまでも士道との触れ合いの話。今さっき自分が撮っていた――もとい、取っていた行動に対しての羞恥心は別である。

 そんなわけで、七罪はあのような行為をしなければならなくなった理由を、再び夢の世界に落ちていく意識の中でうっすらと思い出すのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ひ、ひえぇっ……!」

 

 昨日の夕刻、七罪はかつてないピンチに陥っていた。

 精霊用マンションの四糸乃の部屋で、四糸乃と『よしのん』と楽しくおしゃべりをした後、五河家に帰る道すがら。突如としてマンションの一室に引きずり込まれ、気付けば玄関で壁ドンされていたのだ。

 その壁ドンをしてきた人物が士道なら、別にピンチという状況ではない。絶対エロいことをされそうなのはともかく、壁に両手を突いて迫られるというのは七罪としても若干感じ入るものがあるシチュエーションからだ。

 だがその人物が女の子大好きで、特に七罪がお気に入りの美九なら話は変わってくる。なかなかピンチと言える状況だろう。しかし現実はその上を行っていた。何故なら今、七罪の両脇を塞ぐように手を突いて壁ドンしてきているのは、世にも恐ろしい天使――もとい折紙なのだから。

 

「……やっと二人きりになれた。機会を伺って三日間、ついにチャンスを手に入れた」

「い、命だけはっ……!」

 

 そうして今まで狙っていたことが伺える発言を、感情の読み取れない平坦な口調で呟いてくる。その癖瞳には途轍もなく強い意志の光が宿っているため、何か思い詰めているように見えて恐ろしい限りである。

 何が何だか分からないが、とりあえず命乞いをする七罪であった。

 

「安心していい。あなたに危害を加えるつもりはない」

「あっ、そ、そう、なの……?」

「そう。約束する」

 

 しかし恐ろしい想像が実現することはなく、折紙はすぐさま両腕を上げて危険が無いことをアピールしていた。

 両脇を固めていた腕が無くなったことで逃げられるようになったものの、危害を加えられないのなら話を聞くくらいは良いかもしれない。そう思ったため、七罪は逃げることはしなかった。というより玄関の扉の前に折紙が立ったので、まだ逃げられないと言った方が正しいが。

 

「えっと……じゃ、じゃあ、私に何か用?」

「七罪、あなたは士道と一つ屋根の下で同棲を始めて、およそ一月が経過した。つまり、そろそろ十分な頃合い」

「あ……そ、そう、よね。さすがに私なんかがいつまでも士道の所にいるのは、ずるいわよね……ごめんなさい、出ていきます……」

 

 どうやら折紙は七罪の待遇が過剰だと感じていたらしい。確かに士道(と琴里)と一つ屋根の下で暮らすというのは、精霊たちにとって美味しい展開だろう。それを七罪は精神状態の安定のためとはいえ一ヵ月も堪能しているのだから、士道にちょっと重すぎる愛を向けている折紙からすれば我慢ならない状況のはずだ。むしろ一ヵ月経つまで我慢してくれていただけ、優しさがあるとすら言える。

 なので七罪は今日明日にでも五河家を出ることを告げたのだが――

 

「そういう意味ではない。確かに妬ましいのは否定しない。けれど、あなたに出ていかれると私が困る」

「へ……?」

 

 何故かそれを他ならぬ折紙に止められた。肩をがしっと掴まれ、冗談とは思えないほど真剣極まる瞳で。

 全く意図が理解できず首を傾げるしかない七罪の前で、折紙は声を潜めて語り始めた。まるで人に聞かれたら困る事を話すように。

 

「あなたが五河家で過ごし始めて一ヵ月。これだけの日数が経過すれば、士道も琴里も五河家に七罪がいるという状況に慣れてくる。つまり、油断が生まれる。頃合いというのは、そういう意味」

「ゆ、油断……?」

「私は今まで、あらゆる方法を用いて自宅で過ごす士道の様子を見守っていた。隠しカメラで士道の顔色を確かめ、盗聴器で士道の喉の調子を確かめ、士道が健康に過ごせているかどうかをつぶさに観察していた」

「あ、はい」

 

 どう考えても盗撮に盗聴であるが、そこは気にせずとりあえず頷いておく。折紙ならこれくらいはやってもおかしくないので、特に驚きらしい驚きは無かった。

 強いて言えばこんな真似を平気でしている折紙に、自分たちの関係がバレていないことの方が驚きである。恐らく琴里が色々と頑張っているに違いない。

 

「しかし数ヵ月前、五河家内の警戒レベルが急激に上昇した。今では家の敷地内に盗聴器を設置しただけで、五分も経たずに琴里に発見・破棄されてしまう。あの発見速度は最早執念や狂気の域。今や私は士道の健康を見守ることができていない」

「あんたも大概執念も狂気も極まってると思うんだけど……」

 

 やはり琴里が頑張っているようで、怪しげな物を設置しても即座に回収されてしまうらしい。その頑張りの理由は、できるだけ士道を独占するためだろう。士道との関係がバレずにいればいる分だけ、少ない人数で士道を独占できるのだ。琴里からすればそんな美味しい状況を簡単に手放す気はないだろうし、自分たちの関係を脅かす物を排除するのに心血を注ぐのは当然だ。

 

「そこで、あなたの力を借りたい。七罪、あなたなら琴里も油断して、警戒も甘くなるはず」

「えっと……つまり、私に盗聴器とかを仕掛けろって言ってるわけ……?」

「残念ながら違う。誰が仕掛けようと、琴里はすぐさま探し出すに違いない。あなたにして欲しいのは、もっと初心に帰った行為」

 

 そこまで言い切った折紙は、どこからともなくデジタルカメラを取り出した。そしてそれを当然のように七罪の手に握らせてくる。これだけでもう、何を頼もうとしているのか嫌でも理解してしまう七罪であった。

 

「七罪。このカメラで、士道をたっぷりと盗撮して欲しい」

「もう見守るとか言って誤魔化さなくなったわね……」

 

 欲望駄々漏れの願いに、最早呆れて突っ込むのも馬鹿らしくなってくる。

 要するに折紙は盗撮も盗聴もできなくなってしまったから、五河家に滞在している七罪にせめて盗撮をお願いしてきているのだ。はっきり言って引き受けるのも馬鹿らしい頼みだが、原因が自分であることを考えると心情的に断るのは難しかった。

 

「これはあなたにしか頼めない。あなたにしかできないこと。七罪、どうかお願いする」

「ま、まあ、そこまで言うなら……」

 

 それに今、七罪は期待されている。頼られている。ちょっと内容はアレだし相手もアレだが、その瞳は怖いほどに真剣で嘘偽りなど微塵も見当たらないのだ。

 今の七罪にとっては頼られたり期待されることは少々むず痒い気持ちを覚えるものの、決して不快なものではない。だからこそ、引き受けてやることにした。

 

「それで、どれくらい撮れば良いわけ?」

「多ければ多いほど良い。日常のふとした瞬間の士道の表情はもちろん、普段は見せないレアな表情や、人には見せない隠れた一面を撮ってくれるとなお良い」

「完全に盗撮よね……というか、隠れた一面って具体的には?」

「具体的には、入浴中や自慰行為の最中の光景を。この場合は表情だけでなく、できれば重要な部分も写してくれるとベスト。具体的には下半身」

「ごめん、今なんて?」

 

 ちょっと問題発言が聞こえた気がするので聞き返す。一瞬ジョークかと思ったが、折紙の瞳に宿る狂気――もとい情熱は一片の揺らぎも見えなかった。間違いなく本気で言っているのだから恐ろしい。

 

「もちろん難しい事なのは理解している。表情以外は、あくまでもチャンスがあればで構わない」

「それって表情は絶対撮れって言ってるようなもんじゃない?」

「あなたの能力なら、それくらいは簡単にできるはず。七罪、どうかお願いする。このままでは私は、士道素欠乏症で死んでしまう」

「新元素作るの最近流行ってんの……?」

 

 前に美九が口にした発言を思い出し、そんなどうでもいいツッコミをしてしまう。

 ただその謎元素の由来がフェロモンさえも無意識に変化させてしまう能力の持ち主である七罪と、その能力を自らの身体に封印した士道であることを考えると、本当に謎元素を生成している可能性がゼロではないのが始末に負えない。

 

「七罪、お願い。これはあなたにしか頼めない」

「う……」

 

 やはり断るべきかと悩んでいると、折紙が真剣極まる表情で七罪の両手を取ってくる。

 正直やりたくはないが、七罪相手にここまで真摯に(内容はともかく)頼んできているのだ。加えて折紙が盗撮やら盗聴やらができなくなったのは、元を辿れば全て七罪のせいである。それなのに七罪自身は士道と熱く愛し合う仲なのだから、さすがの七罪もここで拒否できるほど恥知らずではなかった。

 

「……わ、分かった。ただし、期待した写真が撮れなくても文句は言わないでよ?」

「ありがとう、七罪。あなたは私の救世主」

 

 そのため、やむなく折紙の頼みを引き受けることにした。

 ちょっと士道に悪い気もするが、どうせいつかは折紙にもあんなことやこんなことをされる間柄になる予定なのだ。それなら今恥ずかしい写真を撮られたって別に構わないだろう。元々以前から盗撮されていたようであるし、そこまで痛手でもないはずだ。

 そんなわけで、七罪は折紙のために士道の盗撮をすることになるのだった。あまり気乗りはしなかったが。

 

 

 

 

 

 

 

 

「シドー、シドー! 今日の朝餉は何だ!?」

 

 そんな経緯を踏まえて、迎えた朝食の時間。

 席についている七罪の手には、もちろん盗撮用のデジタルカメラが握られている。ただし手元を見られたとしても、七罪がそんなものを持っているとは誰も考えないだろう。何せ今、デジカメは無色透明の不可視の物体と化しているのだから。

 言うまでも無く、これは七罪の精霊の能力を使った結果である。カメラそのものを透明にしてしまって果たして撮影ができるのかという疑問は七罪自身も抱いたが、すでに予め試して撮影できることを確認しているし、何より今更物理法則とかそういう事は気にするだけ無駄である。その手の法則に縛られるなら、無機物に変身したり大人に変身できるわけがないのだから。

 というわけで問題なく盗撮できるので、こんな馬鹿なお願いをしてきた折紙への細やかな仕返しとして、朝食への期待に瞳を輝かせた十香の姿を撮影しておいた。

 

「今日の献立はオムライスにハンバーグだ。おかわりもたくさんあるから、遠慮せずに食べて良いからな?」

「お、おおぉぉぉぉっ!? 何と、朝からこんなに豪華な献立とは……!」

「美味しそうに食べてくれる奴がいるから、つい力を入れちまうんだよな。ほら、冷めない内に食べてくれよな?」

「うむ、了解した! それでは、いただきますだ!」

 

 ついでにとても嬉しそうな顔で笑っているところも撮影しておく。

 というかその笑顔があまりにも尊すぎるため、自然にシャッターを切っていた。十香でこの調子なら、きっと四糸乃を前にしてしまえば七罪はデータが満杯になる勢いで激写してしまうことだろう。存在そのものが尊い四糸乃相手なら仕方ないことだが。

 

「……うむ! とても美味しいぞ、シドー!」

「そっか、喜んでもらえて良かったぜ」

「っ……!」

 

 パクパクと朝食を平らげ、美味しさが伝わってきそうなほど良い笑顔を浮かべる十香。自分の作った料理を美味しそうに食べてもらえて、満面の笑みを浮かべる士道。

 ちょっとこの尊い光景に胸を打たれて反射的に写真に収めてしまった七罪だが、すんでのところで目的を思い出し、士道の表情のみも撮影した。これは後で折紙にデータをコピーして貰うのも良いかもしれない。

 

「……ん? どうかしたか、七罪?」

「い、いや、別に何も? じゃあ私も、頂きます……」

 

 何度も何度も髪を弄る振りで撮影をしていたため、さすがに士道もちょっとおかしく思ったのかもしれない。あまり疑われないよう一旦膝の上にカメラを置き、七罪も朝食を摂ることにした。

 

「はい、おにーちゃん! あーん!」

「むっ!?」

 

 しかしシャッターチャンスになりそうな出来事が起こり、再びカメラを手に取った。何故なら琴里が士道に『あーん』をしようと、オムライスをすくったスプーンを突き出していたから。

 十香が何やら戦慄した表情を浮かべていたが、その口元にご飯粒が幾つか引っ付いているのであまり深刻そうには見えなかった。

 

「え……いや、俺は普通に食うからさ……」

「ダーメ! せっかく可愛い妹があーんをしようとしてるんだから、ちゃんと食べるの!」

「分かった! 分かったから鼻に捻じ込もうとするのはやめろ!」

 

 十香の前という事で遠慮を見せた士道だったが、琴里がこれでもかというほど強く推していたのでさすがに折れるしかなかったらしい。ちらりと申し訳なさそうに十香を、そして七罪を見てから、諦めたように琴里に向き直った。

 十香はともかく、七罪は今更士道が女の子に『あーん』をされる光景を見た程度で動じるような初心な心は持ち合わせていない。なので別段心が動かされることも無く、士道のアンニュイな表情をパシャリと盗撮しておいた。

 

「はい、あーん!」

「あー……」

「どう? おいしい、おにーちゃん? 可愛い妹の味がする?」

「俺の料理に勝手に異物混入するな。まあ味はともかく……悪い気分じゃないぜ?」

「えへへ、そうでしょー? ほら、もう一回。あーん?」

 

 琴里が相手なせいか若干素直ではないものの、士道は優しく微笑んで答えた。その答えに琴里も満足気な笑みを浮かべ、更に『あーん』を続けようとする。もちろん士道の微笑みはしっかり写真に収めている。朝から盗撮のチャンスがいっぱいで非常に助かる七罪であった。

 

「ずるいぞ、琴里! 今度は私がシドーにあーんをする番だ! ほらシドー、あーんだ!」

「ちょっ!? と、十香! 分かったから少し量を減らしてくれ! 俺の口にその量は収まらないぞ!」

 

 更にここでやきもちを抱いた十香が参戦する。オムライス山盛りのスプーンを士道の頬に捻じ込むようにして、自らも手ずから士道に食べさせようとしていた。

 左からは琴里、右からは十香に『あーん』をされるという、爆発しろと言いたくなる光景である。七罪でさえちょっと羨ましいと感じるのだから、世の一般男子が見たら憤死しかねない光景だろう。

 

「………………」

 

 しかし今の七罪にとってはシャッターチャンスに過ぎない。そんなわけで、両手に花で照れながらも鼻の下を伸ばしている士道のだらしない表情を、バッチリと写真に収めるのだった。

 十香と琴里が積極的に士道に絡んでくれるため、結果的に士道から様々な表情を引き出すことに繋がり、七罪にとっては大収穫の朝食の席である。この時間に撮った写真だけでも、折紙はかなりご満悦になることだろう。尤も幸せいっぱいとでも言いたげな十香の満面の笑みを見れば、舌打ちでもかますかもしれないが。

 

「……ねぇ、琴里。ちょっと良い?」

「んー? どうしたの、七罪?」

 

 そうして朝食を終え、琴里が廊下に出て行った時。七罪はこそこそとその後をつけ、周りに誰もいないことをしっかり確認してから話しかけた。

 

「いや、その……もしかしなくても、気付いてるわよね? 私が士道を、盗撮してること……」

 

 気付かれていないのなら自爆も良い所な質問だが、七罪には確信があった。何故なら琴里は白リボンであることを差し引いても、普段よりもグイグイと士道に絡み甘えていたから。具体的には十香がムッとして、負けじと士道に身を寄せるくらい。

 というか今でも士道との情事を覗いているらしい琴里が、自分たちの関係を隠し通す上で最も危ない人物の動向を警戒していないはずがない。幸いと言って良いのか危険人物たちの双璧を成す内のもう一人は、今や自分たちの関係に入り込んでしまっている。実質警戒対象は一人だけだ。

 実際七罪の予想は間違っていたわけでは無いらしく、琴里は答える前にリボンを白から黒へと付け替えていた。

 

「……あんな頼みをする方もする方だけれど、引き受ける方もどうかしているわよ。七罪」

「だ、だってその、後ろめたいことがあるし……頼って、くれたし……」

 

 一気に雰囲気がキツくなった琴里が半目で口にしてきたのは、七罪が折紙に迫られた時の事だろう。やはりあの時も監視されていたらしい。

 

「はあっ……まあ良いわ。精々頑張りなさい、七罪。ただし、くれぐれも私たちの関係を匂わす証拠を写さないように気を付けるのよ」

「う、うん……」

 

 七罪の答えにため息を零した琴里だが、やはり止める気はないようだ。そもそも止める気なら朝食の席であそこまで露骨にシャッターチャンスを増やしてくれるわけがない。本人の申告も相まって、盗撮が琴里公認になった瞬間であった。

 

「……でも、本当に良いの? 撮ってる私が言うのもなんだけど、さすがに色々盗撮されるのは士道がかわいそうじゃない?」

「大丈夫よ。別に士道のプライベートが流出してるのは今に始まったことじゃないし」

「うわぁ……士道……」

 

 あまりにもあんまりな発言に、七罪は酷く気の毒になってしまう。

 確かに士道から聞いた話によると、封印した黒歴史を事あるごとに琴里に公開されているらしい。それを思えば盗撮くらい痛くもかゆくもないという気持ちは分からないでもないが、それを口にしているのが士道当人ではなく、黒歴史を公開している琴里の方なのだから素直に賛同はできなかった。

 

「それに、これは丁度いいガス抜きになるわ。何度見つけて破棄しても諦めずにカメラやら何やらを仕掛けてきていい加減ウンザリしてきてたのよね。刺激の強い盗撮写真を与えておけば、しばらくは折紙も大人しくなるでしょ。良い機会だから美味しい餌を与えておきなさい」

「あ、はい……」

 

 そしてあろうことか士道のプライベートを生贄にするような発言をして、ニヤリと悪い笑みを浮かべている。

 だが内容は間違っていないので、七罪としても特にツッコミを入れることはできなかった。刺激の強い盗撮写真を与えておけば、折紙もしばらくの間はそれで満足するに違いない。尤も人の欲望には際限が無いので、しばらくすればまた貪欲に士道を求め始める事だろう。しかしそれまでは琴里が神経を尖らせてまで隠しカメラだの何だのを探す必要もなくなるわけだ。つまりこれはひとときの安らぎを得るためにも必要な処置に違いない。

 そのため七罪は特に何か反論することも無く、素直に頷くのであった。どうせ士道のプライベートは無いも同然なのだから、遠慮なく盗撮させてもらうことにして。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――クックック。士道よ、我らが聖戦に参戦する権利を与えてやろう」

「意訳。人数が足りないので一緒に遊んでください」

 

 朝食を終え、その後片付けも終えた頃、五河家に八舞姉妹が襲来してきた。

 ちょっと意味の分からない耶倶矢の言葉を翻訳した夕弦によると、遊びの数合わせのために士道を引き込みたいらしい。さすがに二人の部屋に連れていかれると盗撮が難しくなるばかりか、そもそも呼ばれてもいないのについていくこともできないので、できればこの場でできる遊びであって欲しいと願う七罪であった。

 

「それは別に構わないけど……何をするんだ?」

「刮目。とくと見よ、です」

「これぞ、暴風の化身――トルネード!」

 

 士道の問いに、二人は手にしていた遊び道具をそれぞれ掲げた。

 夕弦が手にしているのは、一見すると時計のようなボード。ただし針は一本しかなく、時刻の代わりに四色の丸が存在し、それぞれ四色ごとに両手両足の一部分ずつのイラストで区分けされている。

 そして耶倶矢が頭上に掲げ、床まで伸びているのは一枚の大きな布のようなもの。ただしこちらも四色の丸が存在し、それぞれ六個ずつ計二十四個の色丸が存在している。その色の種類は夕弦が手にしているボードと対応していて、これを知らない者が見ても一セットの遊び道具なのだと理解できるだろう。

 

「ああ……まあ、確かにこれは二人じゃやりにくいよな……」

「それはそうなんだけど、何か先が見える展開ね、これ……」

 

 この遊び道具を知っていたらしい士道は若干苦い顔をして納得を示しており、同じく知っている七罪も同様の反応をせざるを得なかった。

 この遊び道具――トルネードを使ったゲームは、かなり身体を使ったゲームだ。そして都合上、基本的に男女が混じって遊ぶものではない。もし男女入り混じって遊ぶ場合、男側はかなり役得な状態になる。七罪に見えてしまった展開とは正にそれだった。

 

「これは何だ? どのように遊ぶのだ?」

「提案。では、十香も一緒に遊びましょう。きっとその方が、士道も大いに喜びます」

「む。良く分からんが、シドーが喜ぶのならやるぞ!」

 

 喜び勇んで参加を決める十香と、明らかに七罪同様先の展開を見越した発言をしている夕弦。

 やはりそういう展開を狙っているのかと理解した七罪だが、特に止める気はなかった。士道の様々な反応を写真に収めるのが目的であるし、それが無くとも士道と濃厚極まる触れ合いを交わしている間柄だ。今更他の女の子との触れ合いにとやかく言うほど心は狭くないし、言えるほど大きくもなかった。

 

「では七罪よ。貴様に運命を司る力を秘めた聖遺物を託そう。そして、その力で我らの道を指し示すのだ!」

「えっと……これを回して審判やれ、ってことね」

 

 盗撮という目的がある七罪は最初からその役目をするつもりだったので、素直にボード――スピナーを手にする。すでに他の四人はマットの上で待機済みであり、自信満々な微笑を浮かべている八舞姉妹と、若干苦い顔をしている士道、そしてやっぱりまだ良く分かっていない十香と、反応は様々であった。

 

「じゃあ始めるわよ。よっと――」

 

 何にせよシャッターチャンスが増えるのは歓迎すべきこと。なので先の展開が読めつつも、七罪は遠慮なくスピナーを回した。

 

「解説。あのスピナーを回し、針が指し示した身体の部位を、同じく示された色の円へとつけます。最終的に体勢を維持できなくなって尻もちをついたり、身体の別の部位をつけてしまったら敗北です」

「本来一つのサークルには一人しか触れられぬ。だが我らは四人で聖戦を繰り広げているが故、この矮小なサークルでは些か手狭だ。接触は避けえぬ運命であろう」

 

 針がくるくると回る中、八舞姉妹による解説と独自ルールが語られる。

 そもそもマットの円は一色につき六個しかなく、人数は四人のため二度同じ色が出たら被らざるを得ない。その時はまた回して決め直せば良いかもしれないが、七罪としては士道たちの接触が増えそうな重複ありのルールの方がありがたかった。

 

「えっと……一つの円は何人で使っても良い、ってことだよな?」

「そうそう! そういうこと!」

「うむ! 何となく分かったぞ!」

「実践。それほど難しくはありませんから、実際に遊びながら理解していきましょう」

 

 分かりにくく仰々しい耶倶矢の言葉を何とか理解した士道と、理解してもらえて嬉しそうに満面の笑みを浮かべる耶倶矢。そして絶対よく分かっていないのに自信満々の十香と、初心者であるそんな十香を優しく気遣う夕弦。

 今までならかなりの疎外感を感じる光景であったが、今の七罪にはこの光景を眺めて楽しむ余裕すらあった。やはり肉体的にも精神的にも士道と深く愛し合ったことで、心の余裕ができているのだろう。七罪でさえこれほどまでに幸せな気分にしてもらえるのだから、とりあえず士道はさっさと他の子も全員抱くべきである。尤もそれを成すにはまず琴里をどうにかしなければならないが。

 

「はい、それじゃあ――右手、赤色」

 

 針が指し示したのは右手と赤色。まだ一回目なので難しさなどどこにもない。右手が無いとか、色の判別ができないとかの理由でもない限り、ここで敗北するのは逆に難しいだろう。

 

「よし、赤色だな! ふっ!」

 

 一番最初に反応した、というか一番最初に右手を赤の円に置いたのは十香。やはりまだちょっと分かっていないようで、カルタでもやっているのかという素早さでべしっと手をついていた。しかも赤色の円は一番外側の列にあるというのに、よりにもよって一番隅の円である。

 

「いや、十香。別にこれは早さを競ってるわけじゃ――おっと」

「わわっ……!」

 

 士道が優しく説明をしていた最中、そこに耶倶矢の驚いたような声が被さる。

 審判として若干離れた位置から全員を視界に収めている七罪だからこそ気が付いたのだが、どうも全員が十香の微笑ましい行動に目を向けていたせいで、自分たちが赤色の円に伸ばしている手を見ていなかったらしい。まるでラブコメか何かのように、士道と耶倶矢の手が赤色の円で触れ合っていた。

 

「悪い、耶倶矢。ちょっとよそ見してた」

「あ、いや、その……別に、謝られるような事でもないし……」

「あ……そ、そうか……」

 

 何でもない事のように謝る士道と、頬を染めてそれはもう分かりやすい反応をしている耶倶矢。

 その反応を見て、士道も耶倶矢が何を感じたのか理解したのだろう。少しばつの悪い表情をしたが、触れた手を離したりはせず、そのまま二人で一つの円を使っていた。さすがの士道も女を四人も食って、女心というものが分かってきているらしい。七罪も散々食われて弄ばれている甲斐もあるというものだ。

 

「……むぅ」

「驚嘆。さすが耶倶矢、やりますね……」

「何かもう初手からこんな空気ね……」

 

 何やらラブコメっている二人を見て、十香は明らかに不満げになり、夕弦は純粋な賞賛を向けていた。夕弦も同じ行動に出るかはともかく、次に十香が取るであろう行動は、七罪にも手に取る様にはっきりと分かった。

 

「じゃあ次――左足、黄色」

「黄色……っと」

 

 新たにスピナーを回して出たのは、左足と黄色。そして最初に行動を起こしたのは士道。黄色の円の位置を確認して、そのまま左足を下ろした瞬間――

 

「――ふんっ!」

「ふっ!」

「いっ――!?」

「まあそうなるわよね」

 

 実に予想通りの展開が繰り広げられたため、とりあえず七罪は痛そうに目を見開いた士道を撮影しておいた。

 士道が痛そうにしているのはとても単純な事。左足を黄色の円に下ろした瞬間、十香と夕弦が同じ円に向けて左足を下ろしてきたのだ。二人とも離れた位置の赤色の円に右手をついているため、下ろすというよりも蹴り飛ばすような形で。十香は斜め上から無駄にパワフルな踵落とし染みた一撃を、夕弦は足払いにも似た鋭く素早い一撃を。そんな二撃を同時に足に受ければ、それは痛みに呻きたくもなるだろう。

 

「あっ、ずるい! こうなったら私もっ!」

「指摘。一度円に足を下ろした時点で、もう変更は利きません」

「くぅ……!」

 

 士道と触れ合えて満足気な二人に触発されたのか、耶倶矢も同じ円に左足を置きたがっていたが、悲しいかなすでに別の場所に置いた後であった。さすがに敗北するわけにはいかないのか、悔しそうに唸り声を上げる。

 恐らくこれで次は耶倶矢が士道と同じ場所を狙うのが確定し、そうすると次は十香と夕弦が同じ場所を狙うというループに入るだろう。その度士道の手足は叩かれたり蹴られたりすることになるのだが、まあハーレム野郎にはそれくらいご褒美に違いない。何か涙目になっている気がするがきっと気のせいだろう。

 

「はい。じゃあ次行くわよ――」

 

 そんなわけで、七罪は遠慮なくスピナーを回して次の指示を出していく。

 三回目は予想通りに耶倶矢が士道と同じ場所を狙い、それに触発されて十香と夕弦も同様の行動を取っていた。四人もいると言うのに皆で同じ円ばかり使うため、早々に四人の身体は絡み合うような異様な体勢へと移って行く。

 そしてその調子のまま四回目、五回目、六回目と続き――

 

「うわぁ……」

 

 七回目を終え、あまりにも酷い光景に七罪は盗撮の手を止めてしまいそうになった。

 しかしそれも仕方ない。この光景を折紙や美九が見れば絶対に羨ましく思い、何が何でも混ざろうとするに違いないほど絡み合っていたからだ。

 

「と、十香……その、大丈夫か? 重くないか?」

「うむ。これくらい平気だぞ?」

 

 まず、何故か十香は士道の身体の下にいた。両腕を左右に交差させる形で四つん這いになっており、その上から士道が覆い被さる様にして同じ体勢を取っていた。

 ぶっちゃけパッと見だと、四つん這いになった十香を士道が覆い被さって後ろから――な光景にしか見えない。ただ士道の名誉のために補足すると、この状況を作りだしたのは無理やりに士道の腕の中に入り込んだ十香の方だ。

 

「そ、そうか。でも、無理はしない方が――っ!?」

「怪訝。どうしました、士道? 顔がとても赤くなっています」

 

 十香を心配する士道の台詞が、息を呑む気配と共に打ち切られる。その様子の変化を指摘したのは夕弦だったが、原因もまた夕弦であった。何故なら夕弦は士道の左肩に自らの豊満な胸元を押し付け、左脚を士道の左脚に絡める体勢となっているのだ。

 七罪のような絶壁まな板ならともかく、非常にボリュームのある夕弦の胸を押し付けられては士道も平静を保つのは難しいだろう。もちろん夕弦はそれを見越してわざとやっているに違いなく、明らかに表情が誘う女のそれであった。

 

「い、いや……夕弦、その……当たってる、からさ……?」

「謝罪。申し訳ありません。夕弦はとても発育が良いので、こういった状況下ではどうしても触れてしまうのです。不可抗力です」

「っ……!」

 

 そう言って夕弦は更に胸を押し付けている。服の上からでも分かる膨らみの変形具合からして、士道はそれはもう素晴らしい柔らかさを感じているに違いない。若干腰が浮いているのはそういうことだろう。

 

「くぅ……! 私だって、それくらいできるし!」

「ちょっ!? か、耶倶矢……!」

 

 そして対抗するように、反対側で夕弦とほぼ同じ体勢で士道に絡んでいる耶倶矢も胸を押し付ける。正直夕弦に比べるとボリュームに欠けるものの、七罪に比べれば立派な膨らみもあるので感触が全くないということはないだろう。その証拠に士道は頬の赤みを更に深めていた。

 しかし今の士道は二人の気持ちを理解しているし、自分への好意ゆえの行動だということも理解している。そのため無下にする事も指摘することもできないようで、変なモノが十香のお尻に触れないよう腰を浮かせて必死に耐えていた。

 

「……と、十香? 本当に大丈夫か? 無理しなくて良いんだからな? やめたくなったら抜けても良いんだからな?」

 

 八舞サンドイッチを食らいながら十香に対して気遣いを見せているものの、七罪にはどう聞いても一刻も早く負けてくれという懇願にしか聞こえなかった。士道の身体は十香に支えられているので、自滅しようにも十香が退いてくれないとどうにもならないのだ。足の方は八舞姉妹に支えられているので、事実上今の士道には自滅すら許されていない。

 

「無理はしていないぞ。それに、何だ……シドーに抱きしめられているようで、何だかとっても幸せな気持ちだ……」

 

 それに肝心の十香が士道の状態に全く気付いておらず、むしろ幸せそうに目を細めている始末。かなり性知識に欠けている部分があるので、たぶん士道のモノがお尻に当たっていたとしてもそこまで疑問に思わないのではないだろうか。

 ともかく士道には自滅という選択肢は与えられていなかった。ここに至るまで何度か間違った所に手を置こうとしていたものの、他の三人の圧がもの凄いせいでそれすら許されていない感じだ。普通に考えればかなりの役得な状況だが、他の子にまだ手を出してはいけないと琴里に念を押されている士道にはどう考えても生き地獄だ。

 

「な、七罪ぃ……!」

 

 そんな状態で、士道は七罪に助けを求めてきた。ぷるぷると震える子犬のように瞳を潤めながら、酷く切ない声で。

 今までの七罪なら士道に助けを求められれば、力になってあげたい気持ちと嫌われたくない気持ちから応えてあげただろう(自分が力になれるのかという前提に迷うのはさておき)。

 だが今の七罪は士道がそうそう自分を嫌わないことを理解している。そして理解不能だがどうにも七罪を一番好いている節があるということも、朧気ながら理解していなくもない。なので助けてあげたいという気持ちより、沸き上がる微かな嗜虐心を感じていた。士道があんな表情で七罪に助けを求めてきているのが、何だか無性にゾクゾクしたのだ。

 

「まあ頑張りなさいよ、士道。骨は拾ってあげるから。はい、それじゃ次行くわよ」

「七罪ぃ……!!」

 

 見捨てられて最早涙目な士道の情けない顔も、バッチリとカメラに収める。

 そもそもまだしばらく可能な限り士道を独占したい琴里と違って、七罪はもうさっさと皆抱いてしまえば良いと思っているのだ。ここで士道がついに堪えきれなくなってあの三人を同時に貪り始めたとしても、七罪にとっては困らないどころかむしろ歓迎すべき事態である。

 そんなわけで士道のすがるような視線をちょっと楽しみつつ、七罪は遠慮なくスピナーを回した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そうして七罪は一日かけて、士道の様々な表情と姿を盗撮していった。不意に『何でこんな事してるんだろ?』と正気に戻りかけることもあったが、盗撮を頼んできたのはあの折紙で、続行を命じてきたのはあの琴里である。今更やめればどんな恐ろしい展開が待ち受けているのか考えるのも怖くて、結局七罪は全力で盗撮を続けざるを得なかったのだ。

 まあ元々プライベートなどあってないような士道相手なので、すでにそこまで罪悪感もなかった。どのみち士道はいつか折紙にもその全てを曝け出し貪られる日が来るはずなので、それに比べれば盗撮写真くらい可愛いものだろう。

 そんなわけで途中から開き直って士道を盗撮していった七罪だが、日が沈み夜のとばりが降りてきた頃、ついに問題にぶち当たった。

 

「結構撮れたけど……あとは、お風呂と……アレ、よね……?」

 

 折紙が出してきた盗撮注文の中には、入浴中の士道と自慰行為の最中の士道という、非常に難しい内容が含まれていた。前者はまだ可能な範囲だが、後者はほぼ不可能に近い注文であった。

 確かに健全な男子高校生なら、毎日自慰行為に励むことは何らおかしくない。士道だって健全な男子高校生だし、しっかりエロ本も所持していた。それはもう毎日馬鹿の一つ覚えが如くやっていたのだろう。

 だが今の士道は一般的な男子高校生とは異なり、熱く愛し合う間柄の女がいる。それも一人ではなく、四人も。そんな男がわざわざ一人寂しく自分を慰めることなどありえない。それにその必要もない。例え単なる性欲の処理だろうと、四糸乃なら頼めば絶対に首を横に振らないだろうし、七罪も時と場合によっては構わない心持ちだ。何より一人で致す元気があるのなら、間違いなく琴里が搾り取っているに違いない。

 なので士道が自発的に自慰行為をすることなどまず無いだろう。あるとすればプレイの一環とか、その辺くらいである。

 

「……やっぱ、これしかないわよね。気が乗らないっていうか、ぶっちゃけ嫌な予感しかしないけど、背に腹は代えられないわ」

 

 なので悩み抜いた末に方針を決めた七罪は、洗面所へと足を踏み入れた。

 お風呂場はもちろん、士道が使用中。つい先ほど洗面所に入って行ったのを確認したので、それこそまだ入ったばかりだ。乱入する余地は十分にある。

 そう、七罪が考え出した方針とは単純明快。一緒にお風呂に入って興奮を煽り、プレイの一環として自慰行為を促すことで、士道の入浴シーンと自慰行為の最中の姿を盗撮することである。幸いと言って良いのか盗撮用のカメラはある程度の防水機能があり、湯船に落としたりしなければ機能にも支障は出ないはずだ。

 そのため、後は七罪がいかにプレイを誘導できるかにかかっている。しかし大体いつもベッドの上で良いようにやられている七罪では、誘導するのも難しいだろう。そもそも誘導どころか部屋まで我慢させることすら難しいかもしれない。というか士道に好き放題弄ばれ、とても盗撮をする余裕など無くなる未来しか見えない。そこで七罪はもう一つ手を打つことにした。

 

「――ハーイ、士道くん。一緒に入っても良いかしら?」

 

 そう、変身である。理想の姿へ変身することで大胆かつ魅力的な自分になれば、プレイの誘導くらいわけはない(はず)。

 

「お、七罪か。珍しいな、変身してるとはいえお前から入って来るなんて」

 

 風呂場に誰かが入ってくる状況にはかなり慣れがあるようで、湯船に浸かっていた士道は特に驚きも見せずに頷いてくれた。

 ただし表面上は冷静に振舞っていても、その視線は七罪の身体に釘付けであった。しかしそれも仕方ない。今の七罪のスタイルは正に男の理想そのものであり、なおかつバランスが崩れないギリギリのプロポーションなのだ。しかもそんな身体を左手に持ったバスタオルで申し訳程度に隠しているだけという、無防備極まる姿である。幾ら士道が経験豊富な男だと言っても、目を逸らすことは難しいだろう。

 おまけに今の七罪は髪型も若干変えているため、雰囲気も違って感じるに違いない。長い緑の髪は頭の横でお団子にしており、うなじもバッチリ見えるようにしてあるのだから。

 

「もうっ、そんなに熱い視線で見つめられたら恥ずかしいわ……士道くんのエッチ?」

「し、仕方ないだろ。見られたくないならわざわざ変身して入って来るなよな?」

「そんなこと言っても、士道くんは変身していなくてもじっくり見てくるじゃないの。あんなみすぼらしい身体を、舐めるようにじっくりと……」

「それは……まあ、否定はしないけどさ……」

 

 痛いところを突かれたとでも言うように、居心地悪そうに視線を逸らす士道。

 しかしやはり男の本能は抑え難いらしく、逸らされた視線は何度もチラチラとこちらへ向けられていた。きっとバスタオルに遮られて見えない白い肌が気になって気になってしょうがないのだろう。実に可愛らしい様子に、七罪は思わず笑みを零した。

 

「ふふっ。良いのよ、別に。私は見られたくないなんて一言も言ってないもの。恥ずかしいけれど、士道くんがお望みなら――どこだって見せてあ・げ・る?」

「……まあ、それは後でな?」

 

 身体を隠すバスタオルを焦らすように僅かにずらしながら言うと、もう士道の中では一定の興奮のラインを越えてしまったらしい。後で変身したまま相手をすることが決定した瞬間であった。まだ七罪自身は湯に浸かってすらいないのだが。

 相手をするにしろしないにしろ、今回の目的は入浴中の士道の姿を写真に収める事。そして自分のモノを自分で扱く姿を写真に収める事だ。最低でも前者だけは何とか果たさなければ話にならない。

 

「分かったわ。それじゃあ、私も失礼するわね?」

 

 そんなわけで右手に携えた透明なカメラで士道の入浴シーンを激写しつつ、自らも浴室へと足を踏み入れる。

 明らかに一緒に入浴していないと取れない写真になるが、そこはもう仕方ない。変身して気が大きくなったから一緒に入ったと言いつつ、盗撮写真をたっぷり渡してやれば、折紙もそこまで追及はしないだろう。そもそも折紙がここにいたなら、水着もバスタオルも無しで一緒に入浴くらいはしかねないのだから。

 

「んっ……」

 

 浴槽の縁を跨ぎ、湯船に足先から身体を沈めていく。太ももとその上辺りに士道の視線が痛いくらいに突き刺さっているのを感じたものの、悪い気は全くしないのでむしろ見せつけるように少しずつ湯船に入って行った。変身して気が大きくなっているのは間違いなく事実である。

 

「ふぅ……」

 

 そうして士道と向かい合う形で、浴槽の反対側へと身体を深く沈めた。もちろんそこまで広くも深くも無い浴槽であるため、お湯がザバザバと溢れ、湯船の中ではお互いの足がこれでもかと触れ合う。

 別に士道の膝の上に腰を下ろす形でも良かったのだが、そうすると盗撮しにくいのであえて正面にした感じだ。おかげで興奮に息を呑んでいる士道の顔がバッチリと撮影できる。堂々と正面から盗撮しようとも、士道は七罪の豊かな胸の膨らみをガン見するのに忙しいようで、透明なカメラを携えているせいで不自然な右手を全く疑問に思っていないようであった。

 

「……もうっ。そんなに熱い視線を向けられたら、お姉さんも身体が火照ってきちゃうわ?」

「いや、お前むしろ見せつけてきてるだろ。本当に変身してると積極的になるよな」

「そう言う士道くんも似たようなものじゃないかしら? 普段はとっても優しいのに、ベッドの上だと凄く激しくて意地悪で……」

 

 数日前の夜を思い出し、七罪は僅かな恥じらいに湯船の中で悶える。

 すでに四人もの精霊と身体を重ねている士道のテクニックは、一度攻めを許せばそのまま問答無用で失神寸前まで攻め立てられるレベルだ。加えて底無しの性欲を持つ琴里の相手も務められる体力と持久力も兼ね備えているので、七罪に反撃の機会はほぼ訪れない。大体毎回良いように弄ばれて終わりである。まあ滅茶苦茶気持ち良くて死ぬほど幸せなので、そこまで不満は無いのだが。

 

「はあっ。たまにはお姉さんらしく、士道くんを弄びたいわぁ……」

「うわっ!? お、おい、やめろ! 変な所触るな!」

 

 足を伸ばし、士道の股の間あたりを足の指で撫で擦ると、士道はさしずめスカートを閉じる女の子のように慌てて膝を閉じた。足先に伝わってきた固い感触と、湯船の中でも分かるほどの熱さから察するに、しっかり興奮しているようだ。

 このまま行くと襲われることは予想できるものの、士道の反応が楽しくてついつい悪戯をしてしまう七罪であった。

 

「えいっ、えいっ! イっちゃえ、士道くん!」

「や、やめろって! ああもうっ!」

 

 さすがに足先で弄られて暴発するのは嫌だったらしく、士道は湯船から出て七罪の悪戯から逃げた。

 もちろん一連の士道の反応もしっかり盗撮済みである。大切なところを足で突かれて顔を赤くしている士道の表情は、きっと折紙もお気に召すに違いない。

 

「全く……お前、絶対後で自分がやったこと思い出してこれでもかってくらい悶えることになるぞ?」

「ふふっ、大丈夫よ。そんなのいつものことだもの」

 

 呆れた感じの士道に対して、七罪は笑って返した。そのくらいは必要経費と割り切るしかないし、今の変身して無駄に心も精神も図太くなった七罪には、元に戻った時のことを考えて行動するような臆病さは欠片も無い。

 士道はそんな答えにもう一度呆れたようなため息を零したかと思えば、そのままボディソープに手を伸ばした。どうせ湯船から上がったのでさっさと身体を洗おう、ということらしい。何にせよ七罪にとってはシャッターチャンスである。

 

「……おい、何でそんなにジロジロ見てるんだよ?」

「大丈夫よ、士道くん。私のことは気にしないで?」

 

 さすがにあまりにも露骨に見ていたせいか不審な目を向けてきたものの、その視線は透明なカメラを持っているが故に不自然な右手ではなく、浴槽の縁に乗せた巨乳の方に向いていた。もちろん七罪は分かっていてやっている。尤も本来の姿では浴槽の縁に乗せられるほどの膨らみは存在しないが。

 

「ふふっ。良いわよ、士道くん。とっても色っぽいわぁ……」

 

 頭からお湯を被り水も滴る良い男と化した士道に、思わず恍惚の吐息を零す。そしてひたすらに連写して盗撮しまくる。

 カメラが透明なのでファインダーも覗けないため、とにかく枚数を撮って後で餞別するしかないのだ。いっそ動画にすれば面倒は無いものの、それはそれで自分たちの秘密の関係を匂わせる言葉が入る危険性があるので、やはり容量に任せてひたすら連写するしかなかった。

 

「……お前が身体洗う時は、同じくらいガン見してやるからな?」

「やん、エッチなんだからぁ?」

 

 瞳に妙な劣情と決意を滲ませた士道が無駄に鋭い目を向けてきたため、さっと胸を隠して湯船に沈む。

 しかし今更隠してももう手遅れなのははっきりと分かっていた。絶対に襲う、という強い意志が士道の全身から放たれているのだから。この分だとやはりベッドまで誘導することは非常に難しそうだ。

 

「――よーし。次はお前の番だぞ、七罪ぃ?」

 

 そうして数分後、身体と頭を洗い終えた士道が嫌らしく笑いながら視線を投げかけてきた。見た目は綺麗さっぱり清潔になっているというのに、表情がかなり汚らしくてゲスい。しかも下半身が大変元気になっているというのに隠しもせず、堂々と仁王立ちをしていた。

 一瞬シャッターチャンスかと思ったものの、この見せつけてきている光景は明らかにアウトなのでやめておいた。折紙に見られてしまえば言い訳は絶対に不可能である。

 

「もうっ、士道くんったら相変わらず元気ね?」

 

 促されるまま、湯船から上がって浴室鏡の前へと移動する。その間も士道は入れ替わりに湯船に浸かることなどせず、後ろからじっくりと嫌らしい目で七罪の身体を鑑賞していた。水の滴る女体が大変お好みのようで、今にも襲い掛からんばかりに鼻息を荒くしている始末である。

 

「――あんっ! ちょ、ちょっと士道くん!?」

 

 やはり辛抱堪らないようで、七罪が浴室鏡の前に腰を下ろすなり、後ろからぎゅっと抱き着いてきた。

 本来この程度なら大人な七罪はそこまで動じはしないものの、左手で乳房を、右手で太ももを弄られながら、お尻に硬くて熱いモノを擦りつけられてはさすがに平静を装えなかった。何より七罪の身体を撫でる士道の指先の動きが、それはもうテクニシャンで気持ち良すぎたから。

 

「せっかくだから俺が全身綺麗に洗ってやるよ。たっぷり、じっくりとな?」

「あっ……!」

 

 更に耳元で甘く囁いてきたかと思えば、首筋に舌を這わせてくる。その動きも七罪の感じる場所や弄り方を完全に把握している動きであり、どうしようもなく喘ぎが零れてしまう。

 変身している状態でこれなのだから、普段の七罪がいつも好き放題弄ばれて散々イかされまくるのも当然であった。

 

「ま、待って、士道くん? お風呂でこんなことをしたら、また気分が悪くなっちゃうわよ? どうせなら上がってからお部屋でしま――ああんっ!」

 

 ダメ元でそう提案してみたものの、返ってきたのは敏感な乳頭を甘く抓む愛撫。それだけでびくりと身体が震え、快感に激しい喘ぎが零れた。

 

「心配しなくても大丈夫だ。いつものお前ならちょっと厳しかったけど、今のお前相手なら水分補給の方法がちゃんとあるからな。だから安心して俺に身を任せてくれていいぜ?」

「何だか今、ちょっとイラっときたのだけど――んんっ!」

 

 グイっと顔の向きを変えられたかと思えば、そのまま唇を奪われる。

 やっていることは強引なはずだというのに、キスはどこまでも優しく愛情深く、抵抗する気など欠片もなくなる罪深い味わいであった。むしろこのまま身を任せ、もっと愛して欲しいと思ってしまうほどに。

 やはりこれはもう、盗撮などしていられる余裕はない。頼ってくれた折紙には悪いが、自慰の最中の士道の姿だけは諦めてもらうしかないだろう。

 そんなわけで七罪は最後の意志力を振り絞り、透明なカメラをバスタオルに包んで風呂場の隅へと滑らせた。これで直接お湯でもぶっかけない限り、少なくともカメラは無事だ。

 

「――ぷはっ……あぁ、士道くぅん……!」

「ははっ。ここか? ここが良いのか、七罪ぃ?」

 

 そう、少なくともカメラは。

 当然ながら七罪が無事で済むことなど無く、散々弄ばれたせいで変身が解けて本来の姿に戻った後も、ドSの士道は嬉々として七罪をじっくりと攻め立ててきた。むしろ変身していた時よりもねちっこく。

 その扱いに若干の悔しさを覚えつつも、堪らない幸福感に酔ってしまうどうしようもない七罪であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――待っていた、七罪。さっそく結果を聞かせて欲しい」

 

 数日後、七罪はまたしても精霊用マンションの一室に引きずり込まれ、壁ドンされた状態で盗撮の結果を折紙に尋ねられていた。見た目こそ表情に乏しいものの、妙な圧力と凄まじい目力を感じるので結果がかなり気になるらしい。

 

「と、とりあえずちょっと離れてくれない……?」

 

 しかし息が詰まりそうなので一旦離れてもらった。何も悪いことをしていなくとも折紙の前に立つのはかなり気が引けるというのに、実際には隠れて士道とイチャイチャラブラブしているという秘密があるのだ。負い目を感じてしまうのも仕方が無かった。

 

「……一部撮れなかった写真があるわ。撮ろうと頑張りはしたんだけど、その、内容があまりにもアレで……」

「……仕方ない。私は非常識な依頼を出した側。文句を言える筋合いはどこにもない」

「非常識な依頼って自覚はあったのね……はい、これ」

 

 非常識だと理解しつつ頼んできた図太い神経に呆れつつ、七罪は盗撮用のカメラを手渡した。色々あったが壊れたり故障したりはしていないので、士道の盗撮画像がバッチリ満載である。きっとこれなら折紙もお気に召してくれることだろう。

 

「ありがとう。少し、確認させてもらう」

 

 受け取り、その場でデータを確認していく折紙。

 一応自分たちの関係を匂わせる画像が無いかどうかは三回ほどチェックを重ねた上、半ば強制的に琴里による検閲も入っているため、恐らく問題は無いはずだ。

 

「………………」

 

 しかし無言でデータを確認していく折紙の姿に、気が弱い七罪が戦々恐々としてしまうのは仕方がないことだった。時折折紙の目がくわっと見開かれたり、僅かに眉が顰められたりするので余計に。

 

「……これは、どうやって撮影したの?」

 

 その最中、折紙が見せてきたのは入浴中の士道の盗撮写真。それだけならまだしも、明らかに士道の顔がこちらに向いている。『盗撮』が前提の折紙としてはなかなか不穏な写真に見えたに違いない。

 

「それは、その……変身して……私も、お風呂に……」

「………………」

「ひぇ……!」

 

 嫉妬なのか羨望なのか、はたまた別の感情なのか。表情こそそこまで変化は無いものの、良く分からない圧を放ってくる折紙。七罪はその恐ろしさに思わず一歩後退ってしまった。 

 

「で、でも、折紙だって士道がお風呂に入ってたら一緒に入るんじゃない……?」

「……確かに。チャンスがあれば逃す手は無い」

 

 しかし同じ状況ならどうするか、という問いを投げかけると納得してくれたようだ。一つ深く頷き、再びデータの確認に戻っていた。

 やはり折紙もチャンスがあれば、遠慮なく士道の入浴中に突撃するらしい。士道に警告してやりたい気持ちと、そのまま襲われてさっさと折紙も爛れた関係に加えてしまえ、という二つの考えに揺れてしまう七罪であった。

 

「……ふぅ。少し余計なモノが写っていることを除けば、実に素晴らしい写真の数々だった。七罪、本当にありがとう。これでしばらくは士道素の摂取に困らない」

 

 しばらくしてデータの確認を終えた折紙は、若干満足気に見える表情で顔を上げた。

 結構余計なモノを写していたし、自慰行為の最中の士道という馬鹿げた写真を撮ることはできなかったが、数々の士道の写真によって許されたらしい。多少の備えも用意していた七罪としては、ちょっと肩透かしを食らったような気分である。

 

「はぁ……じゃあ、これはいらない感じ? 撮れなかった写真もあったし、その代わりって言ったら何だけど、士道が一日着てた服を持ってき――ひぃっ!?」

 

 その備えをビニールに包んで入れた紙袋に視線を落とした直後、ガッと両肩を掴まれ小さく悲鳴を上げてしまう。視線を戻せば怖いほどに真剣な瞳が、息がかかりそうなほど近くにあった。かなり瞳孔が開いており、内容はともかく興奮状態にあることは明白であった。

 

「……下着も、入っている?」

「い……一応――ひゃあっ!?」

 

 そんな状態の折紙が尋ねてきたのは、下着も含まれているかというかなりアレな問い。

 折紙がどのような女かは何となく察していたので、念のために下着も含んで用意していたのは無駄ではなかったらしい。感激したかのように瞳を揺らしたかと思えば、次の瞬間七罪の両手をガシリと掴んできた。

 

「七罪。これだけ私のために尽力してくれるあなたは、紛れもなく素晴らしい友人。かけがえのない親友。一生のマブダチ」

「し、親友……!?」

 

 その上でこんな言葉をかけられ、思わず喜びを抱いてしまう。

 一瞬冗談か何かかと思ったものの、冗談で七罪の汚い手をここまで強く掴むことなどありえない。しかも素手で。何より表情の分かりにくい折紙の瞳は、明らかに感動に打ち震えていた。

 

「そう、私とあなたは親友。マイベストフレンド」

「ベスト、フレンド……」

 

 男の使用済み下着を渡しただけで親友宣言してくる変態はさすがに嫌だなぁ、と思った七罪だが、考えてみればそれくらいの人間の方が七罪の友には相応しい気もした。そもそも四糸乃のような完全無欠で純粋無垢で女神そのものな子が、七罪を親友だと思ってくれていることの方が異常なのだ。身の程を考えれば折紙が親友でもまだ分不相応というものだろう。

 

「……そんな私と深い友情で結ばれたあなたに、もう一つお願いがある」

「な、なに? まあ、その、私たちは、親友……だし? 内容によっては、考えなくも無いわよ?」

「一日……いえ、半日だけでも構わない。あなたの力で私をあなたに変身させて、士道の傍で過ごさせて欲しい」

「……ごめん。さすがにそれは、ちょっと……」

 

 満更でもない気分で答えたかと思えば、次の瞬間とんでもないお願いが飛んできたため、さすがにこれには首を横に振らざるを得なかった。壊れて困るほど良いイメージなど自分にはない七罪だが、それでもこんな変態に自分の皮を被られるのだけは、心の底から嫌だった。

 

 

 





 かなり際どい盗撮写真を手に入れて大満足の折紙さんと、親友が増えて満更でもない七罪。ウィンウィンの関係ってやつですね。
 補足の必要もないかもしれませんが補足しておくと、当然ながらあの遊び道具はツイスターです。昔友達とやったことがありますが、体幹がクソザコなので簡単に尻もちついて負けました。それはともかく、どうせなら士道さんと七罪と美九と折紙でツイスターすれば良いんじゃないかな。きっと地獄(天国)になるはず……。

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