あと今回は投稿日に関してのアンケートを設置してみたので、良ければお答えくださると助かります。
「こんばんはー、だーりん! 通い妻の美九が来ましたよー!」
扉をバーンと開け放ち、キラッキラの笑顔を浮かべた竜胆寺女学院の制服姿の通い妻――もとい美九が士道の部屋に入ってくる。
時は士道が過保護なパパをやめ、四糸乃への一線を踏み越えた翌日の夜。ちょっとやりすぎて四糸乃は今日一日ベッドで安静にせざるを得なかったので、士道としては朝まで付きっ切りで看病してやりたいところだった。
しかし今夜は美九との夜な事、そして恐らく四糸乃自身が他の女の子を放って付きっ切りの看病など望まないだろうという事を考え、士道は大人しく部屋で美九を出迎えていた。
「いつも悪いな、美九。本当に通いで変な事させてて……」
「ふふふ、別に悪いなんて思ってませんよぉ? むしろドキドキワクワクしてますぅ。だって夜事こそこそだーりんと逢引きをするなんて、何だか許されぬ恋って感じでとってもロマンチックじゃないですかぁ?」
「まあ、確かに世の男たちは許しちゃくれないだろうなぁ……」
スリルを楽しんでいるのか妙にテンションが高めな美九に対し、士道の方は逆にテンションが下がってしまう。何故なら許されないのは間違いなく士道の方だからだ。
今をときめく大人気アイドルと肌を重ねる仲という時点で、大概の男にとっては度し難い関係だ。にも拘わらず見た目幼い少女三人とも肌を重ねる関係で、その内一人は義理とはいえ妹。世の男どころか倫理とか法律も許してくれない感じである。
まあだからといって、この関係をやめる気など一ミリたりとも無かった。自分の全てを受け入れてくれる溢れんばかりの愛情は勿論の事、真の快楽というモノを知ってしまった男子高校生がそれを手放すことなどできるわけも無い。
「ふふっ、だーりん♪」
「おっと」
故に士道はぴょんと飛びついてきた美九を抱きとめると、そのまま押し倒される形で二人ベッドに倒れ込み――
「んっ――」
どちらからともなく唇を重ねた。
このまま最後まで行くのも良かったが、そういった行為をするにはまだ少し早い時間だ。なので軽く触れ合わせ、啄み、押し付け合うだけに留める。美九もまだ話をしていたいのか深い口付けこそしてこなかったが、どことなく甘えるような可愛らしい口付けだった。
「ぷはぁ……ふふっ。皆さんに隠れてだーりんとイチャイチャするなんて、イケナイ気持ちになっちゃいますぅ……」
キスを終えれば、美九は悪戯な笑みを浮かべつつ頬を赤く染めていた。どうやら随分とこの関係を楽しんでいるらしい。ふとした拍子にバレやしないかと冷や冷やしている士道としては、実に羨ましい余裕だった。
「美九はそういうのにスリルとか感じるタイプなんだな。俺はちょっと不安とか感じてあんまり楽しめないぞ……」
「だーりんの場合は相手が相手なので仕方ないと思いますよー? 七罪さんも四糸乃さんも、そして琴里さんも、みんな未成年じゃないですかぁ。世間にバレたら警察のお世話になっちゃいますよー?」
「いや、四糸乃と七罪は実際の年齢は分からないから――あっ、クソ! 琴里は結局未成年じゃねぇか……!」
そんな事は無い、と否定したかったが琴里が確実にアウトなので言い訳できなかった。義理の妹という点はセーフだが、結果的には中学生に手を出したのでバレればもちろん警察のお世話になってしまう。
ガチめの犯罪を犯している事を改めて思い知り、士道は自身の罪深さを悔いるのであった。
「……あっ、だーりん。琴里さんの事で思い出したんですけど、だーりんは琴里さんとSMプレイをしているっていう話は本当ですかぁ?」
琴里の名前でふと思い出したように、美九が士道の上から身体を起こしてベッドに腰掛けながら尋ねてきた。内容がなかなかとんでもないが、美九なのでこれくらいはいつもの事である。
「誰から聞いたんだ、それ? まさか琴里が話したわけじゃないよな?」
「七罪さんたちから色々聞かせて貰いました。もちろん、琴里さん以外とのプレイも詳細に聞かせて貰いましたよぉ? うふふふ……」
「随分楽しい話だったみたいだな……」
妖しい目付きで恍惚の表情を浮かべる様子に若干引き気味になりながら、士道も身体を起こして美九の隣に腰掛ける。これは四糸乃も七罪も、士道と重ねた逢瀬のほぼ全てを白状させられたに違いない。
しかし琴里とのSMに関してわざわざ尋ねてきた事を考えるに、もしかすると二人は琴里のプレイ内容については深く語らなかったのかもしれない。
「まあ、実際本当だよ。琴里は白い方だとドMで、黒い方だとドSにもなるっていうおかしな性癖してるからな。俺は別に痛めつけられて喜ぶ趣味は持ってないけど、たまに黒琴里が無理やりやってくるし……」
「なるほどぉ。だーりんとしては女の子に酷い事をされるより、女の子に酷い事をする方が好きなんですね?」
「言い方にちょっと悪意があるけど、まあその通りだな。何だかんだで美九に対しては結構Sになっちまうし……」
そこまで口にして、美九との初めてを思い出す。最初から最後まで優しくしてあげようと思っていたというのに、普段は愛情表現が積極的かつ情熱的な美九が恥じらっている姿が非常に士道のS心を刺激してきたのだ。沸き上がる興奮を抑えきれず、かなり嫌らしい攻め方をしてしまったのはまだ記憶に新しい。
結果的には美九はかなり満足気だったものの、士道としてはちょっと失敗をしてしまった気分だった。
「ふふふ。初めての時のだーりんも、優しいのにとってもサディスティックでしたよね? 美九が何度もうダメですって言っても、嫌らしく攻めてくるんですからぁ。初めてであんな風に苛められるなんて、美九はもうお嫁にいけませんよぉ。しくしく……」
面白がるように言ったかと思えば、わざとらしい嘘泣きをして目を擦る美九。
以前までの士道ならここでどう答えれば良いか分からず、しどろもどろになってしまった事だろう。だが四人もの少女と身体を重ね、愛し合っている今の士道は違った。
「……へぇ? 美九は俺以外の男の所に、嫁に行きたいのか?」
少なくとも、こんな風にキザったらしい台詞を口に出来る程度には成長していた。ついでに美九の顎を指で持ち上げ、こちらを向かせる事が出来る程度には。
この行動には美九も驚いたのか、一瞬頬を染めたかと思えば満面の笑みを浮かべてくれた。
「ふふっ、そんなわけありませんよぉ。私はだーりん一筋ですから! ちゅっ!」
そうして、軽く口付けて来る。どうやらなかなかお気に召す答えを返す事ができたらしい。自身の成長を実感し、少々感慨深いものを感じる士道であった。
「……あっ。でも、士織さんがいた場合はちょっと迷うかもしれません。いえ、とても迷います」
「迷うなよ! どっちも俺だろ、それ!?」
しかし美九がとんでもない事を言い出したので、あまり長く感動に浸ることはできなかった。士道一筋とのたまっておきながら、まさかの女装した士道との間で揺れ動く不義理さはさすがというべきか。
「だーりんと士織さんと3Pエッチがしたいです」
「急に真面目な顔で変な事言うなよ!? 本気の目をやめろ!」
その上、かつてないほどに真剣な瞳でぶっ飛んだ事を口にするのだから堪らない。
やはり美九は欲望のままに生きているようだ。ハーレムを築いている割には色々と制約や注意が多い士道としては、実に羨ましい限りだった。
「まあ、そんな願望はひとまず置いておいて……今夜の話をしましょうか、だーりん?」
「冗談じゃなくて願望なんだな……今夜の事って?」
「はい。その前にだーりんにお聞きしたいんですけど、初めて会った時の美九の事はどう思いますかぁ?」
「また随分唐突だな。どうって、そりゃあ……」
問われて、士道は記憶を掘り返す。
初めて出会った時の美九。バリバリの男嫌いで、半ば人間不信に陥っていた頃。正直な所、今の美九とは似ても似つかない感じだ。初対面の士道を冷徹に見下し凄まじい罵倒の言葉を浴びせてきた様子は、黒琴里の態度と言葉攻めが可愛く思えるほどだった。そもそも士道が目の前に立っただけで機嫌が地の底まで急降下した辺り、やはり女装をしないと対話も不可能だっただろう。
今更ながら、美九は本当に良くここまで変わったものである。下手をすると白琴里と黒琴里以上の変化だ。
「何ていうか、その……高圧的、って感じだったな。ある意味では黒琴里っぽかったって言うべきか?」
「やっぱりそうですよね? じゃあ、そんな美九を押し倒して無理やりにエッチな事をしたいって思いましたかぁ?」
「……おい、美九。何考えてるんだ?」
多少言葉を選んで答えると、美九はちょっとワクワクした感じにそんな事を尋ねてくる。明らかにろくでもない感じの話の流れになっている事に気付いた士道は、逆に不審の目を向けて尋ね返した。
「ふふっ。今日はドSなだーりんが喜びそうなプレイを考えて来たんですよぉ。ずばり、高圧的で高慢ちきな美九を、だーりんが襲って分からせるプレイです!」
予想通り、ろくでもない感じの話に繋がった。
端的に言えば凌辱プレイのようなものなのだろう。内容はともかくとして、これを楽しそうな笑顔で提案してくる美九に士道はただただ戦慄するしかなかった。とはいえちょっと楽しそうだと士道自身も思ってしまった辺り、同じ穴のムジナなのかもしれない。
「いや、その……心惹かれるものが無いって言われたら嘘になるけどさ、あの時の美九は仕方なかったろ?」
「仕方なくなんかないですよぉ! だーりんったら、あんな風に見下されて罵倒されて悔しくないんですかぁ!? そこは『調子に乗りやがって! 分からせてやる!』くらい言いましょうよぉ!」
「何かもう、ただ単にお前がそういうプレイをしたがってるだけなんじゃないか?」
「あ、バレちゃいましたぁ?」
士道の問いに、美九はペロッと舌を出して照れた様に笑う。どうやら純粋にそういうプレイがしたかったらしい。本当に欲望に正直な奴である。
「お前はお前でドMだよな、美九……」
「いえ、美九はどっちでもイケます。それに今回はだーりんを喜ばせるためでもありますし……乱暴で野獣のようなだーりんに貪られてみたい、っていう思いもあったりしますぅ……! あぁん、だーりんったら激しい……!」
「七罪や四糸乃もお前くらい欲望全開だったら助かったんだけどなぁ……」
ヤバい感じの笑顔を浮かべてトリップしながら、身体を悶えさせて長い髪と胸元の凶悪なモノを揺らしている美九。
あの二人が美九のように何の遠慮も無く自らの想いや欲望を伝えてくれたのなら、たぶん色々と擦れ違う事は無かっただろう。とはいえ今は四糸乃も七罪もだいぶ素直に自分の想いを伝えて来るし、それは触れ合いに関しても同様だ。なので今からこんな風になったとしても有難みは薄そうだ。
というか七罪や四糸乃がこんなノリになるのは、それはそれで嫌な士道だった。精霊たちは非常に個性的な子が多いので、大人しめなあの二人までこんな風になってしまったらちょっとキツイ。
「まあ、お前がやりたいっていうんなら俺も付き合うよ。何だかんだでちょっと楽しそうだしな?」
「あぁん! やっぱりだーりんったらドSですぅ!」
それはそれとして、美九は苛めたくなるタイプなのでプレイ自体は楽しそうだ。なので士道は何だかんだで乗り気だった。美九も士道が乗り気で嬉しいのか、実に生き生きとした笑顔を浮かべていた。
「では、プレイが決まった所でシチュエーションを決めましょう! 雰囲気も設定も大事ですからね!」
「そこまで凝るのか。本格的だな?」
「当然ですよー。だってその方が面白くなりますし、興奮しますからぁ」
「ハハハ、さすがは美九。エンターテイナーだな?」
「ふふっ、美九はアイドルですからねぇ。でも、こんなエンターテインメントを提供するのはだーりんにだけ、ですからね?」
そう口にして婀娜っぽく微笑みつつ、士道の鼻をつんと指で突いてくる美九。さっきまで無邪気(欲望に塗れていないとは言っていない)な笑顔を浮かべ、アイドルがしてはいけない感じの笑いをしていたというのに、今はまるで大人のお姉さんのような色気と魅力を放っているのだから堪らない。
そのギャップに脳が混乱しそうになりながらも、どうしようもなく惚れ惚れしてしまう士道だった。
「ああ、ありがとな。俺だけのアイドルさん?」
「やーん!」
なのでぎゅっと身体を引き寄せ、頬に軽く口付ける。口では嫌がるような反応をしていたものの、声色には喜びが溢れていたのは言うまでもない。
「それで、具体的にはどういうシチュエーションにするつもりなんだ?」
「そうですねぇ……下校中の美九をだーりんが家に連れ込んで、そのまま美味しく頂いたって感じでどうでしょうかぁ?」
「悪くは無いな。けど……そういうプレイって事は、俺は五河士道じゃなくてその辺歩いてる一般の男みたいなもんだろ? 美九の嫌いなその辺の男が、美九を家に連れ込めるか?」
士道はそのシチュエーションに首を傾げた。
多少はマシになったとはいえ、美九は相変わらず士道以外の男は苦手としている。そんな美九が見知らぬ男の家に上がるような展開など、全く想像できなかった。まあ相手が見知らぬ可愛い女の子なら、わりと躊躇いなく上がって行きそうな気もするが。
「うーん……力づくじゃダメなんですかぁ?」
「ダメってわけじゃあないけど、それじゃあちょっと無理やり過ぎないか? せっかく詳細まで決めるんなら、もうちょっと拘った展開にしようぜ」
「そうですねー。確かにその方が良いと思います。でも……力づく以外で、美九が男の人の家に入るんでしょうかぁ……」
「そこだよなぁ。そもそも本当なら力づくも無理だからなぁ……」
やはり美九自身も無理があると感じているようで、難しい顔をして首を傾げる。
そもそも一般人が精霊である美九を力づくで家に連れ込むのがまず不可能だ。とはいえこちらは精霊では無いという設定にすれば何とかなる。問題は男嫌いという点で、これに関しては変更するとそもそもプレイの大前提に支障をきたすので変更不可である。
それを踏まえて美九を家に連れ込む方法を考えるも、やはりなかなか良いアイデアが浮かばなかった。
「幾ら美九でも『家には可愛い女の子がいるぞ』って誘い文句じゃなびかないだろうしな――」
「いえ、それなら引っかかります! その子の写真を見せて貰えれば一発です!」
「マジかよ、お前……」
冗談交じりにそう口にすると、あろうことか美九はばっちり食いついてきた。これにはさすがに士道も呆れる他なかった。可愛い女の子が家にいれば、大人気アイドルである美九を家に連れ込む事ができるという秘密が判明した瞬間である。
「さすがによっぽど好みの可愛い女の子じゃないと無理ですけど、今だーりんのお家には七罪さんと琴里さんがいるじゃないですかぁ! あんなに可愛くて食べてしまいたい子が二人もいるのなら、美九はどこへだって行きますよぉ!」
「お前本当に欲望に忠実だよな。いっそ感心するぞ……」
「うふふっ。惚れ直しちゃいましたかぁ、だーりん?」
「いや、ちょっと引いた」
「がーん!」
興奮気味に瞳を輝かせて力説したかと思えば、悪戯っぽい笑みで士道を誘惑し、ショックを受けた様に目を丸くする。
目まぐるしく表情が変わる美九は見ていて飽きず、一緒にいてとても楽しく、何だかんだで穏やかな心地になれて楽しい士道であった。これで士道と士織ちゃんとの3Pを本気で狙っていなければ、言う事は全くないのだが。
「――それじゃあ始めますよー、だーりん。美九の演技力、しっかりと目に焼き付けてくださいねー?」
「ああ。期待してるぞ、美九?」
「うふふ。絶対にだーりんをびっくりさせちゃいますよー?」
最後に投げキッスを一つ残し、美九は玄関の扉を開けて五河家を出て行った。
しかし自宅に帰るわけでは無い。これはプレイを始めるために、一旦外に出たに過ぎない。色々と状況や設定を話し合った結果、美九が家を訪ねてくる所からプレイ開始という事になったのだ。
そんなわけで、士道は美九が再び玄関の扉を開けて入ってくる所を待っていたのだが――
「あれ、美九もう帰ったの? 今日は美九の日じゃなかったっけ?」
運が悪いのか間が悪いのか、七罪がリビングの方から現れた。風呂から上がったばかりなのか髪はしっとりとしており、身体もホコホコしていて実に美味しそうだ。美九が見つけたら間違いなく食いつくだろう姿であった。何なら士道も食いつきたい感じだ。
「七罪、お前は早く逃げた方が良いぞ? 話がややこしくなるからな」
「え? それってどういう意味よ?」
「それは――」
首を傾げた七罪に答えようとした直後――コンコン、と玄関の扉がノックされた。
逃がしてやろうと思ったがどうやら手遅れだったらしい。不憫な七罪に士道が一瞬同情の目を向けると、無情にも玄関の扉が開かれた。
「――失礼します。こちら、五河士道さんのお宅ですかぁ?」
そして現れたのは、さっき来た時と同じ竜胆寺女学院の制服姿の美九。しかし、その声色と表情はあまりにも普段のものと異なっていた。
顔には貼り付けたような微笑を浮かべ、声色はどこか冷たく侮蔑がこもっている。まるで士道の名を口にする事すら嫌で仕方がないとでも言うような感じだ。実際士道を見据える美九の瞳は、先ほどまでと違い完全に冷め切っている。黒光りする甲虫を見る時の目の方がまだ慈愛が感じられるほどだった。迫力とゴミを見るような目にちょっと気圧されてしまったのは秘密である。
「え、何これ。何かのプレイの真っ最中……?」
そこで七罪が士道の身体の陰から顔を出し、美九の方を胡乱気な瞳で見つめる。
そういえば七罪は丸くなった後の美九しか知らないはず――と思ったのも束の間、七罪の姿を目にした美九の表情が一瞬で普段のアレに戻った。
「あっ!? 七罪さ――んっ、んんっ! あら、話に聞いた通りとっても可愛い女の子がいるじゃないですかぁ。私を家に連れ込むための薄汚い嘘かと思いましたが、本当の事を言っていたようで何よりですぅ」
そしてわざとらしい咳ばらいを挟み、演技に戻る。
どうやらプレイは続行するつもりなようだ。不測の事態が起ころうとアドリブで対処する姿は正にプロのアイドルである。
「ハハハ、まさか。そんな嘘をつくはずないだろ? ほら七罪、挨拶しろよ。人気アイドルの美九ちゃんだぞ?」
「え? あ、うん。よ、よろしく?」
とりあえず士道も乗っかっておく事にして、七罪の背を押し挨拶するよう促す。
変なプレイに巻き込まれた七罪は、困惑しながらも素直に頭を下げて挨拶をしていた。もしかすると困惑の理由は、普段のように出会い頭に抱きしめられたりしなかったからなのかもしれないが。
「はい、よろしくお願いしますね。こんな男と血が繋がっているとは思えないくらい、可愛らしい子ですねー? 食べちゃいたいくらいですぅ」
「あ、そういう設定なの? 何か妹設定とか琴里に睨まれそうな気がするわ……」
ペロリと舌なめずりする美九を前にして、七罪は設定にツッコミを入れる程度には無警戒だった。やはりプレイ中という事で、普段のように抱きしめからの匂い嗅ぎが無くて安心しているのだろう。
「ふふふ。ちゃんと事前に聞いた通りの子が一人いたという事は、もう一人の子もいるんですよね? 一体どこにいるんでしょうかぁ?」
嬉しそうに呟いた美九は家主の許可を得る事も無く家に上がり、勝手にリビングへと歩き去って行った。実はこれもアドリブであり、本来はこのまま二人で二階へと上がり、琴里の部屋に案内するように見せかけて士道の部屋へ連れ込み――という流れになる。
とはいえ七罪が出て来てちょっと展開が狂ってしまったので、これは恐らく七罪に状況説明その他諸々をするための時間をくれたのだろう。幾らプレイの最中とはいえ、何の説明もフォローも無く七罪を放っておくなどありえない。
「……まあそういうわけで、ちょっとしたプレイの最中だ。この後は部屋に戻って始める予定だから、もうおやすみのキスは先にしておくな?」
「べ、別にわざわざやらなくても――んっ」
頬を染めて目を逸らす七罪の答えは聞かず、士道はそのまま身体を引き寄せて唇を奪った。どうにもプレイの最中という事で遠慮があるようなので、少々強引に。
「んっ……ふ……ぅ……」
唇を重ねてしまえば七罪も幸福感に抗えなかったようで、可愛らしくも士道の服の胸元をきゅっと掴み、自ら甘えるように唇を食んできた。
もうこのまま小脇に抱えて部屋に連れて行きたいところだが、今は美九とのプレイの真っ最中。いつかはやるとしても、心の準備も無しに美九との3Pに引きずり込むのは酷というモノだろう。なので士道は泣く泣く誘惑を振り切り、口付けを終えた。
「ふぅ……別に良いとか言う割には、妙に甘えてきたな?」
「う、うっさい、馬鹿! とっとと美九とパコついてなさいよ!」
どうにも表情を引き締められないようで、緩んだ頬を赤く染めた七罪が軽く蹴りを入れてくる。照れ隠しに暴力に走る所は黒琴里に似ていなくもないが、極めて控えめな威力なので余計に可愛らしかった。
「士道さーん、もう一人の子はどこにいるんですかぁ? 全然見当たりませんよー? さっさと案内してくださいよぉ。あなたはその程度の役目も果たせない屑なんですかぁ?」
ゲシゲシと蹴られている最中、美九が戻ってきて酷く不機嫌そうな顔で尋ねてくる。
本気で機嫌が悪そうに見える辺り、七罪にも引けを取らないすさまじい演技力である。さすがはアイドルと言うべきだろう。というかプロのアイドルに引けを取らない演技力を持つ七罪の方がおかしい気もする。
「ああ、たぶん二階の部屋にいるんだな。今案内するよ」
「お願いしますねぇ? それじゃあ七罪さん、ご機嫌よう?」
「あ、うん……」
最後に七罪に対してにっこり笑いかけると、美九は階段の方に歩いて行く。その姿をしばし見つめた後、七罪は士道の肩をつついてきたかと思えばかがむように促してきた。なので士道が素直にかがむと――
「……私、こっちの美九の方が好きかも。いきなり抱き着いても来ないし、匂いを嗅いでも来ないし」
「案外酷い事言うな、お前……」
などという、かなりぶっちゃけた本音を耳元で囁いてきた。これにはちょっと士道も苦い顔をしてしまう。
確かに今の美九、というか昔の美九は誰にでも一線引いた感じだった。男に対しては一線どころか、そもそも間に線を引けるような同じ次元に存在を許していなかった感じだ。
なので普段なら出会って二秒で即熱烈ハグな七罪でも、今はこんなに淡白な反応を向けられているのだろう。その状態の方が好ましいと言う辺り、普段の反応は相当に堪えているのかもしれない。
「――そんなー!? いつもの美九を愛してるって言ってくれたのは嘘なんですかー!?」
「うわ戻ってきたっ!? ていうかそんな事一言も言ってないし!」
相当ショックな言葉だったのか、耳聡く聞きつけた美九は演技もかなぐり捨てて泣きそうな顔で七罪に飛びついた。腰に手を回し必死に縋りついているようにも見えるが、手の動きが微妙に嫌らしいので泣きそうな顔も演技なのかもしれない。
「美九と過ごしたあの情熱的な夜を忘れてしまったんですかぁ!? 七罪さんったら酷いですぅ!」
「あんたとはまだ情熱的な夜を過ごしてないけど!? 勝手に記憶捏造するのやめてくれない!?」
などと捏造した夜に言及しながら、するりと腰から肩に手を回して小柄な身体を抱きしめにかかる美九。七罪は律義にツッコミを入れて逃れようとしていたが、残念ながら完全に美九の腕の中に捕らえられていた。
「くんくんくん。すーはーすーはー」
「挙句匂い嗅ぎまくるのやめろおおおぉぉぉぉぉぉっ!!」
そしていつも通り、髪に顔を埋めて七罪吸いを行う美九。七罪は顔を真っ赤にして叫び暴れていたが、がっちりと抱きしめられているので逃れられずにいた。むしろ髪が振り乱されて更に七罪の香りが振りまかれるせいか、美九の恍惚の笑みがより深まりイケナイ感じのヤバい笑みに染まっていく。
美九はとっても楽しそうだが、こんな光景を黙って見過ごせるわけはない。士道は美九の肩をがっと掴み、喫七罪をやめさせた。
「おい、美九。演技を放り出して七罪を苛めるなんてどういうつもりだよ?」
「あっ……す、すみません、だーりん。七罪さんの魅力に抗えなくて……」
「はあっ、助かった……」
すると美九は申し訳なさそうに肩を落とし、七罪は安心したように胸を撫で下ろす。どうやら二人ともプレイを中断されて士道が怒っているのだと思っているらしい。しかしそれは大きな間違いだった。
「俺だって嗅ぎたいのを我慢してたんだぞ? お前がやるなら、俺にもやらせてくれ」
「ちょっと!?」
本音をぶちまけると、七罪がショックを受けた様に目を見開く。
士道も七罪吸いしたいのを我慢していたというのに、美九は目の前で躊躇いなくやり始めたのだ。怒ってはいないが一人だけそんな事をするのを許せるはずが無かった。士道だって七罪の髪に顔を埋め、心行くままに匂いを堪能したいのだから。
「あぁん、だーりん……惚れ直しちゃいましたぁ……」
「今のどこに惚れ直す要素があんの!?」
士道の欲望塗れの言葉に、美九はうっとりと瞳を潤ませる。そんな美九と士道の間で七罪は鋭いツッコミを入れていたが、何を言おうとも待ち受ける運命は変わらない。士道と美九に嗅ぎまくられ、モフられまくるという残酷な運命は。
「よし、じゃあ俺は右から。美九は左からだ」
「分かりました! 二人で七罪さんをたっぷり味わいましょう! というわけで、いただきまーす!」
そんなわけで、二人で左右から七罪をサンドイッチして躊躇なくモフモフした髪に顔を埋める。そして七罪の全てを身体の内に取り込むが如く、二人でひたすらに匂いを堪能していくのだった。
「あああぁああぁあああぁぁぁっ!! 助けて四糸乃おおおぉぉぉぉぉぉっ!!」
吸われ続ける七罪は悲痛な叫びを上げていたものの、それは最初の方だけ。抵抗する気力も体力も失せたのか、すぐにされるがままになり嗅がれ続けるのであった。士道と美九が満足するまで、髪以外にいろんな場所も。
「さて、それでは気を取り直して――早速案内していただけますかぁ? もう一人の可愛い子がいるお部屋に」
二人でたっぷり七罪をキメて、お互いに心行くまで七罪成分を味わった頃。ぐったりと動かなくなった七罪をリビングのソファーに寝かせてから、士道と美九は階段下でプレイを再開した。
ついさっきまで放送倫理に引っかかりそうなアイドル台無しのヤバい顔で七罪をキメていた美九も、プレイが再開した今は酷く冷たい微笑を湛えている。そしてこちらに向けられた瞳も、そもそも士道を人として見ているのかどうかすらも怪しいレベルの冷たさだった。
「ああ、いいぜ。部屋は二階だから階段を上がってくれ」
「はあ? どうして私が先に上らなきゃいけないんですかぁ? スカートの中を覗く気ですかぁ? 最低です。死んでください、この変態」
「おっと……結構心にくるものがあるな……」
容赦ないストレートな罵倒と軽蔑のこもった鋭い睨みに、ちょっと心にグサリときてしまう。
これはあくまでもプレイでの台詞で、本当に美九がそう思っているわけでは無い事は分かっている。しかしあの頃の美九なら間違いなく本心からそう思い、口にしたであろう台詞なのは間違いなかった。むしろこれでもかなりマイルドな方な気がしないでもない。
「そんなわけないだろ? もちろん俺が先に上がるよ」
「じゃあ早くしてくれませんかぁ? 可愛い女の子がいるからこそ、こんなイカ臭い家に上がったんですよ? 本当なら一秒でも早くここから出て行きたいです」
「イカ……臭くない、よな……?」
階段を登りつつ、ちょっと気になって周囲の臭いを嗅ぎ確かめる。特にそんな臭いはしなかったので、美九の発言は男が住んでいる家を示す揶揄のようなものだったのだろう。尤もこの家に住んでいる士道の鼻が慣れてしまっただけで、本当にイカ臭い可能性も無くはないが。
とりあえず後で真偽を確かめる事に決めつつ、士道は階段を登り切って自室の扉の前へと立った。
「よし、ここだ。ここが琴里の部屋だ」
「ふふっ。じゃああなたはもういりません。さっさと私の視界から消え失せてください。存在自体が不愉快です」
そして自室を琴里の部屋として紹介すると、美九はあっという間に士道の姿を視界から外してうっとりと部屋の扉を眺め始めた。恐らく扉の向こうにいる可愛い女の子との逢瀬を妄想しているのだろう。
ちなみに七罪との遭遇時にこれが無かったのは、遭遇が予定に無い不測の事態だったからである。
「それじゃあ失礼しまーす! 琴里さーん、美九と一緒に遊びましょー?」
しばらく妄想を繰り広げた後、美九は躊躇いなく扉を開けて部屋の中に踏み込んだ。それを確認した士道は足音を殺して自らも続き、音も無く扉を閉める。これで大人気アイドル誘宵美九を自室に連れ込んだ男という、不可能に近い状況が実現した。
ここからはお楽しみの時間。高慢で男を見下す美九を、士道が分からせる時間である。
「あらー? いませんねー。琴里さん、どこにいるんで――きゃあっ!?」
「ハハッ、残念だったな。琴里はここにはいねぇよ?」
背後から覆い被さるような形で美九を抱きしめ、その耳元で出来る限り悪ぶった感じの台詞を口にする。
ここからは士道のターンなので気分も乗ってきたため、無理せず自然と悪漢のような台詞が出せた。やはり何だかんだで士道もこのプレイを楽しんでしまっているのだろう。実に愉快で痛快な気分だった。
「なっ!? ど、どういう事ですか!?」
「ここに可愛い女の子がいるなんて真っ赤な嘘なんだよ。全てはお前を俺の部屋に誘い込むための罠なのさ!」
驚愕してみせる美九に対し、士道はそう言い放つ。実際には玄関で美九の超好みの可愛い女の子と遭遇してしまったが、そこに触れるとややこしくなりそうなので当初の予定通りにした。
美九もそれが分かっているのか特に予定変更はしないようで、まるで怒りが沸き上がっているかのように顔を赤くして身体を震わせ始めた。
「よ、よくも騙しましたね!? この屑! 変態! 離してください! 汚い手で触らないでください!」
そうして士道の腕の中で身体を振り乱し、必死に逃れようとする。とはいえ演技という前提があるため、士道が全力で抱きしめなくても容易に抑え込めるくらいの抵抗だった。それでいて力はしっかり入っているので、本当に嫌がっているような反応に大いにS心を刺激された。
「おいおい、そんな口の利き方で良いのか? お前はこれから俺の女になるんだから、もう少しおしとやかに喋ったらどうだ?」
「誰があなたの女に何か! ちょっ、やめてください! 顔を近付けないでください!」
美九の顔をこちらに向かせ、その唇を奪うために顔を近付けていく。途端に顔を青くして、引き攣った怯えの表情で叫ぶ美九。
傍から見ればどう見ても士道が美九を無理やり手籠めにしようとしている光景だが、紛れもなく合意の上の行為なので問題は無かった。
「ははっ。あの大人気アイドルの美九ちゃんを好きにできるなんて、夢みたいだぜ?」
「や、やめ――んんーっ!?」
そうして、美九の唇を力づくで奪う。唇が触れた瞬間、腕の中で美九の身体が硬直した。しかしすぐに抵抗を示してきたので、美九の首の後ろを手で押さえ、逃さず唇を貪った。
普段ならキスに抵抗など欠片も示さない美九も、凌辱プレイの最中である今は唇を必死に閉じて士道の舌を入れまいとしていた。なので士道はその固く結ばれた唇を解きほぐす様に甘く啄み、舌で優しくなぞるだけで勘弁してやった。深い口付けをするのはもうちょっと後の方が楽しそうだからだ。
「ふぅ……美九ちゃんのファーストキス、ゲットだぜ」
「よ、よくも……よくも、こんな事を……!」
口付けを終えてみれば、美九は屈辱と怒りがない交ぜになった表情で震えながら士道を睨んできた。よくM気質を受け入れる前の黒琴里が浮かべる感じの、実に攻め甲斐のある表情だ。そんな表情を美九が浮かべている事実も相まって、士道は非常に興奮を催していた。
何だかんだ言って士道の性癖もかなり歪んでしまっているのだろう。きっと悲劇的な性癖の義妹に影響を受けてしまったに違いない。
「顔を真っ赤にしてて可愛いな、美九ちゃん? これからもっと凄い事をするってのに、そんな調子で大丈夫なのか?」
「ふん! 何をされたって、私は絶対にあなたみたいな屑に屈したりなんかしません!」
などとフラグになりそうな事を、反抗心たっぷりの表情で口にしてくる美九。士道を楽しませたいとも言っていたので、もしかすると意図的にそういう台詞を口にしているのかもしれない。表面上は本気で嫌がっているように見えるものの、やはり美九自身も楽しんでいるのだろう。
「ははっ。堕ちる時が楽しみだ。それじゃあ――始めようぜ?」
「やっ!?」
なので安心して苛める事に決めた士道は、美九と共にベッドへと場所を移した。背後から抱きしめた状態なので、そのまま押し倒すような形で。
そうして短く可愛らしい悲鳴を上げた美九の首筋に顔を埋めながら、両手を美九の身体に這わせて嫌らしく撫でていく。
「はぁ……いい匂いだぞ、美九ちゃん。滅茶苦茶興奮してきた」
「や、やめてください! この汚い手を退けてそこを――やっ!?」
服の上から美九の豊かな膨らみを鷲掴みにすると、途端にその身体がびくりと震える。
直に触った時よりも感動は少ないが、今の凌辱染みた状況による興奮が彩りを加えていて堪らない。むくむくと沸き上がる嗜虐心が容赦なく士道を暴漢のようなノリに染めていく。
「胸も大きくて柔らかいな? この胸を使ってア――な、何をするか、考えるだけでもイっちまいそうだぜ」
そのせいでプレイの最中でも口にしてはいけない台詞を口走りそうになったため、咄嗟に言い直す。
本当は『この胸を使ってアイドルになったのか?』と言おうとしたのだが、どう考えても美九に対して言って良い台詞ではなかった。美九が声を失い人間に絶望しあのような状態になったのは、元を辿ればそういった営業を断ったのがきっかけだ。例えプレイの最中といえど、美九のかつてのトラウマに触れるような台詞を口にして良いはずが無かった。
寸でのところで言い直したものの、士道はばつの悪さと罪悪感にしばし手を止めてしまった。
「……最低です! この変態! 私の身体を使って一体何をするつもりなんですかぁ!? あなたの粗末で汚らしいものを、私の胸に擦り付けるつもりなんですかぁ!?」
しかし美九は士道が口走りそうになった台詞も、美九を気遣って言い直した事も察したらしい。相変わらず嫌がる演技をしているが、その表情が微妙に嬉しそうに緩んでいた。何とか嫌がる表情を作ろうとしているが、頬の緩みが完全には隠せない感じだ。
どうやらこんなプレイの最中でも優しく気遣ってくれた事に幸せを感じているらしい。そこには触れずプレイを続行するのは、美九なりの愛情と気にしないで良いという答えだろう。傷つけてしまったかと心配した士道は、ほっと胸を撫で下ろした。
「……ああ、もちろんそれもやらせてもらうぜ? けど、まずは美九ちゃんの裸を拝ませてもらおうかな!」
「きゃあっ!」
そして、美九の気持ちに甘えてプレイを続行する。美九の身体を無理やり仰向けにして、その両手を頭の上に片手で押さえつける。更に無防備になった美九の胸元へと、士道はもう片方の手を伸ばした。
「ひっ!?」
グッと制服の胸倉を掴むと、美九は表情を引きつらせた。しかしまだちょっと頬が緩んでいるせいで、犯されるのを期待しているような表情に見えてしまう。
尤もそれはそれで悪くないので、士道はそのまま力いっぱい美九の制服の胸元を――
「――っ!?」
破ろうとした瞬間、コンコン。突然部屋の扉がノックされた。
良い所で邪魔が入ったと思う前に、驚きで美九と二人揃って飛び上がってしまう。もちろん心臓は先ほどまでの興奮とは別の意味で激しく鼓動していた。
「……誰か、来ちゃったみたいですねぇ? さすがの美九もちょっと驚きましたぁ……」
「そ、そうだな……まあ、まだそこまでヤバい事はしてないし、ある意味今で助かったな……」
まだ決定的な事はしていないので、誰が訪ねてきたとしても何とか誤魔化せる範囲だ。美九の制服を破った後だったならかなり困った事態になっただろう。とはいえ士道は下半身で自己主張しているモノを何とか隠さなければいけないが。
ちなみに美九の制服は今夜のプレイのためだけに新しく用意した物なので、破こうが汚そうが問題ないとのこと。なので遠慮なく引き千切ろうとしたわけである。
「そうですねー……でも、このスリルが堪りませんよねー?」
「お前本当に人生楽しそうだよなぁ……」
明らかにワクワクした感じの微笑みを浮かべる美九に少々呆れつつ、士道は身体を起こして扉の前へと向かった。そして過剰に主張している下半身のモノをどうにかこうにか目立たないポジションに無理やり押し込んだ後、扉を開けた。
「悪い、待たせたな……って、琴里? どうした?」
部屋の外に立っていたのはパジャマ姿の黒琴里だった。それ自体は別段おかしい所は無いのだが、その雰囲気が少々普段と異なっている。具体的には妙にばつが悪そうな表情をしており、まるで疚しい事があるかのように視線を逸らしていた。
「いえ、その……何というか……合意の上、なのよね?」
「さてはお前、途中から覗いてたな……」
どうやら美九との逢瀬を中途半端に覗いていたようで、わざわざ和姦かどうかの確認に来たようだ。今更琴里が覗きに罪悪感を覚えるとも思えないので、妙に居心地が悪そうにしているのは合意の上の行為を邪魔してしまった事に対しての反応だろう。
「まあ、ほぼ確実に合意の上の行為だとは分かっていたわ。相手が美九だから余計にね。ただそういうプレイをするのなら一つ注意しておかなければいけない事があるから、わざわざ伝えに来てあげたのよ。感謝の一つくらいして欲しいわね?」
「覗きでたぶん相殺されてるから感謝はしないぞ。で、注意ってのは何だよ?」
「……一応、NGワードをちゃんと設定しておきなさい。『嫌』とか『やめて』って言っても、それが演技か本心か分からないでしょう? だから全く関係の無い言葉を、本当にやめて欲しい時に使う言葉として決めておいた方が良いわ」
「唐突にまともな事言うな、お前――いっつっ!?」
普通に有用な指摘だったので思わずそう呟くと、琴里は躊躇の無いローキックで士道の脛を強打してきた。七罪や四糸乃が繰り出してくるような子猫のパンチ染みた可愛らしいものではなく、食らった士道は途端にその場に崩れ落ちてしまう。
まるで普段はおかしいみたいな言い方をしてしまったのでローキックも仕方ないかもしれないが、琴里自身はどんな激しいプレイでもNGワードを設定した事など一度も無いのだ。そんな琴里が安全のためのNGワードを設定しろなどと言うのだから、士道の反応も当然だった。
「あら? まるで普段の私がまともじゃないみたいな言い方ね? 少なくとも年端も行かない少女を三人食って、今度はアイドルにも手を出したあなたよりはまともだと自負しているけれど?」
「……クソッ! 返す言葉が見当たらねぇっ!」
実際まともじゃないと言い返したかったが、現在の士道の罪状を並びたてられては反論する事などできなかった。琴里はあくまでも性癖が悲劇的なだけであって、男女関係は相手が士道のみで普通に清いのだ。現在四人も相手のいる士道が何か言い返すことなどできるわけもない。
なので士道は倒れ伏した自分を足蹴にしつつ、勝ち誇る様に見下ろしてくる琴里を下から睨みつけるしかなかった。
「こんばんはー、琴里さん。今夜はだーりんをお借りしますねー?」
「ええ。邪魔をして悪かったわね、美九。合意の上のプレイかどうかを確認したかっただけだから、安心して続きをしなさい」
「いえいえ、全く気にしていませんよー? それよりも、良かったら琴里さんも一緒にどうですかぁ?」
「ここで躊躇なく琴里を誘うお前、本当にスゲェよ。美九……」
覗かれていた事実に対して怒りや恥じらいを示すでもなく普通に挨拶をしたかと思えば、凌辱プレイに笑顔で琴里を誘うというぶっ飛び具合。ぶっ飛びすぎていて、さすがに士道も開いた口が塞がらなかった。
「え、遠慮しておくわ。私は、その、仕事で忙しいから……」
琴里も誘われるのは予想外というか予想以上だったのか、ちょっと引きつった顔で断っていた。
今までなら美九も無理に自分の欲望に引き込もうとはしなかったはずなので、これで乗り切れたはずだ。しかし琴里たちには士道との関係を隠していたという負い目があるためか、美九はまだ諦めるつもりがないらしい。ベッドから腰を上げると、ゆっくりと琴里の方へ歩み寄って行った。明らかに欲望駄々漏れの嫌らしい笑みを浮かべて。
「えー? 美九たちのエッチを覗く余裕はあるのに忙しいんですかぁ? もし覗きがお仕事だって言うなら、琴里さんも一緒に参加した方が覗きよりも情報を集められるとは思いませんかぁ?」
「た、確かにあなたの言う通りかもしれないわね……でも――」
「あっ! 良い設定を思いつきました! 琴里さんはだーりんの事が大好きなので、連れ込まれた美九の事が気に入らず、だーりんが私を無茶苦茶にする横で一緒にエッチな意地悪をしてくるっていうのはどうですか!? 五河兄妹に攻められる私……興奮しちゃいます!」
そうして瞳を輝かせて実に罪深いプレイの内容を口走りながら、がしっと琴里に抱き着く。
内容的に美九がドS二人に攻められる形になるのだが、それで大いに興奮を示しているのだから手に負えない。そしてさりげなく琴里の身体を撫で回しているのだからもう呆れるしかない。
「ちょっ!? は、話を聞きなさい、美九! こら、どこ触ってるのよ!?」
「うふふー、良いじゃないですかぁ? 琴里さんも一緒に楽しみましょうよー?」
「や、やめなさい! あっ、ちょっと!? そこは――!?」
そのまま美九は手足をバタつかせて抵抗する琴里を押し倒し、パジャマの裾から色んな所に手を滑り込ませて何かをやらかしている。
止めるべきかとも思ったが美九が非常に楽しそうだし、何より黒琴里が純粋な羞恥と驚きに顔を赤くしているのがとても印象的だったのでやめておいた。あまり見ない類の反応なのでしっかりと観察して目に焼き付けたかったのだ。
「ふふふ、ここですかー? ここが気持ち良いんですかー?」
「あっ! やっ、やめっ……!」
「……本当にお前自由だよな、美九。ちょっと羨ましいぜ」
一切恥じらわず欲望全開で本能のままに行動している美九に、士道はある種の羨望を抱くのであった。自分も美九のように難しい事など何も考えず、欲望に身を任せられたらどんなに楽だろうかと。
「うぅ……怒られてしまいましたぁ……」
「まあ、琴里は一対一でやるのが好きだからな。3Pとかに引き込むのは相当難しいぞ……?」
隣でぐったりと身体を投げ出し、グルグルと目を回した美九に士道はそう教える。
あれからしばらく琴里の身体を弄っていた美九だが、さすがにマジギレされたら手に負えなかったらしい。手痛い一発を頭部に叩き込まれてあっさりと無力化されていた。
とはいえ、それでも琴里にしてはかなり優しい対応だ。何せ隣で琴里の反応を眺めて楽しんでいた士道は十発くらいマジな蹴りを食らったのだから。しかも内一回は男の子の大切な所に直撃してしまった。しかしその時の琴里が失敗したような顔を見せ、更にその一撃が最後の一撃だった事を考えるに、金的はあくまでも事故だったのかもしれない。
なので今は二人揃ってベッドに身体を投げ出し、ダメージが引くのを待っているところだ。ちょっと美九に比べて士道のダメージは致命傷に近かったが。
「やっぱり難しいんですかぁ……でも相当という事は、一回も無かったわけでは無いんですかぁ?」
「ああ。七罪たちから聞いて――いや、琴里の沽券とか性癖に関わる話だもんな。さすがにあの二人が許可も無く話すわけないか……まあ俺は話すけどな!」
控えめな七罪たちと違って、士道は琴里の性癖を隠す気は無かった。何よりついさっき事故とはいえ金的を食らった身としては、仕返しの一つや二つ許されてしかるべきである。
「琴里の奴、四糸乃との3Pの時は四糸乃をねちっこく苛めやがったし、七罪との時なんかもっと酷かったぞ? 七罪を黒い方の自分に変身させて、白と黒の二人の琴里とのイカれた3Pにしてきたからな?」
「えぇー!? 何ですか、その夢みたいな欲張りセットは!? どこへ行けば注文できるんですか!? 美九も注文します!」
ぶっ飛んだ3Pにドン引きする様子など一切見せず、美九はむしろテンションを上げて鼻息を荒くしていた。まだ琴里の一撃によるダメージが残っていたはずなのだが、それすらも興奮でふっとんでしまったらしい。どうしても金的のダメージが抜けきらない士道の身体に覆い被さり、目を輝かせて尋ねてきた。
「七罪に頼めばあるいは、って所だな。まあ、美九のその手の頼みは絶対頷かないだろうけどさ。ただ、何だかんだで俺が頼めば色々聞いてくれるんだよなぁ……俺、たまに七罪お姉さんと色々してるし……」
「がーん……!」
しかし士道がそう答えると、途端に美九はショックを受けて力なく崩れ落ちる。
別に崩れ落ちるのは良いのだが士道の身体に覆いかぶさる形だったので、胸の辺りで大変柔らかい膨らみがむにゅりと潰れていた。まだ金的のダメージが残っている士道としては、下半身をあまり刺激しないで欲しいものだった。
「じゃあ、だーりんからお願いしてください! 美九も欲張りセットを体験したいです! だーりんと中身七罪さんの士織さんを同時に味わう豪華なディナーを頂きたいですぅ!」
「またそれかよ!? どんなに頼まれたってそれだけは絶対に嫌だぞ!?」
とはいえ美九がその程度でへこたれるわけもなく、ガバっと身体を起こして再び欲望全開の叫びを上げていた。
当然士織ちゃんになるのも、士織ちゃんに変身した七罪とヤるのも嫌なので、士道は断固として断るのであった。万が一の時は七罪や琴里を生贄に捧げてでも逃れる事を心に決めて。
七罪が巻き込まれるのはお約束。
美九とこんなプレイをしている癖に、翌日には四糸乃とめっちゃイチャついているという罪深さ……これはその内玩具じゃなくて本物のナイフで刺されそう。ちなみに次のお話はもちろん美九との凌辱プレイなので、多少閲覧注意です。まあ琴里の時ほど過激にはならないはず。2月1日投稿予定です。
更新停止期間の執筆状況の進捗はどれくらいの頻度で活動報告に載せるべきか
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