タイトルが全てを物語っています。
でも一つだけ補足。
過剰な期待はしないほうが良いと思いますよ……。
寝室に足を踏み入れたはずの士道は、夢の世界にいた。
眼前に広がる光景の美しさは、それほどに現実からかけ離れている。
視線を釘付けにされるほど妖艶。
それでいて一点の曇りもなく清純。
相反する色香を漂わすのは、年端もいかぬ一人の少女。
身に纏うネグリジェは、肌の色艶が視認できるほど薄い。
その向こうには女性として未成熟な肢体が、妖しく透けている。
しかし無垢な光が灯る瞳は、見慣れた翠に輝いてはいない。
全く異なる、澄み切った蒼さが広がっている。
決定的に異なるのは、左手につけているウサギのパペット。
見誤ることなどありえない。
その少女は七罪ではなく、四糸乃。
霰もない姿を瞳に晒されているにも関わらず、悲鳴を上げるのでもなければ逃げもしない。
ただベッドの上で縮こまり、伏し目がちに恥じらうだけ。
その理由は士道にも分かっている。
この程度のことで羞恥心に負けてはいけないからだ。
何故なら四糸乃は、これから士道と熱く愛を交わすのだから。
「この前……四糸乃に、バレた」
話は数日前の夜更けに遡る。
その夜の営みは、珍しく七罪が注文をつけてきた。
最初から最後まで、優しくして欲しい。
遠慮を抱くことなく、七罪がお願いをしてくるのはとても喜ばしいことだ。
断る理由などないので、士道は望みどおりの夜を過ごさせてあげた。
そして重ねた愛の余韻に浸る中、七罪が唐突に切り出してきた話の締めがこの言葉だった。
完全に意表を突かれた士道は、しばし理解できずに呆然としてしまう。
「えっ、ほ、本当にバレたのか? 冗談、とかじゃないのか……?」
「本当にバレたのよ。士道のせいで」
お茶目な冗談かと思いきや、実際には覆しようのない事実。
しかも何やら士道が原因らしい。
とはいえ思い当たる出来事は特に記憶になかった。
七罪も話す気はないのか、出来事については触れようとしない。
「それで、まぁ……『よしのん』に聞かれて洗いざらい喋ったんだけど、そしたら士道に
……四糸乃にもしてあげて欲しい、って伝えてくれって……」
「……ほ、本気でそう伝えろって言われたのか? ていうか、四糸乃の気持ちはどうなん
だよ?」
『よしのん』なら深く考えもせず口にしそうな言葉だ。
四糸乃の気持ちを汲み取った上での言葉なのかは判断がつかない。
だからこそ真偽を確かめるべき事柄だ。
しかし返ってきた答えは怒りの滲む睨みだった。
「……それ本気で聞いてるわけ? 私の気持ちがアレな時点で察しなさいよ……」
「う……す、すまん……」
考えて見れば尋ねるのは野暮というものだろう。
最初は愛に届くほどの好意を向けられているとは思っていなかった。
しかし今現在、七罪でさえ裸で腕の中にいる。
これでは面と向かって気持ちを聞くのは不躾極まる質問だろう。
正直殴られても文句は言えないかもしれない。
「……それは分かったよ……けど、お前は俺が四糸乃としても、何とも思わないのか?」
これは尋ねても問題のない質問のはずだ。
七罪自身は他の精霊と関係を持っても構わないと明言している。
しかし何か思うところもきっとあるはずだ。
「えっ、別に……ていうかむしろ、もう四糸乃に隠し事しなくて良いからほっとした……」
「そ、そうなのか……」
予想とは裏腹に、特に思うことはなかったらしい。
実際七罪は重圧から解放されたような、晴れやかな微笑みすら浮かべている。
この様子からすると、本当に他の精霊と関係を持つことを受け入れているのだろう。
皆の関係に軋轢が生じるような気持ちを抱かないのなら、士道としても実に喜ばしい。
しかしやきもちすら抱いてくれないというのは、それはそれで悲しかった。
「……何か、いろいろ間違ってるよな。俺も、お前も……」
複数人との肉体関係を許容する七罪。
後ろめたさをあまり感じられない士道。
何よりもそれが止むを得ないことだというのが、そもそも間違っている。
「……間違ってても良いでしょ……それで皆が、幸せになれるなら」
ふと浮かんできた迷いを、七罪の呟きが強く揺さぶった。
確かに今歩んでいる道は、何もかもが間違っている。
だが誰に迷惑をかけるでもなく、皆が幸せになれる可能性のある道だ。
それは腕の中で身も心も委ねてくる七罪が、これ以上ないほどに証明している。
傍から見れば間違っていようとも、それは最善の道。
正しさを追求するあまり、幾つもの不幸が生まれるよりはよほど良い。
士道は迷いを振り払い、その誤った道を歩み続けることを心に誓った。
まぁそう表現すると聞こえは良いが、実際には地の底に落ちているせいでまともな道に戻れないという表現が正しい。
「……そうだな。お前の言うとおりだよ、七罪」
乱れた髪を直しつつ撫でてやると、七罪の口から甘い吐息が零れた。
見れば七罪は感触を深く味わうためか、瞳を閉じて身体の力を抜いている。
証明通りの、幸せに満ちた微笑みを浮かべながら。
「……ねえ、これは私からのお願いなんだけど……四糸乃には、さっきみたいにしてあげ
て。初めてなんだから、あんな風に、優しく……」
思いやり溢れる声音で、新たな願いを口にしてくる。
恐らく今夜注文をつけてきたのは、知りたかったからなのだろう。
士道が四糸乃にとって、どれだけ幸せな初めての夜にしてくれるかを。
「それくらい分かってるって。初めてなのに激しくして、怖がらせたり痛い思いはさせち
ゃいけないからな」
初めての子に優しく接するのは当たり前だ。
それが四糸乃のように、大人しくて怖がりな少女ならなおさらのこと。
そんな大切なことが分かっていないとでも思われているのだろうか。
「……分かってるなら、何で私の時はあんなに……?」
「………………」
答えに詰まった士道は、睨み顔の七罪の頭を何も返さずに撫で続けた。
四糸乃には優しく愛してあげようと、反省気味に誓いながら。
『あー、やっときたねー士道くん。もう待ちくたびれてよしのんたちだけで始めちゃおうかと思ってたよー』
寝室に足を踏み入れた士道に、『よしのん』が声をかけてきた。
見れば肩をすくめ、呆れたように首を横に振っている。
緊張が微塵も感じられない普段通りの様子。
士道の方もさほど緊張はない
四糸乃とは初めてだが、行為自体は初めてではないのだから。
しかし四糸乃の方はそうはいかない。
緊張のあまり完全に萎縮し、頬には耳まで達する赤みが差している。
ただでさえ引っ込み思案で恥ずかしがりやな四糸乃だ。
こんな状況で落ち着くなど不可能な相談だ。
これは始める前に緊張を解きほぐす必要がある。
「悪い。ちょっと、心の準備がな……」
『えー、士道くんにはそんなもの必要ないんじゃないかなー? いつも七罪ちゃんとガンガン愛を育んでるんだからさー』
「よ、よしのん……!」
『あははは、冗談だよ冗談……まぁ、やってることは事実なんだろうけどねー?』
『よしのん』の多少下品な言葉を、四糸乃は嗜める。
恐らくは『よしのん』も緊張を解す必要性を感じたのだろう。
普段以上に声の調子がおどけ混じりだった。
『ほらほら士道くん、そんなとこに突っ立ってないで早くおいでよー。せっかく四糸乃が秘蔵のエロい下着つけてるんだからさー』
『よしのん』に手招きされ、士道はベッドに腰を下ろす。
間近で見る四糸乃の艶姿は、一目で心を奪った。
何よりも意識が集中してしまうのは胸元だ。
ネグリジェは透明に近い生地だというのに、上の下着を身に付けていない。
重なり合うフリルやレースが、かろうじて胸元を覆い隠している。
このネグリジェは恐らく、機能性を無視した魅せるための下着。
狙い通りの魅力に、士道は四糸乃から視線を外すことができなかった。
『それじゃー士道くん。四糸乃をたっぷり楽しませてあげてねー? 今夜だけは二人っきりにしてあげるからさー?』
「……ああ、分かってる」
小さな手を振り、『よしのん』は束の間の別れを告げてくる。
『ちゃんと経験豊富な士道くんがリードしてくれるんだから、そんなに緊張しなくたって大丈夫だよー。四糸乃は安心して身を任せれば良いんだからさー』
「……う、うん……」
『じゃ、後はよろしくねー士道くん。とりゃっ!』
最後にそう言い残すと、器用にも自ら四糸乃の左手を離れる。
その身は僅かな放物線を描いて宙を舞い、微かな音を立ててベッドに落ちた。
「あっ……」
途端に四糸乃の瞳に感情の揺らぎが映る。
反射的に『よしのん』へ手を伸ばすが、拾いはしなかった。
『よしのん』の優しさを無下にはしたくないのだろう。
若干の寂しさを表情に湛えつつも、伸ばした手を静かに引き戻していく。
変わりに士道が手を伸ばし、『よしのん』を丁寧に拾い上げる。
置く場所は枕元、四糸乃を見守るような位置。
「四糸乃……怖いのか?」
顔を伏せる四糸乃の瞳に映るのは、僅かな怯え。
士道はその頬に静かに手を添え、指の甲で撫でる。
四糸乃の怯えを、温もりと優しさで溶かすために。
「無理しなくて良いんだぞ。怖いなら、止めたって構わないんだからな」
微笑みかけながら、頬から髪へと指を滑らせる。
指先でかき上げる滑らかさは、強く流水の錯覚を覚えさせた。
流れに従う形で、上から下へ何度も髪を梳く。
自然に指の間を流れ落ち、揺れる幾筋もの水の糸。
月明かりの元で煌きを放つ様は、正に陽光に煌く水面の輝き。
自然が織り成す美しき光景を、その身一つで体現している。
そんな尊いものを傷つけることなど許されない。
ガラス細工を扱う以上の繊細さを以って、士道は揺れる水の間を梳き続けた。
「士道、さん……」
胸の奥へ染み渡らせた優しさが、四糸乃の顔を上げさせた。
サファイアの如き蒼さの大きな瞳が、真っ直ぐに見据えてくる。
深い感動に揺れるその瞳は、抗いがたい魅惑的な輝きを放つ。
士道は逆らわず、四糸乃の首の後ろにそっと手を添え――
「っ……」
――導かれるままに唇を触れ合わせた。
受け入れるのは潤いに満ちた四糸乃の唇。
抵抗が全く感じられない、柔らかな感触。
それは脳に届く過程で、強く熱い刺激へと形を変える。
理性を焼き焦がし、欲望の箍を溶かすほどの熱さ。
貪欲に食らいつきたい衝動が、胸の奥から鎌首をもたげる。
だが四糸乃の澄んだ瞳には、邪な衝動を清める不思議な魅力があった。
刺激の強さを残しつつ、害を成す熱さのみが洗い流される。
士道は堪らなく興奮を覚えながらも、優しさを忘れることができなかった。
「っ……あ、ぁ…………あっ……」
僅かに唇を触れ合わせては引き、また僅かに触れ合わせては引く。
あるいは素振りだけを見せる。
口付けによる充足を与えない、意地の悪い焦らし。
自身の唇が空ぶる度、四糸乃の寂しげな吐息が頬を撫でる。
緊張を解すためのものとはいえ、心苦しくて堪らない。
「ふぁ……し、士道、さん……いじわる、しない、で……ください……」
「……ごめんな、四糸乃。もうしないから」
ついに四糸乃は切ない声を上げ、自ら口付けを求めてくる。
瞳に揺れる物足りなさを織り交ぜた悲しみ。
その瞳を向けられるだけで、胸を鋭い痛みが貫く。
これ以上焦らすことなど不可能だ。
四糸乃に悲しさを抱かせる罪悪に、耐えることができない。
士道は求めに応じ、歯の硬さが伝わるほどに強く触れ合わせた。
「んぅ……っ、ふ……」
望みを叶えられ、充足感に安堵の吐息を漏らす四糸乃。
凍り付いていたその身体は、すでに弛緩しきって緊張はない。
意地の悪い口付けが功を奏した結果だ。
「ふぁ……っ、ふ……は、ぅ……」
唇で甘く噛む口付けを、上唇と下唇へ交互に行う。
合間に舌先で濡らしてやり、乾きからくる擦れる痛みは与えない。
やがて四糸乃自身も、甘く噛み返してくる。
だが唇を挟む力はあまりに弱々しい。
遠慮しているのか、あるいは上手くできないのか。
いずれにせよ無理をさせる気は無い。
士道は健気に応える四糸乃の動きを遮った。
潤いを与えていた舌先を、その唇の隙間へと滑らせて。
「っ! ん、ふぅ……ちゅ、っ……」
口内へと滑り込む異物に、四糸乃の身体に強張りが戻った。
怖がらせないために、まずは舌先を綺麗に並ぶ小さな歯へ触れさせる。
何度もそれを繰り返し、身体から怯えを抜いていく。
完全に取り除いてから、舌先を徐々に交わらせた。
四糸乃も真似て動きに応えてくるが、やはり控えめで弱々しい。
もしかすると、されるがままで満足なのかもしれない。
七罪とは違い、過剰なまでに愛を欲しているわけではないのだ。
士道が与えてくれる愛情だけで、十分な幸せを得られるのだろう。
「ふぁ、ぁ……」
初めての深い口付けに骨抜きにされたのか、瞳を夢心地に細めている。
妖しさ溢れる吐息を漏らす口の端から、一筋の唾液が頬を伝う。
士道はそれを口付けて味わい、もう一度だけ唇を重ねた。
そして四糸乃の頭を支えていた手を首元へと滑らせる。
透き通るネグリジェを結びつける、可愛らしい小さなリボンへ。
あるいは絶景を覆い隠すカーテンを縛る、邪魔な布切れへ。
「……脱がすぞ、四糸乃?」
「……はい……」
顔を背け、羞恥に頬を染めながら四糸乃は頷く。
士道はその布着れを取り払い、透明なカーテンを開いた。
現れたのは自然の息吹すら覚える美しい光景。
頂点のみが桜色に色付いた、雪の如く白い僅かな膨らみ。
さながらその様子は、険しい雪山とそこに咲く高嶺の花。
本来なら決して手にすること叶わぬ、幻の如き美しさ。
「すごいな……びっくりするくらい綺麗だ、四糸乃」
だが士道はそれを手にすることができる。
躊躇いなく手を伸ばし、その白い山肌に指を登らせる。
「っ! んっ、ぁ……」
触れた瞬間、四糸乃は鋭く身を震わせる。
雪山の地表は、体の強張りとは正反対の感触。
細心の注意を払って登ろうにも、触れた途端に指が沈み込んでしまう。
その途端へこみを埋める柔らかな雪崩が起き、沈み込んだ指を包み込む。
埋まった指を襲うのは、泡の塊としか思えない滑らかさと軽い抵抗。
あまりにも肉感的で非現実的な感触。
それは胸を貫くほどに激しい劣情を燃え上がらせた。
しかし四糸乃の瞳に映る清浄な光が、優しさを忘れさせない。
背中に手を回し、身体を横たえる形で静かに押し倒す。
「……士道、さん……」
身体の下で穏やかに名を呼ぶ四糸乃。
瞳孔が開いた瞳に浮かぶのは、混じりあった興奮と優しさ。
士道が抱く優しさを上回る、最早慈愛に届く光。
こちらが優しさを以って接しているはずなのだが、本当は四糸乃が優しく受け止めてくれているだけなのかもしれない。
士道は敗北を表す苦笑を浮かべ、四糸乃の身体に覆い被さった。
そして再びきめ細かい肌に指を滑らせながら、口付ける。
唇ではなく、か細い首筋へと。
「ひうっ! ふ、あぁ……ぁ!」
触れ合った途端、耳元を熱い吐息がくすぐる。
お返しとばかりに士道も吐息を吹きかけ、舌先でくすぐる。
その度四糸乃は身体を痙攣させ、瑞々しい喘ぎを漏らす。
「あっ、はあぁ……んあ、ぁ……!」
押し上げて回す形で胸肉を揉みながら、その先端を摘むように弄る。
それに続けて、口付けを徐々に下へと移していく。
首筋から首元。
首元から鎖骨。
鎖骨から胸元へと、唾液に濡れる仄かに赤い線を描きながら。
そうして膨らみに唇を登らせ――
「ふあぁ! あ、はあぁぁ!」
――咲き誇る高嶺の花を愛でる。
先ほどと同じく緩急と強弱をつけつつも、手折らないよう繊細に。
甘く滑らかな肌の味わいは、まさにこの世のものとは思えない。
それを今味わっているという事実だけでも、胸の中は熱い幸せに満たされていく。
「あっ! は、あぁ! ふぁ、ぁ……っ!」
四糸乃の身体のラインをなぞる形で、空いている手の指を滑らせていく。
胸元からくびれのある腹部を通し、下腹部へと。
そうして太股の付け根の間を指で摩る。
下着の上から微かに触れる形で、ごく繊細に。
「ひぁ、ぁぁ……ん、んぁぁ! し、どぉ、さんっ……ふ、うぅ……っ!」
両胸と秘部を同時に弄られる四糸乃。
士道には想像もできないほど強い快感に見舞われていることだろう。
それは呂律も回っていない声からも明らかだ。
だがこれは最後の行為に移る時、痛みを和らげるために必要なこと。
時に桜色の花の周りを、時に鎖骨の辺りを舌先でなぞる。
そして湿りが伝わった指を、下着の中に挿し入れる。
「っ! ふあっ! っ、うぅぅ……!」
滑らかな肌に直接刺激を与え、十分に濡れさせていく。
指先に暖かさが纏わりついたところで、一本だけ更に中へと挿しいれる。
今度は内側から摩りながら、熱く湿気漂う感触の奥へ少しずつ沈める。
より強まった刺激に、四糸乃の身体の震えが激しくなる。
もう少しで準備は万全になるだろうと考えた直後――
「ふぁ……やめ、てっ……くだ、さい……っ! こん、なの……いや、です……!」
――震える小さな手に、弄る腕をつかまれた。
拒絶を表す行為に、すぐさま士道は手を引き抜く。
「四糸乃……怖いなら、もう止めるか?」
幾ら興奮していようと、怯える相手にこれ以上続けることはできない。
士道は身体を起こし、四糸乃の体の上から離れようとした。
だが四糸乃の手は、腕を掴んだまま離れなかった。
「ちがい、ます……しど、うさん、と……いっしょ、に……かんじ、たい、です……っ!」
興奮に緩んだ頬と、切なさを湛えた請い願う瞳。
怖がっているのでも怯えているのでもない。
自分一人で迎えてしまうのが嫌なのだ。
「……これじゃまだ痛いぞ? 我慢、できるか?」
「……はい……大丈夫、です……」
「……分かった。我慢できなかったら、ちゃんと言うんだぞ?」
念を押してから、四糸乃の濡れた下着に手をかける。
全体的に細く頼りない脚を通して、濡れた下着を取り去る。
露になったのは脚の間へと下る白磁の坂。
十分でないとはいえ、すでに零れるほどに濡れている。
これなら七罪ほど痛がりはしない。
自身も衣服を脱ぎ捨て、四糸乃の太股を抱える形で膝をつく。
「……いくぞ?」
「……は、はい……っ!」
頷きを返し、四糸乃は両手を胸の上で強く握りしめる。
そうして身体を縮こませながら、硬く瞳を閉ざす。
士道は静かに腰を上げ、痛いほどに肥大したそれを挿し込んだ。
「ふあっ! ん、んあぁぁ! ああぁぁっ!」
肩を寄せ、口元が両手で隠れるほどに身体を縮こませる四糸乃。
必死に噛み殺しているが、痛々しい喘ぎは隠せていない。
閉ざした目蓋の端には、大粒の涙が滲んできている。
だが決して止めて欲しいとは言わなかった。
「ん、ふうぅぅ! っ、うぅぅ!」
四糸乃の小さな身体の奥へ、少しずつ挿し込んでいく。
やはり最初は苦痛にしか見舞われていない。
痛みに身体を震わせ、悲鳴を上げている。
その度締め付けが万力の如く強さを増していく。
四糸乃の苦痛に反して、士道を襲うのは下半身から駆け上がる快感。
悶える四糸乃を癒すための、深い愛情と並ぶ感覚。
早くこの二つを、四糸乃に与えたい。
「ふあ……あぁ……ぁ、はぁ……」
完全に沈み込ませたところで、一旦動きを止める。
荒く呼吸を乱しつつも、四糸乃は悲鳴を収めた。
腹部の内側を抉られる、経験したことのない痛みが止んだのだ。
苦痛が和らぐのは当然のことだろう。
「……よく我慢したな、四糸乃。痛かったろ? その分今度は、気持ちよくしてあげるからな?」
苦痛が紛れることを期待して、甘い囁きを耳元へ届ける。
声を出せなくなるほどに苦しんだのか、乱れた呼吸以外の返事はない。
だがその上気した頬は、緩んで嬉しさに酔う笑みを形作った。
「うあぁ! は、ふぁぁ……あぁぁ!」
僅かに腰を震わせ、刺激を与える。
悲鳴に滲む苦痛がある程度和らぐまでは、大きく動きはしない。
徐々に甘く染まる悲鳴を耳にしてから、穏やかに抜き差しを繰り返す。
引き抜く度、甘く染まっていく喘ぎ。
突き入れる度、一段と強まっていく嬌声。
胸が強く締め付けられ、滾る熱い血が全身に行き渡っていく。
燃えるような熱さは理性を焼き、優しさを徐々に失わせていった。
「はぁぁ! ん、んぅぅ! し、しどぉ、さんっ!」
どこか恐怖を孕んだ声を上げ、しがみついてくる四糸乃。
その小さな手を両肩に置き、指が食い込みそうな力で掴んでくる。
全身に鳥肌が立ちそうなほどの甘い喘ぎが、頭のすぐ横で上がる。
沸きあがる快感の強さに怯えているのか、それとは別に身体が震えていた。
士道は支えていた太股から手を離し、その小さな身体を怯えごとかき抱く。
「は、あぁぁ! ふあ、ぁっ! ん、うぅぅ!」
胸に押し当てられている柔らかな膨らみ。
その奥からでも心臓の鼓動が伝わってくる。
今にも破れそうなほどに強く、激しい鼓動が。
それが身体と同様、一つに重なりあっていく。
「ふっ、うぅっ! ん、うぅぅ! し、しどぉさんっ!」
「っ! あ、ああ! 俺もだ四糸乃!」
両肩の上に置かれた小さな手に、一段と強い力が込められる。
その所作と、重なりあった鼓動から分かる。
士道と同じく、四糸乃も快感が峠を迎えつつある。
だが指による刺激を受けていたせいで、四糸乃の方が頂に近い。
今にも達してしまいそうなほどに身体を痙攣させている。
それでも喘ぎを噛み殺し、必死に抑え込んでいる。
士道と一緒に、頂へと至るために。
その僅かな時間に、士道も同じ高みへと至った。
「っ! 四糸乃! もう良いっ!」
「っ! ふあぁっ! ふあぁ、ああぁぁぁぁ――うああああああぁぁぁ!!」
迎える寸前の蕩ける甘い喘ぎに、士道の中から迸る激情。
熱さを受け止めた四糸乃は、鼓膜から下半身を貫く嬌声を上げる。
同時に両肩の骨が軋むほどの力が士道を襲う。
叫びが止むと、肩に置かれた手の力は緩やかに抜けていった。
そうして力の抜けた腕は、仰け反っていた四糸乃の身体ごとベッドに横たわる。
「はっ……はっ、ぁ……っ……ぁあ……」
度々全身を痙攣させ、肩で息をする四糸乃。
初めての激しい快楽に、若干意識が飛んでいる。
大粒の汗が煌く頬は、喜びと幸せに赤く染まっていた。
「……四糸乃……まだ、いけるか?」
放心している四糸乃の頬を、指の甲で優しく撫でる。
二度、三度と柔らかな頬に刺激を与えると、少しずつ瞳に意思の光が戻っていく。
完全に意識を取り戻した瞳は、深い愛情に酔いしれていた。
「……はい……だい、じょうぶ、です……」
そしてその愛らしい面差しに、至福に満ちた微笑みを浮かべる。
慈母の如き、穏やかで優しげな微笑み。
士道の欲望が満たされるまで、全てを受け止める。
言葉はなくとも、表情でそれを語っていた。
「……いっ、ぱい……いっぱい……愛して、下さい……士道、さん……」
「……ああ。たくさん、愛してやるからな。四糸乃……」
両手で迎え入れる四糸乃に、士道は再び覆い被さった。
その優しさに甘え、欲望を満たすために。
そして四糸乃にたくさんの愛情と、最上の幸福を感じさせるために。
『いやー、すごかったねー四糸乃。士道くんったら、よしのんもびっくりするくらいテクニシャンだよー』
「は、はい……すごく、気持ちよかったです……」
時間をかけて長々と愛し合い、様々な欲求が満たされた穏やかな時。
四糸乃の左手に戻るなり、『よしのん』は感銘を受けた声で拍手してきた。
音こそ出なかったが、本気で感心しているのが分かるほど激しい拍手だった。
士道の胸に身体を預けている四糸乃も、尊敬に近い声音だ。
「そっか。四糸乃が気持ちよくなってくれたなら、俺も嬉しいよ。でも身体の方は大丈夫か?」
「はい……平気です。士道さんが、優しくしてくれましたから……」
言葉どおり、疲労の色は薄く見える。
身体は痛そうだが、全く動かせないほどでもないらしい。
七罪の時と違って激しくはしなかったので、それほど無理はさせずに済んだようだ。
あの時は士道も初めてだったせいで、色々抑えられずに激しくなってしまった。
まぁ途中からかなり積極的に求めてきた七罪の方にも、責任はあるだろうが。
『でもさー、次からはもっと激しくしても良いんじゃない? 四糸乃は士道くんのためならどんなに激しくたってイケるよー?』
「次、って……やっぱり、あることは確定なんだな……」
改めて思い知らされると複雑な気持ちだ。
途方も無い罪悪感に見舞われそうになる。
尤も得られる幸せや喜びに比べれば、そんなものは大して問題ではなかった。
『んー? 士道くんったら四糸乃をヤリ捨てしちゃうつもりー? それはちょっとよしのんも許せないかなー?』
「そう……なんですか……?」
やたらに顔の近くで語りかけてくる『よしのん』と、四糸乃は悲しげに瞳を揺らす。
士道は四糸乃の頭に手を置き、安心させるように撫でた。
ついでに視界いっぱいに広がる『よしのん』の顔も押しのける。
「そんなことするわけないだろ? ちゃんと責任は取る。それに俺も次が楽しみだしな。これからも俺としてくれるか、四糸乃?」
「は、はい……よろしく、お願いします……」
ぽっと頬を朱色に染める四糸乃。
とても純粋で可愛らしい反応だ。
七罪とは違い、様子は普段とあまり変わらない。
むしろ人が変わってしまう七罪の方が珍しいのかもしれない。
『それなら良いんだけどさー、士道君これから大変だよねー。四糸乃に七罪ちゃん、二人を満足させてあげないといけないんだからさー』
「た、確かに大変そうだな、それ……」
学校生活や他の精霊との日常を過ごしつつ、二人と情事を交わす。
贅沢な悩みにしか思えないが、体力的に続けられる自信がない。
分身体でもいれば別だろうが、生憎士道にそれを作り出す能力はない。
来る一見天国のような地獄の日々に、士道は戦慄を禁じえなかった。
『まぁ慣れるまでは二人だけで我慢しておこうよー。それにストレスとか色々なモノが堪ったら、四糸乃と七罪ちゃんで発散しちゃえば良いしねー。ていうかもういっそ、二人同時にヤっちゃえば良いんじゃない?』
「二人同時って……いや、興味ないわけじゃないけどさ、二人が嫌がるかもしれないだろ。なぁ、四糸乃?」
三人で繰り広げる最高に爛れた愛の営み。
今の状況を鑑みれば実現できないことではない。
ただ当人たちの気持ち次第なので、可能性そのものは低そうだった。
「わ、私は……七罪さんさえ良ければ、構いません……」
と思っていたがそうでもないらしい。
俯き恥じらいながらも四糸乃は頷く。
『だってよー、士道くん?』
「……えーと、まぁ、それは……また今度な?」
「は、はい……」
図らずも約束を交わしてしまう士道。
もう地の底まで落ちたと思っていたが、何だか突き抜けて冥府魔道に落ちて行っている気がする。
どの道這い上がることはできないので、そのまま落ちていくしかないのだが。
「けど……二人っきりの時間も欲しいだろ? 今夜みたいに」
誰にでも独占欲はある。
あの七罪にさえあったのだから。
士道は四糸乃の小さな身体を、優しく抱きしめる。
瑞々しさに溢れる肌からは、心に染み入るような温もりが伝わってきた。
「はい……士道さんと、二人きりにも、なりたいです……」
腕の中でたおやかにしなだれかかってくる四糸乃。
その幸せな時に思いを馳せているのか、とてもうっとりとした表情だ。
『士道くーん、一応言っておくけどさー、こういう夜のお楽しみのことだけじゃないからねー?』
「分かってるよ、それくらい。もっと普段からも、だろ?」
『ピンポーン! いやー、士道くんも乙女心が分かるようになってきたねー』
「まぁ、少しくらいはな……ん? どうした、四糸乃?」
胸を突付かれる感覚に視線を落としてみれば、四糸乃がおずおずと顔を上げている。
「士道、さん……寝る前に、一つだけしたいことがあるんですけど……しても良い、ですか?」
『あー、アレかー。四糸乃は前からアレに憧れてたんだよねー。ヤっても良いよねー、士道くん』
「何なのか良く分からないんだが……四糸乃がしたいなら、構わないぞ?」
「は、はい……!」
四糸乃は嬉々として身を乗り出し、士道に顔を近づけてくると――
「――っ」
――軽く口付けてきた。
ただ、それだけ。
しかしその口付けは、とても愛情に溢れたものだった。
まるで子供を眠らせようと、優しく頭を撫でているように暖かい。
先ほどまでは皆目見当のつかなかった士道も、四糸乃が何をしたかったのかを理解できた。
「え、えへへ……おやすみなさい、士道さん……」
『おやすみ、士道くーん』
おやすみのキスを終えた四糸乃は、はにかみながら口元を綻ばせる。
その微笑ましさに、士道もつい笑みを零してしまった。
「ああ。おやすみ、四糸乃。よしのん」
「……っ」
『にゃはー……』
お返しに四糸乃の額に口付け、ついでに『よしのん』の額にも口付けた。
そしてその身体を、温もりで優しく包み込む。
幸せそうに瞳を細めてから、四糸乃は目蓋を下ろした。
士道も同じく瞳を閉じるが、眠りにつくのは少しだけ残念だった。
眠りにつくまでもなく、腕の中には夢のような心地よさが広がっていたから。
『おっはよー、士道くん! ずいぶん遅いお目覚めだねー? 昨日頑張りすぎて疲れちゃったのかなー?』
「うおぉっ!?」
目を覚ました士道の瞳に飛び込んできたのは、ほとんどゼロ距離の『よしのん』の顔。
あまりの驚きに眠気は簡単に吹き飛んでしまった。
反射的に身体を引くと、その向こうには半身を起こした四糸乃の姿。
シーツで身体の前を隠しているものの、僅かに覗く胸元や太股の白さにはどきりとさせられた。
「おはよう、ございます……士道さん……っ!」
相好を崩し、若干上ずった声で口にする。
きっと早く言いたくて堪らなかったのだろう。
そんな可愛らしい様子に、驚きに早まった鼓動は平穏を取り戻した。
「ああ。おはよう、四糸乃。もう起きてたのか?」
『士道くんよりだいぶ前に目が覚めたんだよー。本当は士道くんも起こしてあげようと思ったんだけど、あんまり気持ち良さそうに眠ってたから起こすに起こせなくてさー。だからちょっと士道くんの寝顔の観察してたんだよねー、四糸乃ー?』
「士道さん、すごく可愛い寝顔でした……」
「うっ……」
観察結果を慈愛に溢れた瞳で口にされ、士道は顔が熱くなってきた。
無防備な寝姿をじっくり見られていたと思うと、妙な恥ずかしさが込み上げてくる。
七罪の時は観察する側だったのだが、今回は立場が逆になってしまった。
「そ、それより、身体の具合はどうだ?」
「はい、まだ痛みますけど……平気、です」
『むしろ痛まなきゃ困るよー。この痛みは士道くんが刻んだ愛の証なんだからさー。できればそう簡単に消えないでくれると良いんだけどなー』
「いや、痛みは消えた方が良いだろ……愛の証なら、また幾らでもあげるからさ」
多少猟奇的なことを口走る『よしのん』。
これには士道も眉を寄せるしかなかった。
消えない痛みによる愛の証など与えたくはない。
そんなものより、もっと暖かな愛を感じさせてやりたい。
『お、本当? じゃあ今夜もお願いねー……って、今夜は七罪ちゃんの番だよねー。じゃあ明日の夜でよろしく頼むよー』
「や、休みなしなのか!? いくら何でもそれはキツイぞ!?」
ただでさえ二人でも怪しいところなのだ。
毎晩続くなら確実にいつか限界を迎えてしまう。
精力の方はともかく、体力が果てるのは確実だ。
「わ、私は、士道さんのしたい時だけで、構いません……一緒にいられれば、それだけで幸せ、です…………」
士道の身を気遣っているのか、あるいは本当にそれだけで構わないのか。
いずれにせよ慈悲と慎ましさに溢れている。
やはり四糸乃は心のオアシスだった。
『あー、四糸乃ったら欲がないんだから……それじゃあもう、平等に愛してくれればそれで良いよー』
「ああ、分かった。けど何か、もの凄い爛れてきた気がするな……」
『だけど、満更でもないんじゃなーい?』
答えず、士道は四糸乃に目を向けた。
視線に晒され、嬉しそうな照れ笑いを浮かべる四糸乃。
七罪が言った通り、間違っていようと皆が幸せならそれで構わない。
士道は『よしのん』のからかいに、降参を表す頷きを返した。
「ああ、そうだな……四糸乃」
「? はい、何ですか……?」
そして四糸乃に視線を向けたまま、幸せを与える言葉を口にした。
「……愛してる」
「っ……!」
『おほー! 言うねー!』
途端に一段と頬の赤みが増す。
やはり衝撃の強い言葉らしく、七罪のように顔を伏せて縮こまってしまう。
しかし催促する必要はなかった。
静かに顔を上げた四糸乃は、恥じらいに襲われながらも口を開いた。
「はい……私も、愛してます……士道、さん……」
恍惚とも取れる微笑みで、同じく愛の言葉を口にする。
その瞳は士道の望み通り、溢れんばかりの幸せを写していた。
事後と朝チュン完備は個人的なこだわり。
少なくとも初回はこれを入れなければ気がすみません。
今度からはどんなプレイだろうと『よしのん』も参加します。
たぶんそのせいでプレイは若干コミカルな雰囲気になりそうです。
しかし『よしのん』が参加した場合は3Pに該当するのだろうか……。
なお、バレた時のお話は後日やる予定です。
最初は前のお話の終わり際や、この話の最初の方に入れる予定でしたが、バランスが悪くなるのでやめました。
更新停止期間の執筆状況の進捗はどれくらいの頻度で活動報告に載せるべきか
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