今回は非エロ話ですが、マゾ、M、被虐体質の方が楽しめそうな内容となっております。なお、作者はMではありません。違うったら違う。
「士道、あなたちょっと犬になりなさい」
「……は?」
とある平日の夜。精霊たちとの賑やかな夕食とその後片付けを済ませ、そろそろゆっくり休もうかと考えた時、士道は琴里から意味不明な命令を叩きつけられた。
これにはさしもの士道も少々耳を疑ってしまったが、相手は色んな意味で性癖がイカれている琴里。生粋のサディストである上に部下(金髪の人)を椅子にしたり暴力を振るったりしている奴なので、他人に犬になれと命令してくる事自体は別に不思議でも何でも無かった。
「聞こえなかった? 犬になれと言ったのよ。犬は耳が良いはずなのに主人の言葉を聞き逃すだなんて、とんだ駄犬ね?」
「いや、聞こえてはいたぞ。お前があまりにも意味不明な事言うから呆れて物も言えなかっただけだよ」
あまり信じたくは無かったがやはり本当に士道を犬にしようとしているらしい。琴里は正に躾の悪い駄犬を見るような蔑んだ目を向けてきている。
琴里も紛れも無く士道の愛する少女の一人であるため、少しくらい特殊なプレイに応える事自体はやぶさかでもない。しかし士道は琴里と違ってSとMの両方の性質を併せ持つ超越者染みた性癖は持っていないため、一方的に嬲られる立場になるなど歓迎できなかった。尤も逆に犬猫になった琴里を嬲るのなら話は別だが。
「大体何だよ、犬になれって。プレイの一環か? 悪いけど俺はそんな真似しないからな?」
「ふぅん? どうやら嘘の愛の告白なんてものをしておきながら、欠片も反省が見られないようね。これはもう一度七罪に頼んで、今度は豚にでも変身させるべきかしら……」
「……やります」
しかし琴里が何気なく口にした言葉に、自身の主義主張と性癖を曲げて即座に頷いた。
どうやら琴里は先日の嘘の愛の告白を未だに根に持っているらしい。そして士道自身、そのお仕置きとして本物のウサギに変身させられた体験はまだ記憶に新しい。実際に豚に変身させられるよりは、まだ人間の尊厳を捨てて犬の真似をした方が遥かにマシであった。
「何をやるのかしら? 言葉が足りなくて分からないわねぇ?」
「……犬に、なります」
「あら、犬は人の言葉なんか話さないわよねぇ?」
「わ、ワン……」
冷たい目付きで侮蔑の表情を浮かべながら指摘してくる琴里に、士道は一瞬の躊躇を経て情けない鳴き真似をした。ゴリっとプライドが削れたような気がしたが、背に腹は代えられない。
「犬は二本の足で立って主人を見下ろしたりはしないわよねぇ?」
「………………」
段々と頬が嫌らしくゲスに緩んできた琴里が、すぐさま次の指摘を飛ばしてくる。
またしても一瞬躊躇ったが、本物の豚にされるよりは多少はマシだ。故にゴリゴリとプライドと尊厳が削れていく音を聞きながら、その場に四つん這いで這い蹲る。
「ふふっ。思ったよりは従順な犬じゃない。さあ、これを被りなさい?」
などという面白がる声と共に、自分の惨めな姿に俯いていた士道の頭に何かが装着される。触ってみれば、それはカチューシャ型の犬耳であった。
わざわざこんなものを用意していた辺り、どうやら琴里は衝動的に士道を犬にしようとしたわけではないらしい。最初から犬にする事前提で怪しげな物を用意していたに違いない。
「なかなか可愛らしいじゃない? ああ、そうそう。飼い犬には首輪を着けないといけないわよねぇ?」
「っ……!」
その予想を裏付けるように、リード付きの首輪を手にして嫌らしく笑いかけてくるドSの琴里。士道はこの時はっきりと理解した。プライドと尊厳の凌辱はまだまだ始まったばかりだという事を。
「――ふふっ。犬の散歩もなかなか楽しいわね? こんなに楽しいのなら日課にするのも良いかもしれないわ」
「クソォ……!」
約十分後。犬耳カチューシャと首輪を装着させられた状態の士道は、四つん這いで家の中を惨めに這いずり回っていた。
その首輪から伸びたリードは士道の背に優雅に腰かけた琴里の手に握られており、どう足掻いても人としての尊厳は存在していない。だがこれでも外を散歩させられるよりは遥かにマシだと士道自身思っており、屈辱を噛みしめながらも素直に犬としての立場に甘んじていた。
とはいえ今の惨めで滑稽な姿を誰かに見られたら死にたくなる事請け合いだ。なので士道は誰も訪ねて来ない事を心から祈っていたのだが――
「え、何やってんの……?」
そんな引き気味の声が耳に届いて恐る恐る顔を上げると、そこにはよりにもよって愛する少女――七罪の姿があった。軽蔑とまでは行かないが明らかに関わってはいけない何かを見るような冷めた目をしており、ただでさえゴリゴリと削られた士道のプライドがより一層削られてしまった。
真っ当な理由で一番見られたくない相手に見られて死にたくなる士道だが、考えてみれば七罪は未だ五河家に同棲しているのだ。こんなプレイを廊下やリビングでやっていれば見つかってしまうのも当然の事であった。
「見れば分かるでしょう? 犬の散歩よ。本当は外の散歩に連れて行ってあげたいところだけれど、私まで変な目で見られるのは嫌だから家の中で済ませてあげてるのよ」
「あー……琴里はまだ怒ってるって事ね……」
どうやら琴里の答えと反応で全てを理解したようで、七罪は四つん這いになっている士道に対してとても同情に満ちた目を向けてきてくれた。尤もその生暖かい視線に余計に胸が痛み、俯いて床を見るしかなかったが。
「当然でしょう? 女心を弄ぶ屑には、それに相応しい罰を与えないといけないもの。あの程度じゃ私の怒りは収まらないわ」
「ぐっ……! クソッ、今に見てろよ……!」
グイっとリードを引っ張られ一瞬息が詰まった士道は、自らの背中に腰掛ける琴里を肩越しに鋭く睨みつける。
確かに士道としても偽の告白はやりすぎた気もするので、今はこの立場に甘んじてやっている。しかしずっと大人しくしているつもりなど毛頭ない。琴里の番の夜が来れば、この屈辱のお返しも込めてそれはもう激しく乱暴に犯してやるつもりでいた。
「あら、聞いた七罪? 犬が喋ったわよ? 不思議な事もあるものねぇ」
「くっ……わ、ワン……!」
「ああ、どうやら勘違いだったみたいね。まあそうよね、犬が喋るわけ無いものねぇ?」
「くうぅ……!」
しかしその仕返しも、今を乗り切る事ができなければ話にならない。故に士道は屈辱を堪えながらも、ワンワンと犬の鳴き真似をして無様な真似を晒すしか無かった。
「士道……」
そんな士道を気遣うような視線で見下ろしながら、哀れみのこもった声を零す七罪。
琴里はともかくとして、七罪自身はすでに一度愛の告白を受けているので、アレが半分は真実だという事は理解しているに違いない。だからこそ別段取り乱したりする事も無かったのだろう。それでも多少はムカっと来たからこそ、琴里に指示されるまま士道をウサギに変身させたのだろうが。
しかし七罪からすればそれで罰は済んでいるはずで、これ以上士道を辱める理由は無い。なので七罪もそろそろ琴里を冷静にさせようと動いてくれる。士道はそう思っていたのだが――パシャッ。
「おい、七罪!? 何で今写真撮った!?」
あろうことか七罪は無言で携帯を取り出したかと思えば、今の士道の情けない姿をパシャリと撮影するという暴挙に走った。これにはさすがに犬の真似をやめてツッコミを入れてしまう。
「いや、四糸乃と折紙に見せてあげようかなって思って。折紙ならこれくらいは普通のコミュニケーションの範囲内だろうから、変に疑われたりはしないだろうし」
「だからって撮るなよ! もしかしてお前もまだ怒ってるのか!?」
「そりゃあ、まあ……多少は……」
どうやら七罪も未だに士道を許していなかったようで、僅かに頬を膨らませて睨みつけてきた。
自身に対しての告白は嘘では無いと分かってはいても、やはり腹に据えかねるものがあったらしい。そして士道自身、琴里に知られず嘘では無いと伝えられる場面が無いので慰める事ができていない。これでは七罪が未だ怒りを抱いていても仕方が無かった。
「当然よね。七罪、良かったらあなたもこの駄犬を散歩させてみる? 意外と楽しいわよ?」
「あ、良いの? じゃあちょっとだけ」
「って、おい!? そこまでするのかよ、七罪!?」
しかし琴里からあっさりとリードを受け取る七罪に、さすがに驚きを隠せなかった。
まさか七罪がこんなふざけたプレイに賛同し、あまつさえ自分も参加するとはびっくりである。元々悪戯好きでどちらかと言えばS寄りなのは知っていたが、ここまでイカれたプレイに嬉々として参加するとは顎が外れそうなくらいに驚きだ。
「犬は喋っちゃいけないのよ、士道? もうこうなったら猿轡でも噛ますべきかしらね――ああ、七罪。ちょっと士道に座りなさい」
「え? こ、こう?」
「しかもわりと躊躇いなく座るな、お前……」
琴里に促された七罪は、士道の背中にひょいっと腰掛けてきた。さながら乗馬の如く股を開いてどっかり腰掛けるのではなく、足を揃えてちょっとお上品に。
軽いとはいえ確かな重みを背中に感じ、愛する少女たちに奴隷の如く扱われている事実に悲しみと屈辱を深く感じる士道であった。
「ええ。で、ちょっと足を上げなさい」
「はあ。何でこんな事を――って、ひゃあぁ!?」
琴里の言葉に従い両脚を上げる七罪だったが、突如としておかしな悲鳴を上げて引っくり返りそうになる。
しかしそれも当然。何故か琴里が七罪のソックスに手をかけ、無理やりに脱がしたからだ。七罪が履いていたソックスは太腿半ばまであるハイソックスだったためか、引っぺがすようにしてかなり強引な形で。七罪は最終的にお上品だった座り方も完璧に崩し、むしろ士道の背中にしがみつくようにして耐えていた。結局ソックスは情け容赦なく両方とも脱がされていたが。
そして何故か七罪のソックスを剥ぐという凶行に走った琴里は、ハイソックス二枚を絞り上げるように捻じりながら妖しい微笑と共に士道を見下ろしてきた。
「……おい、琴里。お前まさか――ふぐぅ!?」
ろくでもない予想を口にしようとした士道だが、その前に口が塞がれてしまう。琴里が手にした七罪のソックスを、それこそ猿轡のように噛ませられて。残念ながらろくでもない予想は見事に的中していた。
「なかなか良い感じね? これでより犬らしさが増したわ」
「いやあの、さすがに汚いからやめてあげた方が良いんじゃない……?」
「むぐぅ……!」
士道の首の後ろでキュッとソックスを結ぶ琴里に、七罪がちょっと慌てた様に声をかける。
七罪としては自分が今の今まで履いていたソックスを噛ませるなど、少々気が咎める行為なのだろう。そんな事は無いと言ってやりたいところだが噛ませられてるのは他ならぬ士道自身であり、なおかつ猿轡の形になっているので喋る事も出来ず答えられなかった。
「そう自分を卑下しなくても良いのよ、七罪。それにこれは愛する女の身に着けていたソックスだもの。たっぷり噛み締める事ができてこの駄犬もさぞ嬉しいはずよ」
「いや、卑下してるんじゃなくて一般論で言ってるんだけど……」
どうやら七罪はただ単純にソックスを噛ませている事そのものを気にしていたらしい。確かにソックスは素足が汚れないように守るためのものなので、そんなものを口に咥えさせるのは気が咎めるという事か。
そう考えると士道もソックスを噛ませるのはありえないと思えてきたが、冷静に考えれば士道はもっと汚いものを七罪たちに舐めさせたり咥えさせたり飲ませたりしているのだ。これくらいで文句を言う筋合いはどこにも無さそうだった。
「……まあ、これはこれで愉快だしちょっとくらいなら良いかも」
「!?」
七罪もうっすらそう思っていたのか、次の瞬間には士道への哀れみなど欠片もない面白がるような口調でそう呟いていた。どうやら七罪は士道の味方ではないらしい。
「ふふっ、あなたも言うようになったわね? その成長は私としても嬉しいわ」
「成長っていうか調教っていうか、身体に教え込まれたっていうか……ともかく、確かに前より良くなったのは確かね」
「なるほどね。それじゃあこの機会に普段の鬱憤も晴らしてやりなさい?」
そう口にして、ソックスを剥がれる時に七罪が手放したリードを改めて手渡す琴里。
士道から受けたセクハラやエロい悪戯をそこそこ根に持っている七罪が、こんな美味しい状況を逃すことなどありえない。そしてこの場に士道の味方はいないので、止める者もまたいない。
「……じゃあ、お言葉に甘える事にするわ。ほら、歩きなさいよ士道?」
「んぐっ……!」
故に七罪はリードをグイっと引っ張りつつ、士道の尻をパシパシと叩いて前進を指示してきた。哀れな駄犬である士道は背中に腰掛ける七罪を振り落とさないように気を付けつつ、指示通りに四つん這いで床を這って歩くしかない。
近い内に七罪も琴里も背後から押し倒し覆い被さって、獣のようにたっぷり突き犯し反逆する事を決意しながら。
『ヤッホー! 楽しそうな事してるねー、二人とも! よしのんたちも混ーぜて!』
「わっ……ほ、本当に士道さんが……」
七罪の玩具にされて床を這う事数分ほど。今の士道の惨状をメールの画像で見せられてしまった四糸乃が、あろうことか直にこの哀れな駄犬の姿を見に来てしまった。
床に這い蹲らされ、七罪のソックスで猿轡を噛まされ、犬耳とリードの付いた首輪を装着させられた士道の姿を目の当たりにして、四糸乃はさすがに目を丸くしている。しかし当然『よしのん』はテンションを上げて四糸乃の左手ではしゃいでおり、まるで子供たちが鬼ごっこで遊んでいる所に混ざろうとしているくらいに平常運転だった。
「よひのぉ、ふぃふぁいふぇくへぇ……!」
「もちろん構わないわよ。あなたたちはこの駄犬の不貞を教えてくれたもの。お礼にたっぷり遊んでいきなさい?」
こんな悲しく情けない姿を見ないように四糸乃に伝えようとするも、猿轡を噛ませられているせいでまともな言葉にはならない。加えて琴里が士道の頭を軽く踏みつけてきたため、情けなさにますます拍車がかかっていた。
「い、良いんでしょうか……?」
「良いのよ、四糸乃。士道も本当に嫌なら大人しくこんな真似しないわよ。きっと罪の意識があるんだろうし、ここはたっぷり犬扱いしてその気持ちを晴らしてやった方が良いんじゃない?」
「ふぁふみぃ……!」
七罪もだいぶ気分が乗って来ていて楽しいらしく、士道の尻をペシペシ叩きながらそんな事をのたまう。睨んでやろうとしたが背中に乗っている七罪の顔を見ることはできず、士道の目に映るのは自分の頭を踏みつける琴里のスカートの奥だけであった。
どうやら今日は大人っぽい下着ではなく、赤と白の縞パンのようだ。少し湿っているように見えたのは目の錯覚だと思いたいが、視線に気付いた琴里がさり気なく足を下ろしたのでどうにも錯覚では無さそうだった。少なくとも琴里はただパンツを見られる程度で恥ずかしがるような輩ではない。
「そ、そうなんですか。それじゃあ、私も……」
そして最近は悪い子になってきている四糸乃が、こんな場面で大人しくしているわけもない。多少遠慮がちながらもこの状況を逃す手は無いと決めたようで、士道の目の前にしゃがみ込んできた。
果たして心のオアシス(元)の四糸乃は、こんな哀れな駄犬に一体どのような鬼畜な真似をするのか。内心びくびくしていた士道の前で、四糸乃は静かに右手を差し出してきて――
「……士道さん。お手、です」
「……?」
お手を、求めてきた。わりと真剣な面持ちで。
それくらいなら別に従う事に否は無いのだが、本当にお手をさせるだけなのかと疑ってしまい、思わず首を捻ってしまう。少なくとも背中に乗られてお馬さんごっこさせられている現状では、お手の一つや二つで壊れるプライドなどもう存在しない。
「ほら、お手よ。お手。そんな事も出来ないの? 躾の悪い駄犬ねぇ?」
「………………」
どうやら琴里は士道があまりの屈辱に固まっているとでも思ったらしい。ニヤニヤと実にサディスティックな笑みを浮かべながらこちらを見下ろしてきている。
琴里にお手を強要されたなら屈辱は段違いだが、四糸乃に求められているのなら応えるのはやぶさかではない。故に士道は素直に右手を上げ、四糸乃が差し出す手の平にぽすっと手を下ろした。途端に四糸乃は可愛らしく顔を綻ばせるのだから、やる甲斐があるというものだ。
「ふふっ。次は、おかわりです」
今度はおかわりを求められたため、躊躇いなく左手で応える。
それだけだったが四糸乃はそれで満足したようで、嬉しそうに笑いながら士道の頭を胸にかき抱いてきた。
「えへへ、良くできました。良い子良い子、です」
『思ったよりも素直な良い子じゃなーい。よしよしよしのん……』
そして正に犬猫を可愛がるように、優しく抱きしめながら頭を撫でてくる。もちろんその手付きには暴力性など一欠片も無い。ただただ慈しむ気持ちだけがあり、Sな少女二人に弄ばれていた士道にとっては実に心地良い気分だった。四糸乃の柔らかな胸に顔を埋める形になっているので余計に。
むしろ士道はこれ幸いとばかりに、四糸乃の胸にすりすりと頬ずりをした。本当はキスの一つや二つもしたいところだが、猿轡を噛まされているので残念ながらそれは出来なかった。今の士道にできるのは頬ずりして顔で柔らかさを楽しむくらいである。
「……何か満更でも無さそう。ていうかちょっと羨ましいかも」
などと士道の背中の上でぽつりと呟く七罪。角度の問題で士道が積極的に顔を擦り付けているのは見えないようだが、それでも四糸乃の胸に抱かれているのは一目瞭然なため、本人が口にした通りちょっと羨ましそうな声音であった。
とはいえ七罪とは違い、士道の表情や頬ずりがしっかり見える位置に立っている琴里はだいぶイラついた表情をしていた。まあ自分の犬が他の誰かに懐いて頬ずりしていたら無理も無い反応だ。
「四糸乃、そんな風に甘やかしちゃ駄目よ。駄犬には厳しく躾をしてあげないと」
「厳しく、ですか?」
「ええ。背中に腰かけ地べたを這い蹲らせて、自分の立場ってものを分からせてやりなさい」
そう言い切ると、琴里は士道の背中にいる七罪に視線を向ける。七罪もそれだけで察したらしく、背中から退いて四糸乃に場所を開けた。
どうやら今日は愛する少女たち三人を背中に乗せ、這って歩かなければいけない屈辱の日のようだ。とはいえどちらかと言えばいつもは士道が乗っている方なので、たまにはこんな日も悪くないかもしれない。四糸乃の慰めのおかげで、そんな風に前向きに考える事ができるようになった士道だった。
「わ、分かりました。士道さん、失礼します……」
丁寧にも犬にそう声をかけ、背中へと上がってくる四糸乃。おしとやかに足を揃えて横座りで腰かけるのかと思いきや、意外にも足を広げて正に乗馬の如き乗り方であった。
冷静に考えてみれば四糸乃はいつも<
「……何だろう。四糸乃が腰かけてると駄犬でもユニコーンに見えてくる。神々しい」
「それは幻覚よ、七罪。というか今の四糸乃はユニコーンには乗れないわ」
実際そんな感じだったようで、七罪がちょっと行き過ぎた誉め言葉を口にしている。とはいえ士道がユニコーンに見えるというのは琴里が言う通りかなり重度の幻覚だ。しかし四糸乃なら士道が純潔を奪った今でもユニコーンに乗れそうな気がしなくも無かった。
「えっと……じゃあ、進んでください?」
『ハイヨー、士道くん! 進め進めー!』
「………………」
まだちょっと抵抗があるらしい四糸乃が控えめに、『よしのん』がノリノリで前進を指示してくる。さっきの二人に比べれば遥かにマシな扱いなので、士道はなるべく四糸乃の身体が揺れないように気を付けて床を這い始めた。
「あっ。乗り心地、とっても良いです……」
『むむっ!? 今の発言にはよしのんちょーっと妬いちゃうかなー?』
その気遣いが伝わったのか四糸乃が驚いたように呟き、『よしのん』が何やらおかしなやきもちを焼く。どうやら『よしのん』的には<
まあ可愛らしくもなかなか凶悪な見た目をしたカッコいい<
「……どうかしら? 意外と楽しいでしょう?」
「はい、楽しいです……!」
しばらく廊下やリビングで士道を乗り回して楽しい気分になってきたらしい。琴里の問いに答えた四糸乃の声は、それはもう楽しそうに弾んでいた。愛する男を畜生のように扱っているとは思えないほどに明るく、感情豊かに。
『んー、でもよしのん的にはちょっと物足りないかなー……』
「えっ、嘘? よしのんならむしろこういうの好きだと思ってたのに」
しかしSMに近い事をしているというのに、『よしのん』はいまいち満足できないらしい。七罪が口にした通り、士道も『よしのん』はこういう若干アブノーマルなプレイがお好みだと思っていたので、これは驚きの発言だった。
『いやー、嫌いじゃないけど何か足りないっていうか……そうだ、琴里ちゃん。鞭とか無い? 乗馬用のやつ』
「っ!?」
「鞭っ!?」
しかしどうやら士道も七罪も『よしのん』の業の深さを見誤っていたらしい。この程度のプレイでは文字通り物足りないようで、『よしのん』は乗馬鞭というアイテムを求めていた。
恐らく、というか間違いなく士道の尻を叩いて歩かせる気なのだろう。本物の馬、あるいは本物のSMが如く。
「ええ、あるわよ。少し待ってなさい。取って来るわ」
「あるの!?」
鞭を求められても驚かず即答し、更にはすぐに用意できる琴里に七罪が目を丸くしていた。士道も同じように驚きたいところだったが、妹の性癖が悲劇的な事はすでに良く分かっているし、SMも大好きな琴里はわりとその手の道具を所持しているので何一つ驚きはなかった。
『イェーイ! これで士道くんのお尻を叩きながらお馬さんごっこができるね! 今の士道くんはワンちゃんだけどさ!』
自室に鞭を取りに行く琴里の姿を尻目に、『よしのん』が大はしゃぎで酷い台詞を口にする。
どうやらこの屈辱的な時間はまだまだ終わりそうにないらしい。段々と諦めの境地に至ってきた士道は、猿轡として噛ませられた七罪のソックス越しに深いため息を零した。
「ほら、きりきり歩きなさい! この駄犬!」
「んぐっ……!」
実に楽しそうでサディスティックな声と共に、士道の尻に乗馬鞭がピシャリと叩きつけられる。
自室から鞭を持ってきた琴里によって、お馬さんプレイは更に激しさと再現性を増していた。今は四糸乃から琴里に騎手が交代し、見本でも見せるかのように鞭で士道の尻をしばき回してきている所だった。
ズボン越しとはいえなかなかの痛みに呻きを上げた士道は、恨みつらみを込めた目を向けようと限界まで背中側に首を捻る。どう頑張っても背中に乗っている琴里の表情を見る事は叶わないはずだが、どうやら向こうの方からこっちの顔を覗き込んできているらしい。士道の目にはドSな笑みを浮かべた琴里の表情がはっきりと写った。
「あら、何かしらその目は? 自分の立場ってものが分からないの?」
「うっわぁ……」
『琴里ちゃん良い笑顔してるなー。次は四糸乃がやろうねー?』
「えっと……さすがに、これはちょっと……」
ノリノリでサディスト全開な琴里に対し、周囲で思い思いの反応が零れる。七罪はドン引きし、『よしのん』は見習うように四糸乃に勧め、心優しい四糸乃は頷くのに躊躇いを示す。
当初はそこそこノリノリだった七罪も、さすがにこれは行き過ぎだと感じているのだろう。心優しい四糸乃に関しては言わずもがなの反応だが――
『……やれば士道くん、後でいっぱい仕返しのお仕置きしてくれるよー?』
「……ちょ、ちょっとだけなら……」
「よふぃふぉっ!?」
最近は悪い子を目指しているという状況、そして左手の小悪魔ウサギにそそのかされた結果、満更でも無い反応をしていた。
まさか四糸乃にまで乗馬鞭で尻を叩かれてしまうのかと戦々恐々する反面、仕返しにお仕置きをする場面を想像してちょっと興奮してしまう士道だった。幸いな事に四つん這いで床を這っているおかげで、身体的な反応は誰にも見られる事は無かったが。
「あーあ。こんな光景、他の子に見られたら一体どうなるのかしらね……?」
などと末期的な光景に対し、投げやり気味に七罪が呟く。
どうにも琴里がヒートアップしているせいでかなりヤバい絵面になってきており、もし今この瞬間に精霊たちが五河家を訪れたら大問題である。すでに士道たちの関係に加わっている美九を除けば、一番見られたくないのはもちろん――
「……あっ」
などと考えていたところ――ガチャリ。がっくりと俯いていた士道の耳に玄関の扉が開く音が聞こえ、次いで七罪が小さく声を上げる。
どうやら七罪がフラグを立てたせいで、本当に誰かが訪ねてきてしまったらしい。今の士道たちはちょうど玄関近くでプレイをしていたため、間違いなくこの無様な姿を見られてしまっているだろう。
とはいえ頻繁に黒歴史を公開されている士道からすれば、まだかろうじて最悪の状況ではない。しかしそれは訪ねてきた人物によっては、容易に最悪の状況に落ちるという事。故に士道は絶望と希望の狭間で揺れ動きながら顔を上げ、訪問者の姿を視界に収め――この世に救いは無いと理解させられた。
「ふぉふぃふぁみ……!」
そう、玄関に立っていたのはよりにもよって折紙だったのだ。今一番この状況を見られてはいけない相手が、士道の愉快な姿をじっと無表情で見下ろしている。これが絶望で無くて一体何だというのか。生きた心地のしない士道は琴里を背に乗せたまま凍り付くしか無かった。
『おーっと、よしのんたちの秘密の遊びを見られちゃったー!? これは大変だー!』
「こ、こんばんは、折紙さん……」
「メール見た瞬間からこっちに向かってたのかしらね。いつも返信速いのに今回は何の反応も無かったし、既読スルーされてるんじゃないかと思ってたから安心したわ……」
大袈裟にわざとらしく驚く『よしのん』と、とりあえず挨拶をする四糸乃。そして折紙の登場にビビるどころかむしろホッとした様子を見せる七罪。安堵しているところ悪いが、どう考えてももっと慌てふためく場面だ。
何せ士道に猿轡を噛ませてリード付きの首輪を嵌め、高尚な遊びをしている光景を見られたのだ。これは相手が折紙でなくともマズイ状況である。にも拘わらず全く慌てる素振りが無い辺り、七罪もかなり図太くなってきたらしい。
「あら、折紙。ちょうど良い所に来たわね? あなたもこの駄犬を躾て遊ぶ?」
そして見られたからには誤魔化す事もできないと悟ったのか、琴里は士道のリードを引っ張りながら折紙を高尚な遊びに誘う。
恐らく相手が相手なのでこの程度の遊びならコミュニケーションの範疇になると考え、別段誤魔化しもしないのだろう。実際のところ、黒琴里がドSで折紙がヤバイのはわりと周知の事実である。ヤバい折紙なら嬉々としてこの遊びに加わるに違いない。士道ははっきりとそう考えた。
「……今の士道が犬だというのなら、飼い主は誰になる?」
しかし不思議な事に、折紙は琴里の言葉に即答しなかった。そうして士道たちに順番に視線を注いだかと思えば、そんな事を尋ねてくる。
もしかすると設定を深める事で、よりプレイの没入感を高めるつもりなのかもしれない。尤も飼い主が分かったら何をするつもりなのか士道には分からないが。
「飼い主がいるような躾の行き届いた犬に見える? 野良犬よ、野良犬」
「そう」
琴里の発言に納得したのか、折紙は小さく頷く。どうやらこの遊びがそこまでシチュエーションに拘った物ではないと理解したらしい。
ここから更に設定を深めるつもりなのか、はたまたこのまま参加するのか。一人内心ビクビクしている士道の前で、ついに折紙が行動を起こす。
「――ということは、野良犬同士で子作りをしても問題無い」
「はぁ!?」
「うわー……」
そしてその行動は、正に折紙と言うべきものだった。意味不明な供述をしながらバサリと服を脱ぎ去り、その下から現れたのは何とスクール水着に包まれた肢体。さりげなく犬尻尾もすでに装着されており、最後にどこからともなく取り出した犬耳を装着して準備完了。これでこの場に犬が二匹存在する事となった。
とんでもない理論と微塵も恥を感じさせない潔さに琴里が驚愕し、七罪が引き気味の声を零す。
「な、なるほど、です……」
『むむっ、そうきたかー……』
反面何故か四糸乃と『よしのん』は感心しているらしく、むしろ食い入るように折紙の奇行と姿を見つめていた。まるで何か参考にするような目で熱心に見ている辺り、士道としては今後が楽しみなような不安なような複雑な気持ちである。
「士道、あなたは野生に生きる気高い狼。人に飼われる必要などない。大自然の中、生まれたままの姿で私と子孫繁栄に勤しむべき」
「んんっ!?」
そしてちょっと意識が逸れていた間に、気付けば折紙がすぐ目の前にいた。躊躇いなく士道と同じ四つん這いとなり、犬耳と犬尻尾をピコピコ揺らして自分は犬だと主張している。
幾ら大人の男となった士道でも、端正な面差しを持つ折紙に目と鼻の先から見つめられ、なおかつおかしな台詞とマニアックな恰好で誘惑されてはなかなか刺激が強かった。折紙なら絶対に有言実行すると分かっているので余計に。
そして折紙はそのまま顔を近付けてきて、あろうことか士道の頬を舐めてきた。七罪のソックスで猿轡を噛まされてるので頬だったのだろうが、無ければ確実に唇を奪われていただろう。
「ちょっ、こら!? 何をしようとしてるのよ、折紙!?」
「んぐっ!?」
これには独占欲の強い琴里が猛烈に反応を示し、リードを引っ張って士道を折紙から遠ざける。さながら散歩を嫌がる犬を無理やりに引っ張るかのような感じで。
どうやら先ほどまではリードを引っ張るのもある程度加減していたらしい。尤もそれが分かったからといって、今の首を絞められるような息苦しさが和らぐわけでは無かったが。
「当然、子孫繁栄のための生殖行為。士道が野良犬ならば、同じ野良犬である私との交尾には何の問題も無い。ワン」
「いや、問題しかないでしょう!?」
「本当よくやるわね、あんた……」
無論折紙はすぐに士道に這い寄ってきて、そのままガシっと抱き着いて申し訳程度の犬の鳴き真似をする。何が何でも士道とその手の行為をするという熱意と狂気に、七罪が呆れを通り越して感心すら見せ始めるほどだ。
ちなみに士道は二の腕にスクール水着越しの柔らかい感触を覚え、驚きを飛び越え臨戦態勢に入りかけていた。幸いな事に四つん這いなので下腹部の隆起は目立たないが――
「あっ!? ちょっと、士道を脱がそうとしない!」
「何故? 野生の犬は服を着ていない。服を着ている方がむしろ不自然」
「んんーっ!?」
折紙が容赦なく士道の服を剥ごうとしてくるので、これには琴里ともども慌てて抵抗せざるを得なかった。万が一折紙に身体的な反応を催していると知られれば、即座にその場で食われる事間違いなしだ。色々と淫らな悪事を重ねてきた士道でも、三人の幼女(と一匹のウサギ)に見守られながら貪られる趣味は無かった。
「自然不自然じゃなくてこれは異常よ! というかスク水着てるあなたの方が不自然じゃない!」
「確かに。では私も脱ぐ」
「っ!?」
『躊躇いなく脱いだー! さすが折紙ちゃん!』
琴里の指摘を受け、あろうことか折紙はスク水を破りさる勢いで脱ぎ始める。咄嗟に固く目を閉ざす士道だったが、折紙の行動があまりにも躊躇いの無い素早いものだったため、その白い肌はバッチリと目に焼き付いてしまっていた。
そのせいで明確に下半身が臨戦態勢となってしまい、下手に動く事ができなくなった士道は必死に四つん這いを継続して誤魔化すしかなかった。もちろんその間も一糸纏わぬ姿となった折紙が強引に服を剥ごうとしてきて、それを琴里が懸命に食い止めるという酷い絵面が繰り広げられる。士道は昂る性欲を抑え込むのに忙しく、下手に目を開けたり動いたりすると興奮を煽られる感触や光景に遭遇しそうなので何もできない。
「あーあ、これどう収拾つけんのよ……」
「折紙さん、とっても積極的です。参考に、なります……!」
下手をするとこの場でもう一人淫らな関係に加わってしまうかもしれないというのに、七罪も四糸乃も何ら助け舟を出してはくれなかった。七罪はただただ呆れ果てたような顔で見ているだけだし、四糸乃は折紙の奇行を学ぶかのように真面目な顔で見つめている。皮肉な事に、最早味方はさっきまで士道を家畜の如く扱っていた琴里だけだった。
その後、折紙と琴里の仁義なき戦いは、折紙の内なる悪魔が出て来て仲裁してくれるまで続いた――
「はあっ……何か、今日はどっと疲れたな……」
何とかあの混沌とした場を清い身体のまま切り抜ける事が出来た士道は、疲労に深いため息を零しながらベッドにうつ伏せに身を投げる。
折紙と琴里の仁義なき戦いは苛烈を極め、獣欲に燃える折紙と嫉妬に荒れる琴里の間で士道はもみくちゃにされてしまった。しかしいよいよ限界という所で折紙の内なる悪魔(天使)が現れ、仲裁してくれたのだ。あれが無ければ今頃士道は性的な意味で食われていたに違いない。
「お疲れ。まああれだけ玩具にされた挙句、交尾させられそうになったらそりゃ疲れるわよね」
精神的にも肉体的に疲労困憊な士道に対して、そんな労いの言葉をかけてくるのは七罪。士道が身を投げたベッドにぽすりと腰を下ろし、慰めるように背中の辺りをポンポンと叩いてくる。労ってくれるのは嬉しいのだが、その優しさはもう少し早く発揮して欲しいものだった。
「お前も四糸乃も止めずに見てるだけだから、余計に大変だったしな。何で止めてくれなかったんだよ、七罪?」
「だって折紙にならさっさと私たちの関係バレた方が楽そうだし。あのまま士道が襲われるならそれはそれで別に良いかなって思って」
そう、結局最後の最後まで折紙を食い止めてくれたのは琴里だけだったのだ。四糸乃も七罪も最初から最後まで見ているだけで、加勢してはくれなかった。
どうにも自分たちばかり士道と愛し合い、幸せになっているという負い目を抱えている二人としては、あのまま士道が折紙に食われた方が望む展開になったのだろう。かなり屈折した想いになっている気がしなくも無いが、琴里の妨害や折紙への加勢をしなかっただけまだマシに違いない。
「それは、まあ……否定はしないけどな。盗聴器とかの捜索で琴里もかなり大変そうだし」
そして士道自身、確かに折紙を巻き込む事が良い考えなのは否定できなかった。
折紙は当然のように五河家に盗聴器その他を仕掛けまくるので、自分たちの爛れた関係を知られないように琴里はいつも頑張っているのだ。その根底にあるのが恐らくは嫉妬とか独占欲の類なのはともかくとして、その労力を考えるとさすがに同情が湧いてくる。折紙もこの関係に加わってしまえば、そんな労力は綺麗さっぱり無くなるのだが。
「盗聴器とか隠しカメラを仕掛けまくる折紙もアレだけど、それを絶対に見つけ出して処分する琴里も大概アレよねえ……」
「その発言を琴里が聞いてるかもしれないぞ」
「……琴里はきれいでうつくしいです。あと胸もおおきいです」
「お前露骨でわざとらしいお世辞を恥ずかしげも無く……」
失言を零した七罪をチラリと見ると、妙に背筋を伸ばして身体を固くしながら最大級の賛辞を棒読みで口にしていた。今の発言を琴里が盗聴していたかどうかはさておき、七罪も本心では琴里の並々ならぬ執念に呆れているようだ。
「そ、そんな事より士道、今夜の事でちょっと話があるんだけど」
さすがにわざとらし過ぎると自分でも思ったのか、話を打ち切って有耶無耶にしようとする七罪。あまりにも強引だったが盗聴で失言を拾われて琴里にお仕置きされる七罪も可哀そうなので、その話題転換に乗ってやることにした。
「ん? 何だ?」
「その……今夜は無しにして貰っても良い?」
「……また何か企んでるのか?」
そして七罪が口にしてきた台詞は、今夜の営みは無しにして欲しいというどこかで聞いた覚えのある言葉。さすがに士道だって学習能力はあるので、今回も何か仕掛けてくるつもりなのではないかと疑うのは当然だった。前回は七罪お姉さんによる拘束プレイという欲張りセットを仕掛けられたので余計に。
しかしどうにもそういう事ではないようで、七罪は特にわざとらしい反応を見せず首を横に振った。
「今回は違うわよ、今回は。何か今夜は凄く眠いから、もう早く休みたくて……まあ、士道がどうしてもって言うなら頑張って付き合うけど……」
「さすがにそんな無理は言わないって。それに今日はだいぶ疲れたし、本音を言えば俺も早く休みたかったから助かるよ」
「あ、そうなの? 良かった。じゃあ問題無さそうね……ふああぁぁ……」
ホッとしたように言うと、大きな欠伸を零して目尻に涙を溜める七罪。どうやら眠いというのは本当らしい。
考えてみれば七罪も七罪で、士道とのお馬さんプレイを楽しみそれなりに弾けていたのだ。普段とはかなり異なる積極的な行動をしたのだから、疲れるのも当然と言えば当然かもしれない。さすがにそんな七罪に夜の相手を強制するほどクズでは無いので、ちょっと残念に思いつつも七罪の身体を気遣って今夜は自重する事にした。
「ん……」
しかしそれで我慢するのは正直辛い。なのでせめてしっかり温もりを堪能しようと、士道は身体を起こして七罪を背後から抱きしめる。
ついでに頭頂部に顔を埋めて匂いも堪能しているが、自分から今夜は休ませて欲しいと提案してきた負い目があるのだろう。恥ずかしそうにしながらも、今回は特に抵抗もしてこなかった。
「すうううぅぅぅ! はあぁぁぁぁぁ……すうううぅぅぅぅ――うっ!」
なのでこれ見よがしに深呼吸して匂いを堪能しまくると、さすがに調子に乗り過ぎたのか無言の肘鉄が良い感じの位置に叩き込まれ、しばらく悶絶する事を余儀なくされる。
段々と自分への対応が雑になってきているように感じながらも、これはこれで悪くないと思えてくる士道だった。もしかすると誰かの影響でマゾっ気に目覚めつつあるのかもしれない……。
幼女三人とお馬さんごっこ。これを楽しいと感じるか辛いと感じるか。私ならたぶん辛いと感じる方ですね。でも七罪のソックスなら噛みてぇなぁ……。
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