「アカ乗っ取りました」
アカウント乗っ取り。MMORPG『ユグドラシル』の世界において、僕はモモンガ氏になった。12年にも及んだユグドラシルのサービス終了というこの日、僕はついにアカハックを決行したのである。
僕は、くされ転生者の端くれであった。
転生者らしく異世界というファンタジーを堪能したい。しかし……どうも、転生した世界は中途半端だった。『ユグドラシル』というゲームこそ実在したが、他は大して前の世界と変わらなかったのである。
こうなれば、最後にもう一夢見てみるのも悪くないと思った。今日終わるゲームのアカウントハックなど面倒こそあれ、良心が痛むこともない。なぜならば、事実としてアインズ・ウール・ゴウンは厨二ギルドであり、他者のやっかみは少なからず存在していたのだ。その報いだと思えば、一種の暗い愉快さも感じられた。
「これがナザリック地下大墳墓かー。やりこんでるねぇ」
“モモンガ”になった僕に、セバスとプレアデスの面々が首を垂れひれ伏す。実にいい絵面だ。僕は慣れないながらも玉座の間に向かった。
「設定が多いなー。設定変更と……あーあった、一括設定も、っと」
玉座に腰を落ち着かせ、ひとりひとりナザリックのNPCの設定を僕のいいように書き換えてしまう。
NPCは創造主もすべてこの“僕”が作ったと製作者のパラメータを改ざんする。ユグドラシルというゲームはデータ量が膨大であるため時間がかかるのだが、無理ではない。あらゆる情報をこの僕“モモンガ”のものだと書き換えてしまう。僕は所有欲が強かった。
男のNPCは僕への忠誠を永遠絶対とし、不能であることとを明記した。
女のNPCは僕への忠誠と愛を永遠絶対とした。あとは女は全員処女だとか、パイパンだとか濡れ濡れだとか、容姿を強調したり、色々僕好みに魔改造を施しながら時間を潰す。
これほどの完成度のNPCキャラクターは見たことがなかった。細部までよく作りこまれている。当たり前の話だが、僕の知らない“なんとか”さん達が作ったNPC達だ……。誠にごくろうなことであった。その膨大な時間を費やしただろう苦労は最後はこの僕のためであった。
もしも、原作みたいに異世界に僕が連れていかれるのなら、僕にフィットした仕様に改変して何が悪いのか。今日終わるゲームの著作権など気にすることもない。
「ふー……もうそろそろ時間……って、ふふふ」
――モモンガは、思ったよりもNPCの書き換えに夢中になっていた。
ゲーム内時間を確認してみると、すでに0時を過ぎている。しかし、僕はログアウトされていなかった。そもそも、ゲーム内とは思えない現実感がこのナザリックに満ちていたのである。
「モモンガ様。どうかされましたか?」
――喋った。ごくり。
ナザリック地下大墳墓の守護者たちを総括する最高位の悪魔。アルベドだった。
「アルベド。こちらに来い」
「はい、モモンガ様」
美しい。人とは異なる異形の悪魔。だが、人の欲望を体現したようなその美は本物だ。
手を伸ばし、アルベドの胸を触る。やわらかい。とてもやわらかい。なんて魅惑的な――
「ああんっ」
艶めかしい声をあげるアルベド。頬を赤くし、軽くイったようだった。
生きている肉感だった。そうとしか思えなかった。やった。やったのだ。こんにちは異世界。
はっ、と思い出したようにモモンガは自分の股間を確認する。
なんだ。あるじゃないか、性欲も醜い肉棒も。モモンガは体こそ骨と躯になっていたが、生殖器だけは別だった。茨のように、禍々しい肉の生殖器が骨の体に纏わりつくように生えていた。
“僕”ではないモモンガも、アニメや小説、書籍などによって、微妙に個体差が存在していた。“モモンガ”は、おそらくこれもその誤差だろうと考えた。
「アルベド。私の肉棒をおまえのいやらしい胸と口で奉仕しろ」
「!? は、はい、モモンガ様! 喜んで」
アルベドはモモンガのこの望外な命に、一瞬言葉を失った。
いつもの高貴な振る舞いも、この命令のときばかりは乱れずにはいられなかった。抑えきれない感情を必死に抑え込み、モモンガの前に跪いた。
「はぁはぁ……なんて濃厚な臭い……ごくりっ……」
モモンガの肉棒は異形のそれだった。だが、アルベドは喜々として咥えこんでみせた。異形な者だからこそなせる性技であった。
「さて、守護者の諸君よ――」
「じゅじゅ……(じゅぶぶぶ)」
モモンガは、アルベドに性処理をさせながら、各守護者にこのナザリック地下大墳墓が転移したことを告げた。セバスを筆頭に、男NPCどもを現状把握に使い走りにしてこの場から退場させる。
「モモンガ様……どうですか、アルベドのふぇらちおふぁ……」
「ああ、悪くない。ぐふふ……実にいいぞ、アルベド」
じゅじゅ……アルベドの舌技による卑猥な音が広い玉座の間に響く。
礼儀正しい姿勢で微動だにせず静止しているすべてのメイドたち。そのすべては等しくモモンガを敬愛し深愛している。
生真面目なメイドはモモンガ様との行為など夢想することさえ身に余るとさえ考えていたが、しかし、偉大なモモンガ様に思いをはせることは万人に与えられた自由であり、至極当然の感情でもある。ナーベラルでさえ、純白の下着が濡れ滴る熱い忠誠心を抑えることができなかった。
「おおっ、おおっ、いいぞ。アルベド。そろそろ……」
「じゅぶぶ……はいっ、モモンガ様、いつでもアルベドにっ……んっ!?」
モモンガはアルベドの小さな頭を掴んで、思い切り肉棒を咥えこませた。もっとも、何を言わずともアルベドはモモンガの精液を口内で受け止めただろうが、またもモモンガに求められたという事実にアルベドの至福は留まることを知らなかった。
(びゅるる!! びゅるる、びゅるる!!!)
人の身とはくらべものにならない射精量であった。髑髏の頭蓋をしたモモンガに射精の快感が何度も駆け巡る。4回、5回……脈動は収まらない。
ついにはアルベドの口を持ってしても、その精は飲みきれなかった。アルベドの胸に、美しい肢体に、モモンガの熱い精が何度もかけられる。
「んあ……も、申し訳ありません。こぽっ、モモンガしゃま」
「よいアルベド。そう、今日は……今日は気分がいい。こんな気分は初めてだ」
そう。この日が始まりなのだ。僕は……僕こそがモモンガなのだ。
偉大なる創造主が笑う。