モモンガはカルネ村での鏖殺を終えると<強欲と無欲>のガントレットを用いて、騎士と村人の亡骸からその魂(経験値)をすべて蒐集した。大した量ではなかったが、そういうものだろう。
性奴隷を弄び、人間を鏖殺するという、強者の愉悦。なかなか悪くない愉悦だった。
新しい楽しみを覚えたモモンガは晴れやかな気持ちと共にナザリックへと帰還した。
この世界はあのオーバーロードにおける異世界と同一であることは、性奴隷としたエンリらの存在をもって、“ほぼ”証明されたとモモンガは考えていた。おそらく帝国と王国、そのどちらも自分たちにとっては文字どおり“どうとでもなる”存在となるだろうとも当たりをつけた。
ワールドアイテムにこそ及ばないだろうが、彼らの持ついくつかの聖遺級のアイテムに気をつければまず問題ない。
今のモモンガは、この躰の元主であったモモンガよりも人間味に欠けている。
その一方で性奴隷という存在によって、人間には一片の存在価値があることも認めてもいる。つまり、自分の性欲処理の玩具として使えるのである。
確かに、ナザリックには格別よい女が揃っている。……揃っているが、玩具が多くて困るものでもない。その点において、モモンガは具体的で明確な価値を人間に見いだしていた。
よって、そんなモモンガが次に導き出した計画の一つはこれだった。
「人間の性奴隷化および牧場経営……!!」
デミウルゴスは、モモンガのこの構想と計画に沸き立ち震えたった。
ナザリック大墳墓の守護者達は、異世界への到来にいまだ混乱が収まりきったとはとても言えない状況だ。ナザリック地下大墳墓の隠蔽化工作でさえ今も現在進行形の有様で、明確な次の一手は大悪魔の叡智を持つデミウルゴスでさえまだ明確な検討が進んでいなかったのである。
しかし、モモンガは軽々と示してみせた。明確な次の一手となる素晴らしいビジョンを。
デミウルゴスは、自分であればこの発想を得るためには、まだ幾許かの日数を要す必要があったことを冷静に計算した。己を遥かに凌駕する我が主に、さらなる忠誠を深めずにはいられない。
「聖王国両脚羊――と言えば、お前の趣味にも見合うだろう。我が意図が伝わったか」
「っ!? モモンガ様、ククッ!! す、素晴らしいですっ!!」
デミウルゴスはモモンガが己の趣向を完全に読みきっていることに、歓喜の笑みを隠すことができなかった。これこそが偉大な支配者モモンガ様なのだ。これが本懐でなければなんなのか。
さらに、デミウルゴスがオークと人間の異種間交配実験を提案すると、モモンガはそれの改善提案を挙げた。
交配させる人間の雌と、交配する魔族の厳選であった。
つまり、美女を捕らえ、肉体的精神的にいじめ上げながら、女悪魔であるサキュバスと交配させるほうがモモンガの好みであり、美しい娘が生まれればさらに良い。
モモンガにとっては、眼鏡に適う女でなければ、等しく人間は価値が無い。交配実験をするなら、眼鏡に適う雌奴隷となるように操作もする、ということであった。
「我々(アンデット)は時間と効率を求めるような存在ではない。じっくり楽しまねばな」
「――ッ! まさしくその通りです。モモンガ様」
モモンガの考え方はデミウルゴスにとって有益であり、デミウルゴスの考え方はモモンガにとって有益であった。お互いの知恵を持って、悪魔的な面白さを追求したのである。
それが、ただの勘違いからできあがった策に留まるものではない。当然のことである。
交配実験の中には、モモンガの提案によって近親相姦による遺伝性実験も含まれた。
これは、この世界の人間が信じられないほど弱かったためだった。性奴隷といっても、それは偉大なモモンガの性奴隷なのである。論ずるまでもなく、その位に就くためには最低限、存在としての器が要求される。
下賤な人間なればこそ、人間の内では最も優れている程度が求められるのは、当然だった。
もちろん、近親相姦は劣性遺伝となる可能性が高まるため、人間たちの中では禁忌とされるが、一方で低い確率ながら優性遺伝となる可能性を確かに秘めているとされる背徳の性交である。つまり、この優性個体だけを選定し続け、容姿と肉体をよりモモンガの好みのものに改造し、ナザリックの家畜として相応しいだけの洗脳を施すのである。
――すべてはモモンガのために!!
この日の話し合いは、モモンガとデミウルゴスの二名で行われ、二人の狂気に満ちた議論は一昼夜にもわたった。のちに、デミウルゴスはごく親しい者との酒の席でのみ、この日こそ守護者の私が、モモンガ様に対して真の働きをしうるきっかけとなったのだ、と自慢気に語ったとされる。
――近い未来より、デミウルゴスの人間牧場は無数の成功をあげていく。
この時点での例を挙げるならば、カルネ村の生き残りであるエンリとそのの妹であるネムは、近親相姦実験のよいサンプルとなった。下等な人間の身でありながら、早くからモモンガの眼鏡に適っていたためである。
エンリとネムはサキュバスの性魔法によって仮の生殖器が与えられ、お互い毎日性交しあい、優性遺伝子の研究に大いに貢献することになる。
ぽっこりとお腹を膨らませたエンリとネムの姿は人間牧場では日常的なものとなっていった。
生まれた子供はすべて可愛いらしくも性的容姿に優れた女であり、モモンガに対する狂気的な忠誠心と愛情を備え、性奴隷としてよく仕えることになる。
「「モモンガ様のために私たちはこの身体、この命、すべて、すべてを捧げます」」
焦点を失い暗く濁った姉妹の瞳にうつるのは、モモンガただ一人。
今、彼女達の精神は幸せの絶頂にある。普通の人生では到底到達できないような幸福の極みにある。
エンリとネムは思った。
もっともっと、もっともっと、モモンガ様にお仕えしなくちゃ、と。