※この作品はR-18です。

THA BEAST ROAD!! 〜ケモノミチ〜   作:アンダーグラウンド

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不定期更新です。


世界の魔法

 僕は運動が苦手だった。走ると必ず転ぶ、泳ぐと必ず溺れる。

 僕は勉強が苦手だった。なんで勉強をするのか、誰も教えてくれないから。

 僕は人と話すのが苦手だった。話そうとすると頭が真っ白になる。

 

 太陽の光がアスファルトに反射して、眩しくて先に進めない。

「行きたくない」

 学校に行きたくない。

 別に誰に否定されたわけでもない、むしろ擁護された。それがイコール否定だった。

 僕はフツーじゃない、まともじゃない。

 それとは別に──男友達といると、妙に窮屈だった。

 自分から階段を降りた。屋上の光より、光の当たらない場所が好きだった。

 父さんも母さんもお祖父ちゃんもお祖母ちゃんも叔父さんも叔父さんも従兄弟も遠い親戚も近所のおばさんお姉さんも、みんななんでそんなところに居て平気なのかな。

「動かないなー」

「動かないに決まってるだろ!!」

 なんでエクスも学校に行かないんだ。逆に返されるのが嫌で聞けなかった。

「もうほっといてよ!!」

 知らんフリを決め込んで、エクスは眠ってしまった。

 黙々とパーツを組み立てる僕。金属の重なる音と、エクスの寝息だけが倉庫に広がる。

 家にお金はいくらでもある。お小遣いも使い切れないくらいもらってる。企業の試作段階のロボットが家を徘徊している。お母さんが忙しいときは、有名なシェフを呼んでもらって、サプライズまでしてもらう。数台ある自家用ジェット機は、目的地に合わせて性能・装備・備品を整えている。長距離、短距離、寒冷地帯……。船やヘリなんかもそうやって僕を待っている。

 それとは別の幸せが足りない気がする。産まれた時にパーツを落っことしてしまったらしい。

 僕はおにぎりが好きだった。毎週のターキーよりも楽しみだった。お母さんが昼の弁当に必ず作ってくれる。玄米なのは僕の好みで、噛み応えがある食事が好きだった。全国の有名な玄米を一通り炊いて試食をした。その中から僕が選んだものだ。それだけはどんなに落ち込んでも喉が通った。足りないパーツはそれで十分補えている。だけど、外の眩しさに耐えることは出来ない。

 

 

「おっ、こいつ動くぞ」

「そりゃ、そうだよ」

 だって僕にはもう、魔法が使えるから。

 〈完成した〉と思ったら、僕の意思とは関係なく、勝手に動き出す。〈自分以外の誰か〉の言うことは聞くけど、僕の言うことには従わない。そうして機械の塊は生命を持つ。

「エクス、またどこかに連れて行ってくれる?」

「コウはキノコだもんな」

「そんなんじゃないよ」

 キノコと聞いて、〈もう一つの意味〉を否定する。──僕は女の子らしく生きたいな。

「菌を撒くだけじゃ、おまえ自身はどこにも行けないぞ」

「だから……連れて行ってよ。街中の車すら、僕のために歌ってくるんだから……」

「まるでお姫様だな」

「そうだよ、僕はお姫様だよ」

 嫌味が通じないことに、エクスは戸惑った表情をみせる。

「コウの考えてることの9割は、俺にはよくわかんねえ」

「言いたいけど……言いたくない──言ったら、きっと夢から覚めるから──」

「まだ秘密にしてることがあるなんて、オドロキだぜ。俺なんかもう、コウにチンコ洗わせてるのに」

「それはエクスがオープンすぎなんだよ──今どき、全裸で街中歩く獣人なんていないのに──」

「なにかコンプレックスとかあんのか? ホウケイとかチンコにあるホクロとか」

 アテが外れて、エクスは寝転ぶ。

 高度な魔術式で編まれた通気性抜群の薄い布地。エクスの股間の輪郭が浮かんで、僕の気持ちは昂ぶる。

「……連れてって」

「いいけどよ、どこがいい?」

「誰もいなくなった世界」

「はいはい」

 世界が暗転し、工場に漏れる陽光が一瞬で消え去る。エクスの足元に、月光を浴びた複雑な魔術式が展開される。

 エクスは羽ばたきをし、両前脚が地面から浮き上がる。エクスの黒い毛皮が月光に照らされ、ビロードのように艶めく。

 囲うように次々とエクスの周りに本が現れ、背表紙から倒れると同時にバラバラとめくれ出す。

 ──と、エクスの目の前にある本の動きが止まり、一枚の紙が躍り出る。その紙は宙をひらひら舞ったかと思うと、足元に別の世界が映し出される。空から真下を俯瞰する構図。足元は森ばかりが見えるが、遠くには街のようなものが見える。

「いつもの場所だけど、いいか?」

 レベルS級ともなると、〈世界に干渉〉するだけの規模の魔法が扱える。それは質量という意味でも、次元や法則という意味でも。

 もちろん、国家からそれなりの制約を受けることにはなるけどー。

《別世界への移動は、常に監視を付けます》

 幸せの青い鳥が現る。この鳥もレベルS級魔法使いによる、超高高度な魔術式の塊だ。

 やがて透明な床が消え、僕とエクスは空高くに放り出される。

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