かなり急いで書いているので文章が荒れていたらごめんなさい。
いつもの明るい浜辺の様子とは打って変わって、ミストヴィレッジは鉛色の空を映した海に小雪がちらついている。
今年もエオルゼアに星芒祭の季節が訪れ、各国の主要都市やハウジングエリアは賑やかに飾りつけられていて、浮き足立った雰囲気が間近に迫った年の瀬を感じさせていた。
勿論ミストヴィレッジの片隅にある小さなフリーカンパニーハウスでも、住人である彼女達は楽しそうにはしゃぎながらも家の庭や室内に星芒祭の飾りつけをするのに余念が無い。
「らんらんらーん♪らんらんらーん♪るんるんるーんるるーぅ♪」
「ちょっとバカ猫ー?いつまでも歌って踊ってないで、こっち手伝ってよー!」
粉雪が舞う家の庭先で小さな家の小さな庭をせわしなく歩き回り、タイタン灯籠やオーディン戦勝記念碑を撤去しつつかまくらや雪の積った地面などの庭具を配置して忙しそうに立ち働きながら、クルクルとミコッテダンスを踊り鼻歌を歌うミコにゃんに舌打ちしつつララちゃんは大きな声でミコにゃんを呼ぶと、ミコにゃんは不満げに頬を脹らませる。
「もぉー、バカ猫って言わないでよぉー!バカって言う方がバカなんだからにゃー!!」
「バカをバカって言って何が悪いのよ?それよりほら、ここにツリーを置くからそこの池を撤去してカンパニーチェストにでも入れといて!」
「やれやれ、仕方ないにゃー。」
トナカイの角のカチューシャを頭につけてトナカイの着ぐるみを着込み深い皺を寄せながら指示を出すララちゃんと、ドリームキャップを被りドリームチュニックにマンダヴィルボトムを合わせ赤く染色したファルコナーブーツを履いている、といった格好のミコにゃんは、お互いを睨み付けながらも息を合わせててきぱきと作業を進めていく。
「はいはーいっと、終わりっ!もぉー、アタシだって忙しいのにー。……あり?あそこちょっと位置がおかしくない?」
「あ、本当だ。直しとかないと。……全く、九割方歌って踊っていただけなのにどこが忙しいのよ?」
綺麗に飾りつけが終わった庭を眺めながら、二人は庭具の配置や見た目の確認をしつつ細かい調整をしながら口喧嘩を続ける。
その時不意に家の扉が開き、スターライトローブを身に付けトライコーンハットを頭に乗せたヒュラ子が顔を出した。
「二人ともー!家の中は飾り付けは終わったけど、そっちはどうなの?」
今にも掴み合いそうな勢いで口喧嘩をしているララちゃんとミコにゃんだが、むしろそんな事は日頃から無い方が珍しい程の日常的な光景なのでヒュラ子はさして気にも止めず二人に声をかけると、彼女らはシンクロするように笑顔でヒュラ子の方を向いた。
「あっ、ヒュラ子!ついさっき終わったとこだよー。」
「にゃはははーっ!どうよ?この、主にララちゃんが庭具を配置したおうちの庭はー!」
「って事は、ミコにゃんはほとんど作業していないのね。……そう言えばミコにゃん、さっき玉ちゃんが呼んでたわよ?」
「あにゃにゃ、マジで?ありがとうヒュラ子!こうしちゃいられないのにゃ。早くおうちに入らなきゃ!」
ヒュラ子の言葉に顔を輝かせ、ミコにゃんは物凄い速さでヒュラ子の横をすり抜けて家の中へと入っていく。その様子に驚きながら、ヒュラ子とララちゃんは慌ててミコにゃんを追いかけて家の中へと入っていった。
「えっ?ちょっと、ミコにゃん一体どうしたの!?」
「やれやれ。まーた玉ちゃんを使って変な事を企んでるんでしょ?」
半ば呆れつつ追いかけてくるヒュラ子とララちゃんを尻目に、ミコにゃんは星芒祭の装飾が施された部屋の中央に浮かんでいる、彼女達が玉ちゃんと呼んでいる球状のアラグのシステム端末を操作している。
その様子を、ヒュラ子とララちゃんは複雑な表情で互いに目配せをしながら入り口に立っていた。
「にゅふふふーん、アタシだって星芒祭をみんなで楽しもうと思って色々準備してたんだからねーっ!」
「……あんたがそういう事を企画するっていうだけで、物凄く嫌な予感しかしないんだけど?」
「にゃにおうっ!?失礼な!これでも毎日、寝る間も惜しんで一生懸命準備したのにゃー!」
胡散臭そうにミコにゃんを睨み付けるララちゃんに向かって胸を反らし、不敵な笑みを浮かべるミコにゃん。
しかしその言葉でヒュラ子は顔を曇らせ、険しい顔でミコにゃんに詰め寄っていった。
「ミコにゃん!また録に寝ていないの?!私達冒険者は体が資本なんだから、きちんと睡眠を取らないと体壊すわよ!」
「うにゃー……。で、でもでも!これはヒュラ子も絶対気に入るのにゃ。アタシの粋な演出に二人の距離が大接近するはずなのにゃー!」
醒めた眼差しで見つめているヒュラ子とララちゃんに、ミコにゃんは眉を八の字にして必死に訴えかける。……と、その時ふとアウラさんの姿が見えないのに気がついて、ミコにゃんは作業の手を止めて不思議そうに首をかしげた。
「んにゃ?ねーねーヒュラ子ー、アウラさんは?」
「ああ、アウラさんはウルダハで子供達にお話を聞かせた後でアダマン鉱を掘りに行くって言ってたわよ。その後ついでに釣りをするって言ってたから、しばらくは帰って来ないんじゃないかしら?」
「ええーっ!?せっかくみんなで楽しもうって準備してたのにー。最近アウラさん付き合い悪いのにゃー!」
そう言って頬を膨らませプリプリと怒るミコにゃんに苦笑しながらヒュラ子は最近のアウラさんの挙動を思い出すと、ハッとした顔で口に手を当てる。
「……そう言えばアウラさん最近好きな人が出来たみたいだから、もしかしたらギャザラーしに行くと見せかけて実はその人に逢いに行っているのかも。」
「ええっ!?ちょ、ヒュラ子それマジ?」
「ええ、多分。この前それとなく聞いてみたら物凄く狼狽えていたもの。」
真顔で言葉を続けるヒュラ子の表情を見てララちゃんとミコにゃんは顔を見合せると、ミコにゃんは大げさに落胆のエモートをしつつ涙ぐんだ。
「ぎにゃーーー!あ、アウラさんが男と逢ってるなんてぇー!……もぉー知らないのにゃ!アウラさんがその気なら、リア充は放っといてアタシ達だけで楽しんじゃうのにゃー!!」
唇を尖らせて頭から湯気が出そうなほどに顔を赤くしながらミコにゃんは玉ちゃんの操作を猛烈な速さで作業を再開すると、玉ちゃんの無機質な機械の声が聞こえ始める。
『ウィーン……『仮想現実プログラム』起動……管理者ヲ認証シマシタ ………インストールサレテイルデータヲ使用シテ『仮想現実プログラム』ヲ起動シマス …………インストールデータ 起動完了 モードヲ選択シテ下サイ………』
ヒュラ子とララちゃんが止める間もなく端末の操作を終えるとミコにゃんは玉ちゃんの表面をバシッと叩き入力したプログラムを起動する。
その途端に室内は隅々まで強い光に照らされて、その様子を変えていった。
しばらくしてまばゆい光が薄れ三人は眩んだ目を凝らして辺りを見回してみると、いつの間にか暖炉の火が赤々と燃えている大広間に立っていた。
豪奢な造りの室内の至るところに星芒祭の飾りつけが施され、部屋の真ん中にある大きなテーブルには豪華な料理が所狭しと置かれており、その様子にララちゃんとヒュラ子は目を見張ったまま言葉を失っていた。
「むふふふーん、どやっ!これを作るのけっこう大変だったんだからね?」
二人の反応に得意げな笑みを浮かべつつミコにゃんは腕を組んで目を輝かせる。
「はぁー……確かにこれは凄いわ。伊達に暇さえあれば玉ちゃんをいじっていないわね。」
「うんうん。ていうかこれ、どうやったの?」
「えへへへーっ、凄いでしょ。それより早くこっちにおいでよ!ちゃんとプレゼントも用意してあるし、お料理だって実際に食べられるんだから!!」
そう言ってミコにゃんが指差した先には色とりどりのオーナメントが飾られた大きなツリーがあり、その根元には鮮やかな色合いの包装紙に包まれたプレゼントの箱が置いてあった。
まるでおとぎ話の世界に迷い込んだような気分になる仮想世界に感心しきった顔の二人を見て気を良くしたミコにゃんは、はしゃぎながら彼女達に向かって手招きをする。
ヒュラ子とララちゃんがそろそろとテーブルに近いて席に着くと、いち早くテーブルに着いたミコにゃんは手当たり次第に料理を食べ始めていた。
「……うわぁ、この料理美味しいー!これ、仮想世界なんだよね?一体どうやったの?」
恐る恐る料理を口に運んだララちゃんが目を丸くしている横で、同じく料理を食べているヒュラ子も驚きつつララちゃんを見つめて頷いている。
「むぐむぐ……。んー?なんかよくわかんないけど、こんなの食べたいなーってゆう料理を入力して玉ちゃんに食材を渡したら作ってくれたのにゃ。」
料理をもりもりと平らげながら事も無げに言うミコにゃんにヒュラ子とララちゃんは食事の手を止め、ポカンとした顔でミコにゃんを見つめている。
「へぇー、けっこうお手軽なんだ。……でも時間が無い時とかにはいいかも!わたしも今度試してみたいなぁー。」
「じゃあ後でやり方教えたげるよ!……あ、そういえばトームストーンに入っているデータって意外にご飯のレシピがあるのにゃ。だから今度食材を集めて再現してみようと思うんだけど、ララちゃんも一緒にやる?」
「何それ面白そう!勿論やるよー!」
三人は賑やかに色々な会話をしながら美味しい料理に舌鼓を打ち、食卓の雰囲気は星芒祭に相応しい賑やかなものになっている。
そんな中、突然部屋の隅にある扉が静かに開くと、奥からふわふわした巻き髪のウイッグにメイドカチューシャを乗せ、メイドアタイアを纏った小さな魔法人形が数体テーブルの上に登る為の脚立を持ちながら現れて、空いた食器を器用に片付けつつ新しい料理を持ってくる。それと同時にオールバックの髪型のウイッグを頭に乗せバトラーアタイアを身に付けた魔法人形がシャンパンのボトルを重そうに抱えて歩いてくると、三人のグラスに甘い香りのする薄桃色のシャンパンを注いだ。
「きゃあああああーーー!かっっっわいいーーーーーー!!何よこの子達ーー!」
せわしなく皿を運ぶメイド姿の魔法人形を見てその格好と仕草の愛らしさに、ヒュラ子は満面の笑みで忙しそうに歩き回っている中の一体を思わず拾い上げ、胸に抱きしめて頬擦りをする。
拾い上げられた魔法人形は慌てた様子でじたばたともがきつつ申し訳なさそうにヒュラ子を見上げ、それに気付いたヒュラ子は自分の行動に赤面しつつ優しく魔法人形を床に下ろした。
「……あらら、ごめんなさいね。貴女達があまりにも可愛いものだから……。」
床に降りた魔法人形は服の皺を伸ばした後、スカートの裾を摘まむとヒュラ子に向かってペコリとお辞儀をしてからトコトコと帰っていく。
「…………っっ!……ミコにゃん、グッジョブ!!」
一生懸命に足を動かして帰っていく魔法人形を見送りながら、ヒュラ子は満足そうな笑顔でミコにゃんに向かってビシッと親指を立てた。
「にゅふふふー、気に入って頂けたようで何よりですにゃ。」
「凄いよミコにゃん、いつものバカ猫とは思えないほど上出来のサプライズパーティーだよ!」
「にゃははははー、ララちゃんにそこまで褒められるとさすがに照れちゃうにゃー。さあさあ二人とも、どんどん食べて飲んでにゃー!」
そう言いつつ自分でも絶えず飲み食いしているミコにゃんに盛んに勧められてヒュラ子とララちゃんは大いにご馳走を堪能したのであった。
続きは書き上げ次第アップします。
当日過ぎちゃったらごめんなさいです。