本当は束の間の逢瀬が書き終わるくらいのタイミングでバレンタインの番外編を出す予定だったんですが、話を延ばしてしまったのでこんな感じになってしまいました。
本編でエロパートを頑張る予定ですので、今回はキス止まりです。
純愛風に書こうと思い頑張ってはみたのですが、よこしまな私には無理のようです……。orz
魔科学研究所内でとある光の戦士達と帝国の軍団長が休戦する取り決めを密かに交わしてからしばらく経ったある日、魂を奪われた竜が本能のままに闊歩する荒涼とした浮き島を一人の男が歩いていた。
全身を隠すような甲冑は奇妙な色の空から射す日を受けて
時おり知性を奪われた竜が襲いかかってくるのを事も無げに斬り捨てながら、彼はまるでちょっとした散歩をしているかのように悠々と歩きつつ何かを探しているように辺りを見回していた。
しばらく歩いていると微かに鳥の羽ばたきのような音が聞こえ、彼はおもむろに空へと目を移す。するとその羽音が徐々に近付いてくるのと共に大きな黄色い鳥が魔大陸の島々の間を縫うように飛び、彼の居る方へ真っ直ぐにやってくる。
彼の頭上を大きな鳥の影が横切り、くるりと旋回すると、その鳥……風脈を渡って飛んできたチョコボが男から少し離れた場所に降り立つと、その背中からハートをモチーフにした緋色のエプロンドレスを着たアウラ族の女性が、フリルに縁取られたスカートの裾を
「あっ、レグラさん!お久しぶりです。……あの、待ちましたか?」
「いや、私も今来たところだ。……それにしてもわざわざ今日を指定して二人きりで逢いたいなどとは、何か特別な事でもあるのか?」
アウラさんはレグラに嬉しそうな顔で駆け寄ると、赤面してうつむきながらはにかむ。
その様子に彼は頭全体を覆う兜を装備した顔を彼女の方に向けて低い穏やかな声色で話しかけると、アウラさんは赤と黒の縞模様のニーソックスを履いている足をモジモジとくねらせて恥ずかしそうに視線を
「……あの…あの………。今日はヴァレンティオンデーと言う、命を賭けて純愛を貫いたイシュガルドの女性の故事にちなんだエオルゼアの祝祭の日なんです。……それでこの日には、男性に……女性が思いを込めて甘いお菓子を贈る習わしがあるものですから………。」
顔を真っ赤にして今にも消え入りそうな声で子細を話し、アウラさんは微かに震えつつ箱を差し出している。それを見てレグラは兜の内側でクスリと笑うと、小手をつけたままの手で彼女の熱くなっている頬に触れる。
「それで、私に贈り物を?……そういう事ならば、ありがたく頂こう。」
怯えるように身を固くした彼女の角に心地よく響くレグラの声と頬に添えられた手の感触を感じて、アウラさんは安心したようにほっと息をつき、花が綻ぶように微笑んだ。
「ああ、良かった……! 箱の中身は、ザッハトルテというチョコレートケーキなんです。お口に合うといいのですが……。」
アウラさんがそう言った刹那、何処かから敵視の線が飛ぶのと同時に、彼女の身の丈の倍はありそうな竜が唸りながら突進してくる。
しかし二人は顔色一つ変える事なく静かに武器を構えると、向かってきた竜をあっと言う間に地面に斬り伏せた。
「……やれやれ。せっかく久方ぶりの逢い引きだと言うのに、何とも不粋な奴だ。」
「ふぅー、ちょっとびっくりしました。………うん、ケーキは無事みたいです。良かったー!」
竜の死骸に顔を向け、呆れたように呟いてガンバスタードを背中に収めるレグラの横で、アウラさんもまた武器を収めて手にしている箱のリボンをほどき、中身の無事を確認してホッと胸を撫で下ろす。
「……でも、ここに居るとまた竜がやって来てしまいますよね。一体、どうしたら…………。あっ、そうだわ!」
その辺に居た竜に突如襲われるという事態にケーキの箱を見つめてしばらくの間考え込んでいた彼女は、突然何かを思いつき明るい表情で顔を上げると隣に立っているレグラの方を向いた。
「この近くにアラグの機械も竜も来ない場所があるので、そこに行きましょう。……ちょっと飛んで行かないといけませんが、きっとうちのチョコボちゃんに頼めば、二人で乗っても少しくらいなら頑張ってくれると思いますので。」
そう言って屈託のない笑顔を見せるとアウラさんはリボンをかけ直したケーキの箱をレグラに手渡し、荷物を探ってチョコボを呼び出す為の小さな笛を取り出すと大きく息を吸って高く澄んだ音色を響かせる。
辺りに笛の音が反響する最中アウラさんの側に突然黄色い羽が舞い上がり、その中から彼女の所有するチョコボが現れると、アウラさんは軽々とチョコボに着けてある鞍の上に登る。
彼女に続いてレグラが後ろに跨がるのを確認すると、アウラさんはチョコボの手綱を取って空へと羽ばたかせた。
チョコボが降り立ったのは、『デルタ送水局』と呼ばれる場所だった。
高い橋のような遺跡の上は崩れた壁や柱が並び石畳を割った樹木がまばらに生えている、荒れ果ててはいるが竜が放牧されているデルタ菅区が一望できる場所で、二人は寄り添いながら風景を眺めている。
彼らはしばらく無言で景色を見ていたが、レグラはアウラさんがある一点を見つめたまま悲しげな表情をしているのに気が付いて、気遣うように彼女の髪をそっと撫でた。
「どうした?浮かない顔をしているが……。」
そう言いつつレグラはアウラさんの視線を追って頭を巡らせると、その先には、幻竜ミドガルズオルムが携えて来た七つの卵から生まれた七大天竜のうちの一翼……闇竜ティアマットが捕らえられ拘束されている、通称『対偶の磔刑台』と呼ばれる場所があり、彼女はそこをじっと見つめている。
「……ごめんなさい。少し、彼女の事を思い出してしまって……。」
「彼女……?」
「……はい。……そこに囚われている、闇竜ティアマットの事を。」
彼の声と頭に感じる手の感触でアウラさんはハッと我に返り、レグラを上目遣いに見上げると浮かない顔のまま無理に笑顔を作り、再び視線を前に戻した。
「彼女は元々メラシディアで、光竜バハムートと彼との間に出来た子供達に囲まれて幸せに暮らしていたんです。それを、アラグ帝国が無残に踏みにじりました。……彼女の子供達と、夫を殺して。」
竜のような角や皮膚を持つアウラ族の彼女は、まるで当事者が語るように淡々とした口調で呟いている。
それを不思議そうに見つめているレグラに気付かない様子で、アウラさんは哀しそうに顔を曇らせて言葉を続ける。
「多くの子供達と愛する人を奪われて絶望に打ちひしがれていた彼女はアシエンの甘言に惑わされて、バハムートの……蛮神の召喚に手を染めてしまいます。そしてその結果、蛮神バハムートはアラグ帝国に捕らえられてその力を利用され、彼女と彼女の子供達は此処に囚われてしまいました。
…………でもわたしは、彼女の気持ちが少し分かるような気がします。……わたしも、もし貴方が居なくなってしまったら……と、思うと………。」
胸の辺りで指の関節が白くなる程に手を握り、アウラさんは悲しげに目を潤ませて睫毛を伏せる。それを見たレグラはアウラさんの肩に触れて抱き寄せると、兜に覆われた顔を彼女の角につけて体に回した両腕に力を込めた。
「……心配するな。私とて、そう簡単に死ぬつもりはない。」
「……ふふふ、分かっています。……第一、貴方は引き際を心得ていますもの。余程退っ引きならない事態に陥らない限り、命が危うくなる事はないと思いますよ?」
体が痛くなる程に抱き締められ、アウラさんはクスクスと笑ってレグラに体を預けるようにもたれかかりながら、潤んだ瞳で微笑むと両手を伸ばして苦笑している彼の兜を掴み、ゆっくりと上へ引き上げる。
少しずつ兜が持ち上がり、レグラの顎と口が見えたところでアウラさんは背伸びをすると、瞳を伏せて彼の唇に自分の唇を重ねた。
「……はぁ………。んっ……んんっ……!」
久方ぶりの口づけに我を忘れ、アウラさんはレグラの頭から兜を取り去ると小脇に抱え、空いている手を彼の腰に回して身体を密着させながら更に長く甘い口づけを交わし続ける。
口内で舌を絡めあい、二人は夢中で逢えない間の切なさを埋め合わせるように互いを貪り、ゆっくりとひび割れた石畳の上に体を重ね合わせた。
どうしてなのか分からないけれど、FF14のシナリオの恋愛話はけっこう暗めの話が多い気がします。
カップルが成立していてシナリオが終わってからも一緒に居る描写の話って、ヴァレンティオン以外は裁縫クエ(lv50、60)とか彫金(lv60)とかナイト(lv60)くらいしかパッと思いつかないです。
……ひとまず、貴族が使用人を食べてポイ捨てする話はダークファンタジーではないと思うんですがねぇ……。