※この作品はR-18です。

艦隊これくしょん【貴方】   作:呉のしいたけ

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瑞鶴と男提督のR18小説です。
各提督の瑞鶴のイメージと異なる可能性が大いにあるので、注意してお読みください。


【瑞鶴】貴方の隣にいるのは。

 

 

 

 

 

 ――深海棲艦との戦いはあと、どれくらい続くのだろうか。

 夕暮れの執務室。鎮守府の敷地を見渡せる窓の前に一人佇みながら、提督はそんなことを思った。

 彼はこの鎮守府にいる全ての者の命を預かっていると言っても過言ではない。

 まだ三十にも満たない青年の背には、あまりにも大きすぎる荷である。

 戦争の早期終結。それは誰もが望んでいることであり、なのにそれはあまりにも遠い。

 深海棲艦――彼等は謎に包まれた存在だ。

 どこから現れ、種類はどれだけいるのか、総数は何体なのか、何一つとして人類は明らかにできていない。……分かっているのは、対象存在である艦娘でなければまともに対抗できず、彼等が人に対して明確な〝敵意〟を抱いているということだけだ。

 深海棲艦を研究する者達の一説によれば、深海棲艦は沈んだ軍艦の怨念が具現化したものだという。

 自分達を造り、戦わせ、沈めさせた人間へのおぞましい殺意を、意思がある筈もない軍艦が怨念を持って生まれ変わる。

 間違っていないだろう。笑って見過ごすには心当たりがありすぎ、目の当たりにもした。

 人間を襲っている時の深海棲艦は楽しそうなのである。

 彼等は強くなればなるほどにヒトガタに近づき、感情と人語を理解するようになる。

 南方海域の奥深くで新たに確認された『戦艦レ級』などは無邪気に笑い続けていた。

 まるで世界の汚れを知らない子供のように。

 戦艦型艦娘の46cm三連装砲による砲撃が幾度となく当たっても尚、海の藻屑となるその瞬間まで声も高らかに、戦艦レ級は楽しそうに笑っていた。

 艦橋からモニター越しで戦闘を見ていた提督は、怪物の澄んだ瞳に見つめられているような気がした。

 遊びたかったのか、自分に手を伸ばしたレ級は、次の瞬間には頭部を瑞鶴に踏み潰された。

 近代化改修を限界まで施した脚部が頭を躊躇なく粉砕したのだ。

 穢らわしい、と瑞鶴が呟いた。

 提督さんは渡さない、と続いた。

 誰もが彼女の怒気に怯え、見ているだけで止めようとはせず、姉の翔鶴だけが慌てて止めに入った。

 ……あの時の瑞鶴の痛々しさは忘れない。

 何もかもを受け入れた自分が彼女をあそこまで狂わせてしまったのだ。

 帰投した瑞鶴はその夜、兎にも角にも提督を求めた。

 自分の物である証を刻む為に、鋭い爪で引っ掻いて、尖った歯で噛み付いてきた。

 平時では背を伸ばしている瑞鶴は、親しい人――提督と二人になると甘えん坊になるところがある。

 アレは断じて甘えではないが……

 いけないと分かっていても、拒絶するのは難しかった。

 他に誰もいないと瑞鶴の引き締まった表情はふにゃふにゃになって、けれど提督が文机で日記を書いている間は退屈だから「ふてくされるぞー」と筆を握っていない方の腕に抱きつく。

 あの平穏な一時を守りたい、と切に願う。

〝あと、どれくらいで終わる〟

 この戦争が始まって、かなりの年月が経過した。

 自分が鎮守府に着任してからも月日は風のように流れた。

 ずっと戦ってきた。ずっと戦わせてきた。もう何体の深海棲艦を沈ませたことだろう。

〝私はあと何回彼女達を戦わせればいいんだろう〟

 奇跡的に轟沈した艦娘はまだ一人もいない。

 これからも何としても維持していくつもりだが、深海棲艦の脅威が底知れない以上、何時かは出てしまう可能性が高い。

 そして、一人出せばもう止められない。

 轟沈する艦娘は後から後へと続出していくだろう。

 自分たちは奪われた海域を順調に奪還しているように見え、実は紙一重の状況なのだ。

 鎮痛の溜息を吐いた後、執務室の扉がノックもされず乱暴に開かれた。

 誰だろう、と振り向けば、全力疾走してきたのか息も荒い少女がそこにいた。

 やや緑かかった黒髪を左右に結った彼女は、思考に出てきた瑞鶴だった。

「瑞鶴……どうしたの」

 オレンジ色の太陽に照らされすぎた所為か、ぼんやりとした意識のまま提督は言った。

 瑞鶴の怒りでつり上がった眼差しに晒されても、ドカドカと床を踏み抜きそうな強さで近づかれても、意識は治らなかった。

「どうしたもこうもない! 提督さんが今にも自殺しそうな顔してたから走ってきたのよ!」

「そんな顔してたかな」

「してたわよ! ほら、こっち来て! 危ないから!」

 一刻も早く窓から遠ざけたかったらしい。

 提督は無理矢理ソファに座らされ、瑞鶴は勿論隣に座った。

 どこにも行かないよう右腕に左腕が巻かれる。

「何考えてたの、提督さん」

 自分の息が落ち着くと、瑞鶴は提督を問いただした。

「深海棲艦との戦いが、何時になったら終わるのかを考えていたよ」

「なんで」

「なんで、って言われても。提督の私がそれを考えるのはおかしいかな」

「おかしくないわ。むしろ普通よ」

「窓から外の景色を見ながら考えると集中できるんだ。ちょっと南方海域のことも思い出したり……ごめんね、不貞腐れないで瑞鶴。私も自分がそんな顔をしていたなんて思わなかった」

「鏡がなかったら、自分の顔は自分じゃ見えませんからねっ」

 まるっきり子供の返し方に提督は微かに頬を緩めた。

 内心、胸をなで下ろす。

 外から見た提督は本当に死にそうな顔をしていたのだ。

 この人が死んだらいったいどうなることか。想像するだけでも身の毛がよだつ。

「あんま無理しちゃ駄目だよ。提督さんはもっと自分を気遣わないと」

「ああ、そうだね」まだ気の抜けた、曖昧な返事だった。

「し、心配しなくても深海棲艦は私達が全部倒すから!」

 無駄に明るくいった。

「瑞鶴はもっと強くなるから!」

 意気込みに応えるように左手の薬指に嵌められた質素な指輪が光る。

 翔鶴に続いて〝ケッコンカッコカリ〟をした瑞鶴の実力上昇は、留まるところを知らない。

 沈めた鬼、姫クラスの深海棲艦は最早数えきれず、姫を凌駕しかねない戦艦レ級も〝慣れた〟など末恐ろしいことを言い、掠り傷すら負わず帰って来られるようになってきた。

「ああ、瑞鶴はこれから先も強くなる」

 瑞鶴は天賦の才の持ち主だ。建造直後から既に実力は一流を超えていた。

 教えられたことはパズルのピースを埋めるように無駄なく取り込む。

 艦隊に加われば一定以上の戦果を約束する。

 加賀は決して認めず、瑞鶴も自覚していないが、提督は純粋な戦闘力では〝瑞鶴が最強の空母型艦娘〟という認識である。

 ……しかし、男が女の子に「強くなるから」と言わせるのは、なんて情けない。

 瑞鶴は未来ある女の子なんだから――責務感に提督は意識を高める。

「でもね、貴女にあるのは戦いばかりじゃない。料理や裁縫、女の子らしいことをやってみていいんだよ」

 瑞鶴は途端に苦虫を噛み潰したような顔になる。

 鍛錬に没頭しすぎるあまり彼女は提督の言ったものが疎かになっていた。

 恐らく、さっきも鎮守府内を走り続けていただろう。汗のにおいがほんのりする。

 戦いと違って不得意なのもある。だが、通ったほうが絶対良い道だ。

「そろそろ瑞鶴もやってみよう? 瑞鶴は手先が器用な方だからきっと上手くなれるさ」 

「……失敗して迷惑かけたくない」

「みんな最初は上手くいかない。私もそうだったし、翔鶴も研鑽を積み重ねて上手くなっていったんだ」

 我がことのように誇らしく言った横顔に曇りはない。

 心臓を針で刺されたような痛みがした。

 翔鶴は瑞鶴の一番身近な存在。憧れの人。自慢の姉。提督を愛する艦娘の一人。

 綺麗で優しく何事も卒なくこなせれて――少し謙虚すぎる嫌いはあるが――誰から見ても理想的な女性。絵に描いたような完成度。

「……、っ」

 万人を平等に愛せられる人はどこにもいない。

 誰にしも好き嫌いはあり、多くの艦娘を受け入れた彼でさえも女性の好みはあった。

 皆の上に立つ提督が望む女性は、翔鶴のような隣で支えてくれる人なのだろう。

 だって、隣にいるだけで嬉しそうだもの。

 今は艦娘達によってローテーションを決められたが……それ以前。

 提督を補佐する重要な立場、主席秘書艦に任命されていたのは殆んど姉の翔鶴である。

 秘書艦は不祥事が発生しない限りは提督の隣にいるのが普通だ。

 必然的に危険な海域に出撃する回数は減り、安全な鎮守府にいる時間は多くなる。

 翔鶴はそれで、自分は戦いに関して提督から信頼されていないのかと気にすることもあったが、そんなことはない。瑞鶴にしてみればそんなのは贅沢な悩みだった。海域攻略の為の主力空母には必ず翔鶴が含まれていたのだ。

 提督は翔鶴に戦う艦娘、支える秘書艦、一人の女性、どれにおいても全幅の信頼と信用を寄せているように見える。

 瑞鶴が翔鶴に優っているのは精々戦うことだけ。

 家事は言うまでもなく、秘書艦としての仕事の効率も劣る。しかも仕事中にも甘えてしまう。

「提督さんは翔鶴姉が好きなの?」

 突然の質問だった。

 蕩蕩と翔鶴を語っていた提督の黒い瞳が小波のように揺れた。

 曲がりなりにも提督という立場にいる者だ。頭の回転は鎮守府の誰よりも速く、相手の感情や思考を読み取るのは彼自身が得とする特技だ。

 瑞鶴は遊び半分悪戯半分で訊いたのではない……瞬時に理解したからこそ、動揺してしまった。

「――好きだよ」

 すぐに消えたがこの距離で見逃すような瑞鶴ではない。

 戦場で、鍛錬で鍛えた観察眼には自信があった。

 あのレ級が何をしたくて手を伸ばしたのかだって、私にはすぐに検討がついた。 

「私も翔鶴姉は大好き」

 他の艦娘なら受け入れられない。

 だが、もしも翔鶴が選ばれたら喉が枯れるくらい祝福の言葉を言うつもりだ。

 翔鶴姉、おめでとう。よかったね。末永くお幸せに。

 提督さん、もし子供が出来たら呼んでよね。

 瑞鶴は離れた場所で涙を流しながら拍手をする。

 

 

〝後に残されるのは私一人だけ……〟

 

 

 選ばれるのは戦争が終わってだろう。

 どのような結果になったとしても鎮守府に残り続けることはできないだろう。

 正式に退役した艦娘の生活は国が保証している筈だ。豪遊をしない限りは一生安泰である。

 提督はどうするのだろうか。彼さえよければ、瑞鶴はずっと一緒にいたい。

 今更、他の男を探す気は微塵もない。

 提督を一生の人だと決めたのだから。一人になりたくない。

 瑞鶴に帰る場所はないのだ。

 どうすればいいのか見当もつかない。

「ねぇ、提督さん。私は提督さんの隣にずっといたい。だから、だからねっ……この戦争が終わっても離れたくないの」

 私は提督さんを渡したくない。

 『あの戦争』で、そして今も私を守り続けてくれる姉にさえだ。

 翔鶴姉に幸せになって欲しいって願っているはずなのに。

 ごめんなさい。でも。

 欲しい欲しい欲しいのよ、提督さん。欲しくて堪らないの、貴方が。

 ねえ気づいてる?

 翔鶴姉が隣にいると貴方は嬉しそうなんだよ。幸せそうなんだよ。

 翔鶴姉もすごく嬉しそうで、幸せそうに笑ってて、私が入れる場所はどこにもない。

 自分の恋心に気付いた瞬間から私はあのヒトに嫉妬し続けている。

 こんな自分は真っ白な鶴ではない。

 鴉だ。黒くずる賢くて身を弁えない女だ。

 

 

「私は誰か一人を選ぶつもりはないよ」

 

 

「――――え?」

 はっとなって提督を見る。

「どういう……意味?」

「そのままの通り。私は誰も選ばない」

 提督の言葉の意味がわからない。

 なんで、どうして。

「しょ、翔鶴姉が好きなんでしょ……!?」

 うんと頷き、「やっぱり瑞鶴にはバレてたか」と苦笑した。

 夕日が彼を強く照らし、眩しくて見ていられない。

 

 

「……いつだったんだろうね。翔鶴が好きになったのは」

 或いは、最初からだったのか。

 自分でも驚いた。

 全員を対等に扱いなさいと育てられた自分に、まだこんなにも人らしい感情が残されていたなんて。

 あの人達に教えられたことを守り、何をされても大海のような広い心でいようとしたのに。

 水を掬い上げられ、引き上げられてしまった。

 何時の間にか翔鶴を欲するようになってしまい、不効率なことで、不必要なことで頼るようになってしまった。

 愕然とし、頭を叩き割りたくなるような葛藤があった。

 教えなど最早どうでもよく、捨て去る覚悟もしたが、ここまで艦娘と親密になっておきながら一人を選ぶなど都合がよすぎる。

 艦娘の境遇を考えるなら、提督である自分は全員に等しく応えるべきなのだ。

 何があっても一人に恋をしてはならなかった。

「翔鶴だけを選んだりはしない――私は戦争が終結したら、この鎮守府の艦娘が幸せな人生を送れるよう尽力する」

 ……こう言うからには、翔鶴も受け入れたのだろう。

 だが瑞鶴は尋ねずにはいられなかった。

「翔鶴姉は、なんて言ったの?」

「私の想いを知った上で全部、受け入れてくれた。

 〝その願いは是非とも叶えるべきです〟……翔鶴は、そう言ってくれた」

 一番自分を見て、愛して欲しいと頑張っていた彼女が素晴らしい夢だと讃えてくれた。

 

 

『泣かないでください……私は貴方の隣にいられるだけでいいんです』

 

 

 翔鶴の愛情はその域にまで達していた。

 そこに至るまでに、どれほどの葛藤と覚悟が必要だったのか。

 このヒトはこんなにも愛してくれていたのに。

 だが、彼はどうしようもないまでに〝善人〟だった。

 それ以外の生き方を知らない人だった。

 滂沱と溢れ、頬を伝う涙の意味を理解しつつも、ただ謝り続けた。

 

 

 そして――

 世間一般が考える幸せとは違うだろうが、全員を幸せにすると決意した。

 世界を平和にし、自分に付き従ってくれた彼女等と生きる。

 どれだけ糾弾されようとも、結局は逃げているだけだと馬鹿にされても、もう迷わない。

「それでいいの……提督さんも翔鶴姉も」

「私は決めたんだ。後戻りはしない」

 提督は艦娘全員を選び、翔鶴は隣で支えることにした。

 個人としての彼は翔鶴を愛していても、提督としての彼は皆を幸せにしたい。

 提督と翔鶴の自分より他人を重んじる性格では、後者が選ばれるのが当然だったのだろう。

 自分のことしか考えていなかった己の心の醜さを瑞鶴は恥じた。

「馬鹿みたいだね私……」

「馬鹿じゃない。瑞鶴の方が当然なんだ。好きな人を独占したいと思うのは普通で、一人が全員を幸せにしたいと思う方がおかしい」

 提督の指が頬を撫で、瑞鶴は自分が泣いている事実に漸く気づけた。

「怒っていいんだよ。こんな傲慢で大馬鹿、力一杯殴ったって構わない」

 ああ、提督は馬鹿だ。

 彼は全部、自分が悪いと確信しているに違いない。

 皆に求められるがままに応えた自分の心の広さを、優柔不断と決めて責めているだろう。

 勝手に恋をした私達が勝手に色々決めて、提督が後戻りできないようにしてしまったのに。

 謝らないといけないのはこっちだ。

 瑞鶴は人間の女は勿論、女の形をした深海棲艦にも渡さないなんて言ってきている。

 見ていた提督をどんな気持ちにさせてしまったか。

 夕暮れの母港を見ていた提督に、あんな辛そうな顔をさせたのは誰か。

「提督さんは悪くない。だって――――だって」

 気づくと涙がボロボロ出てきた。喉がヒクついて声がうまく出せなくなる。

 なにが、幸運艦だ。

 なにが……幸運の空母だ。

 運命を変えられる艦娘などと、誰が烏滸がましくも言ったのか。

 私は結局また大切なヒトから。

「ご、めん……なさい……っ……わ、わたしがっ……わたしが、提督さんと翔鶴姉の幸せを……うばって……」

 くしゃりと頭を撫でられる。

 いつもより乱暴で、提督が怒っているのかと顔を見上げる。

 窘められても怒られたことなんて一度もないから怯えそうになる。

「――――」

 彼は微笑んでいた。

 微笑みの中に少し苦笑が混じったような、瑞鶴が大好きな優しい笑みだ。

 提督のこれに惚れて、これで少女は恋を夢見るようになった。

「私はね、瑞鶴。貴女に求められて辛いとか苦しいとか、翔鶴との幸せを奪われたとか、そんな風に感じたことは一度だってない。

 私は、どうしたら貴女達が楽しく生きてくれるかばかりを考えてる。加賀は無表情だから何をしたら笑ってくれるのか、意外と貪欲な榛名は何をしたら満足してくれるのか、謙虚な翔鶴はどうしたら自分を出してくれるのか、甘えん坊な瑞鶴はどう構ってあげたらいいのか――他にもたくさん言いたいけど、つまり皆が好きだ。みんながね、本当に大好きなんだ」

 提督の艦娘になってから。

 初めて、瑞鶴は本当の彼の姿を見られた気がした。

「私の語る未来は、皆の想いを切り捨てないと実現しない。最低だよ。だから……怖くて言えなかった」

 嫌われるんじゃないかと怯えて引き伸ばして、逃げていた。

「でも、いい加減言ってハッキリさせないと」

 提督がウジウジしていては皆が不安になる。

 受け入れられるなら感謝する、拒絶されるなら分かってくれるまで説得する。

 どちらにしたって、一つの区切りはつかせる時期だ。

 無為に時間を経たせるよりかは余程いい。

「準備だけは色々していたんだ。あともう一歩のところまで来てる。

 戦争が終わってもこの鎮守府は手放さない。ここは家にさせてもらう。そして、貴女達が普通の少女になるか、艦娘のままでいるかは自由だ。私はどちらでもいい」

 言われることは大きすぎてよくわからない。

 だが、間違いなく夢のような未来を言われていた。

 どこまでも本気で彼は明るい将来を語り、必ずや実現してみせるだろう。

 どこにも保証はなく、どこにも根拠はないのに、瑞鶴は信じられた。

 独占したがっていた心は嘘のようにちっとも痛まない。

 長く出てきていた霧が晴れたように清々しい。

「聞いておこうか。瑞鶴は反対? 賛成?」

「賛成よ。けど……正直、提督さんが欲しいって気持ちは変えられない」

 そう言いながら、瑞鶴は提督から離れて立った。

 三歩ほど前に歩き振り返る。

「私も変わらない」

 断固とした意思。

 そう――死ぬような目に遭わされてもこの人は誰にも変えられない。

 唯一変えられる筈だった姉は追従することを選んだ。

 勿体無い? だが、迷わず選べるような人だからこそ、提督は翔鶴に心を許したのだろう。 

 何を言っても無駄なら瑞鶴は先のことについて考える。

 よりよいポジションを得るために迫ってやるのだ。

「艦娘は多分、これからもっともっと増えていくわよ」

「その件に関しては、世界からも新しい艦娘がどんどん来るらしい」

「……提督さんのこと好きになる子も、きっといるわね」

「これ以上増えるのは……むぅ、頑張ろうか」

 なんて酷い話だ。

「私と提督さんが二人きりでいられる時間は少ないのにッ」

「そればっかりは私にはどうしようもない。時間と日付は貴女達が決めたことだからね。私が弄ったら、きっと翔鶴優先になってしまう」

「なんか開き直ってない!? 翔鶴姉優先って、どういうことよ!」

 瑞鶴もさっきまでしおらしかったのに、とからかわれた。 

「仕方ないじゃないか。私は翔鶴を愛してしまったんだ。翔鶴について嘘は言わないよ?」

「真顔で言うな! も、もうっ。提督さんがこんないい加減な性格だったなんて!」

「え、知らなかったのか?」

 驚かれた。

「艦娘に手を出した……いや、出されたというべきかな。どちらにせよ、結構な数の子と関係を結んだ男だよ。そんな輩が真面な性格をしている訳ないじゃないか」

 現代が一夫多妻制じゃないことぐらい、箱入りだった提督も学んでいる。

 当たり前だった時代に生きた王様や殿様でもあるまいし、何も感じずにはいられない。

「だからこんな私を――僕を好きになってくれてありがとう」

 そう言って、少年のように屈託なく笑う。

 瑞鶴は呆れて、最後には釣られて笑ってしまった。

「ふふっ。で、皆には何時言うの?」

「善は急げと言うし、今すぐにでも言いたい」

 と。そこで区切り、問うような視線を送った。

 含められた意味を瞬時に察した瑞鶴は息を呑む。

 彼女は、我慢強い方ではあまりない。

 今回は大きな〝ご褒美〟があってもいいぐらいの事をした。

 皆に言えば、まず確実に提督の時間はパーティーやらなんやらに奪われるだろう。

 提督の鶴の一声でも彼女達を完全に食い止められるとは考えにくい。

 だ、だいたい、今日は瑞鶴の日なのだ。

 気遣ってやめようとしていたが、あっちがいいって言ってくるならいいじゃないか。

「し……したいです」

 強気はどこへやら。

 蚊がなくような返事だった。

 

 

 

 

 

 提督の部屋には内製の広い檜風呂が設けられている。

 艦娘に頼まれて大きくしたのではない。

 意外にもお風呂好きな提督を思い遣り、妖精の職人が改築したのだ。

 一日の疲れを癒すのにお風呂ほど適した場所はない。

 艦娘の傷を修復する為の手段が一般的に入渠ドック――浴槽に浸かるというのは密かに提督を感動させていた。どんな成分が含まれているのかは機密事項ではあるものの、副作用は特に見られず、それならベッドの上に縛り付けられているよりかは遥かにマシであろう。

 余談だが――妖精が気を利かしたのか、提督の浴室の湯にも回復作用がある。

 礼を言えば妖精達は器用にウインクをしながら、こう返した。

『艦娘にとっても、私達にとっても、貴方は特別なヒトです』

『将来もしも――艦娘を選んでくれるなら、長生きしてもらわないと困る』

『悪い話ではないでしょう?』

 悪戯好きの〝妖精〟と呼ばれるだけはあり、実に様になっていた。

 彼等は最初から予期していたのだろうか。

『どうか、艦娘と支え合って生きてください』

 

 

 

 

 

 

 

 

「は、ひぁ……や……あぅぅ……」

 提督と木造の浴槽に入って数十分が経っただろうか。

 瑞鶴はもうずっと彼に後ろから、躰の至る箇所を愛撫され続けていた。

 どうしてお風呂でこうなったのか。躰を洗い合ったところまではよかったのに、提督が触ってきたからだ。てっきりいつものように寝室ですると思っていた。

 だから懐疑の視線を向けたのだが、何度もイカされて心身共に蕩かされている。

 洗う時に解いた髪を「ツインテールが似合う」と何故かまた結び直したのは、この為だったらしい。

「あ……あ……っん」

 瑞鶴の目の焦点はうつらうつらと合っていない。小ぶりな乳房の蕾はぷっくり膨らみ、口は唾液を垂れ流し状態だ。女性器からは愛液が絶えず漏れ、湯に溶け込み、少女の性の匂いが浴室に蔓延している。

 何時でも逸物を受け入れる準備はできていた。

 一度は耐えた。次に二度、三度と達した瑞鶴はその都度に期待した目を提督に向けた。

 なのに、頭をなでられるだけで一向に入れられる様子はない。

「も……うやらぁ……提督さん……はやく、私のなかにいれてよ……」

 そう媚びて怒張にお尻を押し付けたり、手で摩ったりするのに彼は、まだ駄目とキスをして瑞鶴を静かにさせる。

「あむ……んちゅ、んん、ちゅる、れる」

 舌を絡めるだけの刺激ではもう足りない。

 しかもキスをしている間は胸や秘所にやられる愛撫が弱くなって、瑞鶴の方から求めるようにさせられる。

 自慰のようで、手を重ねると自分が求めている力加減で触られたり潰されたりされて、それが自分でやるよりずっと気持ちよくて、肉棒の挿入を我慢させられてしまう。

「ひうぁ……ああ……いれ、てよぉ……」

 そこまで欲しいなら自分で入れればいいのだが、何故か瑞鶴はできないでいた。

 自分の力なら好き放題に求められるのに、逆に好き放題に刺激を与えられ続けている。

「んんぅ、ぷあ……はふぁ……ていとくさん」

 名前を呼ぶと、これ以上ないくらい優しい声色で「なに?」と返される。

 すっかり魅了されている瑞鶴は烈しく迫られない。

「きす……キス、して……ちゅ、ちゅ、ん、はむ……んむ……はぁ、ちゅぅ」

 こんな、溶けてしまいそうなやり取りを何回も繰り返している。

 敏感なところをまさぐられてイカされる。

 中に入れて、と言ってもキス。

 唇が離れたら瑞鶴が甘えて、またすぐに性感が高められる。

 噛み締めていた歯は緩々になり、視界はおぼろけ。提督しか見えない。

 ううん、それでもいい。今は提督さんしかいなくていい。

「あ、はぁ、はうぅ……提督さん……私、またぁ……」

 あそこの中に入った指が膣壁をなぞり、ぐちゅぐちゅと出し入れされる。愛液が掻き出される。

 皮が剥がされたクリトリスを摘まれ、全身がビクンと震えたら、乳首を少し強く捻られた。

「んく、ふぅぅぅぅ……!」

 また一人だけイカされた。手淫だけでまた達した。

 恥ずかしい、なんて感じる心はとっくに溶かされてなくしてしまった。

 度合いは寂しさが占めている。

 呼吸のペースが戻れば、まだダメ? と色がついた瞳で問いかける。

「したい?」

 やっと違う返し方をされた。

 瑞鶴の躰が反応し、下腹部が熱をもって疼きだす。

「さっきから……そう言ってるじゃない、バカぁ」

「濡らさずに入れると痛いよ」

「もう大丈夫だから……ッ」

 提督の両腕の中で身じろぎする瑞鶴は間に挟まっている肉棒を握った。

 この硬く熱く長い男性器があそこに入ったら、どれだけ気持ちよくなれるかを瑞鶴は知ってしまった。

 初夜も一度ではまったく足りず、淫らに提督を誘って犯してもらった。

「……提督さんだってこんなに大きくしてるじゃない」

「瑞鶴が可愛い反応してくれるからね」

「うぅ、入れたくないの?」

「なんだろうね。今日は、瑞鶴をずっと苛めたい気分なんだ」

 苛めたいと言われて背中を走った被虐的快感に心がゾクゾクした。

 普段の提督なら口が裂けても言わない言葉。

 セックスの時だって記憶の中では数えられる程度しかない。

「そんなに欲しい?」

「……ほしい」

「なにが? 言ってみて」

「そ……んなの、言えるわけないでしょッ」

 何を言って欲しいのか悟った瑞鶴は湯だった顔を左右に振る。

 自分が片手で握っているモノの名前は例えそういう印象がなかったとしても、公然で言えるようなものではない。まず響きがいやだ。提督と二人きりでも言いたくない。

 でも、でも……言わなきゃ提督さんは、きっと入れてくれない。

 またさっきのループに戻らされて、今度は自分が気絶するまで終わらないだろう。

 こっちも意地を張って耐えてみる……? 提督さんが我慢できなくなるまで?

 ああ、無理だ。そんなの絶対無理に決まってる。

 翔鶴姉でもないし、この人に我慢勝負で自分が勝てるはずもない。

 瑞鶴は己の性格を理解している。加賀や翔鶴のように頼れる人とされる自分も、好きな人の前でははしゃいで尻尾を振る子犬に成り下がるしかない。言われた通りに動くことを喜びとする忠犬だ。

「いじわるっ、ばかっ、提督さんのばかぁ」

 こんなにされても……嫌じゃないと感じる自分が憎たらしい。

「……ほんとに、言わなきゃだめ?」

「あと三、四回我慢できる?」

 芯まで柔らかくなった乳房が揉まれる。

 溶かされた羞恥心を焼かれているような気分だ。

「言ったら、……入れてくれるんだよね?」

 躰を反転させた瑞鶴は上ずった声でゆっくり確認した。

 伸ばせば伸ばすほど恥ずかしさが増し、言った瞬間に得られる開放感は得難いものになるから。

 瑞鶴の額に張り付いた髪を払い、提督は微笑んだ。

「うぅぅ~っ。提督さんの……お、お○ん○んを瑞鶴にください!」

 恥ずかしさのあまり。また早く言ってしまおうとした為に声が大きくなった。

 けれど、これで間を置かず怒張が来る……筈だった。

「ふぇ……?」

 期待していたものが来ないことに瑞鶴は泣きそうな顔になった。

 ずっと苛めたいと提督は、そう言ったじゃないか。

「っ、んんぅ」

 秘所に指が三本も侵入してきた。バラバラに動かされる。どれもこれもキモチイイ。

 欲しいのはこれじゃないのに意地悪をされるのが愉しかった。

「あ、ぁ、ッ、ン、ふ」

 反抗するより懇願して自分が何を口走るか怖くなり、しがみついて口を閉ざそうとする。

 謝ろうともしない提督に瑞鶴は屈服しかかっていた。

 肩に噛み付いても子犬の甘噛み程度の力しか入らなかった。

 残された理性の欠片がなくなっていく。

 

 

 そうして……お預けが終わったのは四度達してから。

「頑張ったね。偉いよ、瑞鶴」

「提……督さぁん……」

 意識を失わず頑張って耐えてみせた少女を持ち上げ、今度こそ中に挿入する。

「――くんんんんぅっ!!」

 蜜壷を一気に刺し貫かれて、そのままかなりの強さで全身を上下に動かされる。

 脱力していた瑞鶴はいきなりの衝撃に驚愕しつつ、やっとのコトにすぐさま感激した。

 背筋を反り上げ、動かない躰に鞭を打って無理矢理動かす。

 湯面がバシャバシャと波立ち、浴室に瑞鶴の高く伸びた嬌声が響き渡る。

「やっと……入って。これ、ほしくかっ……あ、ふぁぁん。あ、あぁ、あ……ぁふっ……すごいよぉ……」

 ねだった表情で呟き、精液を早く欲しいと膣はうねった。

 瑞鶴の弱り切った様子とは裏腹に膣はキツく肉棒を締めあげる。慣れていない者なら痛みを感じかねない程で、食い千切られるのではないかと焦るだろう。

「い……いぃっ……はぁっ、っ! んぁ、はぁんっ」

 膣壁が肉棒にみっちり張り付いた状態で擦られ、僅かに開いた子宮口に亀頭を吸い付かれる感触は凄まじい快感であった。

 慣れたというよりは、耐性を身につけた提督でも気を抜いてしまうと射精してしまいそうだ。

「んっ、んっ、んっ! おっきいぃ。こし、動いちゃうッ」

 自分だけ涙が出るまでやられ続け、恥ずかしいことまで言わされた瑞鶴は最初の一突きで絶頂していたが、彼女は止まらず動きについていこうと躍起になる。

「ね……提督さんも気持ちいい?」

 至近距離で見つめてくる。

 唾液に濡れ光る唇に触れた。

「んぅ、ぁ、っふ……んっ、ちゅ、はぁ、ン……あはっ。好きなだけ……お○ん○んで瑞鶴を突いていいんだからね。提督さんなら何されてもいい……!」

 その言葉は卑怯で、まだ一度も射精をしていない提督は堪えるのを忘れてしまう。

 精液が肉棒の下まで昇ってきた。瑞鶴の細い腰を掴む。

 両手は下へ降ろし、腰は突き上げ、破裂しそうな怒張が膣奥を力一杯叩いた。

「ひあッ、んんぁ、ああぁぁぁ!」

 白濁液を受けた瑞鶴が止まる。

 第一射はさすがの濃度と量だ。瞬く間に中が満たされ、瑞鶴も愛液を噴出し、二人の液が混ざって膣口から溢れ出した。

 これが欲しかった、と噛み締めて目を瞑っていた瑞鶴は、

〝あ……また、お○ん○んって言っちゃった。……いいっか。きもちよかったし。提督さんが喜んでくれるんだから〟

 色々どうでもよくなりつつある。

 抱きしめ合っていると膣が一射目の精液を絞り尽くした。

「まだ、お風呂でする?」

「布団でしたいなら運ぶよ」

「……ううん、まだいい」

 瑞鶴は一度肉棒を抜くと、浴槽の壁に手をついた。

 丸いお尻が提督に向けられる。淫裂は震え、濁った液体が湯船にポタポタとこぼれ落ちていく。

 電気は消されていない。目の前のいやらしい光景に提督の一物が跳ねた。

「ここで続きしよ……来て、提督さん」

 緩やかに臀部を振り、艶やかに濡れた瞳が期待するように向けられた。

 膣口にまた肉棒が当てられると瑞鶴は前を向いて待った。

 にゅぷっと再び中に挿入され、奥まで到達した感覚にうっとりとした吐息をする。

「んくっ……あ……うご……いて」

 絡みつく膣壁を無視して肉棒が半分まで引かれ、勢いよく突かれる。

 後ろからは男が最も動きやすい体勢だ。単純に得られる快感も激しさも他の体位を上回る。

「あふっ、は、ひぁ! は、げしいぃ……!」

 今度も最初から飛ばしていたが瑞鶴はあまり動けていない。そうするだけの余裕がないのもあるが、彼に好きなように犯してもらいたかった。 

 突き込みには体重が乗せられ、大胆かつリズミカルに熱い肉棒が中を何度も抉る。

 嬌声の大きさは対面座位より何割か増し、気持ちよすぎて全身の力が抜けそうになる。

 両手に力を込めなかったら倒れてしまいそうだ。

「ふぁっ、今胸を弄っちゃうのは……ああ、ああッ! だ、だめぇ!」

 提督の両手が乳房を無茶苦茶にこねくり回す。

 淫らな声で否定の言葉をいくら述べても、それはもっとやって欲しいと強請っているようなもので。

 事実、自分の小ぶりな胸が弄ばれるのを見た瑞鶴は更に興奮し、下腹部に力を込めてしまう。

 膣内の締まりと吸い付きがよくなり、提督は苦しげな声を上げるも、瑞鶴の心地いい嬌声をもっと引き出そうと抽迭に集中する。痒いような射精感はすぐそこまで来ているが、これなら耐えられないというものでもない。

「あぁー! あうぅぅ、あッ! イイよぉ! 提督さん、も、もっと乱暴にして……!」

 後ろからされるのは好きだ。この体勢だと提督が犬みたいに責めてくれていい。

 胸とか臀部を鷲掴まれ、自分のことしか考えていないような出し抜きをされる。

 それなのに、こちらを気持ちよくしたいって気持ちも伝わってきて、すごく幸せだった。

 瑞鶴は与えられる刺激を抵抗せず受け入れ、ただ彼がしやすいように臀部を突き出す。

 普段は気の強い少女の痴態を晒していた。

 そんな彼女に己の肥大化した一物が押し入り、思う存分蹂躙し、出てくる様は淫靡に過ぎる。

 自分が一突きする度に彼女は可愛らしく喘ぎ、舌端を震わせる。

 服従の姿勢は男の征服欲と独占欲を滾らせ、試しに口元まで指を寄せてみた。

「あ……んちゅ、ちゅ、んむっ、んんっ」

 何の疑問も抱かずこうするのが正しいと指を咥えてしゃぶる。

 肉棒を挿入されながら舐めるのは苦しい筈だろうに離そうとしない。

 提督が引き抜かない限りは犬のように食いついたままだろう。

「ちゅう、ん! んくぅ! は、んぁぁ……!」

 呼吸が苦しくなる前に抜いてやる。

 なんとか引き伸ばしていた射精感もそろそろ限界だ。

 腰を掴み直してペースを上げると察したのか、瑞鶴は喉から歓喜に震える声を漏らす。

「くぅ……出るの……?」

 膣壁が擦り寄ってきた。

「ん……あぁっ! な、中に出して……おねがい……!」

 言われなくともそうするつもりだった。

 射精が来ると分かった膣内が狭まり、股間と臀部がぶつかり合う音が高らかに鳴る。

 亀頭まで来ていた精液が出る瞬間まで全力で腰を動かし、

「あ、くる、くる。私も提督さんも……あ、ああ、ぁぁぁぁああ!」

 瑞鶴は中に熱いものを感じたとほぼ同じタイミングで達した。

 喜び勇んで跳ねようとする肢体は押さえつけられる。

 そして、提督はまだまだ足りないとばかりに射精したまま動く。

 達したばかりの敏感な膣に強い快感が絶えず襲い、数瞬の間で絶頂してしまいそうになる。

「ちょ、ま、まって……!? わたしイってぇ……! ひぁぁぁ!」 

 顔を向けて懇願しても止まってくれない。

 熱い精液を出しながら力強く突かれまくる。

 今までに経験のしたことのない犯され方だった。

「やぁぁッ! あー! あー! はぁんッ。イ、イってるのッ、イってるからぁ!」 

 こんなのは知らない。

 叩きつけられる刺激が強すぎておかしくなってしまいそう。

 限界を迎えた躰が折れそうになった。女子らしく伸びた爪が壁を引っ掻く。

 今度は鏡が嵌められた壁、そこに背中を押される。両手をつかされた。

 支えるように密着されて下からゴツンと子宮を突き上げられる。

「あぁ! あついのが、またでて……!?」

 弱まった射精が勢いを取り戻す。

 抽迭は弱まらず、射精をしながらも常に一定のペースが維持されていた。

「出し、ながら……うごくのやめてぇ! はひ、あッ、ふぁ! ……ぁん!」

 漏らしたようになるまで精液を放出しても提督は止まろうとしない。

 瑞鶴に休める暇を与えず、雄が牝を屈服させたいのと同様に徹底的に犯すつもりなのだ。

 鏡に映った自分は真っ赤。半開きの口からは嬌声を高らかに上げている。

 パチュン、パチュンという抽迭の音は消されかけていた。

「お……おかしく、おかしくなっちゃうっ。てーとくさん、ずいかくおかしくなっちゃうよぉ……!」

 舌っ足らずに状態を伝える。

 躰は堕ちてしまいガクガク足が震える。

 残された心は快楽一色に染まりかけており、瑞鶴は自分で自分に止めを刺すように訴える。

「あ、んッ……きもちい……てーとくさんのお○ん○ん、きもちいぃ!」

 おかしくなりたい。全部提督に任したい。好きに自分を犯してほしい。

 今だけは私に夢中になって。

「すき、すきっ、すき! てーとくさんだいすきぃ!」

 快楽のあまり意識が離れそうなのに、強烈な快楽ですぐに引き戻される。

 泣き笑いのまま瑞鶴は絶頂を繰り返す。

 限界はとっくに超えている。足は変に笑いっぱなしだ。

「またきちゃう、っやあぁ……! もうらめ、イク、イクイクぅ! イっちゃうっ!」

 膣壁が肉棒を奥へと吸引した。

 続けて中で射精しようと思ったところで、

「そとに……外でだして……! てーとくさんの、瑞鶴に思いっきりかけて!」

 自分の精液で汚れる瑞鶴が瞬時にイメージされた。

 意図せず細い腰を掴む指が柔肌に食い込み、肉棒の硬度が増した。

 瑞鶴のお願いに賛成だと、ここ一番に激しく腰を使う。

 中に溜まった二人の液体が雁首に掻き出される。

「あはっ! ……いい! イくぅ……んぁぁッ! あ、あっー! やぁん! く、ふぅぅぅぅ!」

 達したのを確認すると肉棒を引き抜き、瑞鶴の背中に向けて放出する。

 肩甲骨まで伸び、だんだんと下りながら臀部にいく。

 付着した子種はやがて筋となり湯面に流れ落ちていった。

 蜜を垂らす淫裂が中に出されなかった為、不服そうに痙攣している。

「あ、れ……もう……終わり……?」

 漂う精液を眺めていた瑞鶴が惚けながらも振り返った。

 飼い主に捨てられた子犬のような弱々しさで〝待って〟と訴える。

 まだまだ、シていたいらしい。

 ひとまず上がったら続きをしようと言い、一人で歩けそうにない彼女をシャワーの前まで運ぶ。

 寝室で再開するから結局は汚れるだろうが、軽くさっと流し手早く拭く。

 折角かけられたのに綺麗にされるのが不服なのか、瑞鶴は口を可愛らしくも尖らせていた。

 布団に移動して寝かせば、待ち望んでいるだろう言葉を掛けた。

 瑞鶴が望むだけ続ける。

 やめて、止めてと言葉で拒絶しても、躰が求めてくる限りはずっと犯し続ける。

 何度でも何度でも、正気でいられなくて、何回射精されたかも覚えていられないぐらいに。

 盛った雄犬と発情している雌犬の交尾でも及ばないような交わり。

 ソレを貴女だけじゃなく自分も望んでしまっている。

「優しくはしてあげられないだろうから、止めるなら今のうちだよ」

 絶好の獲物を見定めた猟犬の如き細目で云った。

 一言一言が瑞鶴の頭を痺れさせる。

 危ないものに手を出す瞬間の危機感とはこういう感じなのか。

 いけないと理解しているのに戻れない。

 でも、違うのは飲み込んでも問題なくて……屹立したアレを見る。

 瞬間――滾る愛情と肉欲に身体がかたかた震える。

 その様子に提督は起きて間を開けた。瑞鶴が拒絶したからではなく、準備の妨げにならないように。黒髪の少女の息はそれこそ獣のように荒く、少しの沈黙の後、また後ろ向きで手を付く。

 下から腕を伸ばす。腰の奥から新しく溢れだした蜜を見せようと花弁を開いた。

 もはや言い逃れのしようがない服従の証。身体のみならず心まで堕ちている。

 加虐的な口調は強気な少女の理性を微になるまで砕き、恍惚とした表情で誘うまでに堕落させていた。

 清らかな愛情の中に狂おしいまでの情欲が混在して、壁に押し付けられ散々に犯されたにも関わらず、心身をくすぶる情欲の炎がこの時に灯されたような感動すら覚えた。

「いまの提督さん、すっごくいいなぁ……声と顔は変わらないのに。優しいままなのに獣みたいな目になってて……私を犯したいって気持ちが伝わって来るの」

 とことん媚びるように言う。

 

 

 瑞鶴を壊れるくらい犯して――?

 

 

 これまでになく艶やかに微笑っている瑞鶴に笑い返し、提督は臀部を握るように掴んだ。

 同意を得たなら遠慮する必要はない。

 こちらの好きなようにやらせてもらおう。

 躊躇う素振りもなく膣内に、血管が浮き上がっている赤黒いモノを挿入する。

「あっ――ははぁ……‼ きた、提督さんのおっきいいの! さっきよりすごいッ!」

 相手への気遣いを一切感じさせない最も雄らしい叩き入れだった。

 始まるのは凌辱にも近い〝交尾〟。

 最初はじっくりと遊ぶように、だがそれも束の間、抽迭の打音と攪拌の水音がズチュズチュと響くようになった。二人の異常なまでの昂りを体現していた。

「はあぁん……! こんな、んっ! ひゃぁ! わ、たし、耐えられない……すぐきちゃう!」 

 あんなに射精したのに全く萎えていない怒張に突かれ、揺さぶられ、中出しされる。

 数えるのも馬鹿らしくなる回数の射精を受けた膣は許容量をとっくに超え、精を受け入れることをできずに逆流させてしまい、ボタボタ敷き布団に流れ出す。

 度々、直前に抜かれたモノに全身を好き放題に汚されもした。

 寝室は一刻と経たず――雄と雌の性の匂いにすみずみまで侵された。

「うんんっ! あっ、あっ、あっ、あっ、っあぁ~~っ‼」

 獣の姿勢で獣のように喘ぎ散らす。

 提督が腰を突き出せば、敏くも瑞鶴は白桃のような臀部を後ろに遣う。

 膣内は飲み込み切れなくなっても精液を求め、限界まで勃起した剛直を奥に誘い、ざらつきが強い膣壁の一枚一枚が亀頭や出っ張りをギュウギュウ締めつける。出ていくことを許さないように深く咥え込む。

 早くも肢体は汗と汁にまみれた。外も中もこのまま融けそうなほど熱い。

「これ、ヌルヌルしていいっ。提督さんとけそうで好き……!」

 愛しい人に甘ったるく呻く。

 意識は半ば不明瞭になっているのか、身体を支えている両腕が今にも折れそうだった。

 すると提督は手を乳房に伸ばし、ぐいっと持ち上げる。

 重なり合うような体勢、予期せず顔が近づいて瑞鶴は口付けをねだった。

「んむっ……んちゅっ、ちゅぷ、ンン……ぁぷ……んぁっ」

 文字通り息もできない快楽に流される。艦娘でなかったら気絶してもおかしくない。

 この期に及んでも底が知れない彼は、器用にも乳首とクリトリスを弄り潰す。

さらには、子宮の入口を激しく突き上げる抽迭をも続行してみせる。

「ちゅ、あむっ! んぷっ……っぷ、ちゅぱ――はぁっはぁっ……やぁっ! あぁぁ! はうぁぁぁっ! もう、だ、だめなのにっ、苦しいのにぃ……なんでこんなに……んぁぁん!」

 三つ四つを同時に刺激されるのは堪ったものではなかった。

 瑞鶴は「もっともっと」と感涙を流し、身悶えしつつもその身体を弾ませてしまう。

 何度果てて絶頂しても動くことを止められなかった。

 バラバラになりそうなぐらい強く犯されているのに痛くない。

 苦しくはあるけれど、今日という日で提督と本当の意味で分かりあえた。

 そのことが彼への愛情をどうしようもなく深め、同等に深い繋がりを求めていた。

「ああぁイクぅぅ! なんかいもイってるのにまた、まらぁ……!」

「……っ!」

 止まれないのは提督もであった。今日の自分はおかしい。抽迭と愛撫するのを制動することができない。知る限りの性技を尽くして瑞鶴と交わろうとしている。肉棒も数分動くだけでも精を放ち、膣内で暴れまわる。普通の男性ならとっくに枯れ果てているのに、自分のモノは収まらない。萎えようとしない。

 だったら力尽きるまで……っ。

「あ! あー! あー!――あははぁ! ああ、きもちい! きもちいいの! あたまへんになっちゃってる! いいよ提督さん! もっとつきあげてぇ……もっと出してぇ!!」

 自分の声が届くように抽迭と攪拌の音よりも大きく嬌声を出す。

 余分な思考を捨て去り、真っ白な状態でただただ快楽だけを求め貪る。

 もうなにも判っていない様子だった。

 高く響き、澄み渡る嬌声を上げつつ本能任せに上下運動を繰り返す。

 また膣内でドクンドクンって、次は外でビシャビシャと熱いのを飛び散らされる。

 どれだけ出されただろうか。動きながら精液を出されるから……何回かなんて数えてられない。

 ただもう、この快感が今は全てだった。

「瑞鶴……ッ!」

「ぅんん……ひぁっ!? ああいく、いくっ、イっく……ひゃぁぁ、ぁぁあぁ――‼」

 名前を大きく呼び、奥底で――子宮口をこじ開け、既に満杯である中に無理やり注ぐ。

 どぴゅっ、びゅるるぅっ! びゅぶ、びゅくぅ……!

 またもや盛大にたっぷり射精する提督。抱き寄せられ悦びに打ち震える瑞鶴。

「はぁー……! はぁ、はぁー……! てい、とく……ていとくさん……」

 背中に体重が掛かってきた。下の布団の方は最早、惨状に近い有様だ。染みどころではない。沼のようだ。洗っても匂いが落ちないのではないだろうか。

 瑞鶴は布団に倒れ込む。その拍子に抜け、膣内から音を立てつつ溢れる白濁は常人が見たら目を疑うまでの量だ。性欲は残っていても疲労困憊になってしまった少女はこのまま安眠に浸りたくなるが、

「んあぁ……」

 けど、彼は許してくれないらしい。離してくれないらしい。

 ああそうだろう……だって姉とは朝まで続けるのが当然で、それでも余力を残しているのだから。

 倒れたまま顔だけを向けると今度は、引きずられるように臀部だけを高く持ち上げられて――――

 

 

 

 

「我ながら今回はどうかと思うな……こんなに激しくしたのは中々ない」

 およそ筆舌に尽くし難い情交を続けた結果、提督と瑞鶴はようやく満足し、緩く抱き合っていた。

 根負けしたのは瑞鶴が先だ。

 あの後ほとんど一方的に、犬の格好で単純にひたすら雌のように犯された。

 体勢が体勢なだけに精液が出てきにくく、子種をお腹の奥が重くなるぐらい注ぎ込まれた。

 妖精さんによれば――彼等だけが知る特殊なセーフティーを解除しないと――艦娘が妊娠することはまずないらしいが、これだけ出されたら危なくないだろうか? ちょこっと気掛かりである。妊娠したら戦闘とかどうすればいいんだろう。

 まぁ、提督の子供なら全然いいのだけれど。

「こうなったのは提督さんが悪いのよ」

 幸せそうに額をすりすり首元に擦りつけてくる。

 意識が正常に戻っても顔の筋は元に戻っておらず、ふにゃふにゃである。

 お返しに頭を撫でてあげると猫のように首を伸ばした。擦り寄って来たりもする。犬だったり、猫だったり、色々様変わりするなと関心する。

「何も知らない兵器だった私達に人間の躰と心を与えて、オマケに恋慕と愛情なんてものを魅せて。こんなのもう絶対に普通の女の人には渡せないわ。私たちが貰わないと――」

「人の恋人も妻も愛人もいない。これからも作らない。そこは安心してくれ」

「分かってるって。でもね、言葉にしないと伝わらないよ?」

 その通りだ。

 提督の考えた未来は普通では思いつかないようなことで、語らなければ伝わらないようなものだった。

 鎮守府で皆、ずっと一緒にいる。

 その未来は艦娘の誰しもが奥底で望んでいるが、安安と口にはできない。

 提督が本気であることを分かっているのは翔鶴だけ。今日で瑞鶴も知った。

 薄々でも気付いている艦娘は何人いるだろうか。

 彼は一生を艦娘と過ごす気いる。

 提督としての責務感ではなく、彼個人の誓いで艦娘の手を取る。

 だから、瑞鶴の温かい手を握って言う。

「僕は貴女達を幸せにしてみせる。いつか静かな海を取り戻しても、一緒に生きていこう」

「……うんっ」

 破顔した瑞鶴の可愛さといったらなくて、顔が見えなくなるよう彼女の躰を引き寄せた。

 どうも自制が利かなくなっている。いけない傾向だ。

 呆れたことに理性がまたも崩壊しそうになり、このままだと再燃しそうなので明日のことを考える。

 朝にやると決めたミーティング。講堂で伝えるとして、夜までに宴会の準備はできるだろうか。

 時間的には問題ないのだが、皆のことだ。何日も離してくれないだろう。

 その間、果たして何をされることやら。

「怖い?」

「緊張はするだろうね」

「提督さんなら大丈夫だろうけど、翔鶴姉と私が隣にいようか?」

「そこまで貴女達に頼ったらおしまいだ。見ていてくれるだけでいい」

 五航戦姉妹がいれば心強いだろうが、矢面には一人で立つべきである。

 せめてもの男の意地を見せてやりたい。

 わかった、と瑞鶴は頷いた。不安の色はない。信じてくれている。

 それが掛け替えようもなくありがたい。

 お休みなさいと言って、眠りについたのは提督が先。情事の後は瑞鶴が見守られるのが常で、今回も自分の方が疲れているのに起きていられた。大したことではないだろうけど無性にうれしい。

 手はそっと繋いだまま。起こさないように、重ねるだけ。

「幸せになろうね」

 ようやく、二人と同じ位置に並ぶことができた気がする。

 この先なにがあっても自分は迷わず歩いていけるだろう。

 提督さんと翔鶴姉が隣にいてくれるなら、瑞鶴は大丈夫だから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 求められたら応える。

 これが提督の生き方である。

 相手に理があるならば、どのような願いであれ叶えようとする。

 自分に得がなかろうが、誰彼の役に立てるなら些細なことだと。

「誰かの為に生きることが生きがいになるようになりなさい」

 あのヒトは――三笠元帥はそう言った。

 私は受け入れた。

 納得して、

 教えられて、

 造られた。

 二十になるまで、この鎮守府に着任するまで――そんなことを教えられ続けた。

 0の頃から決められた道の上を歩かされた人生だった。

 提督になったことを後悔はしていない。それ以外に選択肢はなかったのだけれど。

 

 

 父も母も兄も姉も弟も妹もいなかった。

 そもそも家族と呼べる人がいたかどうかすら怪しい。

 私には帰る場所すらも当たり前のようになかった。

 私の人生を決めた教育者達は余程、深海棲艦に勝ちたかったのだろう。

 戦いが終わった後どうなるかは知らなかった。

 恐らくは廃棄されるか処分されるのかの、どちらか。

 出来上がったばかりの頃の私なら、なんの抵抗もせず、一切の交渉もしないで受け入れただろう。喜びと怒りと悲しみと楽しみ――人間らしい感情は持っていても、在り方はロボットと何ら変わらなかったから。

 必要でないなら壊れて潰されるしかなかった。

 でも、今の私は違う。明確な目的がある。

 この世界で、この場所で貴女達と生きていたい。

 

 

 私が変われたのは貴女達のお陰。

 貴女達に出会い共に歩んで、自分の沈んでいた心は動かされた。

 明日を信じ前を向けるようになった。

 だから、この躰が造り物だとしても。

 貴女達を想うこの心だけは本物なんだと。

 全てを捧げてでも皆を幸せにしたい。

 ずっとそのことを伝えたかったのに、私は臆病だから言えなかった。

 

 

 目線の先で真っ白な少女が涙ぐんでいる。

 その涙を見て、私は言おうと決めた。

「翔鶴――やっと言えたよ」

 こんなにも待たせてしまった。

 そのお詫びに、皆の前で素直に思いの丈を言ってしまおう。

 

 

 

 

「Wonderful! and shiiiiit! 榛名ァ、どうしますカー!?」

「榛名は一番でもなくても構いません。提督のお側にいられるだけで満足です」

「……目が笑ってないヨ」

「ウフフ……今から! 榛名! 全力で参ります! 狙いは翔鶴です!」

 

 

「ま、またしても五航戦の子に遅れを取るとは……」

「でも加賀さん。あの二人のお陰で提督も素直になれたみたいよ」

「それは、そうですが」

「今度、加賀さんの好きな肉ジャガを作ってもらいましょう。ね?」

「……はい。それは気分が高揚します」

 

 

「本当、呆れるぐらい良い人ね。惚れた甲斐があったってものよ」

「暫く荒れそうです。対空火器をしっかり調整しないと」

「どうして対空火器を選んだのかは敢えて聞かないわ、大和」

 

 

「ちょ、皆がいる前でなんてこと言うのよ~。やだ、マジ恥ずかしい……も、もう皆ニヤニヤしながら鈴谷を見ないでよ!」

 

 

「さすがだよ、司令官。貴方を信頼してよかった」

 

 

「あら。あらあら。大胆なこと言うのね。次からは火遊びじゃ済まなくなるわよ」

「提督……それが貴方の選んだ答えか」

「あら、不満なの長門」

「不満? あるわけないだろう。その逆、胸が熱くなっているさ」

 

 

 

 

 各艦が様々な反応を見せている中、最も衝撃を受けたのは翔鶴である。

 彼がついに言ったのだ。勇気を出させたのは妹の瑞鶴。

 昨日の話を聞いても翔鶴は悔やまず妹に感謝した。彼を祝福した。

 なんて誇らしいのか。

 全艦娘がブリーフィングルームで大体的な説明を受けた後、翔鶴は呼ばれた。

 少しでいいから時間を貰いたい、と謝りを入れて言ったにも関わらず、提督に質問攻めをしようと群がってくる艦娘は瑞鶴、大鳳と共に持ち前の馬力で振り払う。

 扉の前まで来たら目配せ。二人の妹はさっと敬礼をして門番になることを選んだ。

 廊下の奥に大勢いる艦娘達……面白がって便乗しているだけの子もいるが、本気の子の方が多い。

「私と瑞鶴先輩が食い止めますので」

「二人の邪魔はさせない」

「ありがとう瑞鶴、大鳳。心強いわ」

 

 

 

「――すまない。つい言ってしまった」

 執務室に入って開口一番に謝罪した。

 誰が一番好きだったのかを提督は言ってしまった。なにも驚かしたくて明言したのではないが、衝撃を受けた艦娘は少なからずおり、彼女達は力ずくでも提督を拿捕しようとしてきた。

「貴女に迷惑をかけてしまうだろうね」

「むしろ歓迎します。堂々と言ってやりましょう」

「翔鶴は強いな」

 はい、貴方の為に強くなりました。

「今日は忙しくなるだろうね。できるなら、今夜はシフトを曲げてでも翔鶴と一緒にいたいけれど……」

 当日に個人を特別扱いするのも果たして如何なものか。

 今日はまだ瑞鶴である。

 彼女は翔鶴に譲ると言ってくれたが、それでは示しがつかない。

「いいんです。待つのは好きですから」

「僕は待たせるのが嫌いだ。なのに皆を、貴女を……待たせすぎた」

「次の番までは遠くありません。その時は、期待してもいいでしょうか?」

「今回ばかりは翔鶴がして欲しい事を何でもさせてもらう。約束するよ」

 真摯な表情だった。

 なんでも、か。

 今この瞬間に思いつくのは……二人きりで温泉旅行はどうだろうか。

 楽しく、愉しい一時になるだろう。

 取り敢えず提案したら快諾してくれた。

 知る限り自分に嘘は決して吐かず、約束も破らない人だ。期待しておこう。

「提督。絶対ですよ?」

 敢えて〝話題〟に触れないのは信じ合い、愛し合っているから。

 言葉はなくても二人は通じ合っている。

 目の前で提督が他の艦娘にじゃれつかれても、翔鶴はニコニコ眺めているだろう。

 遠い昔、それこそ百年は付き添ってきたような貫禄がある。

「絶対だ」

 愛してやまない翔鶴に触れたくなってしまう。

 だが、接吻の一つでもしようものなら堪えきれなくなってしまうだろう。

 間違いなく執務室でコトを致す。お互いにそれは望んでいない。

「我慢ですね」

「うん――ところで。外はどうなっているのかな、これは」

 扉の向こうはずっとやかましい。

 塞き止めている少女二人の怒声と悲鳴が聞こえてくる。

 どうも戦艦型艦娘が自慢の主砲を持ち出したらしい。

 扉は頑丈だが、戦艦の主砲を防げる強度はない。

「大丈夫です」

 言い訳を考える暇もなく扉が木端に吹き飛ばされ、見慣れた艦娘が侵入してきた。

「ああ、もう! 少しは空気読みなさいよ! 一航戦の誇りはどこにいったんです!?」

「やってくれたわね。そうくるなら、私も手加減抜きでやらせてもらいます!」

 転がり込んできた瑞鶴と大鳳は状況を素早く確認し、翔鶴の横に並ぶ。

 既に提督を守るように最優の艦娘は立っていた。

「誰が来ても、貴方には傷一つ付けさせません」

 瑞鶴が空母で最強。

 しかしながら、この鎮守府において練度が最も高い艦娘は他でもない。

 栄えある最新鋭の正規空母。

 翔鶴型航空母艦一番艦『翔鶴』その人である。

 もう練度が劣るなどとは言わせない。

 鎧袖一触だ。

「五航戦――翔鶴! 提督を守り抜いてみせます!」

 

 

 

 

 

 未来はきっと明るいから。

 あなたと一緒に、同じ方向を見ていよう。

 歩くような速さでもいいから。

 信じて、進んでいこう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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