各提督の鈴谷のイメージと異なる可能性が大いにあるので、注意してお読みください。
タイトルから「轟沈ネタか?」と思うかもしれませんが、どうかご安心を。
恐らく他の【貴方】と比べると一番綺麗で優しいお話です。
自室の台所でお菓子を作っている提督に訊いたことがある。
艦娘の好感度を上げる為にしているのか、と。
その日の午後三時には、執務室で破天荒な金剛主催のお茶会が開かれる予定だった。
提督は鍋を木べらで混ぜ合わせる手を休めずに、
「下心がないとは言い切れない。人は相手に何かをした時、必ずといっていいほど見返りを求めているからね。歴史に残るような聖人はともかくとして。……私? もちろん聖人には当て嵌らないよ」
「ふーん。じゃあさ、提督は鈴谷達にナニしてほしいの?」
「うん、笑ってくれたら嬉しいな」
からかいのつもりだったのに。
大真面目に返されて笑い飛ばそうとしたのに、どうしてもできなかった。
例えようもない衝動が湧き上がってきたから。
艦娘達が喜んでくれる光景を想像したのか、提督はさっきよりも楽しそうに作業を続ける。
裏心があるなんて嘘だ。あったら、そんな恥ずかしい言葉が滑らかに言えるもんか。
似合わない詩人みたいな表現になるけど。
彼の笑顔があんまりにも、だったから。
綺麗を通り越して、尊いとすら思ってしまった。
守りたいと願った。
つまるところ……鈴谷は恋をしたのでした。
今日の出撃で最上型航空巡洋艦の三番艦・鈴谷が姉妹艦の熊野に担がれて帰投した。
大破していた。戦艦ル級フラグシップの最後の悪あがきに運悪く当たってしまったのだ。
手を貸せられる仲間がその場にいなかったら、そのまま轟沈していただろう。
本人の強い希望で高速修復剤の使用を求められ、提督は一も二もなく承諾し、入渠ドックに自ら連れて行った。
治った鈴谷は艦娘総合保養施設の一室で寝ているらしい。熊野が伝えに来てくれた。
そして、時刻はヒトキュウマルマル。
「提督は思いのほか繊細よね」
「女々しいと言いたいのかな」
「そう聞こえたなら謝るわ」
「いいさ」
最後の一枚を書き終えると万年筆を置き、執務椅子に背中を深く預けた。
鈴谷が気になり、作業は思ったように進まなかった。
「私も自分が情けない男だと嘆いている」
世界に名だたるビックセブンの一人、陸奥は机に行儀悪く座り、提督を見下ろした。
部下にあるまじき行動だが、上官に対して遠慮なくものを言い、憚りなく触れる部下は中々得難い人材だ。
好ましく思えど苛立ちはしない。気の置けない友人に似ている。
「行動に問題はなかった。貴方の立てた予想はほぼ命中して、誰一人慌てず対処できたわ。鈴谷が大破したのは、そうね、運が悪かったのよ。魚雷管に誘爆しなかったのは幸いね」
第一艦隊旗艦を務めた陸奥はそう片付けた。
柱島泊地での謎の爆発事故、あっけない最期……運が悪いことでも知られてしまった彼女だ。含めずともずっしりと重みがあった。
「また辛気臭い顔して。これからお見舞いに行くんでしょ? だったら笑顔でいなさい。艦娘のアフターケアも提督の大事な役割よ」
提督の肩を小突く。
「早くしないとお姉さん、襲っちゃうぞ?」
冗談である。
捨て犬じみた哀愁を漂わせる提督を慰めてやりたいのが本音だが、彼女はやっていい時とやってはいけない時を見極められる一人前のレディだ。他の艦娘とは一味も二味も違う。
「貴女のような狼に襲われたら一溜まりもない」
「あら、足柄みたいに飢えてはないわよ。羊だと思ったヒトが実は狼でびっくりしたもの」
「……陸奥」
「なあに」
「私は、着任したばかりの頃と変わってしまった?」
陸奥は提督が本鎮守府に着任するよりも前にここに配備された。
提督は一定数の艦娘が集まり、一級の戦力が整うと着任してきたのだ。
大本営の最高戦力と謳われる横須賀の元帥からの〝寄贈品〟扱いとして、大和型が来たときは流石に度胆を抜かれた。自身に大和型がいるとはいえ、手塩に掛けて育てただろう超弩級戦艦を、着任してもいない提督に贈るだろうか。
異例の好待遇だろう。普通では考えにくい。
それほどまでに期待されていたのか、大本営に有力なコネがあったのか。
知りたくても、艦娘に必要以上の情報は与えられない。出処の不明な噂話ばかりだ。
提督が提督になる前に、どんな人生を送ってきたのか
どこぞの重巡は血眼になって調べたそうだが、尻尾さえも見つけられなかったようだ。
別に彼がどこの誰で、どんな存在であっても、関係を変えるつもりはない。
さて、問題の変化――陸奥は変わったと思う。
壇上で自己紹介をした時より態度は明らかに柔らかくなっていた。
そして、それ以上に艦娘が傷つくのを恐れるようになった。
艦娘は単体でも凄まじく頑丈だ。加えて何故か自分達は人造兵器に耐性がある。人が携行できる銃火器程度でダメージを与えるのは不可能に等しい。近代化改修を行ったなら尚更のこと、それ以前に自分達の反応速度なら撃たれる前に制圧できる。
だが、自分達が相手とするのは深海棲艦。
人類が初めて遭遇したであろう〝人類種の天敵〟である。
艦娘を遥かに超える耐性、人の生み出した兵器による攻撃の悉くを無力化ないし削減する――悪夢のような怪物。
奴等の手に掛かれば、艦娘だろうと藁のようにいとも簡単に吹き飛ばされてしまう。
恐れる事はないとは言えなかった。
運が悪ければ、技術の粋を尽くした戦艦でも本当にあっさり沈んでしまうのだ。
しかも戦いの場ではない所で。
「いいじゃない、変わったって。誰かに恋もできない人生なんて味気ないもの。少なくとも私は艦娘に変われてよかったわ。全然暴れたりなかったし、長門と貴方に出会えたし」
黙る提督の頭に乗っかった制帽を取った。
「責めてばっかり。自分にもう少し優しくなったらどう?」
「努力する」
自分の管理に関してはとことん不器用なんだから難儀な人だ。
次に番が来たらあの手この手で胸の内を吐露させてやろう。その方が楽になれる。
人生経験はまだまだ短いが、愚痴ぐらいは聞いてあげられる。
「そろそろ行ってくるよ」
「了解。部屋の鍵、貸してくれる? ああ、変なことはしないわよ」
「部屋にいても戻ってこないと思う」
「好きな人のお布団で眠れるだけでもいいの」
鍵を受け取った陸奥は人差し指で提督の胸をつつく。
素面の彼は戦いにまったく向いていないのに……人は分かって教育したのだろうか?
このヒトは戦場に立つには健気で優しすぎる。
微風に吹かれただけでも散り、揺れる、花や水面のようなヒトなのだ。
色で言うなら穢れのない白――強いけれど、一度でも違えば染まってしまう。
だからこそ守らなければならない。失ってはならない。
血に染まるのは
「誰よりも信じて、提督。そうしてくれたら、私達は必ず貴方の元に帰って来られるわ」
間違っていないのだ。
私達が提督を好きになったのも、提督が私達を好きになったのも。
受付係の妖精が心配顔だったが気にする余裕はない。
部屋まで案内してくれたことへのお礼だけをして、静かに入室した。
「鈴谷」
柔らかなベッドに沈むように眠る鈴谷。愛らしい顔には傷一つ残っていない。
それがよりいっそうに悩ませる。
「遅く、なったね。もっと早く来ないといけなかったのに……すまない」
近くの椅子に腰を下ろして、つい手を伸ばしてしまいそうになる。
額を撫でようとした手の首を彼は掴んだ。強く、痕が残るまで握り締め続けた。
迂闊に触って安らかに眠っている鈴谷を起こしたくない。明るい彼女は見舞いに来たことを喜んでくれるだろうが、こっちが笑えるかどうか不安だった。サイドテーブルの立て鏡に映る男の顔は、とても他人に見せられたものじゃない。路頭に迷った浮浪者のよう……
目を瞑り、いい加減慣れろ、と自嘲する。
何を今更……鎮守府を治めたばかりの私は冷静でいられたじゃないか――。
周囲にも慰められず、不動な指揮官として在った。
艦娘にも幾つかの慰労の言葉を言うだけで済ませられた。
もし見舞いに来ても、ここまで落ち込んだ顔はしていなかった。
昔を知り、今を知る艦娘は〝もっと柔らかくなった〟と喜び、あるヒトは〝脆くなった〟と嘆く。
この鎮守府が持つ戦力と装備がいよいよ安定し、現状で攻略可能の海域を全て制圧した今、提督が直接指揮を執ることはめっきり少なくなった。未知の海域攻略、海上での補給が必要になる大規模な掃討作戦が行われない限り、経験を積ませる為にも戦いは艦娘に全面的に任せている。
今回の出撃でもそうだった。胸を張る彼女達を信頼し――その結果が、鈴谷だ。
信頼したのを間違ったとは思わない。味方を過信せず、敵の力を侮ってもいなかった。
慢心だけはするなと自他共に常日頃言い聞かせている。
陸奥が言った通り、たまたま運が悪かったのだ。事故みたいなものだ。
だから、帰れたことを喜ぼう。
そう言って励ますのがベストなのに、〝自分が指揮を執っていたら〟と考えずにいられなかった。
こんなのは紛うことなき自惚れだ。深海棲艦と戦うのは艦娘である。
遠く離れた位置から戦況を見る自分ではどうやっても守れない、庇ないというのに。
出来るとしたら温かく出迎えることぐらいなのに、それすらも満足にこなせなくなってきた。
自分と同じように誰彼に造られた彼女達を好きになってしまい。
自分の命と引換にしてもいい大切な存在だと認識してしまったから。
人らしさを得た代わりに途方もなく脆くなってしまった。
立場は逆になり、傷付いた彼女達が気を遣わせまいと踏ん張ってしまう。
なんて……無様。
なんて……堕落。
奥歯がギリギリ噛み締められた。
「……あれ、提督じゃん」
鈴谷が覚めた。半開きの目がだんだん開かれ、口角は嬉しげに上がる。
「来てくれたの?」
「あ……ああ、遅くなったけどお見舞いにね」
「え~? まだ九時なのに。夜はこれからっしょ」
「……うん。躰の方は大丈夫? 痛いところはない?」
「高速修復剤使ったし大丈夫だって。それよりちょっち、小腹が減っちゃった。なんか簡単な物でいいから作ってくれない?」
夕食を食べられなかったから空腹なのだろう。
部屋には台所があった。自室のと比べると簡易なのが不満だが贅沢は言っていられない。あるだけ感謝である。
寝起きなら食べやすく消化の早い物がいいか――目的を決めたら提督の行動は素早い。
塩をかけて焼いた鶏肉、溶いだ卵、刻んだ葱を入れた雑炊を一人分作る。
調理している姿を鈴谷は何度も見ているが、相変わらず女子顔負けの手際の良さである。
間宮さんと鳳翔さん、「大和ホテル」なんてあだ名で呼ばれた大和が驚愕した料理上手。
料理で攻めようとした艦娘は漏れなく敵わないと轟沈した。
台所に立つ彼は見た目が大変な優男なのもあって、何度見たってまぁそれは。
「マジ半端ない」
まさか、提督になるには一流の家事スキルが必修項目なのだろうか。
鈴谷の疑問に、盆に湯呑と小鍋を載せて戻ってきた彼は笑う。
「料理は昔頑張ったんだ。勉強や訓練の息抜きになるし、貴女達の為に出来ることは一つでも多い方がいいだろうから」
「恥ずかし気もなさそうに言っちゃって」
頬の近くで手をぱたぱた振る。
歯が浮くような台詞を躊躇いなく口にできる。
ホント笑い飛ばしてやりたいが、ちゃんと見合っているからタチが悪い。
邪心がなく純真に良かれと思ってやる、だから、手強いライバルが増える一方なのだ。
提督は白い湯気を立てる雑炊を程よく掬い、「あーん」と開いた鈴谷の口がれんげを含む。
もぐもぐ咀嚼すると食べる前の不機嫌な顔はどこかに飛んでいった。
この瞬間の為に今日を死ぬほど頑張ったのです、などと言いそうだ。。
沈めたと思ったら自分を大破させ、提督に辛い思いをさせた憎きル級への恨みも薄れていく。
こんなこと言ったら温厚な彼も怒りそうだが、抱きかかえられた感触はよかったし、こうしてお見舞いで二人きりにもなれた。
「陸奥さんは何か言ってた?」
「思いのほか繊細だって言われてしまった。……ほんと、そうだ」
「提督ってば時々、豆腐メンタルになるもんねぇ。心配してくれるのは嬉しいけど、落ち込む暇あったらもっと構おうね~。鈴谷はそっちの方がほしいなぁ」
「残さず食べ終わったら、ね」
「おおう、珍しくやる気じゃん」
「私なりに頑張っているんだよ? いや、ちょっとしたことでも揺らぐ男になってしまったけれども……それは貴女達が好きだからであって、止めるのは難しいというか……ここにいるのは正しいとは言えないけど。本当なら鈴谷のお見舞いに来るべきじゃ……ああいや、違うっ。お見舞いに来たくなかった訳じゃないんだっ。療養は大事だし、艦娘の体調は提督も見ておかないと……もう。なんで、こんなに人の感情は難しいんだろうね……」
本当になんなんだろう、これは。扱いにくいことこの上ないじゃないか。
定められた回路を乱されて脳内がズキズキ痛い。
剥がれて素面が出そうになって顔を下に向けてしまう。
失望、幻滅、嫌悪……負の言葉ばかりが頭に浮かんでくる。
たった一人が大破したぐらいで怯える提督。
そんな情けないヤツなんて誰が必要とするのだろう?
そこに至り、また自己嫌悪をして、鈴谷はそんな彼の頬を摘むと引っ張った。
むにゅーと餅みたいに伸ばす。
両手に小鍋を持って逃げられない提督は涙目になった。
「ひたいひたいっ! すずひゃ、ひたい!」
「どっちが怪我人なんだか。こんな提督の姿、他の子には見せらんないよね」
真っ赤な痕が付くと離す。
「て、提督だって大変なんだっ。もし誰かがいなくなったら、すぐに私のところに同じ艦娘が送られてくるようになっていて……戦艦でも正規空母でも……貴女でも……」
鈴谷が今日沈んだとしよう。
そうしたら、一月も経たない内に新しい最上型三番艦・鈴谷が着任してくる。その鈴谷に提督は割り切って関われる自信がなかった。彼が好きになった鈴谷は一人だけなのだ。
「深海棲艦は日に日に強くなってきている……今日だって私の予測を超えてきた」
「会敵ポイントと敵艦隊の構成当ててそれ言う? 予測なんて外れて当然だし、毎回毎回当てられる提督が可笑しいんだって。深海棲艦にしたら〝なにあいつキモッ!〟だよ」
その予測と直感の正確さ、鋭さは味方である艦娘が戦慄し、時には恐れさえ抱かせた。
敵には最大限の被害を与え、仲間の損傷は最小限に抑える。
誰もが目指す理想の勝利を当たり前のように叶えてきた。
だからこそ提督は――艦娘との距離が縮まった今――過敏にまで彼女達が傷つくことに反応するようになってしまった。それは、確かに弱くなったと言える。
「提督ー、小指出して」
鈴谷は言い、おずおずと差し出された小指に自分のものを結ぶ。
「鈴谷がぜーったい、死んでも帰ってくるっていう約束だよ。いっぱい頑張るから提督もうーんと褒めてね! 鈴谷の言うことを聞く!」
戸惑う提督に笑いかけて頷かせる。
「んじゃ――指切拳万、嘘ついたら針千本呑ーます! 指切った!」
指は呆気なく離れた。一分も繋がっていなかった。
口約束に過ぎないが、やるのかやらないのかでは大分差がでるのである。
強引なぐらいが彼には丁度いいのだ。
目の前の提督の両肩に手を置いてベッドに引き込む。
覆いかぶさって下敷きにしたら、間の空気さえも押し出すようにぎゅっと抱きついた。
軍人とは到底思えない、細くて薄い華奢な青年はなされるがまま。
「あったかぁい」
でも、お日様みたいに心地いいポカポカ。あいつらとはまるで違う。
彼を感じられるこの時間こそが、何にも代え難い至福のひと時だ。
提督LOVEの艦娘が集められた時、飛び込みで参加してよかった。
優男な彼に似合うのは大和、翔鶴、榛名みたいな清楚系美少女で鈴谷のようなチャラい女の子は釣り合わないだろうけど、恋の前に自制心は壁にもならない。超えてやる。
「ま……まだ残ってるから」
目を逸らしてサイドテーブルに避難させた小鍋を見る。
鈴谷はニヤついたまま、ぐいっと向けさせた。
「提督の大好きな鈴谷はこっちだよ?」
「大好きって……」
「違うの? ふぅん……鈴谷は提督のこと大好きなんだけどな~」
「ち、違わないっ。好きだよっ。さっき……言ったじゃないか」
「あれ鈴谷だけじゃないし、そういう言葉は何回でも聞きたいじゃん。
――だから、もう一回言って?」
言葉にならない声を出して赤面する提督がカワイイ。
好きな人を苛めるのは胸が踊るほど楽しい。
胸から伝ってくる心の鼓動の強さは提督の鈴谷への想い。
嬉しい。
「ねぇ、言って? 鈴谷が大好きって」
耳元で囁く。
強請って……小さく、本当に小さく。
鈴谷と同じでポツリと応えた。
私のことが大好きだ――って。
受け取った少女のニヤニヤした笑みは徐々に乙女のそれに変わり、自然な成り行きで頭を下げて、ふっくらとした唇を重ねた。
「ふ、ッ……っ……えへへ」
互いの気持ちを知るには充分すぎる時間触れ合わせ、頭を少しだけ引くと鈴谷は満足げに笑い、今度こそ抵抗せず海面を漂うように自らを委ね、提督は両手を彼女の背中に回した。
腕の中に収まった少女の存在を確かめ、どこにも行かないよう大切に、大切に抱きしめる。
生きている温かさに安心して、安心させられると再び近づく。
「っあ、ちゅ……は……んぅ」
口を開こうと思ったのは同時。
舌を伸ばして……提督は性を知らない童子のようにたどたどしい。恐る恐る鈴谷の舌端に触れるばかりで絡めようとしてこない。慣れている筈の行為ができないことに困惑する。気持ちの整理がまだできていなかった。
初めてを捧げた夜を思い出す。
布団に横たえられた鈴谷は洒落にならないぐらい緊張していて、ファーストキスの味はよく覚えていない。なにもかもが初めて。彼が与えてくる未知の快感に翻弄されるがままだった。
でも、今は。
「鈴谷はここにいるよ」
不安なら何度でも言おう。みんなの前で気丈に振る舞い続けるのは大変だ。
「辛いなら我慢しなくていいから。溜めなくていいから。隠さなくていいって」
暗い顔なんて似合わない。
貴方には綺麗なまま笑っていてほしいの。
私達にだって慰安をさせてほしい。
「ね、提督?」
「私は――私が……いいのかな……迷惑かけているのに」
「迷惑なんてかけてないってば。鈴谷達が、提督の笑顔にどれだけ助けられてるか知ってる? しんどい戦いでも提督が待ってくれてるから頑張れるんだよ」
貴方が当たり前のように笑ってくれるなら。
私はどこまでも頑張れるのだ。
鈴を転がしたような声で穏やかに言って、心臓がある部分の上に触れさせる。
大きな乳房を押される性的快楽より勝る愛情がそこにはあった。
鈴谷は慈しむように両手を彼の手の甲に重ね、頬を林檎のように赤く染めた。
「あはは……や、やっぱ恥ずい」
こんなの柄じゃない。電気付けっぱで丸見えだし。早く消したいっ。
「鈴谷……その、ありがとう……ね? お陰で元気が出てきた」
「えーあー……元気になってくれたんなら、よかったかも。提督は笑ってる方が似合うし」
「……お帰りなさい、鈴谷」
「た、ただいまぁー」
困惑していた提督はいつしか落ち着いて、たった今眠りから覚めたような細目で鈴谷を見遣り、頬を緩ませた――脳天をハンマーで叩いたような衝撃が少女を襲う。
こういうのは普通逆なんじゃないだろうか、と大声で言いたい。けど、鈴谷もさっきやってたんだろうし、提督はこういう人だったと納得してしまえるのが恐ろしい。
自覚なしの女たらし。
いっそ鼻の下がだらしなく伸びてくれれば、もうちょっとは気軽に接せられるだろうに。
……でもそうだったら、好きになっていなかったんだろうなぁ。自分勝手な我が儘だ。
こうして鼻先まで迫ってみても、瞳にも口にも雰囲気にも欲情が見つけられない。
鈴谷に女の子の魅力がないから?
いや、そうじゃない。何度目かの夜に確かめたら真剣に否定してくれたんだから。
「続きをしてもいい?」
照明を消し体勢を入れ替えて、寝間着のボタンに指先を触れさせながら確認を取る。
鈴谷が「い……ぃよ?」と言ったら上から外していく。一つ一つ丁寧に解かれ、ブラジャーなしの自分の胸が露わになる光景に唾を呑む少女。部屋が真っ暗でもこの近さなら提督に形も先の蕾も丸見えだった。
耐えられなくって、身体を小栗鼠のように震わせてしまう。
スタイルに自信はあるけど素肌を見られるのは恥ずかしい。
出るところはきちんと出てる。バランスの良さなら高雄型の二人にも負けていないつもりだ。
「あ――ハ、ぷ……っちゅ、んっ」
彼が近づくと鈴谷は自ら頭を上げて唇を重ねる。相手の柔らかさを確かめるように端から端まで合わせ、それが終われば舌を使った深いキスになる。口内の唾液を掬われて飲み込まれる。鈴谷も積極的に舌を動かして嚥下する。
心配しなくても提督にさっきまであった迷いは消えてなくなり、普段より、前より鈴谷を求める。
「はふ、ぁん、ちゅる、くちゅ、……んやぁ、てーとく……ぅ」
どれだけ回数を重ねても飽きず、とてもじゃないが落ち着いて出来ない。
図らずとも経験豊富になってしまった彼の愛撫が上手なのもあるが、溢れそうな愛情が鈴谷の目尻を下げ、小さな手は大好きな人の手を握り、意図を察した彼が離れないよう指を絡めてきた。この状況なら当たり前と言える行為にも感動を覚えてしまう。
「っあぁ……ん……ふっあ……ぁ……チュ……」
やがて提督の空いている手が鈴谷の片方の膨らみに静かに添えられた。
きゅっ、と繋がっている五本の指に力を込める。
「くぅ、ん……!」
乳房を撫でられる、乳首を掠められる。
必要以上に敏感になったソコは快感を激しく感じてしまう。
手に収まらないほどに実った豊乳を提督は手の平で持ち上げるように揉み解き、とろけそうな感触に夢中になって乱暴にならないよう注意しながら愛撫し続ける。
「べ、別に強く……や、してくれても……は、やん……いいのに」
「優しくしたい」
「いっ、つも……やさしい……ってば、提督は」
「それなら、いつも以上にさせて」
「あ、はは……じゃあオールナイトに、なりそう……だね。あした……鈴谷たち起きられないかも……けど提督になら…………鈴谷にたくさんして?」
恋する乙女を想起させるような鈴谷。瞳の端には透明な水滴が浮かんでいた。
息が苦しくなる。愛らしくて可愛い。どうしようもないぐらい。
望みを叶えてあげたい――この時ばかりは我を忘れて提督は頷き、心の傷跡は感じられないまでに薄くなっていった。
頬にキス。そのまま下にいって乳房に吸い付き、舌を這わせ、もう片方は全体を撫で回しつつスリスリと人差し指の腹で先端を擦る。
「てーとくってばやらしいィ……くぅん、あゃ、あ、ふにゃ……んンぁ」
嬲られるような強さとは違う、滑り込んでくる性感は緊張を紐解くようにほぐし、シーツの上に投げ出されていた両手は意識する前に提督の背中を抱え込んでいた。鈴谷がそうしている内に提督は片手を下の方に移動させ、気づいてしまった。
「ショーツも穿いていない?」
「へ? あ、……だってするつもりだったから……」
目を白黒させて言い訳をする鈴谷。
自由奔放な彼女はどこにいったのか、普段とのギャップの激しさに頭がくらくらしそう。
見ると股の部分が不自然に変色しているのがわかった。秘所から愛液が漏れ出している証拠。ここを責め立てれば加虐の愉しみが得られるだろうが、提督にそうする気は起きず、反則的な反応と言葉に「かわいい」というストレートな言葉を発した。
「大胆だね」
「んな……の、提督がっ、鈴谷にエッチなことたくさんするから!」
あんまり擽られる言葉を言われると、こっちも我慢できなくなるのだが。
ズボンに滑り込ませた手で愛液を垂らすソコを柔らかく包み込む。中に入れずに指で軽くタッチしただけでも絡んできた。このまま挿入しても良さそうなぐらい。触れた指を舐める。異様に甘酸っぱくて、こうなってしまっているのが 自分の所為なのだと改めて認識できた。
目の前で陰部の液体を舐める――実に羞恥心を煽られる行為をされた鈴谷は、提督の肩を両手でペシペシ叩く。
バカ、変態、スケベ、と罵倒してやる。苦笑しながら取り直す彼。
どうせ悪気はなかったのだろうから、キスを一杯するよう求め、何回も何回も触れ合わせた。心身が蕩けていき、視線は大好きな人の下半身に集中してしまう。
「……鈴谷」
「なかに挿れたい……? てーとくも鈴谷と一つになりたい感じ?」
「ん、出来るなら顔を見ていながらしたいな」
恥ずかしがり屋な一面を持つにも関わらず、相手の顔が見られる体位が好きな鈴谷。
今日の事もあってか、口ではなんだかんだ言いつつも、喜びを隠さずに迎え入れる準備をする。
互いに裸になったら後はもう流れるようだった。言わなくても通じ合う。
股の間に入った提督が鈴谷の細腰を支え、陰茎を定めてとろとろの膣内に挿れていく。
「はっ、はぁぁぁぁ……ひゃっ……」
最後までちゃんと顔を見合いながら。
「まだキツい……愛撫が足りなかったね……」
「かんけいっ、ない。て、とくのがっ……ムダにおっきいからだよぉ……!」
硬く膨れ上がったアレが膣内を押し広げる感触に悶える。挿れられた膣は困惑するように痙攣したが、それも束の間、絡みついてギュウギュウ締め付ける。久方ぶりの性的歓喜、想像していたよりもエッチはずっと気持ちよくて恥ずかしかった。
やる前こそは自分がリードする気だったのに。
彼は、耐えられず全身を震わせる私に優しい声を掛ける。
私が大丈夫になるまで勝手に動こうとは絶対しない。
大切にしてくれている実感、言いようのない、何から何まで幸せな気分。
お腹の奥深くまで入ったアレを締めようと力を込めれば、彼の陰茎が脈動した。
縋るように両手を胸元に掛けたら、それが合図。
「っくぅ……んっ! あ、ゃ、んゃ、あ!」
エッチで高い声が口を突いて出ていく。
始まったばかりだから強くも速くもない動きなのに、肉棒が膣内を通って子宮口に真っ直ぐ連続で当たっていると、数分だけで危ない感覚がもう上がってきそう。
「はぁっ、あん、あっ、んぁあ……てい、とく、ご、ごめん。鈴谷、なんか……おかしくって!」
余裕がないことをいち早く理解していた提督は「止まろうか」と、前後の抽迭を緩めながら訊く。今の鈴谷はかなり感じやすくなっているらしい。
自分はこのままでも充分だから待っても――
「止まんないでッ。何回だって、鈴谷をイカせてくれていいからぁっ……!!」
息も荒く喘ぎながらも言い放ち、全身で提督を引き寄せる。
その拍子に膣の最奥に逸物が突き刺さり、彼が止める暇もなくグリグリと押し上げてしまう。
「あはぁっ、んっくんんん――――ッ!!」
早くも快楽の頂点に達し、溢れ出る愛液で結合部が白く濁る。
提督も陰茎が押し潰されそうな圧迫感にそのまま射精しそうになるが、硬い理性で衝動を抑えつけ、歓喜を多分に含ませた溜息を一人漏らす少女を、やや強い眼差しで見る。
「きもちよかったぁ……あ、ゴメンねてーとく」
満たされた声。言うに、言えない。
「いいよ。鈴谷が気持ちよくなってくれたのなら、私も嬉しい」
「うん、うん。頭真っ白になってすっごくよかった……」
見上げる少女は今味わった快感がもっと欲しいのか、お腹に精一杯の力を入れて催促する。
とろんとした表情のままで、膣壁は不規則かつ淫らに精液を絞り出そうとしてくる。
まだこれは一番上じゃないから。中に出されながらイきたい。そうして欲しい。
優しくしてほしいのに、強く激しくにも犯されたかった。
そう遠慮なく思えるのは慮ってくれる提督だから。
自分がしてもらいたいことを心置きなく言える人がいるのは、本当に幸福なのだろう。
目の前のヒトは、ワガママなお願いだって律儀に叶えようとしてくれる。
唇に重ねるだけのキスの後、離れて躰を起こすと両足をまとめて抱え込み、繋がりを深めた。
トン、と逸物で叩く。半分より少し前まで抜いて、一息に入れる。何度も繰り返す。
「んにゃっ、ぁ、んぅ! い、いィ……! ひん、これっ、ぅあ……いいよぉ」
白い二つの果実が弾み、ぶつかって、ふるふる揺れる。抱えた両足の太ももは指が沈みそうな程に柔らかい。全体的に肉付きの良い肢体の抱き心地は極上で、視覚と触覚をこれ以上なく刺激してくる。
「はぁん! はぁ、はっ、あ! くふぅ……! も……っも、こ……こえ抑えられない……!」
「抑えなくていい。私しか、鈴谷の声は聴いていないから」
「~~ばかぁ! 提督に聴かれるのが一番ヤバいのにぃ……んあ、あぁっ!」
よりよい嬌声を引き出そうと提督の腰の動きが変化する。
直線的だった律動が不規則になり、膣壁を様々な角度で擦り上げられる。新しいやり方を喜ぶように膣は収縮するが、鈴谷は喘ぎ声を僅かでも出さないようにするのに必死だった。
だけど両手で塞ごうとはしないそのいじらしさに、つい笑みが零れる。
本当に可愛い、と言って、もっと聴かせてほしい、と告げる。
優しくしたいと言ったのに意地悪だと思う。でもこれは、偽りならざる言葉だ。
「ズルい、ズルい……ズルいッ。提督に言われたら、我慢できなくなのにっ」
二人の匂いや体液が混ざり合って目眩がしそうな甘ったるい空気を吸い、嬉々として少女は声を抑えるのを止めた。〝我慢しないで〟と言った本人である自分が乱れたってもいいのだ。
彼もいきり立ったソレで膣内をかき混ぜる。
「ああぁ……! は、やぁん! ひぁぁあ! あっあっ、っ~~くぅん!」
力任せにひたすら犯したりはせず、鈴谷の弱いトコロを啄むように突く。
「そ、こばっかり、あっ! く……んぅぅ! やられ、たら、鈴谷すぐイっちゃう!!」
抽迭で鳴らされる衝突音、水音が消えそうな大きな声でよがる鈴谷の痴態に、駆け足で射精感が昇り詰めてくる。出来るならこのまま動いていたいが、精液を欲しがる膣の熱と締まりは耐え難い性感だった。たっぷりと分泌された愛液を塗りたくられた逸物は、血気にはやり、中を満たすように膨張する。
「ダメ、ダメ、そこヤバイのに、すごくいいよぉ……!」
彼としてもこれ以上は堪えきれそうになかった。
一度両足を離す。鈴谷の頭の横に両手を付いて、限界が近い事を耳打ちする。
華のように満面な笑顔を咲かせて少女は顔を寄せてきた。
「てーとくキスしよう……? んっっ、ちゅっ……んく! ひ、はぁ、うんんっ! ちゅう、っぱ」
飲み込めきれずに零れた唾液が顎先を伝う。
「ていとく、ていとくぅっ、いっしょがいい。鈴谷といっしょにイってぇ……!」
言い終わられると膣内がここ一番に狭まる。絶頂の半歩前。
彼も大きく腰を引き、入口から子宮にまで一息で到達するような強さで突き入れた。
「ああぁ!! イっッ、ひぁぁぁああああ……!!」
夥しい量の精液が子宮口に叩きつけられる。
白い首を天井に反り、全身を震わせながらも懸命に受ける鈴谷。待ちわびた悦びの一瞬に意識が飛びそうだった。だが、大量の白濁液を凄まじい勢いで流し込まれる膣はお構いなしで搾り取る。
それどころか今までの経験から、逸物の精力が全く萎えない事を知っている為に〝はやく動いて〟と射精されているにも関わらず、次を要求してくる。
その貪欲さに情欲が荒ぶりそうになるのを抑え、抱きしめた腕の中にいる鈴谷の息が落ち着くまで待つ。彼女はぐったりとしてはいたが、多幸感と充実感に満たされた表情に彼は一人安堵した。
やがて射精が終わり、暫くじゃれつくようなキスをしてから陰茎がゆっくり抜かれる。
膣が出ていくのを惜しがるが、鈴谷が「抜いて」と言ったから仕方ない。
「うわぁ……すごいね~」
壁際に座った提督の肉棒を至近距離で眺める。白くデコレーションされたソレはとても卑猥であった。半萎えにすらなっていない。興味津々といった風に匂いを嗅いだり、先っぽを指で弄ったりする。
回数自体は決して多くないが――提督も艦娘も精力旺盛な所為で――どうにもこうにも一回の時間が長くなりがちだ。だから、彼のモノもそこそこ見慣れているのだけど。
真っ赤な亀頭を指先で弾く。
「よく鈴谷の中に入るよね、提督のおちんちん」
「恥ずかしいから言わないでくれッ」
「ほー? 意外。提督にも恥ずかしいことあるんだ」
「……ロボットじゃないんだ。私をどんな風に思っているの?」
「どんな男の人よりも好きだって想ってる♪」
幹に付着しているのをすくい取ると含む。頭が熱くなる甘酸っぱい味だった。意図せず舌なめずりをして、ぺろぺろと舐める。音が聴こえるように立てつつ口内に飲み込んだりもした。舌を巻きつけながら緩やかに上下する。
「ちゅる、ぢゅ、くぷ、んぷぷ……れろ、れろ。じゅるる……はぁ、はぁ、じゅぷ」
温かい口腔内粘膜に包んで肉棒を綺麗にしていく。指の輪っかで尿道からも残さず絞め出す。
「ん?……ふふん。んく、れるっ、っぷ、んんん……」
頬に手を添えられれば、頬ずりをするように寄って内側でコリコリ擦る。
片目で見上げると淫猥な光景に息を荒くしている彼がいた。頃合を見計い、亀頭部分を覆ってやると急に動きを激しくしてやる。頬の手が強張り、制止の言葉が降ってくるが無視。
綺麗にするだけと思っていたけど……気分が乗ったから、このまま口でイカせてやる。
「ちゅ、ちゅる、んじゅ。じゅるるっ、あぷ、んぷっ! ん~ちゅぽ、じゅぷぷっ!」
提督は壁に背中を押し当てる。モノが唾液と舌で溶かされる……そんな錯覚をしてしまいそうなぐらい鈴谷のフェラチオは勢いがあり、また心地よかった。
「あむあむ、ぷちゅっ、ちゅぽっ、んむぅ、ぢゅぷっ」
ヒドく興奮してしまっているのか勢いを少しも落とそうとしない。
射精するまで離さないと言わんばかりに無我夢中で竿を含み、喉の奥まで何度も往復し、締めつける。
精液と愛液を舐め尽くされた肉棒に今度は唾液がべっとり塗りたくられ、膣に勝るとも劣らないような性感に、ついに提督も堪らず鈴谷の頭を押さえてしまう。
「ぅん……くっ~ちゅぷ、ずっ、じゅる、んっんっんっ! ずちゅっ! ちゅるるぅ……!」
彼の腰に両手を回す。ぐいっと近づき、股間に顔をもっと埋める。痙攣する逸物の根元の奥にある精液を吸い上げようと頬を窄め、尖らせた舌端で亀頭の穴を責め立てる。
陰嚢も手の平で掻いまさぐり、中を柔く刺激し、加減なしでどんどん上昇していく鈴谷の口淫は着実に提督を追い詰めていく。
彼に逃げるつもりはない。だが、背中に壁がある状況は追いつめられたような感覚を覚えさせ、鈴谷には真逆の劣情を感じさせていた。
「はっ、ちゅつ、くぷぷっ! んはっ、ちゅる、くぷ。ジュルル……。じゅっじゅっ」
気に入ったヒトをからかうのは大好き。
もっとシてあげたい。
〝ほらほら出しちゃって。提督のおちんちん、熱いの出したくてビクビク震えてるよ?〟
Sっ気もある少女は大いに満足していた。
おかしくなっちゃえ、とカリ首を注意しながら甘噛み、そのまま左右に歯を動かす。
既に白濁液が充填されていた陰茎を止める事は、我慢強い彼でもできなかった。
ドクン、とそんな出る音が聞こえそうな激しい放出が始まった。
糊のように粘り気のある精液が口内にばらまかれ、小さな口の中をいっぱいにしていく。
飲みきれそうにない量でも鈴谷は唇を離そうとはしなかった。
信じられない事に、こくこくとジュースを飲むかのように喉を動かして胃に送る。
長い射精が終わっても少女は自分が満足するまで弄び続けて、悶えさせた。
「たくさん出たねぇ。ご馳走様、結構おいしかったよ」
「あ……貴女って人はっ。まったくもうっ」
「嫌じゃなかったくせにー。止めなかったのは鈴谷の口が気持ちよかったからだよね? すっごいカワイイ顔してた」
提督にもたれ掛かる。
なにか一言申したそうな顔をするも嘆息で隠された。
墓穴を掘るだけだと判断したのだろう、それはきっと正しい。
今なら何を言われても勝てる自信があるのだ。
寄り添ってきた鈴谷を抱き、提督は壁に背中を預けた。
「――――」
それから小さく吐息をつく。
こんな風だと今日の出来事を忘れてしまいそうだった。
責務を見失いそうになる――だが、今だけはそれでいいのかも知れない。
悲しい顔をするよりも笑っている方がいいと鈴谷は言ってくれた。
不思議そうに傾いている顔を引き寄せ、額と額を合わせる。
「んぉ? そうそう。や~っぱそうでないと」
すぐに満面の笑顔になってくれる。
嬉しくて、楽しくて、愛らしくて、自分もまた同じように。
「私も鈴谷の笑顔は好きだよ」
「相思相愛ってヤツ? ラブラブはいいよね~。すんごく好き。艦娘になって一番良いって思ったのはさ、熊野とか提督、好きな人に触れられることなんだぁ」
つい力を込めて抱きしめたくなる言葉だった。
「ふふ~触ってもらえるのも。あ、初恋は提督だから。そこんとこ重要だし覚えとくようにね!」
「ちゃんと覚えておく。忘れたりなんかしない。鈴谷は……」
「……え、なに。ちょっとそこで黙る? 激しく気になるんですけど」
「いや、本当に。鈴谷と出会えてよかった。貴女の明るさと純真さはとても愛おしい」
大きく一歩、踏み込んできた発言。ぎりぎりの境界線。
これ以上近づけば、後戻りできなくなるような距離にまで。
手を伸ばせば届き、こっちに引き寄せられそうな、今までにない近さだった。
「愛おしい?」
「うん」
「提督は、鈴谷が愛おしい?」
「そうだね――――と。これ以上はくっつけないよ」
「今日の提督は甘々♪ 鈴谷は幸せでーす」
はにかむ。ちょっぴり小躍りしたい気分だった。
「ずっと笑ってようね~」
そう言って。
そこから間を置かず腰を上げると逸物を摘み、花弁に添える。
折角の雰囲気を台無しにされたような感じだが、実を言えば提督も物足りていない。
なので大人しく待つことにした。
「今度はぁ……鈴谷が動いてあげるね。おまんこでおちんちん、いっぱい気持ちよくしてあげる」
体重を掛け、少しずつ温かい膣内に迎え入れる。
最奥まで埋め尽くす剛直を、また来てくれたと肉壁の一つ一つが柔軟に窮屈に刺激する。
そして、大好きな人に満たされて鈴谷はどうしようもなく顔を蕩けさせた。
愛液が軽く噴き出し、提督の肩を掴む両手がきゅっと折れる。
全身に染み渡るような充足感に打ち震え、もっと欲しい、もっと楽しみたいと、腰を前後に降り始める。
逸物の広い傘で気持ちいい部分を擦り、淫猥な水音はさらに大きな嬌声にかき消されてしまう。
「あんっ! んあぁ、はっ、あぁっきもちいぃ……っ! ていとくのおちんちん、すごく太くて硬くておっきぃ! なか、好きなとこグリグリ擦れるっ! ああ、いぃぃ! やあん!」
身体も声も言葉も押さえるのを忘れ、好きなように喘ぎ、唾液を流す。
鈴谷が前後に動きグラインドをするなら、提督は下から合わせて突き上げる。
ここまで乱れているなら遠慮はいらないだろう。
鈴谷のお気に入りの箇所――子宮口付近の壁を打突する。
ベッドの張力を利用した強力な突きは少女の肢体を跳ね上がらせた。
その拍子に乳房も激しく揺れ、蜜に誘われる羽虫のように鷲掴み、荒々しく揉みしだく。
「おっぱいもすきっ……! ああ、どうしよ、ぜんぶきもちいい……てーとくの触るとこぜんぶいい、っの! 腰とまんないし、あはっ、はっ……す、鈴谷エッチな子になってるっ」
ガクガク滅茶苦茶に腰をくねらせ、淫らに叫びながら悶える。
恥ずかしいのに全然、身体が言うことを聞いてくれない。
提督を喜ばせようとするだけじゃなく、自分も気持ちよくなりたいと必死に動いてる。
熱くて汗がたくさん出てくる。
唾液と一緒にシーツや提督に飛び散ってしまう。
だけど彼は嫌そうにせず、むしろ鈴谷で興奮してくれているらしく、速度が上がってきていた。
「んあぁぁ! す、すご、提督すごいよぉ……鈴谷のおまんこ、壊れそう……!」
長大な肉槍に身体の中心を丸ごと刺し貫かれ、絶頂に果てさせられる。
快楽を走らせる神経が敏感になりすぎていた。
ごく短いスパンでも簡単に達するようになってしまい息つく暇もなかった。
「ああぁぁ……‼ も、もう何回もイって、イってぇ! おくが、おく、だめなのに」
それなのに腰は止まらない。いや、止められない。
突き上げはグリグリからゴツンゴツンに変わって、乳房を愛撫する指は食い込んでるのに、大好きな人と一緒に気持ち良くなれてるのが嬉しくて、全然やめたいと思わない。
まともな思考なんかとっくに出来なくなっていた。
「ちゅ、んん、っぷ、あぷ、、むぅ、ん、ちゅる……んんんっ」
鈴谷の方から頭を抱いて唇を求め、舌を絡めあう。唾液を貪るように飲む。
離れていても苦しかったのにこうしたのは、中をかき乱す逸物の胴回りが膨らんだから。
もうすぐ白くて熱いアレが出てくる。また、たくさん注がれる。
そう感じられると鈴谷は尚のこと動きを強めた。
「つぷぁ、射精していいよっ、鈴谷のおまんこの中にっ! 提督の精液いっぱいっ」
甘い嬌声と華のような笑顔で言い放ち、膣内を狭める。
これが射精への引き金になった。
雄の、射精して孕ませたいという衝動に彼が根負けしたのはすぐ後だった。
最後はあらん限りに抱きしめ、肉棒の根本までねじ込むような一突きを食らわせ――
「もう、出る……!」
「い……すずや……も……イ、ク!」
鈴谷も頂点に達した。
どぷっ、びゅるっ、どくん! びゅるるる‼ どぷどぷ‼
「はあぁぁぁぁん――――‼」
亀頭がぶくりと膨れ上がり、乱れる膣の最奥で精を放つ。
びゅーびゅーと驚くペースで注ぎ込む。波乱した川のような奔流であった。
子宮内にどんどん入ってくる粘液の量と熱さに鈴谷は歓喜し、身体を弛緩させながら絶頂の余韻の心地よさに目を瞑る。どろどろした液が結合部から垂れ落ちた。
相手を抱きしめつつ……どれぐらい続いただろうか。
脈動する逸物の射精が終わると同時に深い吐息をした。
温かく幸せな充実感に包まれている。
でも、これで終わりではない。
本来なら、普通の人なら、ここで終わってしまうのだろうけど。
二人の興奮と情欲は少しも覚めていない。鈴谷も提督も動こうとしていた。
「ていとく……このままであと一回ぐらいシよう? そのあとはぁ……」
皮をむかれた桃――提督は今の鈴谷をそうイメージした。
表情は柔らかく、声は甘く、身体は瑞々しい。
何度味わっても飽きそうにない。
気づけば首筋に吸い付き、赤い痕をうっすらだが残していた。
ぼうとしていた少女は付けられた〝証〟を撫で、ふにゃりと蕩ける。
「……」
本当に無邪気で可愛くてしょうがない。
二人は笑い合い、キスを送り、情交を疲れ果てるまで続ける。
繰り返し、繰り返し、愛情を交換し合った。
翌朝――朝日が差し込む五時を過ぎたころに二人は起床した。
施設の部屋でやってしまった事の羞恥心に今更ながら襲われ、「うにゃ~!」と茹でタコになる鈴谷を宥め、シャワーを一緒に浴びたのがつい先ほど。
今現在、鈴谷は椅子に腰かけ、ドライヤーで乾かされた髪をブラッシングされていた。
部屋の掃除は――主にベッド周りの――やってきた管理の妖精が受け持ってくれるらしい。
夜伽の件についてはなるべく話さないでくれと頼んだが、あのニヤニヤした様子では無理な願いか。
「デートしたいなー」
「デート?」
「うんうん。今日、提督と鈴谷の時間が合ったらしよ。街でさ、色んなお店回りたい」
ナイスアイディア、と自信ありげに人差し指を真っ直ぐ伸ばす。
海域の見回りも何とか終わったし、今は執務の作業量もだんだんと減ってきている。
昨日と今日の二日間が鈴谷のタイムだ。少しくらいずるしたっていいだろう。
楽しめる時にたくさん楽しむのが私のモットーだ。
「悪くないっしょ?」
後ろ向きで見上げてくる鈴谷を提督は「楽しそうだ」と言い抱擁する。
「大好きだよ、鈴谷」
驚き、頬をやや赤くし、けれど嬉しそうに。
朝日に包まれながら、二人は手をやさしく握った。
「私も提督のこと大好き!」