その場にいた全員が戦闘そっちのけで現れた男に注目する…
そして誰かが呟いた
「イノシシ狩り…」
うおおおおおおおおお!!
レジェンダリープレイヤーの登場にフロアが揺れる勢いの喚声があがった
いのっちが初期装備の剣
「ロングソード」
を取りだし低く構える
そこへ空気を読んだかのようにBOSSが突進をしかけた
全員が息を飲み、衝突の瞬間を刮目して見守る……
カウンターのタイミングは完璧…
彼の剣は寸分の狂いもなくBOSSの目玉をとらえていた…
しかしダメージを受けたのはいのっちだった、彼はHPゲージの3/4を失い、壁に叩きつけられた
「ぐあっ…………!!」
予想外の出来事に混乱が起きる…
隊長のマンフェスが苦虫を噛み潰したような顔をして言った
「初期武器であるロングソードの耐久値で80層のBOSSなんか攻撃したら壊れるに決まってる……あいつはその辺のシステムをまるで理解してないんだ…!」
そう…
ズルズルと腰を落とす彼は何が起きたのかまるで理解していない
「……こんな時にバグかよ…!」
もちろんバグではない
説明書に書いてあるレベルの仕様だ
BOSSがディレイから回復し、とどめを刺さんとばかりにいのっちに狙いを定める
「くっ……このポンコツ…!こいつを使え!!」
マンフェスが手にもっていた黒い長剣をいのっち向かって投げた
エリュシデータ…
かつてキリトというプレイヤーが使っていたその剣は攻略組の隊長に引き継がれ、彼の魂は死してなお、共に戦い続けていたのだ
いのっちが剣を取り、ストレージに追加されると同時に装備画面を呼び出す
だがBOSSは既に彼の目の前まできていた…
そして衝突…
……………………沈黙……間に合わなかった…
再びフロアを絶望が覆う
そんな中で剣を投げた男はニヤリと笑った
「ギリギリセーフってとこだな」
そう、間に合っていたのだ
彼の剣はBOSSの目玉に今度こそ突き刺さり、HPゲージを一気に撃破寸前まで削った……恐らくそこが弱点だったのだろう
全員の瞳に光が戻った
しかし…大抵のBOSSはHPゲージが1/4を切ると攻撃パターンが変化、或いは強化される…それはこいつも例外ではないらしく、スピードが更に上昇…もはや目で追うことすら困難になり、気づいたら隣のプレイヤーが死んでるという最悪な事態に陥った
犠牲者が更に増え続け、パニック状態の中…伝説の男は静かに剣を構え、目を閉じる…
ゆっくりとその剣は光を帯びていく…彼は何らかのソードスキルを発動しようとしているらしい
…………………………ここだ!
目を見開き、剣を地面に突き刺す
すると巨大なイノシシは体を痙攣させ、悲鳴のような鳴き声とともに崩れ落ちた
……ソードスキル、パラライズ
対象に確率で5秒間の麻痺効果を与える
確率は発動者のレベルに応じて1%~99%に変動する
「やれえええええええ!!!」
伝説の男が吠えた
他のプレイヤーがそれに応じる前に既にマンフェスがしかけていた
「うおおおおおおおお」
……………決着
BOSSが砕け散った
今日一番の喚声が上がり、男女関係なく抱き合い、その喜びを分かち合った
「………なん……だと…!?」
何処かでよく聞くセリフを吐く隊長…
その視線のさきにいたのは全身安物装備のナイフ使い…
「くくく……ふはははははは………!!」
その男の前にはラストアタックボーナスという画面が表示されていた
「ラストアタックボーナスは与ダメージ量に関係なく…最後の一撃を決めた者に与えられる」
装備画面を開き、ドロップした黒いコートのような装備を纏う
「俺はアカツカ…ビーターだ、俺はお前らカスと違ってベータテストでソロで3層まで登った…レジェンダリープレイヤーの称号は俺にこそふさわしい」
ちなみにベータテストのソロでの最高到達層は28層である
アカツカは81層への扉を開き
ニヤリと笑い、去っていった
しかしフロアの歓喜はいまだ収まっておらず、それを見ていたのは精々5人と言ったところだった
「……………犠牲者は?」
いのっちが問う
「………21人だ…」
「すまない………俺が無知なばかりに…」
マンフェスがポン、と肩を叩いた
「あんたはよくやってくれた、あんたが来てくれなかったら俺たちは全滅しいぇいただろう……どうだ?今後もBOSS攻略に参加してくれるか?」
彼らはふっと笑いあった
「やだね」