伝説の男は言った
「やだね」
思いもよらなかった、勝ってなイメージではあるが、戦う彼はとても仁義のある男に見えていた
「さすがにもう余裕だろうと腕試ししにきたんだけど…BOSS戦がこんなヤベェもんだとは知らなかったよ、まぁ応援してるからさ、頑張ってよ」
ポン、と肩を叩き、伝説の男は入ってきた扉から出ていった
それが1週間前…
第82層のBOSSは転移結晶による離脱が許可されており、情報収集の為、それぞれが何度もボス部屋に足をはこんだ
そして今日、とうとう攻略が行われることになった
BOSSの攻撃パターンは暴走後に至るまで調査済み
正直レジェンダリーの手助けが無くとも行けるんじゃないかというレベルだ
しかし手伝ってくれるというならそれにこしたことはない
ボス部屋の前には既にメンバーが揃っているが、開始予定時刻を1時間過ぎてもレジェンダリーは現れなかった
諦めて扉を開けようとしたとき…
整った顔、大きく「女子力」とかかれたTシャツ…ジーパン 、サンダルにキャップ…
そんなラフな格好をした女性がダルそうに歩いてくる
80層代の迷宮区をあんなふざけた格好で突破できるものなのだろうか
それを可能とする者たちは彼らをおいては他にはいない
「あんたは?」
女はキャップのつばを親指で押上、隊長の顔をみた
「あ、私が噂の協力者です。アズマといいます、みなさんいつもご苦……………」
アズマの鋭い視線がある者をとらえた
話の途中で沈黙すること3秒…
彼女は装備画面を開くと剣を2つ取りだし、装備した黄金に輝く2本の剣、長剣というカテゴリにおいて最強の武器、エクスキャリバーだ、しかも2本とも…
直後、彼女は視線の先にあるものに向かって孟ダッシュ…そして2本のエクスキャリバーで攻略組の女剣士をズタズタに切り裂いた
「あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"!!!」
一瞬の出来事、しかも訳がわからなさすぎて誰も頭が回らない
「え?」
「ふぅ、危ないところでした、私より女子力高そうな女は私のヒロインの座を脅かしかねません、なのでそういう輩を見つけたらすぐに始末するようにしてるんです。」
「……………は?」
彼女の頭の上にあるポインタは赤…人殺しの証し…いわゆるレッドプレイヤーだ
「さぁそろそろ行きましょうか、あ、ちなみに今のは二刀流というスキルです、ユニークスキルは基本的に一人にしか配布されませんので前の持ち主が死んだら他のプレイヤーに再配布されるみたいです、あとこの剣はガチャ王が寝ている間に取引画面勝手に開いてパクってやりました、まぁ彼のストレージにはこの剣があと2000本以上入っていたのでまずばれることはないでしょうね、あ、そんな話はどうでもいいですかそうですか」
頭がおかしくなりそうだ、たった今人が一人殺されたというのに誰も何も言わない、みな放心状態
もしこの状況を理解できる者がいるのであればここに来て解説をお願いしたいくらいだ
「あの、わたし昼は行きつけのカフェでって決めていましてですね、もう11時でしょう?なのでさっさと終わらせて街に戻りたいんです。あ、場所は教えませんよ、ヒロインである私のファンが押し掛けて来て台無しにされたくないですからね、まぁそんな輩がいたら速攻切り殺しますけどね!」
そしてようやく殺された女の横にいたゲーム内での夫が女の名前を呼びながら崩れ落ちた
「あ、あなたたち夫婦だったんですね、これは失敬、でも気を落とさないでください、私という絶対的なヒロインがいるではありませんか、さっきの女の事はさっさと忘れて私のファンになるというのはどうでしょう?噂によると既にアズマたんファンクラブなるものが結成されているらしいですよ。あ、そろそろ時間ですね、みなさん行かないなら私だけでさっさと終わらせちゃいますね、あ、というかみなさん邪魔なのでここで待っていてください」
そういって本当に一人でボス部屋に入っていった
「なんなんだあのイカれたやろうは……!誰があんなやつよんだんだよ……………!」
おい!バカな真似はよせ!やめろおおおおおお!!
妻を失った夫が自分の胸に剣を突き刺した、そして砕けちって消滅していった
「こんな…こんなこと………許される訳がない!!次の犠牲者が出る前にあいつを取っ捕まえて監獄へ送ってやろう…!!」
その呼び掛けにその場にいたほぼ全てのプレイヤーが同意、部屋に殴り込んだ
部屋にはテレビの砂嵐のような音が響いていた
アズマが2本の聖剣を高速で振り回し、ディレイを無視してボスをみじん切りにしていた
そしてしばらくしてボスが砕け散った
「ふぅ、油断しました、まさかいきなり上から来るとは思いませんでした、私はそろそろおいとまさせていただきます、次はガチャ王の番でしたっけ?なら次回も彼にまかせてみなさん扉の前でトランプでもして遊んでいてください、正直邪魔なので、あ、よけいなことを言ってしまいましたね、ではみなさん、ごきげんよう」
転移結晶で何処かへ飛んでいった
考えが甘かった、数人がかりでボコって監獄に送りつけてやろうとみんなが思っていたが奴は次元が違いすぎる、あいつ一人で最上階まで登れるだろう
「…………………みんなご苦労だった、では今日は解散…」
ちなみにアズマファンクラブという組織は存在しない