恋愛展開等は前から決まっていたこの話。
エンドをどうするかいろいろ案があって、悩んだ結果、全部書こうと思いました!!
(本当に書けるのか?)
ふつつかな部分があると思いますが、読んでくれると幸いです。
では、どうぞ!!
徳川家康が開いた江戸幕府が265年の年を経て、徳川慶喜による大政奉還がなされた。
これにより、朝廷に統治権が返上され、江戸幕府は幕を閉じ、鎌倉時代からの武家の時代に終止符を打った。
しかし、王政復古を経た明治政府の率いる新政府軍と旧幕府軍との日本の内戦とも言える戦争が勃発した。―後の時代では”戊辰戦争”と呼ばれる。
だが、早期に集結し、旧幕府軍の不意を突く形で、新政府軍が勝利した。そして、明治政府が日本を統治する政府だと国際的にも認められることとなった。
それから、日本は産業革命に突入し、文明開化が行われ、異国の文化が日本に溶け込みだした。街並みが煉瓦の建物やガス灯等に包まれた、温かな雰囲気になったり、服装や髪形も異国風に変貌しつつあった。
そんな明治時代になって、数年が経ったある日の夜…。
ガス灯の灯りがほんのりと照らす暗い夜道が続く先には大きくて立派で、豪華な洋館が窓からこぼれ出る灯りで、美しく着飾っていた。白い壁に包まれたこの洋館の中央には大きくて重そうな扉をした玄関がそびえ立っていた。迫力のあるその扉を開け、通り抜けると、違う世界に入る感覚を感じるだろう。
その感覚は間違っていない。その扉の先には、今まさに、この洋館の外とは違う世界が広がっているからだ。
扉の抜けた先には圧倒的で、誰もが魅了せざる得ない空間があった。
天井にはいくつもの輝かしいシャンデリアがまるで宝石のようにこの大きな空間、会場を照らしていた。そして、その空間には多くの老若男女の紳士淑女が引き締まったスーツに、華やかしいドレスや化粧を施し、談笑や踊っていた。
そう、今宵、この洋館では華族達による舞踏会が開かれていたのだった。
そんなにぎやかで、優雅な舞踏会を後にし、隣接するベランダへと姿を現した少女がいた。
少女は淡いピンクのフリルとレースがふんだんに使われたふんわりとしたドレスを着て、髪は後ろに高く一纏めに束ね、そこにドレスの色と同じ、椿の花を模した花飾りを留めていた。このファッションで、少女の幼くも、可愛らしく、上品さを兼ねそろえた風貌が少女の魅力をを引き立てていた。
しかし、ベランダに出て、柵に掴まる少女の顔はこの舞踏会では似つかわしくない、不機嫌そうな表情だった。その理由はすぐに分かった。
「…はぁ、お父様に出席するように言われて来たのはいいけど、殆ど大人の方の娯楽しかなっておりませんわ。 私ほどの年齢の子もおりませんし…。やっぱり、私なんかが出る必要はなかったのでは?」
少女はこの舞踏会が退屈で仕方なかったのだ。大人達の自慢話や、裏の探り合い、娯楽等が行き交うこの空気感に馴染めなかった。まぁ、まだ幼い少女に理解しろとは難しいかもしれない。
念のため、自分の家の事もあるしで、愛想笑いで挨拶程度はしたが、居心地が悪くなって逃げてきたのだった。
少女はベランダの柵を更に握りしめ、ため息を吐きながら、舞踏会の終了を待っていた。
そんな少女の耳に声が流れ込んできた。
「…こんな場所で浮かない顔して、どうしました? そんな顔されては、せっかくの綺麗で、可愛らしい顔が台無しですよ?」
その声がする方に顔を向けると、誰もいなかった。
確かに声がしたのに、人の影すらなく、まさかお化けかと思ったその時、ベランダに設けられているすぐ隣のベンチから人がひょいと起き上がった。
あまりにも唐突で、しかも近くに人がいる事に気づいていなかった少女はびくっと身体をはね、一歩後ずさりした。
それでも、目はベンチに座る人に釘付けだった。
ベンチに座っていたのは、少年だった。年は少女と同じくらいだ。黒髪はきれいに首筋でそろえて切られており、白いシャツにサスペンダーの付いた黒いズボン、そして蝶ネクタイは緩めて気軽な服装になっていた。…上着はベンチの背に掛けられている。
そんなラフな服装をした少年の事を少女は目を離すことができなかった。少年の左眼が澄んだ青白い色をしていて、目を離せなかった。
「あなたの眼、綺麗……。」
思わず口に出した言葉。少女は慌てて、手で口を覆い、塞いだ。なんだが、言ってはいけないことのように感じたからだ。
しかし、恐る恐る、少年の顔を見ると、心底驚いた顔をしたあと、照れたようにそっぽを向いた。そしてしばらくして、少年は口を動かした。
「そんな事を言われたのは、初めて、かな…? 君はこの瞳、怖くないの?」
少年は切なそうな顔をして、少女に問うた。
「うん!! 全然怖くない!! むしろあのお月様の照らす光みたいで綺麗!!」
少女は嬉しそうに即答し、空に浮かぶ満月を指差した。今宵は空が晴れていて、月がくっきり見えるうえに、月明かりがちょうど真正面を照らしていた。
少年は絶句し、しばらくして笑った。 涙を泣かしながら、笑う少年はどこかすっきりした顔立ちをしていた。そして、少女に向けて
「ありがとう。 少し嫌な事があって、こっちに来たんだけど、君のおかげですっきりした。ここに来てよかったよ。」
「私もここに来てよかった。 あなたのおかげで、気分がとてもよくなったわ!」
そして二人で見つめあい、笑いあった。
それから、舞踏会が終わるまで、二人で色んな話をした。他愛ない話でも盛り上がるほど、楽しい時間を過ごした。敬語だった言葉使いも、話すうちに気楽な感じになって、いつもの自分たちを出し合うことができた。
そうしているうちに、とうとう舞踏会が終わり、帰る時間になった。あっという間に時間が過ぎたような感覚に少女は少年との別れを惜しんだ。 目にいっぱいの涙を潤わせ、少年の腕をギュッと掴んだ。
それを少年は優しく少女の手に触れながら外し、もう片方の手で少女の頭をポンポンっと優しくなでた。
「大丈夫。また、会えるよ。その時、もっといっぱい話して、もっといっぱい遊ぼう。」
「本当に? 約束してくれる?」
「うん、約束。」
約束を交わした二人はそれぞれの互いの家に帰っていった。
その帰り道、両親と一緒に馬車に乗って、帰宅する途中の少女は少年の事を考えていた。
(そういえば、名前聞いていなかった…。)
(でも、いいかな。また会ったときに名前、聞こう…。)
そう心に決めて、少女は深い眠りについた。
だが、その後、少女は少年と会う事はなかった。
だけど、少女はあの夜の出来事をずっと忘れることはなかった。
いつか、また会える。そう信じて…。
そうして、少女は成長し、齢16歳になった。
彼女は今でもこのことが夢に出るほど、少年との再会を待っている…。
プロローグ終わり!!
この話は第一幕『明治編』の重要なファクターとなっています。
彼女の願いがどう物語に転ぶかお楽しみに!!