タイトルからして、貴臣の秘密がバレるではないか~~!!
朝がやってきて、窓から眩しい朝の日差しが入ってくる。
小鳥の囀る泣き声も聞こえてきて、椿はゆっくりと目を開ける。
「!!」 ………がばっ!!
目を開けた先を見て、驚き、悲鳴をあげそうになって、慌てて口元を押さえる。
目を見開いて、見つめる先には、愛しい貴臣が美しい寝顔があった。
(た、貴臣…!! どうして、こ、ここに……!!
…………き、昨日は、……ああ、思い出したわ。貴臣が私に逢いに来てくれたんだった。
それから、色々あって………。
一緒に寝てくれて……。)
驚きで動悸が激しくなっていた椿は、徐々に落ち着いて、昨日の事が夢ではない事を確認して、ほっとした。
それからは、含み笑いで昔もこうして、貴臣と一緒に寝た事があったな…と思い出していた。
(そう言えば、昔、誠斗も一緒に3人で寝た時があったわね…。)
今を思えば、懐かしい思い出を声を押し殺して笑っていた椿。
そこに不意打ちで耳元に、優しくて芯まで響く声が降り注いでくる。
「おはよう…。そんなに楽しそうな顔して、何を考えていたのかな…?
僕の愛しい姫君は…。」
「!! い、いきなり声を掛けないで! 貴臣…!」
「あれ? 嫌だった?」
「べ、別に嫌………じゃない………です………。
で、でも突然すぎて、驚いたわ!!」
「ははは…。ごめんね、椿ちゃん。 なら、今度はちゃんと君が起きていて向き合った時に、してあげるから。ね?」
「も、もう……。 貴臣ってば…。」
知恵熱がでそうなほど、顔が真っ赤になる椿は、ふと時計を見て、もうすぐ世良さんが起こしに来る時間だという事に気づき、慌てだす。
「あ…! 貴臣、起きて!!
世良さんが起こしに来てしまうわ!! 彼女が来たら、大げさに広められてしまう…!!」
「ええ~~、僕はまだ椿ちゃんと居たいし、まだ『おはよう』って言われていないし、それに…、使用人の人達に僕たちの仲を公認してもらえれば、司さんも認めてもらえるかもしれないよ?」
「え!? そ、そうかな?」
「そうだよ、さ、僕が着替えるのを手伝ってあげるよ。」
「だ、大丈夫よ。自分で着替えられるから。」
好きな人の前で裸に近い姿を曝すことになるなんて…!!
椿は動揺し、ベッドから起き上がって、近づいてくる貴臣をただ茫然と見るしかできなかった。
ガシャッ…!!
「おはようございま~~す!!
お嬢~~!! 朝っすよ~~!! いい加減起きてくださ~~い!!」
タイミングいいのか悪いのか、誠斗が窓からいつも通りに起こしにやってきた。
悪気が一切なく、窓辺に座り、頭を掻く誠斗は罰が悪そうな顔で尋ねてくる。
「………もしかして御取り込でした? それともこれから……」
「いいえ!! 何もないわ!! ちょうどいい所に来てくれたわ!!誠斗、おはよう!!」
先ほどまでの出来事を振り切るように、大げさな朝の挨拶をする椿に、誠斗と貴臣は黙り込む。
誠斗は、二人の邪魔ができた事に若干嬉しさを感じつつ、見なくてよかったと安堵する。
貴臣は、いい雰囲気を払拭されただけでなく、自分よりも先に椿に『おはよう』と声を掛けられたことで、この時ばかりは誠斗を羨ましいと感じるとともに、嫉妬するのだった。
そんな二人の心境を知らない椿は、黙りこくった二人を交互に見て、首を傾げる。
しかしすぐに普段通りに接するのが、二人の生きてきた経験が身体にしみついているからか…。
何事もなかったように、笑顔でお互いに朝の挨拶を交わす。
「あ、貴臣もおはよう…!
またね、行ってらっしゃい!」
まるで人妻でもなったように、服を着て、整えて再び窓から降りていく貴臣を愛おしく、少し寂しさも滲ませた笑顔で見送る椿を、貴臣も手を振りながら、気付かれないようにそっと木陰に隠れて、山を下りて行った。
姿が見えなくなったあともずっと見ていた椿の後ろを、誠斗は黙って、椿の今日の服を選び出し、ベッドに並べて準備していた。
「お嬢、準備できましたよ。
早く着替えてもらわないと、俺もお嬢の朝食の用意がありますので。
まぁ、お嬢が朝食がいらないというのであれば、急がなくてもよろしいですが。」
「誰もそんな事言ってないでしょ!?
もう、誠斗はいつも意地悪ばかり!! 少しは貴臣を見習って、女性の心を掴む年強をしたらどうなの!!」
グサッ!!
「…………結構です。俺には必要のないもんですね。」
「何でよ~~!! 誠斗だって、いつもでも面白がって、女性をからかってばかりいたらモテないし、好きな子も振り向いてもらえないわよ…?」
グサッ!! グサッ!!
「…………べ、別にいりませんよ。俺は今もこれからも、お嬢を護る事だけしか考えていませんし、それは一生変わりませんから…。」
椿の何気ない言葉が誠斗の心に深く突いてくる。
何もわかっていない…!!
俺が好きなのは、椿だけだと言いたい!!
でも、それを言えば、今の関係はあっさりと壊れてしまう…。
身分も違い過ぎるし、何よりさっきまで貴臣と共に同じベッドで寝ていたのだ。
自分が愛される可能性がない事も分かっている。
これ以上傷を深くしたくない…。
誠斗は、募る言葉を呑み込み、さっさと椿を着替えさせようと椿の服のボタンをはずしにかかる。
「さぁ、早く支度してください。 折角世良さんと交代して、起こしに来たんですから。
それとも、あれを、世良さんに見られてもよかったんですか?
間違いなく、司さんに伝わっていたぞ?」
最後は、口調をいつも通りにし、呆れながら話す。
「それは…、どうもありがとうございました…。」
反論できないと大人しくなったところをすかさず、襟を開く。
すると、誠斗の手が止まった。
しばらくしても動こうとしない誠斗を訝しく感じ、椿が問いかける。
「誠斗?どうしたの? 」
「………お嬢、これは一体なんですか?」
珍しく声が低く、怒気が含まれているように感じたが、何を言っているのかわからず、誠斗から放たれるプレッシャーで身体が震える。
「な、なにが?」
距離を取ろうとする椿を誠斗がお姫様抱っこして、姿鏡の前まで連れてくる。
「自分の目で見てみろよ…。
まったく…、何でそんなに無防備なんだ…!」
怒りを含んだ声色と口調に少し恐怖を感じてながらも、言われたとおりに自分の身体を鏡で見ると…
「え?………」
椿の首元や胸の周りにいくつもの赤い点が白い肌に刻まれていた。
まるで、花びらみたいに…。
椿は無意識に手を首元に着いた赤い点に触れ、指でなぞっていく。顔を赤らめながら…。
(きっと、私が寝ている時に貴臣が…!!)
恥ずかしくて、顔が更に真っ赤になる椿。
しかし、すぐに正反対に顔色を青くさせ、表情も強張る。
「………そんなに嬉しいんだ? お嬢は…。」
怒っている事が分かるほど表情に出ている誠斗の怒りで、椿は何かなんだかわからないで、恐怖で舌が動かない。
(な、何で誠斗が怒っているのよ…!!)
誠斗と椿は対面したままの睨み合いが始まった。
理屈では分かっていても、あからさまに嬉しそうな顔をすれば、…ね~。
気持ちは嘘はつかないし、腹が立つのは人として道理だね。