いきなり掴みかかってきた誠斗の腕を優しく取り、やんわりと外しながら、貴臣が話を続きを述べる。
「落ち着いて、誠斗。
…そうしてあげたいのは山々なんだけど、無理なんだ。」
「無理ってどういう事だよ!? …!!
まさか!!」
「確かな事は言えないけど、彼が目撃したという話をした夜に、家の中で死んでいたみたいだよ。」
「やはり口封じにあったのか…!」
悔しそうに舌打ちする誠斗に、貴臣が被りを入れる。
「そうとは限らないかもしれないよ? 僕が聞いた話じゃ、家の階段から転んで落ちて、打ち所が悪くてそのまま……って。 実際に事故として処理されたから。」
事故だったという事も伝えて、その線が濃厚だと思う貴臣。
しかし誠斗は、目をギラギラとさせて呟いた。
「いや…、間違いなくそれは殺しだ…。まさかあいつらが絡んでいるとはな…。
一石二鳥というのは、この事か…! 」
「誠斗…?どうしたんだよ、そんな顔して…。」
「あ、悪い…、いやすみませんでした。つい感情が高ぶってしまって…。」
「そんなの別にいいよ。幼馴染なんだし、もっと気楽に話してよ。一瞬だったけど昔みたいに話してくれて嬉しかったし。…それにしてもどういう事なんだい?殺しって言っていたけど。」
「あ、別にこっちの話ですよ。その件は自警隊に任せるとして…。貴臣様に頼みごとがあってきたんですよ。」
「ええ~~~!! 誠斗が僕に頼み事に来るなんて何年振りなんだろう!?
僕たちが成長してからなかったよね?」
「ええ…、まぁ~。今回は俺一人じゃ、難しくて。かといって信用できる人物と言ったら貴臣様しか思い浮かばなくてですね…。」
昔は二人でよく港町を散策し、お互いに何かあったら助けに言ったりとしていたが、成長するにつれ、周りが身分に相当した付き合いをするように迫ってきたため、(と言っても主に上級階級の連中だ。貴臣の家は豪商だから、政治家や上級階級の家との取引が大量に入っていた。その息子として貴臣も教養を受けるようになった)自然と距離を取るようになったのだった。
…誠斗の方から。
身分が違う事は最初から知っていたし、下賤な者を見るような冷たい視線を投げてくる大人達から離れたかったというのもある。しかし、最大の理由は貴臣の将来を壊さないようにするためだ。
誠斗がどんな思いで距離を取っていたかも貴臣は知っていた。だから、あえて今の関係を保っていた。しかし、今回はそう言っていては手遅れになる。
「実は、この港町にまずい物が広まっていて、危険なものなんだ。それをこれ以上拡散する訳にはいかない。だから、それを完全に排除するために貴臣様、御力をお貸しください!」
頭を下げて、貴臣にお願いする誠斗。
突然頭を下げる誠斗に貴臣は慌てる。
「ちょ、ちょっと! 誠斗、止めてくれないか! 僕たちの間でそんな事はしなくて良いよ!
…それに誠斗が今まで頼みごとをしてきて僕が断った事があるかい?」
「………ないですね。」
「…という訳で、誠斗のその頼みごと、僕も手伝うよ。」
まだ詳しい事も聞いていないし、誠斗がすんなりと全て話す訳がないとは分かっているのに、誠斗が『マリハ』をこの港町から排除するための作戦に力を貸してくれると言ってくれた。
誠斗は、込み上げてくる貴臣への友情に微笑を浮かべ、頭を上げる。
「……いいのですか?」
「今更何を言うのかな、誠斗は。 僕がいいと言っているんだよ?
その、危険なもので僕も好きなこの港町を穢されたくないからね。僕にできる事なら何でもするよ。
それに誠斗と二人でやれば、昔みたいに奔放できるしね。」
ウインクして、了承する貴臣をみて、誠斗は声をあげて笑いだす。そんな誠斗を見て、貴臣も一緒に笑いだす。
かくして、誠斗と貴臣の最強コンビが誕生し、『マリハ』の事件を二人で取り組む事になった。
「二人で何かするのっていつ振りだっけ?」
「え~と、あ、ほら! 椿ちゃんが港町にお忍びで出かけた時!」
「ああ~…、あの異国人のあれか…。…それほど昔って訳じゃないっすね。」
「そうだね、意外に息ぴったりだった。」
「昔の感触はまだ消えてないって事ですよ。」
「あ、また口調が戻った! 僕と居る時は、絶対に本来の誠斗でいていいんだからね! …というよりそうしてください! 」
「……はい。いや、ああ…。」
貴臣の肯定しか聞き入れないという凄まじい表情に押され、誠斗は使用人としてではなく、どこにでもいるやんちゃないつもの自分になるのだった。
椿の事はあるけど、それを抜きにしても貴臣と誠斗はお互いに信頼しているからね。頼もしいパートナーですよ!