覆面の男が来訪者の名を呼び、それを動じずに寧ろ笑いを堪えている表情を見せた不二生。隠す気が一切ない不二生は、『マリハ』の件が既に始まりだしてから、自分が関わっているという事が司に知られてもいいと思っていた。寧ろ知られても構わないと不敵な笑みを浮かべていた。
自分がこの計画の黒幕だと知られても問題はない。司が気づき、動き始めたならそれを利用するまで。再び地獄を味わらせてやろうと逆に意気込んでいた。
「今回は儂の事を徹底的に隠ぺいしなくてもいい。それよりも司に儂が裏にいるという事を教えてやってほしいくらいだ。」
実際に口にする不二生の言葉の真意を、訝しく思う事もなく、覆面の男は同じく笑いを溢すだけだった。
「やっとかよ…。俺様はいつでもその気だったけどな。あんたがあの男を今まで放置していたのは何かあるのか?」
「そんな大層な理由はないわ。十二年前のあの時…、あいつもろとも葬り去るつもりだったが、その前にあいつに一杯食わされたからな…!お蔭でこの港町は手に入れる事はおろか、出だし出来なくなったわ!!
だから、今の地位になるまで花菱には猶予を与えてやっただけに過ぎん。
この儂こそがこの港町を統べる者になるのだよ…。」
「……まぁ、あんたの昔の話は大体聞いているからな。その悔しさは分かるぜ…。しかし、あんたがこの港町に固執する理由が分からねぇ~…。ここは神戸港とは比べ物にならないくらい、劣った町だぜ?どうしてこの港町なんだ?」
「………お前にはまだ言っていなかったか? なら、その理由を聞きたくば、今起こっている問題を解決しろ。さすれば、褒美として話してやってもよい。」
「…わかった。それじゃ、今から話す準備はしておけ。俺様は失敗はしないからな…。」
「ところで、一体何の問題が起きたんだ? 異様に警備の数が増えたことくらいしか耳に入ってこなかったのでな。お前から直接聞いておこうと思ったのだよ。」
「『マリハ』の取引禁止令が発令され、商人の売買はもちろん、使用不可、所持不可になるばかりか、既に我々と提携を結んでいた客から『マリハ』を没収、警備強化をされ、ここ数日だけで既に我々の動きにも乱れが出てきた。」
「それだけか?」
「ああ…、港町の巡回も増えた…。しかし、まだ上手く『マリハ』中毒者を匿い、エサを与えてることに成功した。そいつらを元締めに作戦も練ってある。後はあんたから許可を取るだけだ。」
「…なるほど、表立って禁止されているだけだからな…。よし、思う存分、やりたいようにしてみろ。」
お手並み拝見といった笑みで、覆面男に今後の動きを任せると外で控えさせていた従者を連れて、暗闇の中を歩き、姿を消した。
そして、覆面の男は従者が迎えに来ると同時に覆面の男に向けて投げた一体の死体を放り投げて渡された死に絶えた元部下を狂気に塗れた高笑いをしながら、切り刻むのだった…。
……こいつらは気に入らないな~…。不二生も覆面男も誠斗にやられてしまえばいいのさ!!