「………とうとうこの時が来てしまったか。」
苦笑して、誠斗の頭を優しく撫でる父親に誠斗が声を絞り出す。
「………教えてくれ! 父上と母上を殺した奴!! 俺がそいつを殺してやるっ!!そのために俺は…!!」
ゴンっ!!
「…っ!!」
父親に思いきり顔を殴られ、倒れる誠斗。口を切ったらしく、血が出てくるし、わずかだが痛みを感じた気がした。
それよりも拳で殴られた事に驚く。体を起こし、そのまま父親を見上げると、父親が本気で怒っていた。
「この馬鹿者がっ!! 父さんも母さんも死んでいるのだぞ!!? 死んだ人間のために何をすると言った? 殺してやるだと? そのために生きてきたと言う気じゃないだろうな? 」
「だったら、どうだっていうんだ? 俺は………」
「恨みで生きてきたと言われて、嬉しいと思うか!!? 父さんは、誠斗には立派に生きていてほしかった。だからこそ、お前を守ったんだ!!それを、父さんたちのために、あいつを殺すことを考えて生きてきたと思われていたとは、親不孝者めがっ!!」
「………じゃ、俺はいったいどうすればよかったんだ?教えてくれよ、父上…。
あんな死に方されて…、あんな目に遭わされて…、怨まずにいられない訳ないだろう……?」
涙を流し、拳を握りしめる誠斗は封じていたあの時の記憶を再び思い出す。それはあまりに悲惨な出来事で、誠斗が恨みを抱かずにはいられないもの。
あの時の自分の無力さを呪わなかった事はなかった…。
何もできなかった自分が一番腹が立つし、憎らしい…。
俯いていると、誠斗に影が落ちる。父親が膝を付き、誠斗の目を覗き込んだからだ。
「………確かに誠斗に辛い事をしてしまった。しかし、誠斗には父さんたちの事のためにではなく、生きている人のために、そして誠斗…お前自身のために生きてほしいんだ。そのためになら、誠斗の決めた事なら父さんは認める。お前の生き方だ。やりたいようにやれ。…ただし、くれぐれも」
「…”人として恥じる事をせず、真っ直ぐに己の正義を、誠を貫いて生きる事こそが人の証だ。”………だろ? 父上の口癖だぜ? 忘れるかよ…。」
「そうか…、覚えていたか…。なら大丈夫だな。
……お前には、もう守るべきものが既にいるだろう?」
「え?」
父親が歯を見せて笑い、誠斗の後ろの方に指を指す。その指の先に示すものが気になり、振り返ると、そこには満面の笑顔でこっちに手を振る椿の姿があった。
更に、その後ろには司もいた。
「お前も分かっていたはずだ、誠斗。誰のために強くなったのか、誰を護りたいと思っていたか。ずっと前から心で決めていたはずだ。そうだろ?」
「ああ、そうだった。俺は司さんに拾ってもらったんだ。そのお礼をまだ返せていないし、俺の心を癒してくれる椿を絶対に護る…!!」
「そうだ!!その調子だ!!惚れた女を護る事こそ男の見せ場だぞ!!誠斗!!」
「なっ!!父上!!」
椿を愛している事をあっさりと言われて、照れる誠斗の表情を見て、にんまりとする父親。照れ隠しで視線を逸らす誠斗。 そして次の瞬間、二人は盛大に笑っていた。誠斗は、いつも父親が最後には、笑っていた事を思い出し、場の空気を和ませてくれていた事に感謝した。
しかし、今回は違った。
これからが本番だったのだ。
笑い終えると、不意に真剣な表情になった父親の様子に誠斗は訝しく思った。
「どうしたんだよ、父上? 」
ここで夢は終わりで、名残惜しいが、良い夢だったと思っていた誠斗は、真剣な表情を崩さない父親に向き合う。そこに父親の後ろから母親も近づいてきて、父親の隣に立つ。父親は母親と目を合わせると、母親の肩を抱き寄せ、二人で誠斗をみつめる。誠斗は二人の後ろを見るが、幼い頃の自分の姿がどこにもない。
何かが違うと感じた誠斗は、後ろにいるはずの椿と司を見る。
すると、二人は血まみれで倒れており、二人の傍にふてぶてしい笑みを浮かべる男がいた。帽子を目深に被ってはっきりと顔は見れないが、明らかにこっちを見て、嘲笑っていた。そして、その男の手には刀が握られていた。
「貴様~~~~~~っ!!!」
すぐさま駆け出し、相棒を取りだした誠斗は男の脳天目掛けて振り下ろす。しかし、男は霧になって消える。
「何処だ!! 逃げるな!! よくも…!!司さんと椿を~~~!!」
「…誠斗。あいつはもういない。それにこれはほんの挨拶だ。」
「挨拶だって!!何を分からない事を言っているんだ、父上!!」
「いい夢で終わらせてあげられなくてすまない。だが、父さんたちはお前にこの事を伝えるためにお前の夢に出てきた…。」
「どういう意味だよ…。」
「もうすぐ、あいつが動き出す。そして十二年前の惨劇を繰り返そうとしている。…今度の標的は司だ。そしてお前の想い人である椿御嬢さんにも身の危険が近づいている…。」
「なん、だって…?」
「私達はあなたにこの事を伝えたくて、来たのよ。何もしなかったら先程の事が起きるわ。あの男なら…きっと。」
「母上…。あの男は誰なんですか!!」
「…それはもうじき分かる事になる。もうじきだ。刻一刻と事態は最悪へと向かっている。これ以上私達のような二の舞を繰り返してはいけないのだ。
…それができるのは、お前しかいない。何としても。」
そう言うと、二人の姿が徐々に消えていく。
「待ってくれ!! もっと話を聞かせてくれ!!父上!!母上!!
一体、どうしたらいいんだ!!」
「……いずれ知る時が来る。その時は司が全て話してくれるだろう…。」
「待って…」
「……会えてうれしかったぞ、誠斗。」
「私もよ…。誠斗…、生きて…!」
「待ってくれ~~~~~!!! まだいかないでくれ!!父上~~!!母上~~~!!」
掛けて二人の元へと手を伸ばす誠斗に、二人は最後に笑顔を浮かべて、光となって消えた。二人がいた場所へと手の平を握るが、ただ空を掴むだけだった。
「…何が起きようとしているんだ、父上…。母上…。あの時…本当は何が…」
両親が告げたこれからの事が妙に真実味が感じられ、夢の中だというのにまた誰かを失う恐怖と先程の光景で誠斗は冷や汗を掻く。
そしてその後、屋敷が突然燃え上がり、悲鳴が聞こえだし、武器を持った輩がいつの間にか誠斗の周りを囲み、襲い掛かってきた。
そして誠斗は、この悪夢から目を覚ますまでずっと戦い続ける事になった。
もう動かない司と椿を護りながら…。
こうして、この悪夢で両親が残した予言?はこの後、動き出すのであった…。
誠斗…、ショックでしかないよ!!
そして最後の意味深な台詞…。これは正夢になるんだろうな!!怖いぞ!!