「………ふん、お前の言い分は理解してやった。そんなに儂に楯突くのなら望み通り、お前には絶望を与えてやろうではないか。…あの男と同じように、な。」
「私はただであなたに命を差し出す気は全くありません。私がこの世での命を捨てる時は………、あなたもその命を捨てる時です。」
「この儂が死ぬだと?わ~~~~はっはっはっは!!!
これは傑作だ!! この儂を己と道ずれにするって言うのか!?愚か者めがっ!お前に儂を殺せるわけがないだろう!?」
「………ありますよ。」
「何………?」
眉を上げ、不愉快と怒りが入り混じった表情をして、不二生はテーブルに手を置き、ソファーから身を乗り出し、目の前の司の顔と間近で対面する。
「儂を殺せるというのか?」
「はい、そうですよ。あなたは殺される。私が保証します。」
「お前の保証なぞいるか!儂が殺されると、死ぬとよくもぬけぬけと口走ったな!もうお前を生かしておく事もない! お前には死んでもらおうとするか。」
「何をいまさら。あなたは私を殺すと、脅しをかけるためにこんな真夜中に乗り込んできたのではないでしょうか?」
「儂がわざわざお前を殺すと言いにやってきたと?」
「あなたは傲慢な男であり、執念深い。そして何より快楽を得るために標的にした者の絶望に落ちる姿を嘲笑うのが楽しくて仕方がないと思っている…。
そんなあなたが、あなたに警戒している私の元へと出向いてくるとしたら、私を脅す事だ。それで私が怯えて命乞いするとでも思っていたのでしょう?」
「まぁ、結局は脅しが事実へと変わっただけだがな。」
「私は元々からそのつもりで受け取っていました。刃向うものには何があっても徹底的に壊しにかかるのもあなたのやり方ですから。」
「なら、分かっているだろう。この儂を敵に回すとどうなるか…。」
「ええ…。あなたは表では日本帝国のためにと様々な貢献を行い、あなたの支持者も多い上、世間では善人ぶりを発揮していますね。」
「そうだ、儂には色々と付き合いがあるからな。お前が真実を口にしても、信じる者はいないだろう。そして儂の言う事が全て真実になる!
鼻から儂に刃向う事こそが愚かだと言っているのだ。」
「所詮は見せかけです。あなたが裏で行ってきた悪事の種が芽吹いた時、一気に花開く事になる。そうなればあなたに逃げ場などない。」
「……やはりお前とは相いれないようだ。もういい。
お前の処分は既に決定した。お前はもうすぐ死ぬ。」
「ならばそうなる前にあなたの企みを潰しにかかるまでの事。堕ちるのはあなたの方です、不二生!」
ソファーから立ち上がり、ドアへと向かう不二生は背中を向けたまま、司に吐き捨てる。
「その言葉…、そのままそっくり返してやる…! 花菱 司……。
再びこの港町を恐怖が蠢くようにしてやるっ…!」
そう言った不二生は出ようとした瞬間、立ち止まり司に独り言のように、されど聞こえるように呟く。
「そう言えば…、ここに入ってきた時の青年…、顔はよく見れなかったがいい視線を儂に向けていたな…。あの感じ…、葬り去ったあの男の事を思い出す…。なぜだろうな…?」
背中越しで少し振り向いた不二生の顔は殺意を纏った狂気まみれの笑みを浮かべていた。そして書斎室を出て、待たせていた馬車に乗り、去っていったのだった……。
司は不二生が去った後でも、ずっとソファーから立ち上がらず、若葉さんが声を掛けても何も言わず、一人で真剣に考え込む。
そこに窓が開く音が聞こえ、ふと視線を窓の方へと向けると、懐かしい人物が司を見つけていたのであった。
司と不二生の会話が主になったけど、お互いに歩み寄り…、いやいやこんな感じで歩み寄りは出来ないだろうが!物凄く殺意が充満した彼らの話にそんな事できない!