もう、あの頃みたいに三人で心から笑い合える事は出来ないんだろうか…?
貴臣の事を知る前に戻れないだろうか…?
俺がここに来なければ、こんな思いをする事はなかったんだろうか?
仇に会う事も、その仇の息子である貴臣と親友になる事も、椿を愛おしく想う事も…、司に連れられて来ていなければ、俺は…………こんなに胸がざわついて、息ができなくなるほど苦しまずに済んだだろうか?
誠斗の脳裏には、三人での思い出が流れていた。
そして自分が分からなくなってきた。
……俺はここに来るまでは、ただただ俺の家族に起きた出来事が信じられなくて、ただただあいつが憎くて、復讐するために生きてやると決めていた。
……だけど司さんが俺を拾ってくれて、ここに来て俺は、椿に出逢った…。
椿を護りたいという思いに嘘はない。この想いはずっと持っている。そして初めて椿のためなら何でもしてやりたいと思った女なのだから。
今更、俺を否定しても過去を変える事は出来ない。ぐちゃぐちゃに頭が、心がかき乱されそうになる俺を保っていられるのは、愛する椿、尊敬する司さん、親友であり、ライバルの貴臣が折れに生きる希望をくれたからだ。三人のお蔭で心に巣食う闇が浄化されていく感じだった。
こんな日常がずっと続くといつの間にかそう思っていた…。
今もそう思っている…。
だが、俺の両親を殺した仇である不二生が現れただけでなく、今回のマリハの件の黒幕だった。あいつの陰謀を暴き、牢へとぶち込めば再び沸き起こったこの恨みも収まるかもしれない。だけどそうすれば、貴臣との関係も終わるかもしれない。
あいつが貴臣の父親だと知る前、椿への婚約を申し込んだ際に見かけたあいつへ向ける貴臣の嬉しさと誇らしさが垣間見える表情は、父親へ尊敬の念を向けている純粋な青年の笑顔だった。父親が裏でどんな外道をしているのか知らずにいる貴臣が、あいつを逮捕する事で、裏の顔を知り、逮捕した俺をどう思うんだろうか…。
それに、尊敬する父親の正体を知った貴臣を見て、椿はどう思うんだろうか。
二人とも俺を憎く思うんだろうか。
これからの事で決断ができないで、悩む誠斗は、強く握りしめた事で手の平から血が流れ落ちている事にも気づかず、ただ自分がどうすればいいのか考え続ける。
そんな誠斗を見て、司は心が握りしめられるほどに苦しかった。
あの時とまったく同じ状況になっている現状に、自分が何もしてやれていない悔しさと誠斗の心境を考えて苦しい。
だが、司はもう今までのように過ごせない事は分かっていた。だから、司は誠斗に近づき、両頬を思い切り叩く。
パチンっ!!
両頬に痛みが走り、誠斗の視界が目の前の司の顔で塞がれる。驚いて何も声が出ないでいる誠斗に司が心を込めて、話し出す。
「誠斗…、誠斗が何を考えているのか、何を苦しんでいるのか…、痛いほどわかる。もっとこの日常が続けばいいと私も思った…。
だが、誠斗…。
決して真実から目を逸らしてはいけない…!
逃げたくなることもある。見ていないふりをしたくなることもある。それでも、前を見て、己の心のままに動かないといけない事があるんだ、誠斗…!」
そう語りながら、司は誠斗の両頬を挟む形で置いていた両手のうち、右手を自分の胸に置き、胸を掴むようにして強く握りしめた。
「これから先、怨まれようが、憎まれようが、関係が壊れようが、今目の前に起きている悪事を見逃す事は、正しいと言えるだろうか?
もし鳳の悪事をここで食い止めなければ、罪もない港町の人々が死んでいく事になる。それだけではない。恐らく鳳は日本帝国を我が物にしようと動き出している。鳳がこの国の首相となれば、天皇の身も危うくなり、日本帝国は崩壊するかもしれない。その危険性をあの男は持っている。
誠斗…、大事なものを護るために見逃した事で、更に大事なものを傷つける事になるかもしれない事もあるんだ。」
司の言葉にはっと気づいた表情をする誠斗。
「恨まれるのも憎まれるのも、感情があるからできる事だ。もっと言えば生きているからそう思えるんだ。私は君にも椿にも生きていてほしい。もちろん貴臣君にも。
だから、私は生きていてくれるなら、この先恨まれたとしても、ここで鳳不二生を必ず倒してみせる…!」
司の決意を聞き、誠斗は自分がなにをそんなに悩んでいたのかと馬鹿らしく思えてきた。
(そうだ、俺は馬鹿だ…。
危うく、じぶんの心さえも見失う所だった。
「悪事を絶対に許すな、己の正義を貫き、悪を正し、善を助ける…。それこそが男の魅せ場であり、己を誇るべき信念だ。それを絶対に忘れるな。」
そう言ってたよな、父上…。
父上のその信念を俺は、未来の事を考えて折りそうになった。
そんな事しては、あいつとやっている事が同じだ…!
今は先の事を考えている場合じゃない。先の事のために今を考えて動くべきなんだ!
司さん…、有難うございます。俺も貴方と同じ思いですよ。)
ようやく踏ん切りをつけた誠斗は、司の瞳を真っ直ぐに見つめ返し、一礼する。
「申し訳ありませんでした、司様。少々取り乱してしまいました。もう大丈夫です。あいつを牢へぶち込むためにも俺は闘ってみせます…!」
「………そうか。」
誠斗の揺らぎのない眼差しを見て、司は安堵したと共に悲しみも混ざった心境を持った。これでよかったかは司は分からない。間違っていたかも…。この結末の答えは、誠斗に託すしか…。
「それで司様、折り入って頼みがあります。」
「何だね、誠斗?」
「この件が解決した時…、俺の知らないあの時の事を…、全て教えてください。」
「……………分かった、全て話そう。………約束だ。」
遂にこの時が来たと、あの時の真相を話す機会が来た事を司は苦笑いしようとして、失敗した表情をし、誠斗はこれ以上触れる事はなく、一礼した後、書斎室を後にしたのであった。
投稿がものすご~~く遅くなってもうしけありません!!正月からの多忙で寝落ち連続してしまってました…。
やっとの思いで、書き上げましたが、この先、真剣に投稿していきたいのでペースも遅くなると思いますが、どうぞこれからも読んでください!!その分密度の濃い展開をお送りできたらと思いますので!!
改めて、マリハの件と向き合う決心をつけた誠斗はどうやって捜査するのか~~!!