妻の衝撃的発言で被告人の警備員の証言と食い違う事を自警隊の一人が指摘する。
自分が聴取したが、被告人は「仕事中に、妻とのことで口論となり、逆上して、殺してしまった。」と。そう動機を話していたと語る。もう少し、話を聞く事にした誠斗は妻に夫と殺された警備員について知っている事を聞くことにした。それが大収穫となる。
「夫である高橋健介と夫が殺したと世間が決めつけている警備員の高坂公昭(こうさかきみあき)、そして私、高橋梅子はこの町で一緒に育った幼馴染で、子供の頃はよく三人で遊んでいました。特に、ケンちゃんとコウ君は…、あ、すみません。これ、二人のあだ名なんです。つい。」
「大丈夫ですよ。三人とも顔なじみだという事は分かりました。どうぞ、続けて。」
「あ、はい。ケンちゃんとコウ君はとても仲が良くて、いつも肩を組んで歩くぐらいでした。二人とも正義感が強くて、近所の子供たちにいじめられている私を二人で助けてくれました。そして二人は人を助けられる男になるって私に誓ってくれて、警察官になるために経験を積むんだって言って、船の停まり場の警備員になったんです。
だから…、あの二人にとって互いが大切な存在なんです! そんな二人が私の事で揉めるなんてありえないんです!!」
涙目でそう語る梅子の話を聞いた自警隊と誠斗は顔を見合わせる。そして自警隊の一人が梅子に聞く。
「では、そんな二人がなぜあの日、しかも真夜中で船の停まり場の警備小屋にいたか、理由をご存じないですか? その日非番だったというなら、高橋氏から何か言われていませんか?」
そう。お互いを信頼し合っている二人がどうして、あんな時間に仕事場で、しかも非番のはずの高橋氏がいたのか。妻になら出掛ける際に、話しているかもしれない。
「事件があった日は実は私の誕生日だったんですけど、ケンちゃんは本当は仕事が入っていたんです。夜なべしての警備をコウ君とするはずだったんですけど、前日になって、『明日は非番になったから、祝えるよ』って。それでその日は盛大に祝ってくれたんです。それで、お酒も飲んだので、私は床に入りました。先に休むといったときは、ケンちゃんは出掛けるなんて言っていませんでした。」
「えっ! 高橋氏は本来はあの日に被害者と同じように仕事に入る予定だったんですか!?」
「はい。そうです。」
「そんなことは一度も言っていなかった。」
梅子の証言に驚きを隠せない自警隊の二人。初耳だったのだろう。誠斗にしては勤務実態等を捜査の際に調べておいてほしかったが。
「調べなかったのか?」
だから、呆れ交じりに問いただす。
「だって、俺達に自首してきた時、警備員の仕事着をしていたんだ!非番の人間がわざわざ仕事でもないのに着る訳ないじゃないかっ!
だから、仕事中に事件を起こしたっていう供述に納得したんだ。」
自警隊の情報に訝しく思い、詳しく聞こうとした時、梅子が突然咳き込みだし、荒い息をし出したため、近づいて呼吸を楽にしようと肩に触れた瞬間、口から大量の血を吐いて椅子から崩れ落ち、床に倒れた。急いで意識を確認するが、応答はない。誠斗はすぐに自警隊に医者を連れてくるように命じ、誠斗は梅子を仰向けに寝かせ、呼吸をしやすいように、顎を上に上げる。そして、できる限りの介抱をし、医者の到着を待つ。数分後、近くに診療所を営んでいる医者が駆けつけ、手当てをする。そして、応急措置はしたため、このまま診療所に連れて行くと告げ、自警隊に彼女の運搬をお願いいした。
彼らが個室を後にし、残された誠斗は店の者に代金を払い、店を後にする。
そして、時間がかなり経っていた事を知り、急いで屋敷に戻る。その間、先程の事を思い返す。
梅子の事は自警隊に任せたし、何かあれば連絡するように言っている。だが、梅子と自警隊の証言で分かった事は新聞に載っていた事件の内容とまったく違うという事。
非番のはずの高橋氏がなぜか仕事着を着て、現場を訪れたこと。
なぜ彼はそんなことをしたのか。
その理由が二人に何を意味しているのか。
屋敷へと足を急がせる誠斗はこの事件についてまだ調べる事があると確信した。
(これは、誰も知りえない真実が隠されているかもしれない…!!)
ドキドキ…!! 真実って一体…!!
それを知っているのは…今のところ、私だ! はははは。