確かに、さすがにこんなにしつこい人たちは嫌だな~~。
舞踏会の会場に入った私は華やかな装飾を飾った会場を見渡す事も出来ずに、会場入りしてすぐに御曹司達に囲まれてしまった。
皆、午後のお茶会で参加していたようで、私にご機嫌を伺い、心配する雰囲気を醸し出しながら近寄ってくる。私は表面上では令嬢らしく礼儀正しい会釈で愛想笑いして、返す。でも、やっぱり内心は彼らの見え透いた下心?というものを感じて嫌気を刺していた。
ちなみに、お父様は会場入りして早速囲まれてしまった私を助けようとしてくれたけど、お父様も他の強面の叔父様方に捉まってしまい、奥の方へと連れて行かれてしまった。そして誠斗はというと…、舞踏会入り口で置き去りになっていた。なっていたというよりはさせたの。使用人兼護衛の身分だから、壁際で控えているのが慣わしなのだ。
本当は誠斗を休ませてあげたいけど、私がいるから離れていても目の届く場所で私を見守る事しかできない。この状況で誠斗を使用人扱いする事は心苦しいけど、自分を偽っていかないと落とされる世界。ここは耐えるのよ!と自分に言い聞かせて、退屈な御曹司達の話を聞く。
「それにしても、お茶会の際の和服も大変よくお似合いでしたが、ドレスも大変よく似合っております。」
「ええ、まさに春を運ぶ妖精…、私は貴方との出会いに感謝しています。」
「私もです。それで宜しければ、私とご一緒に踊っていただけませんか?」
「いえ、私とぜひお願いいたします。」
御曹司達はお茶会で話せなかった分、そして誠斗が傍にいない事を幸いと私に近寄り、ダンスの誘いをしてくる。その他者を押しのける醜い姿を鉄壁の笑顔で見ていたら、あんなに強く自分に言い聞かせたのに、もう私の口からはため息が出たがっていた。
そんな考えでいるとも知らずに私とお近づきになり、あわよくば、私を手に入れようとする御曹司達の考えが見え見えで、早く私は解放されたくて、身体は拒絶してきた。
そして私がダンスの誘いを受けない事に辛抱できなくなったのか私を取り囲む御曹司のうち誰かが私に手を伸ばしてくる。私は一歩後ろに下がり、身を縮こませる。
(助けて…!!! )
私に手を伸ばす手が私の肩を掴もうとした時、突然現れた男性がその手を握りとめ、私の身体を抱き寄せ、守ってくれた。
「なっ!!」
「君、淑女に簡単に触れてはいけないよ?それに彼女はすっかり怯えてしまっている。君達もいつまでも彼女を取り囲んでいないで舞踏会を楽しむべきだと思いますが?」
私を助けてくれた人は周りの前者を手を伸ばして触れようとした御曹司に、後者を私を取り囲む御曹司達にそれぞれ向けて告げた。
その言葉に顔を赤らめ、退散していく御曹司達。私は心からホッとして、安堵の息を吐く。そして助けてくれた方にお礼を言おうと顔を上げた時、本当に驚いた。
「え? 貴臣?どうしてここに?」
そう、私を助けてくれたのは貴臣だった。思わず、人の目がある事を忘れ、素の私で聞き返す。それを貴臣は注意せず、いつもの癒しの笑顔で安心させてくれる。
「あれ?私、言ってませんでした?私も華族なんですよ。」
「嘘だわ!だっていつも貴臣のお母様のお仕事をお手伝いしているって言って…。」
「うん。母上は日本帝国有数の貿易商を営んでいて、父上が華族で、今の明治政府の中枢に上り詰めた政治家なんだ。だからほら、僕にも招待状が来たんだよ。」
そう言って貴臣が取り出したのは舞踏会の招待状だった。ちゃんとそこには捺印があった。
「そうなの?全然知らなかったわ。」
「ハハハ、ごめんね、椿ちゃん。」
「ふふふ。ううん、いいの。教えてくれてありがとう、そしてさっきは助けてくれてありがとう、貴臣。」
一人でこの憂鬱な戦場にいるんだって思ってたから、よく気心も知れた貴臣がいてくれてよかった。それに…。貴臣の笑顔と癒してくれる雰囲気がほっとするし、嬉しい。
それが込み上げてきて、くすくすと笑ってしまった。それを見た貴臣も一緒に笑ってくれる。そして貴臣は私にてを伸ばし、腰を曲げる。
「椿お嬢様、もしよろしければ、私と一曲踊っていただけませんか?」
貴臣が私にダンスの誘いをしてくれた。私はもちろんそれを受け入れ、翳してくれた手を握った。
そして私と貴臣は曲が流れ、既に踊っている紳士淑女の方々の場所まで赴き、楽しく踊った。
踊っている間、もう私は周りが目に入らなくて、ただ貴臣しか目に入らなかった。キラキラした世界で私はこの時、自分らしくいられた気がする…。
カットしたけど、椿の踊っている姿をわきで見つめる追い出させた御曹司が羨ましそうに見つめるのでした。
自業自得って感じかな。