自分で萌え笑い…。
「…わぁ~!綺麗…。まるで絵本の世界に来た気分だわ…。」
目の前の光景に目を奪われ、自分がいまだ仮面の彼の腕の中にいる事も忘れて見入ってしまう。
蔓から咲き誇る白い大輪の花が存在を主張するかのように雲の陰に隠れていた花々まで姿を見せる。程よい夜風の舞で白い大輪の花々は踊っているかのように揺れ動く。そして今宵の満月の月光で照らされ、光り輝いていた。
うっとりして見惚れていると、彼が微笑する。
「気に入ってくれたようで嬉しいよ。ここは誰も知らない場所でね。俺と………椿だけが知っているんだ、今ね。二人だけの秘密の場所。」
最後の台詞はなぜか私の耳元で囁いてきた。その引き込まれる声色でまた腰が抜けそうになるのを必死に堪える。
それは…!止めて…!
動悸が激しくなる鼓動を聞かれているのではないかってくらい動揺する私はこのまま抱かれているのは身が持たないと彼の胸を手で押して離してほしいと訴える。彼はそんな必死な私の小さな反抗を楽しんでいるようで、私から顔を背けて笑いを押し殺す。
私、そんなに笑うほど、可笑しな事をしたのかな?
少し頬を膨らませて、不機嫌な表情をする私を見た彼は謝罪した後、ゆっくりと下ろしてくれた。その間も彼は笑っていたけど。
ようやく下ろされた私は近くの白い大輪の花まで歩いて、咲き誇る白い花を優しくなでるように触れる。
「この花って何て名前なんだろう…?」
「クレマチスって花だ。”蔓性植物の中では女王”と言われるほどの花なんだ。まさに椿に相応しい花だな。」
答えを求めていないただの独り言だったけど、彼は聞こえていたらしく、教えてくれた。
「私に相応しい?」
「ああ。そのクレマチスの花言葉は『優しい心』…『旅人の喜び』…なんだ。
優しい心で人を包み込む椿に相応しいだろ?
俺はこの花が椿そのものに思えて愛おしい…。」
一面に広がるクレマチスの花々を見渡しながら、彼は紡ぐ。
仮面で表情が分からないけど、彼の言葉には私に対する愛が込められているって口調と声色で分かった。分かったからこそ、私はどう返事していいか分からず、硬直する。
多分だけど、ううん。絶対に今の私は顔が真っ赤になっているわ。顔だけでなく、耳も・・、肌が見える全てが赤くなっている気がする…!
照れと恥ずかしさを感じる私の元に、彼がクレマチスの花を一輪、手にして近づいてくる。そして顎を優しく掴まれて、顔を持ち上げられたかと思ったら、私の髪を優しく撫でてくる。
私はその間、仮面の奥から私を見つめる彼の熱い視線に捉まって、目を逸らしたいけど逸らせない。
「…よし、と。はい、良く似合うよ。」
私に微笑みながら、私の手を握ってどこかに連れて行く彼。
「え? あ、あの…どこへ?」
「大丈夫、すぐそこだから。」
そして近くのクレマチスの花のように月光で青白く輝く白い四阿を過ぎた場所に小さな池があった。池は澄んでいて、空に浮かぶ満月や星が水面に鏡のように映っていた。
そこに彼は私を連れて行き、足元に気を付けるように言いながら、水面に顔を覗き込んでみてと彼は言う。
彼の言うとおりに私は池の水面を覗き込むと、そこには私の顔が綺麗に映り込んでいた。そして私の髪にはクレマチスの花が飾られていた。
「これって…」
「さっきも言っただろ?椿に相応しいって。良く似合っているよ。本当に…」
「あ、ありがとう…。」
恥ずかしさで居た堪れなくなって、また顔を背ける私に彼は私の頬を優しく撫でる。更に腕を回して私の腰を持つと、彼の胸へと私を抱き寄せる。その間もずっと私達は見つめあったままで。
そして彼の顔がだんだん近づいてくる…。
え?このままだと、私…!!
これから起きるであろう出来事を頭で想像する私はそれを心から望んでいる自分がいて、驚きつつも浮かれた熱を持つ私は顔を近づいてくる彼を受け入れるため、目を閉じるの…。
夜風が運ぶクレマチスの香りが私達の周りに漂う。
まるで私達を囲むクレマチス達が私と彼を祝福してくれているみたい…。
キャ~~~~!!!
ダメだ…!! 萌えすぎてしまって…!!
再会したその夜にここまでいい雰囲気を持っていくとは…!!
中々の手腕だな、彼は!!
鼻血噴射しそう…!