いや、できる!!やって見せようではないか!?
ベンチから体を起こし、近づく俺を椿は目をまん丸くして、見つめてくる。その表情にはほんのりと朱色に染まっている。
その表情が可愛らしくて、触れたくなった俺は、椿の頬を両手で包み込んで、涙を拭り、微笑んだ。いきなり異性が触ったのだから、警戒心を解す為である。
(でもそれを気にしなくても椿は仮面の彼に既に心惹かれていたんだけど。)
そして、もっと可愛い姿を見たいと思った俺は冗談を言うと、椿は慌てた口調で夢でも俺と逢っていたと嬉しい事を言ってくれた。
椿は思わず口走った夢の事で顔を真っ赤にして、隠してしまった。
だけど、その仕草も何もかも可愛くて、輝いているように見えて、俺の方も照れてしまいそうになる。
耳まで真っ赤にしている椿を見ていると、今、椿の頭の中が俺だけだと分かって、余計嬉しくなる。だから、笑いが毀れて、この時が楽しく感じる。
もっと、椿の可愛い所を見たい…。
そう思うと、椿の耳元で礼を言ってみた。
「くくく…!! そんなに耳が真っ赤になるまで私を想ってくれていて嬉しいです。
ありがとうございます。」
突然耳の近くで紡いだ言葉と声色にぴくっと体が反応して、椿は腰を抜かしてしまった。
俺はすぐさま、崩れ倒れる前に椿の腰を持って支えた。ほんの少し力を入れたら、簡単に折れそうな、繊細な椿の細いくびれに触れ、俺は無意識にその手を下に撫でるように下ろしそうになるのをもう片方の手で抓る事で何とか理性を保った。
危なかった…!! 本当に、危なかった!!俺はあとどれくらい正気でいられるだろうか…?
そう内心で冷や汗を掻く俺はこのままベランダにいるのはまずいと思って、椿を御姫様抱っこしてベランダの柵を軽い身動きで飛び越えて庭を歩きはじめた。
俺の理性を抑えるためっていう理由もあるが、椿がベランダに来てから、椿狙いの御曹司達が椿を探しているのを見ていたから、一人占めするため、俺しか知らないあの場所へ連れ出そうと思ったのだ。
そんな俺の蠢く感情を知らずに…
「あ、あ、あの! 下ろしてくださいませ!自分で歩けますわ!」
顔を真っ赤にして、上目使いで必死にお願いしてくる椿。
…!! …だから、そんな顔で見つめてくるな…! 可愛過ぎて、喰らいたくなるんだよ…!
仮面しておいてよかったな。今の俺の表情を見られなくて済む…。
とにかく落着け…!俺!!
………よし、今度は椿を黙らせるか。どうやら椿は俺の声が好きみたいだしな…。
「大丈夫ですから、私の腕の中で大人しくしていてください。
せっかくの可愛いドレスが汚れてしまいますよ?
…それに私は椿と二人きりになりたかったんです。あそこではあなたを狙う馬鹿共が近寄ってくるでしょう?」
ポンッ!!!
俺の告白で椿は頭が爆発して湯気を出した…。
作戦成功…!!
もうお願いをしないだろうな。
……それにしても、こうして間近で見てみると、高級陶器のように完璧な容姿に、透き通るような瞳、ドレスから覗く白い肌…。
月明かりで照らされる椿のなにもかもが美しく俺の眼に映り、独占力が掻き立てられる。
だが、それは今この時だけしか持てない夢だ…。
せめて、今だけは、椿のこの美しい姿を眼の奥に刻み込みたい…。
この柔らかい肌の感触を味わってみたい…。
そう心の中で考えている俺を椿は気付かず、俺の目的の場所へと着いた。
そこは白い大輪の花が咲き誇った情景に囲まれ、これまた白い品質の良い石で造られた四阿だった。
ここからも理性ブレーキのオンパレートになること間違いナシ!!
夢だと言っているけど、夢ではなくなるぞ!!