これはもう乙女の胸キュンシーンだよね!
危ないところを助けてくれるドキドキ展開!!
椿が案内されるがままに人気のないところを歩いている頃。
港町を駆け巡る二人の青少年がいた。
「ごめんね、誠斗。僕が目を離したばかりに。」
「それは後でいい。まずはお嬢の安全確保が先だ!」
店を出た後、帰りの遅い椿が気になり、様子を見に外に出た貴臣は姿が見えない椿を案じ、店に戻って誠斗に事情を話し、二人で椿を探していた。
「ったく、どこまで行きやがったんだ!?」
「こんなに人気が多いとさすがに見つけにくいよね。 何かいい方法はないかな。」
息を多少切らしながら、焦りの表情で港町の中を走り回る誠斗と貴臣。誠斗は港町の構図を頭に叩き込んでいるため、椿が好きそうな店にはすべて回ったが、見つからない。もしかしたら、誰かに連れ去られたのか…と考えていた。そうなると、絞り込む事が難しくなる。どうしたものかと思案していると、誠斗と店で食事していた自警隊の仲間が手の空いている仲間を連れて応援に来てくれた。彼らは血相を変えて店を飛び出した誠斗を心配し、人手をかき集めていた。誠斗は内心照れ臭かったが、一刻を争う事態になる可能性があったため、人気がない所や不審者が屯する所も探すように指示した。だが、椿がどんな服装で港町にお忍びに来たかわからない。そこで、貴臣に椿の服装を尋ねてみると…、
「椿はね! 桜の柄が入った黄色の振袖の着物で、赤紫の袴を履いてて、濃茶髪はこめかみの髪を後ろに束ねているんだよ! それ以外は腰までの長さに下ろしていて、椿の絵柄が入った髪留めをしているんだ! もう可愛いから! 色白で円らな瞳だから、マッチしていて…!」
椿がいかに可愛らしいか話し出して、収拾がつかなくなる。誠斗が止めに入るが、貴臣の話す椿の特徴を聞いた自警隊の面々は一気にやる気を上げまくった。ちなみに集まった自警隊の面々はみんな若い男性だ。
その男心の興を生じたためか、どんどん椿の目撃情報が入ってくる。
「なんか怒って店の前を歩いて行った少女を見かけたと店主が言ってたぞ。」
「町外れの方に向かう所を見たって。」
「一人で歩いている所を見かけた後、しばらくして、誰かと歩いていたらしい。」
「異人だった様だ。」
「かなりしっかりした身体をした若い異二人と歩いていたらしい。」
「うちの一人は金髪だったようだ!」
「出店通りを過ぎて、船の停まり場にいったのを見たって。」
こうして、椿の目撃情報が入り、誠斗と貴臣は情報をまとめる。
「椿は今、異国人の二人と一緒にいるようですね。」
「だが、なぜ、船の方に行く必要がある? ただの案内なら、人がいる出店通りで十分だ。そうせずに停まり場に向かったって事は…。」
「そうですね…。 何か椿にする気かもしれませんね。急がないと椿が危ないです。」
貴臣と顔を見合わせ、互いの意見が一致しているのを視線で理解すると、二人は船の停まり場に向けて走り出した。
★★★
一方、船の停まり場では、親切な異国人の二人に導かれながら、多くの停船する貿易船を見て、目を輝かせていた。初めて見る異国の船に感動し、逞しい大人の雰囲気を出す異国人にも興味を持った。あくまで、椿の主観によるものだ。
しかし、椿の主観とは裏腹に、異国人の二人は椿の容姿を頭から爪先までをゆっくりと視線を下ろす。その視線には色欲が入り混じったものだった。胸や腰を見る時は微笑を浮かべ、舌先で唇を舐め回していた。そう、この二人は迷子になっていた椿を見かけ、リンチするためにここまで誘ったのだ。初めはどうやって話しかけようかと思ったが、意外と英語が話せる娘だったため、余計な頭を使わずに計画が進んだ。
「”じゃ、そろそろ行くとしようか? レディ?”」
停泊する船を見続ける椿に英語で話し、船への乗船を促す。椿にも特別に船の中を見せてあげるといって、ここまで連れてきたのだ。
「”ありがとう、ございます。”」
まだ勉強中のエイゴのため、所々躓く部分もあるが、頑張って話す椿。
(何とか話は通じているわ。 よかった…。 これも貴臣のおかげね!)
心の中で貴臣にお礼を言う椿はまだ自分の身が危ない事に気づいていない。
そのまま、彼らが案内する船に到着し、船に乗り込もうとしたが、初めて乗る乗り物のせいか、足が震えてしまう。興味はそそるけど、何かあるかわからないから、逆に怖い…。船を見上げながら、立ち止まった椿を訝しく思い、「”心配ないよ!?”」と椿の手国を掴み、引っ張る。この時になって、ようやく椿は恐怖を感じた。抵抗できないほどの力で手首を掴まれ、強引に引っ張られる目の前の異国人がさっきまでとは別人に見えた。必死に掴まれている手を離そうともう片方の手で叩いたり、引きはがそうとするが、全然歯が立たない。抗えない力でどんどん引き寄せられる状況にただ恐怖しか感じられなかった。
(いや! 怖い!! さっきまではあんなに優しかったのに。
助けて…、助けて…! )
恐怖で口がうまく動かない椿は心の中で助けを求める。そんな中、脳裏に浮かぶのは、大好きな幼馴染の二人…。どんな時でも一緒だった頼れる幼馴染…。二人の事を思い浮かぶと自然と言葉が椿の口から出た。
「助けてっ!! 誠斗~!! 貴臣~!!」
その椿の願いが届いたのか、さっきまで掴まれていた手の圧迫された感触がふいになくなった。そして、目の前には突如現れた影に異国人達が吹っ飛ばされる光景が映る。
体のバランスが保てなくなり、後ろへと倒れそうになった椿を背後でしっかりと支える影が椿に声を掛ける。
「大丈夫ですか!? よかった! 間に合って…!」
「えっ…。 貴臣?」
首を上げて顔を見ると、そこには貴臣の顔が。そして、目の前には誠斗が異国人達を睨みつけながら立っていた。誠斗は今にも暴れそうなほど、怒気を含んでいた。
「椿はここにいてね。」
そう椿に声掛けすると、貴臣は誠斗に近づいて、横に並ぶ。
椿は二人の幼馴染の心強くて、逞しい背中を見て、ほっと息を吐いた。
きゃ~!!
間に合ったぜ! 救世主!!