※この作品はR-18です。

運命のシナリオ   作:薔薇大書館の管理人

7 / 122

 わいせつ未遂事件、決着!

 わいせつ…なのか?


優しい手の温もり

 

 

 

 

 

 

 椿を背に庇いながら異国人の二人と向き合う誠斗と貴臣。

 

 誠斗は一瞬視線を動かし、椿を見たが、一声も声掛けなかった。椿には誠斗が起こっている事が分かったが、自分を見た時のあの視線は間違いなく怒気を含んでいた。

 

 (あれ? 私を助けに来てくれたのは嬉しいけど、なんか私、怒らせてる。 さっきまでも怖かったけど、今の方が怖い…かも。)

 

 今更になって、自分がお忍びで屋敷を抜け出した事を思い出し、後で誠斗にギャアギャア喚かれるかと思うと、そっちの方が怖くなる椿は目の前の異様な空気を気付けないでいた。

 

 

 「”…おやおや、誰かと思えば、先ほどの方じゃないですかね~?”」

 

 ようやく口を開いた誠斗は異国人の顔を見て、微笑を浮かべた。誠斗の挑発的にも取れる言葉にぶっ飛ばされた異国人の方が誠斗を見ると、さっきよりも怒りの表情を強め、ギリッと歯軋りが離れる椿にも聞こえるくらいの音を立て、鋭い眼光を誠斗に向けた。

 

 

 「”!! てめぇ~!!”」

 

 「”あん時のガキか!”」

 

 もう一人の異国人も誠斗の顔を見るなり、憎い敵を見るような表情をした。

 

 彼らの反応で貴臣と椿は店で自警隊が話していた騒動の加害者がこの異国人達だったと理解した。

 

 

 「”お前たちも懲りないもんだな? また、痛い目に遭いたいのか?”」

 

 誠斗も彼らに負けずの鋭い睨みを利かせる。拳に力を入れ、挑発的発言をする。

 

 

 「”…穏便に事を終わらせたいのですが、そうとはいかないようですね。あちらの方々も好戦的ですし。”」

 

 

 両者の臨戦態勢を観察していた貴臣はため息をつくような口調で(実際にため息を吐き)、誠斗に助太刀する。

 

 

 「”さっきの恨み、晴らさせてもらおうじゃないか!”」

 

 そういうと、椿の手を強く握っていた金髪の異国人が突進し、誠斗に向かって、殴り掛かってきた。しかし、難なくと誠斗は躱し、体をひねって異国人の腰に重たい蹴りを決める。

 

 「”ぐぁっ!!”」

 

 誠斗の蹴りを受け、前のべりに倒れこむ金髪の異国人。それを見下す誠斗は視線を動かさないまま、貴臣に声を掛ける。

 

 「そっちの異国人は任せた。 こっちは俺がやるっ!」

 

 「誠斗、程々にしておかないと後が大変だからね。」

 

 それを合図に、二人は異国人とやり合いはじめた。

 

 

 騒ぎを聞いて駆け付けた自警隊や野次馬も現れ始めた。涙目で怯えている少女、異国人と喧嘩する二人の少年。この状況に察しついた野次馬は次々に異国人を糾弾し、誠斗達を応援し始める。

 

 この状況に更に怒りを覚えた金髪の異国人は右へ左へと翳むくらいのスピードでパンチ、キックを繰り出す。しかし、その猛攻撃を受けている誠斗は余裕を持って、躱し続けている。誰が見ても今、優勢なのは誠斗の方だった。金髪異国人に焦りが生じる。疲れも出てきて、動きが鈍くなる。それを見過ごさなかった誠斗は堂々とした微笑を浮かべ、顎に掌底を打ち付ける。そして、緩んだ隙に鳩尾に拳を撃ち込んだ。

 

 ズドンッ!と音がし、それからズルズルと金髪の異国人は地面に崩れ落ちた。野次馬たちはその瞬間、大歓声を上げた。それに気を捉え、相方の崩れ落ちた姿を見た異国人は貴臣が後ろに回り込み、首に手刀を落とした事で気絶した。

 

 結果を見届けた自警隊は直ちに異国人の彼らを拘束し始める。それを誠斗は目もくれず、小走りに椿の元へ向かった。

 

 

 「椿…様。 大丈夫ですか? お怪我は…、なさそうですね。間に合ってよかったです。」

 

 

 いつもの誠斗の調子を感じた椿はほっとしたのか溜め込んでいた涙を流し、誠斗に抱きついた。

 

 「誠斗!! こ、怖かった~!!」

 

 

 盛大に泣き始めた椿にどうすべきか戸惑う誠斗は貴臣に意見を視線で求めるが、貴臣は肩をすくめてしまうだけ。仕方なく誠斗は椿の気が済むまで抱きしめられる事にした。その誠斗の顔には若干照れと恥ずかしさが見られた。

 

 

 誠斗の胸で泣きじゃくる椿は生暖かい視線を感じ、少し顔を上げると、野次馬がこっちをまじまじ見つめている。彼らの視線で自分が見つめられていると気づいた椿は急に顔を赤らめ、勢いよく誠斗の胸を突き飛ばし、貴臣の背中に隠れてしまった。

 

 いきなり突き飛ばされた誠斗は体勢を崩し、頭を地面に思いきりぶつけた。

 

 

 「アタっ!! ……~ってぇ。 おい! 椿!! 何しやがる!」

 

 後頭部を手で押さえながら起き上がり、貴臣の背中に隠れる椿に大股で近づく。椿を捕まえようとするが、捕まりたくない椿は誠斗とは反対方向に回る。誠斗はその後を追う。椿は更に逃げる。こうして、貴臣を中心にした鬼ごっこが始まった。

 

 

 「ふ、二人とも…。それくらいにした方がいいよ。」

 

 

 この状況に戸惑う貴臣。これを何とか止めようと思案していたが、それは今この場に現れた人物の登場で終止符を打った。

 

 

 「これは、何事かね? 誠斗。 説明してくれるだろう?」

 

 

 そう、現れたのは司だった。 後ろに執事を連れ、三人に近づいてくる司はいつもの温厚な雰囲気はなく、統率者らしい厳しい表情をしていた。誠斗は司が目の前まで来ると、すかさず片膝をつき、跪く。

 

 

 「申し上げます。 異国貿易船の船員二名が椿様に対し、暴行を働こうとしましたので、拘束を図りました。しかし抵抗され、暴力行為に走ったので、動きを封じ、拘束いたしました。」

 

 平伏しながらこの状況を説明する間、司は拘束している異国人を睨みつける。

 

 「事情は分かった。あの者達は私が預かる。 異国貿易船の船長には厳重に抗議をするとしよう。…若葉。」

 

 後ろに控えていた執事、若葉は名を呼ばれると、一礼し、この場を去っていった。

 

 

 

 「ところで、どうして椿と貴臣君がここにいるのかな? 確か、今は屋敷で勉強中だったはずだが? …椿、私は屋敷から出てはいけないと常に話していたと思うが?」

 

 

 椿は言葉の攻めにどうやって返せばいいか激しく動揺していた。目を泳がせ、説明を渋る椿を貴臣が仲介に入る。

 

 

 「えっと、椿ちゃんはこうして助かったわけですし…、話は屋敷に帰ってからでも。」

 

 

 「貴臣君。 それとこれとは別の問題なのだよ。 私は椿に聞いているんだ。」

 

 

 厳しく追及する司の顔は父親の顔が滲んでいた。貴臣は言葉が詰まり、椿を心配そうに見つめる。椿は正々堂々とはっきり屋敷から抜け出した事を言おうと顔を上げて口を開いた。

 

 「あ、あのね…! 実は…」

 

 

 「お話し中、申し訳ありません。司様、この度はすべて私の責任にあります。」

 

 

 誠斗が跪く態勢のまま、口を挟んだ。それを司は咎めなかった。誠斗の言い分の続きを無言で促す。

 

 

 「実は椿様が日頃から一度でもいいから司様が切盛りする港町を見学したいと仰るのを耳にしておりましたので、私が港町に出掛ける際に、椿様に港町を案内しようと私が椿様を屋敷から連れ出しました。そして、目を離した隙にこのような事になってしまいました。心からお詫び申し上げます。」

 

 

 誠斗は全ての責任は自分にあると頑なにそう言い張った。そして、貴臣は屋敷から出る事は反対していたが、自分がいるから大丈夫だと言って、一緒に見学していた。とも言い添えた。

 

 しばらく誠斗を見下ろしていた司はやがてため息を吐き、少し苦笑して言った。

 

 

 「わかった。ではいますぐ、椿を連れて屋敷を戻り、本来の仕事をしておいてくれ。私はこれからやるべき事があるのでね。これが終わり次第屋敷に戻るから、それまでは励むように。おって、君の処分を検討する。」

 

 

 そう言い放つと、いつの間に戻ったのか若葉執事が馬車を引き連れ、司を出迎えた。司はその馬車に乗り込み、この場を去った。

 

 誠斗はすっと立ち上がり、椿の手を握って、屋敷へと歩き出す。

 

 

 「では、戻りましょう、椿様。」

 

 

 「あ、あの! 誠斗…!?」

 

 

 声を掛けるが、椿の顔を見ず、返事もしない。椿は貴臣に助けを求めるが、貴臣はこれから用事があるらしく、ここでお別れとなった。気まずい雰囲気の中、椿は誠斗に言いたい事も言えず、屋敷へと帰っていった。

 

 

 (誠斗の手、大きくて、優しい手だ…。)

 

 

 言葉を発する雰囲気でもなく、ただ手を引っ張られて帰路を歩く二人。椿はつないでいて、温かな温もり溢れる手を見ながら、心の中でそんな事を思っていた。

 

 

 





 誠斗、かっこよすぎだろ!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。