寧ろ、どんどん闇へと沈んで行っている~~!!
昴に渡された書類を見て、眉間のしわが徐々に深くなっていく司。それを斜め後ろで控えている誠斗は、表情こそは見えないが、司から発せられる雰囲気でなんとなく書類に書かれている内容が好ましい物ではない事は理解した。
書類に目を通し終え、気分転換に若葉さんに紅茶を入れ直してもらい、紅茶を喉に含んでいく。しかし、その紅茶の入ったカップを持つ指も、手も震えていた。その震えは、恐怖や好奇で起きたものではない。尋常ではない怒りから来たものだ。
司の温厚な雰囲気を一変させるほどの内容だったという訳だ。
紅茶を飲み終え、しばらく目を閉じて、考え事をする司を他の三人は黙って見守る。数分の間だったが、司がようやく現実に戻ってきて、昴に問いかけた。
「……やはり、この前、港町で起きた乱心者は何かの薬物を摂取していたのか。
…乱心者の治療はどうなっているのだろうか。」
そう問いかける司は、まだ怒気を含む雰囲気を漏らし、視線と声色にも憤りが現れていた。先程、精神統一し、平常心を整えていた司だったが、それでもそう簡単には受け入れられない事だったんだろう。誠斗は、今は冷静に司を見てそう思っているが、この後、書類に書かれていた内容を聞かされれば、自分も司以上に怒りを露わにするというのは、理解していた。だから、今のうちにそれを受け入れる覚悟を高める。
若葉さんなら、長年の執事の仕事で、感情の起伏をコントロールでき、不快感を感じるものの、表向きは冷静な対応もできる。しかし、誠斗はそこまでの境地までいっていない。
三人の人柄を知っている昴は、報告を聞いた三人の反応がどうなるかという好奇心で、観察する目をさりげなく向け、司からの問いに答えた。
「かなり軽い症状の人は、僕が処方した薬を飲むように言って、家に帰したよ~。それと、まだ症状改善が見込める人には、僕の診察を三日ごとに受ける事、処方した薬を飲む事、僕の言った事を絶対守る事を言って、この人達も家に帰した。
もちろん診察の際は、家族同伴ね~。身近の人にも知ってもらわないと同じことを繰り返す事になるから~。」
「家に帰したのか? 大丈夫なのかよ?」
誠斗が昴の患者への対応に、不満な表情で問い返す。
症状が収まったとはいえ、いつ何かの拍子でまた乱心するかもしれない。そして犠牲者が出るかもしれない。誠斗がそう思うのも無理はなかった。
昴も誠斗の意図は理解していたので、「何が?」とは言わない。その代わりに次の言葉を放つ。
「今説明した患者は、…………ね。
僕の言いつけを守るなら、だけど。」
・・・
昴の言いたい事を正しく理解した誠斗はスバルを睨みつける。
しかし、それを司が誠斗に視線を向ける事で、この場を収める。司もその意味を理解していた。
しかし、それが有効な物だという事も理解できていた。だから、昴の話を最後まで聞くために、仲介に入った。
「それで、昴殿。
君はさっき、こう言ったね…。『改善が見込める人には…』と…。
それ以上の人達はどうなっている?」
「……はぁ~、司様、その事は先程渡した書類に、書いてますけどね~。わざわざ聞かれなくても。」
「私は、どうしても知っておきたいのだよ。この町は、この港町に住む人々は私の大事な人達だからね…。」
司の複雑な感情が乗った表情を見て、ボサボサな頭を更に掻いて考える昴は、しばらくしてため息とともに、話す。
「………分かりました。そこまで言われるなら、直接見た方が早いでしょう。
ただし、これから見せるものは、司様…、あなたが望んでいるものとはちがっているかもしれませんよ。」
「ああ…、構わない。 私もいつまでもこの問題を放置するつもりもない。全てを受け止める覚悟です。」
言葉通り、司の眼には、肝を据えた覚悟と決意を感じさせるものだった。
この報告で、反応を観察するつもりだったが、司の芯からの頼み事を言われ、本気で心配になり、司を引かせようとした。それでもそれに屈しなかった司の熱意ある頼みに、昴は折れ、受け入れる事にした。
昴も嘘偽りない司の眼を向けられ、座っていた椅子から腰を上げ、机の引き出しから鍵の束を取りだす。
「では、案内します。
私の後をついてきてください。今からお見せします…。」
昴は部屋に広がる書類の壁を潜り抜け、奥に隠れていた扉に鍵の束からその扉の鍵を選び出し、鍵を開ける。
そして、扉が開いた先には、下に続く階段がそこにあった…。
これから先は、どうなっているのか!!?
話がグロくなっていく展開…。
みんな~、読むときは心構え持ってくださいな。(泣)