―――――ある国の、ある所に、貧しい村がありました。
国自体は大変栄えていましたが、国の辺境にあるこの村は忘れられ、貧しい暮らしを余儀なくしていました。
そんな暮らしの中でも、村人たちは明るく振る舞い、お互い助け合って生きていました。
そんなある時、国のお偉いさんが視察を兼て、村を訪ねてきました。
村人たちは、これはもしや神様が与えてくださった恵みなのではないかと考え、家にある食材全てをみんなで集め、料理を振る舞った。
しかし、国のお偉いさんは出された料理を見て、激怒した。
「この高貴な私に、この料理を食べよと申すか!!? 野蛮人めっ!!」
…………と。
丹精込めて作った料理を蔑まれ、挙句の果てにはひっくり返され、地面に落ち、踏み付けられる始末…。
目の前で起きたその光景に大人達は絶句し、子供達は泣き出した。
貧しいが故に、質素な料理を出し、しかも量が少ない…。
日頃から色鮮やかな食材を万遍なく使用した贅沢な料理をたくさん食べている国のお偉いさんにとっては、村人たちが必死に用意した料理は屈辱を味わうほどに許しがたい事だったのだ。
「目障りな奴らだ…!!見ているだけで気持ち悪いゴミ共だ!!
…私の視界から消せっ!!」
お偉いさんが引き連れてきた衛兵が槍を構え、村人を取り囲む。
身体を寄せ合って、恐怖する村人達。子供たちを抱きしめ、守るように包む村人もいる中、慈悲もない横暴な行いが村人に降り注がれるとまさにその時。
一人の村人が前に躍り出て、お偉いさんに深く頭を下げたまま、懇願する。
「誠に申し訳ありません。見て分かるように、私達の村は貧しく、今日を生きるために必要な食材を手に入れるのがやっとの状態です。
その食材をみんなで出し合って、料理をお出ししました。
あれが今私達があなた様を迎えるためにできるたった一つの事でした。
私達ができる事は今はここまでですが、次にあなた様がこの村に来られている際には、見違えるほどの繁栄をしている事でしょう。」
「…そんな突拍子もない話をこの私が鵜呑みにするとでも!!?
そう言っておいて、私が見逃した後、すぐに荷物を纏めて、逃げるのであろう?」
お偉いさんは鼻で笑って、蔑み続ける。
しかし、懇願する村人は頭を下げたまま、話を続ける。
「いえ、逃げも隠れもしません。
2ヵ月、いただけませんか?
それまでに、この村を復興し、国で一番誇る繁栄村にしてみせます。
その時にまた御出で下さい。もし、期限までに達成できなければ甘んじて処罰は受けます。ただしその際は、男のみでお願い致します。女や子供は力はないので、抗う術は御座いません。」
「ふん!! お前の言い分をたとえ聞き入れたとしても、私にお前達の命を繋げるだけに見合ったメリットはないではないか!?
勝手な言い分を口にするな!!」
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(自分勝手な言い分を実行しようとしているのは、お偉いさんの方だけどな。)
↑←誠斗が下衆を見つめる視線を昴に向けて突っ込む。
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「………もし、この村が栄える事に成功すれば、その功績を全てあなた様のお蔭だと広め、栄えた分も少しばかりですが、謝礼金としてお渡しいたします。
…それで、この案を受けていただけませんか?」
「……分かった。では、2か月後、またここに来るとしよう。その時まで、刑は保留としてやる。」
最後は熱心に懇願する村人にお偉いさんはこの案を呑む事にした。
熱意に打たれたからという理由で受けたのならば、少しは威勢がいいと思えたが、この案を受託した理由が、実は成功した時の名声と金という、権力を振るうには絶対不可欠な物が手に入るから…という傲慢な欲求を物にしたいがためだ。
その後は、村長に契約書にサインしてもらい、浮かれた顔で馬に乗って、衛兵を連れて、村を出たお偉いさんを形ばかりに手を振って、見送った村人は姿が見えなくなったのを確認すると、その場に座り込み、呑みこんでいた空気を吐き出し、ぐったりとなる。
突然押し寄せた死への恐怖から解放されたのをやっといつもの呼吸をして、生きている事をしばらく村人たちは実感するのであった…。
***前編 終了***
お偉いさんって、権力もつと、ここまでひどくなるのだろうか…。
本当に呆れてくるな~…。
でも、誠斗、ナイス突っ込みだったよ!!気分転換できたから!!