昴の話を聞いた司と誠斗は、ここではないどこかへと思いを向け、溜息を吐いて、誠斗が自分の推理をみんなに聞かせる。
「……おそらく、ヨーロッパからの貿易船によって運ばれてきたんでしょう。
ここは、港町…。貿易船がここで物資を降ろし、商品を売りさばくのは不自然ではないですからね。
…まったく、嘗められたものだ。
これまで、長い間、鎖国してきた私たちの国が、ようやく本格的に異国から学問を学び、交流し、貿易をするようになったのは、新政府が立ち上げられ、異国の文化が根付いてきてからです。
今まで閉じてきた分の異国との文化の違いを学んでいる隙に、『マリハ』を日本中に広めようとしているんだと思います。
今は、そのためのまず小手調べにすぎないのかもしれないです。
まだ港町の一部の人にしか症状が現われていないのが、その証拠だと思います。」
誠斗が司に畏まりながら、自分の推理を口にし、それを聞いた司も顎に手を置き、深く頷きを見せ、考えながら誠斗の推理に口を入れる。
「…ふむ、誠斗の推理は的中しているかもしれない…。
私も、ここ数日、港町のあらゆる場所を若葉を連れて、巡ってみたが、今回の騒動を起こした者たちの多くは、主に貿易関係の仕事をしていることが分かったのだ。そして、その多くが日雇いの積荷降ろしの仕事に声をかけられ、働いた一般人が占めていた…。仕事を終えた者たちはその報酬として、高給金を受け取っていたことも、身内の者や友人達に聞いて、判明した…。
つまり、これらの推理と情報を合わせると、ヨーロッパからの輸入品に『マリハ』がこの港町に渡ってきた。そして、『マリハ』を日雇いで雇った港町の人々に運ばせ、高賃の報酬を更に渡すことで、『マリハ』を買うように仕向け、彼らを乱心させ、今回の騒動を引き起こした…、という事だろう…。」
そう結論付けた司の顔は怒りで支配されていた。
人を凶変させてしまう薬物、『マリハ』を全く知らない日本帝国に輸入し、それを広め、金儲けしようと画策した黒幕に怒りを覚えると同時に、それを目と鼻の先のこの港町で、行われてしまい、それによって港町の人々を危険に晒してしまった自分に対する怒りを覚えたからだ。
(この港町を守る立場の私が、逆に危険に晒してどうする!!?)
その怒りから自分の拳を無意識に握りしめる司。
(…これでは、”あの時”と…!! 全く変わらないではないか…!
最後に私にこの港町を託した君の願いを、また私が…!!
もう過去の轍は踏まないとあの時に君と約束したというのに…!!)
司はある人物を思い浮かべ、自分の不甲斐なさを憎んだ。
しかし、そんな司に誠斗がそっと話しかける。
「司様、まだ間に合うと思いますよ。
さっきも言ったとおり、今回の騒動は始まりにすぎません。この騒動には、黒幕が存在します!! その黒幕が次に手を打つ前に、『マリハ』をこの港町から取り除き、黒幕を確保するんですよ!!
そうすれば、この港町から『マリハ』が日本帝国に広まるどころか、その根源を絶やすことができます!!
今!! ここで動けば、この港町を邪悪なものから守れます!!
俺も司様と共にこの港町を守らせてください!!
遠い場所から海を渡ってこの日本帝国に来たことを後悔させてやりますよ!」
意気込みを見せ、司の命令を待つ誠斗の堂々とした熱意の持った顔と視線を見て、司は励まされ、微笑を浮かべる。
(…本当に、君は…。)
前を見据え、己の正義を貫くまっすぐな顔を見て、懐かしさを感じ、司は背中を正し、誠斗に命令する。
「誠斗、これより港町に蔓延る『マリハ』の脅威をすべて取り除き、その黒幕、それに協力する者を徹底的に調べ上げ、拘束しなさい。
…くれぐれも無理はしないでくれ…。」
「はい!! 畏まりました、司様…。」
誠斗に今回の事件の解決を命じた司は、最後に誠斗に警告した。そしてそれをすべて受け取り、誠斗は深々しく一礼し、司の命を一心に受け止めた。
『マリハ』って麻薬みたいなものだからな。
いよいよ誠斗が捜査を開始します!! そして、久しぶりに登場!!(誰が?)