黒幕、御縄に付けないと!!
司とともに、昴から情報を仕入れた翌日の昼間…、誠斗は一人で高級料理店が並ぶ通りに来ていた。
ちょうどお昼時だから、食べに来た!…のではない。誠斗は、通りに並ぶ高級料理店の前を看板メニューを見ながら、ただ歩いているだけだ。しかも表情は空腹感を感じさせるものだが、瞳孔は窓から見える店内を嫌そうに見ていた。
そもそも誠斗は、高級料理があまり好きではない。食べるには、そんなにお金がかからなくても美味しいものは食べれるし、工夫ひとつで高級料理に似た味を作れたり出来る事を知っているため、無理をして、堅苦しい思いをしてまで食べたいと思わないのだ。それに一番の理由は、高級料理を食べる事で、他者とは違う事を魅せつけるように、鼻を高々にして入って、出てくる華族やお役人、異国人を見ていると、苛立ってくるからだ。…華族嫌いの誠斗には、理解したくない世界という事だろう。
では、なぜ誠斗がこんな場所にいるのか?
それは無論、捜査のためだ。
乱心者の捕縛に駆り出されていた時、何人かは、この高級料理店が並ぶ通りで、暴動を引き起こしていたし、昴の話から、調味料としても愛用されていたという。しかも、金を持つ王族や貴族たちに…。
なら、料理に『マリハ』を混ぜて提供し、『マリハ』の中毒者にした可能性がある。まだ港町に浸透していないのなら、高価な値段をつけているのだろう。それを仕入れる事ができ、なおかつ料理に混ぜ込み、客に気づかれないように盛るなら、高級料理店に限ると判断し、通りに訪れてみたのだった。
しかし、訪れてみたはいいものの、高級料理店でもかなり店舗数がある上に、どの店も怪しく見えてしまい、的を絞りこめない。さすがに、全ての店舗を調べると言っても時間がかかるだけでなく、…すぐに手持ち金が底をつく。
そうすると、うかつに店の中に入る事も出来ずに、こうして通りを「食べたいけど迷ってます!!」っていう顔を装って、歩いてみる事しかできない。
すべての高級料理店が『マリハ』に関わっているかもまだ分からない段階で、自警隊に手伝ってもらって、店舗内捜索…なんてものもできない。してしまうと、他の『マリハ』に関わる店舗に気付かれてしまい、証拠を処分されるか、消される可能性だってある。
慎重に狙いを絞らないといけない…。
それを頭の中で考えながら、ひたすら歩きまわっていた。
(…はぁ~、やはり今回は一人で調べるのは難しいか?
いや、司さんにはもう啖呵きって解決するって言ってしまっているし、元々こういうのは極秘で捜査するもんだ。
…ああ!!今のうちに何とか解決しとかないと、被害が大きくなるし、早期解決はしないといけない。あまり時間をかけると、相手を自由に動かしてしまうからな。
だけど、一人でするとなると、調べる事がありすぎて、どうしても時間がかかってしまう。まだ敵がどんな奴か…、組織的な物なのか…、何を企んでいるのか…、等々、それすらも分からない今の現状では、次の行動が読めないばかりか、俺の動きも取りづらい…。
人手を増やしてもらえればいいが、俺以上に動ける奴はいないからな~…。
…仕方がないな! 頭を冷やして、冷静になれ、俺!
まずは、”情報”を仕入れるんだ。 ”情報”があるかないかで作戦を練るのも、対処するのも全く変わってくるからな!!)
捜査開始して早々、先がまったく見えない不安に、弱音を吐きそうになる自分に喝を入れ、気合を入れる誠斗。
そして、腹ごなし!!…と最近ハマりだしたドーナツの出店のおっちゃんに会うため、鼻歌を歌って、高級料理店から離れ、出店通りに向かうのだった。
…お~~~い!!誠斗~~~~!!
目の前に料理店があるのに、出店の方に行くのか!?
しかもドーナツ!! 昼間から甘い物だよ~~!! 甘いもの大好きだもんね~~!!
…って!!お昼はちゃんとしっかりと栄養のあるものを食べないと!!
(そうじゃないだろ!!)