※この作品はR-18です。

運命のシナリオ   作:薔薇大書館の管理人

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オッサンが涙を流す理由…。




オッサンの熱い思い

 

 

 

 

 涙を流したオッサンは、自分が泣いている事に気づき、手拭いで涙を拭いた後、調理器具を一旦片付け、出店の横に設置していたテーブル席に脱力気味に座り込んだ。

 オッサンに続き、誠も一人分の席を開けて、座り込む。オッサンが誰もいない通りを見つめながら、遠くに思いを馳せているのを感じ、誠斗は、ただ待つ。

 

 

 待つ事半刻は過ぎた頃…。

 

 オッサンは、心にしまっていたものを吐き出すかのように、語り始めた。

 

 

 「…なぁ、兄ちゃん。兄ちゃんが来てくれたあの日…、あの日も人足は少なくて、その日を生きれるかどうかの瀬戸際だった。家族にもまともに食べさせてやれなくなるところで、切羽詰っていた。

  そこに、兄ちゃんが来てくれて、たくさんドーナツ食べていってくれて…。お客さんも寄って行ってくれて…。その後も、兄ちゃんに知り合いだっていう姉ちゃんにも買ってもらって…。俺は、俺の勝負したドーナツの味が認められただけでなく、生きる希望も、勇気も取り戻す事が出来た…。

  だけど、神様っていう奴は、残酷だ…。

 

  人は生まれ持って、平等じゃないんだからよ~…。

 

  誰かが笑えば、誰かが泣く…、恵みが本当に必要な者には、それが渡らないんだからな~…。

 

 

  ………ここに店を構えていたいた同業者たちは、訪れてくれる人がついに来なくなって、出店を開くまでの余裕がなくなってしまったのさ。少しずつ…、少しずつと遠さがっていく人足に、今まで支え合ってきた仲間たちは、この通りを活気つかせていた笑顔も、呼びかけも、失くしてしまっていった。

  そしてここを去っていった仲間たちは、去り際に俺を見て、こういったのさ…。

 

      ・・・・・・・・・

 『お前は、繁盛してよかったな』…ってな。

 

 

  虚ろな目で、俺を見て、たった一言…。

 

  俺は、胸を締め付けられた思いだった。俺だって、ここまで一緒にこの通りを盛り上げてきた仲間達を、こんな事で失いたくなかった!!でも…、仲間を救えるほど、俺も余裕なくて、去っていく仲間達の背中をただ見送る事しかできなかった…。

 

  俺は…、少し、恵まれてしまった事で、仲間との大事な絆を壊してしまったんじゃないか?って…。

 

  それが許せなくて…、何よりあの時、仲間達を何としても説得して、立て直そうと動かなかった俺自身が許せなくて…。

 

 

  ……兄ちゃん、俺はそんな後悔を味わいたくなくてな。あの時の賑やかで笑顔が溢れる通りを取り戻したくて…、ドーナツ屋…、続けてるんだ…!!

  

  まぁ!正直、上手くいっていないけどよ!現に、今日も兄ちゃんに来てもらえてなかったら、家族共々路頭に迷う目に遭いそうだったけどな!!

  …けど、それでも…!!やり遂げたいんだ…!

 

  去っていった仲間達も、俺がまだここに居続けている事で、また戻ってきてくれないかと期待しているのもあるんだけどな…!!

 

  

  未練がましいちっせぇ~男だろ!? わ~~はっはっはっは!!!」

 

 

 

 オッサンの秘めた切実な願いを語り、重くなった空気を和ませようと笑い飛ばそうとするオッサンに、今まで黙って話を聞いていた誠斗が口を開く。

 

 

 「…ちっせぇ~男なんかじゃないぜ、オッサンは。

  オッサンの、その想い…、軽はずみに笑って流すなんて真似するもんじゃないぜ…!

 

  確かに、まだ始まったばかりの先の見えない願いかもしれないけど、オッサンならどんな逆境でも、倒されずにやっていけると思う…。

 

  …頑張れよ!!オッサン!! 俺も協力するからな!!」

 

 

 そう言って、オッサンに笑いかける誠斗の真っ直ぐな思いに、オッサンもつられて微笑し、今まで抱え込んでいた悩みが溶け出していくような感覚を受ける。

 

 

 「…ありがとな、兄ちゃん…。」

 

 

 そして、そっと感謝の言葉を呟き、涙を流す。しかし、今回の涙が、悲しみや嘆きを込めた涙ではなく、嬉し涙だった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ★★★

 

 

 

 

 

 

 

 

 しばらく静かに涙を流していたオッサンは、ようやく泣き止み、手拭いを水で濡らして、少し腫れた瞼を冷やした。誠斗もオッサンが肩の力を落とさせ、リラックスしてもらうため、揉み解してあげていた。誠斗のマッサージは、力強さもありつつ、優しく揉みあげていったり、凝りの取れるツボを刺激したりして、かなりのマッサージ力を発揮していた。

 そのお蔭で、極楽へと誘われているオッサンの顔は、がっちりした顔面に鼻の下と頬がたるみきって、頬を赤く染めているという何ともギャップが激しい表情をしていて、誠斗は吹きだして笑わないように、ネクタイを取って目隠ししながらマッサージをする羽目となる。

 

 

 

 「…っところで! オッサン、に聞きてぇ~ことがあるんだけどよ~…!!」

 

 

 「なんだね~~、兄ちゃん!! 俺でよければ、なんでも答えてあげるぜ~~!!」

 

 

 「……この通りがこうなった原因のあの話…、詳しく教えてほしいんだけどさ…!」

 

 

 「…なんだって!!」

 

 

 目元に置いていた手拭いをとり、振り向いて誠斗の顔を驚く顔で見つめるオッサンに、ニヤッとした笑みを反す誠斗。

 

 

 

 誠斗の本題は、これからだったのだ…。




誰がオッサンを笑うものか!!

そして、誠斗!!ドーナツ食べる為に来たんじゃないのか!!
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