今日は主に、オッサンの視点で語られてますね。
俺は店を出た後、すぐに出店通りに戻り、ドーナツを売り始めた。そうしないと、さっきの出来事が頭の中にチラついて、気になるし、腹が立つし、寂しくなるからだ。
自分と同じ考えを持った仲間がいなくて、つい怒鳴ってしまった。怒鳴って、店を後にする時も、仲間達は目を大きくして、驚愕で絶句していた。
言い過ぎたと思っている。しかし、あの時言葉にした事は事実で本心だ。曲げるつもりは俺にはない。それでもここで一緒に頑張ってきた仲間だ。これがきっかけで友情に亀裂ができて、出店通りが荒れるのも、絶交するのもしたくない。
………みんなが戻ってきたら、謝るか。
カッとなった事を謝ろうと心に決め、呼び込みをしながら、仲間達の帰りを待っていたオッサンだったが、その日は仲間達は帰ってこなかった。
そして翌日になり、真昼になってようやく出店通りに現れた仲間達を見て、心配していたオッサンは、すぐに仲間達の元へと駆け寄り、頭を下げて機能の事を謝りだした。
「…ごめん!みんな!! あの時、つい怒ってしまって。しかもみんなを置いて帰ってしまった。悪かった!!」
「「「「「…………………」」」」」
しかし、頭を下げて謝るオッサンの横を通り過ぎていき、フラフラと自分の出店へと歩く仲間達の行動に驚きを隠せない。
「お、おいっ!!」
顔を上げ、一番よく話をする仲間の肩に手を置き、もう一度謝る。
「話をしたくないって思うのは、当然だ…。しかし、何も無視する事はないだろ!?
なぁ?またみんなで頑張ろうぜ!?」
「…………うるさい、黙れサル。」
方に置いていた手を払い、自分の店を畳み始めた。慌てて周りを見ると、他の仲間達も自分達の出店を解体し、畳みだしている。
「これは何の冗談なんだ…!? お前達のあの熱意はそんなに簡単に捨てられるものなのか!?」
思わず一番の仲の良い仲間の胸ぐらをつかみ、問いかける。仲間を見つめるその瞳には、涙が零れていた。ここで、仲間達があの時誓った思いを思い出してくれたら…と。
「………離せ、サル。目ん玉掬うぞ?」
「お前は、繁盛してよかったな」
虚ろな目をして、俺を見つめる視線と言葉に、淡い期待が消えていった。他の仲間からも冷たい言葉と視線を受け、一人だけ取り残された世界にぞっとし、胸ぐらをつかんでいた腕の力も抜け、その場に立ち尽くす。解放された仲間はさっさと自分の店を解体すると、他の仲間達と一緒に去る言葉もなく、出店通りを…、俺の元を…、離れていった。
俺は、胸を締め付けられた思いだった。俺だって、ここまで一緒にこの通りを盛り上げてきた仲間達を、こんな事で失いたくなかった!!でも…、仲間を救えるほど、俺も余裕なくて、去っていく仲間達の背中をただ見送る事しかできなかった…。
追いかける事も出来ず、ただ抜け殻状態になっていた俺の元に、仲間達の家族がやってきて、様子を聞きに来た。俺が先程の出来事を話すと、驚きすぐに探しに行った。俺は、もう一度仲間達と話し合いたいとも思ったが、一緒に追いかける事も出来なかった。
その夜、横になって考えて、みんなもいつか俺の言った事を理解して、戻って来てくれると思う事にして、気合を入れた。
そして今日…、たった一人だけになってしまった俺の店で、ドーナツを揚げていると、昨日の俺の様子で心配してくれていた仲間達の家族が俺に知らせをくれた。
新しい店で働いて、一生懸命に料理を学んでいると。
真剣に料理を学んでいる事は嬉しいが、その新しい店があの不愉快な料理を出す高級料理店かと思うと、悲しみと怒りが出てきて、色んな感情が入り混じって、知らせてくれた親しい仲間達の家族を見送る際、最後に笑顔で送り出すつもりが、頬が引きつった苦笑になってしまった。
その後、昼になって、俺のーナツを褒めてくれたあの時の兄ちゃんがまた来てくれた。
……目をハートにし、頬を真っ赤にした多数の女性を背後に引き連れながら。
「オッサン!!久しぶり!! オッサンのドーナツ、ものすご~~~く食いたくて、来てしまった!! とりあえず5つくれ!!」
朝の知らせで心のどこかで暗く重くのしかかっていた気持ちが兄ちゃんの登場で、温かく溶けていく気分だった…。
オッサンの事を、サルって…。 相当腹を立てていたのか!?
オッサン、グサッてハートに突き刺さっているよ!! どうしたっていうんだ!?