数日の間に起きた、オッサンの出来事を聞いて、誠斗は可笑しいと思った。そしてオッサンをじっと見つめ、考え込む。
急に黙り込み、考え込み始めた誠斗の先を見透かす目と真剣な表情に、オッサンは年下の誠斗に、なぜか恐怖を感じた。身体にも一瞬悪寒だろうか、震え出して鳥肌が立った。
短い間しか知らないが、自分に見せてくれた甘い物に目がない笑顔で美味しそうに食べる幼さを感じさせる雰囲気とは対照的な姿にただ驚きと恐怖から言葉を喉につっかえたまま、凝視していた。
そんなオッサンの様子に気づいた誠斗は、何事もなかったようにすぐに笑顔に戻り、オッサンに謝りだす。
「いや~~!!ごめんな、オッサン。ちょっとオッサンの話聞いて、少し可笑しいなと思ったとこがあって、つい考えてしまった!!」
「おかしなところだと? もしかして、それは!!」
やはり自分が仲間達に何かしてしまったのではないかと焦り始め、無意識に前のめりになって、誠斗に迫る。
その迫る勢いに今度は誠斗は驚きと恐怖を感じた。ついでに男としての身の危険も…。
迫ってきたオッサンの顔が近すぎて、息がかかる上に、堀が深い、男らしい顔つきなので、接触まであと数センチの所まで近づけられると確かに身を固くし、恐怖するのは仕方ないだろう。現に、オッサンの唇と…いやこれ以上は言うまい。
「…オッサン。……近いって。……顔が!!」
「おっと、すまん!! どうやら昔から何かに集中すると顔が前に飛び出るらしいんだ。自分ではよくわからんがな。わ~~~はっはっはっは!!!」
(いや、分かれよ!! 気付けるレベルの距離だっただろ!!
あぶねぇ~…!!俺の……俺の…、いやいやいやいやいや!!!もうこの事は考えるな、俺!!)
…とオッサンに心の中で突っ込み、魂を飛ばしそうになる誠斗だった。
「それにしても、可笑しなとこってなんだ?」
「それがよ~~…、オッサンをサルって言うのは間違っているな~って。」
「………は?」
「だって、オッサンはどう見たって、サルって言える体型でもないし、寧ろゴリラだろ?そのお仲間さんは目が悪いのか、はたまた頭が悪いのかと思って…。」
顎に手を置いて、真面目に考えていた内容を明かす誠斗にオッサンは呆気にとられ、復活した時、「俺はサルでもゴリラでもないぞっ!!」と怒声を上げ、誠斗を追いかける。すばしっこい動きでオッサンの柄でから逃れる誠斗は、しばらくオッサンに付き合った後、汗を掻いてすっきりしたと言ったオッサンと一緒に水を大量に飲んで、途中で調理を止めていたドーナツを揚げ始め、再びオッサンのドーナツを食べ始めるのだった。
それから、たっぷりとドーナツを食べきった誠斗は満足そうな顔でオッサンにお礼を言った後、出店通りを後にした。
そしてその足で向かった場所は、オッサンが言っていた高級料理店がある通りだった。
そこへ目指しながら、誠斗はあの時感じた可笑しなとこ=違和感の正体を仮定し、内なる怒りの炎を燃やしていた。
あの時は、オッサンの問いかけに話し中に突っ込みたくてしなかったサルネタで誤魔化した。
(もしかしたら…、オッサンの仲間達は、その時に既に洗脳されていたのでは?『マリハ』によって…。)
そんな考えが、誠斗の頭の中を占め、裏付けを取るため、その店に向かっているのだった。
そしてついに店の前に着いた誠斗は、看板を強く真っ直ぐに見つめ、ニヤッと笑った。
「…くくくく!! 燃えてきたぜ…! 必ず暴いてやる…!!」
おっさんをこれ以上心配かけたくなかったんだね。
嘘はついてないし、さすが誠斗!!でも、気を付けて店に入るべし!!