これでラブラブを満喫できるぜ!!
今日の作戦は終え、人目を警戒して、路地裏から屋根へと駆けのぼる誠斗。身に付けていた貴族の衣装服を見下ろし、ため息を吐きながら、上着を脱ぎ、目的地までいって、元の使用人の服に着替える。
その場所は、誰もあまり注目しない古ぼけた建物の墨の部屋だった。普段は鍵をかけられていて、埃も舞っているから、この建物に住んでいる住人達も寄ってこない。住人と会う時は、よれよれの服を着た、長髪で、髭を生やした研究者に変装しているため、余計近寄ってこない。
誠斗はここを任務の上で必要な道具を置いていたり、変装する際に着替え場所として利用しているのだった。
この場所を知っているのは、任務の依頼主であり、尊敬する主の司と彼の補佐も担っている若葉さんだけだ。
着替えも終わり、戸締りを終えると、路地裏に面する窓から飛び出し、再び屋根を伝って、椿がいる屋敷へと帰路に着く。
(早く、椿の顔を見て、癒されたいぜ…。
今回の任務は本当に骨身にまで疲労が来るし、まだまだ始まったばかりだからな。
元気の源を摂取するに限るぜ…!!)
山へと入り、木の枝を飛び移りながら、嬉しそうに笑って屋敷に帰りついた。
屋敷の門を開け、庭に入った誠斗に、上から愛しい声が降ってきた。
「誠斗~~~~!!お帰りなさいっ!!」
いつもと変わらない満面の笑顔でのおかえりに、誠斗は幸せを噛み締める。しかし、この想いは絶対に隠しておかなければいけない切ない想いだ…。
それも自覚して、胸に秘めておき、からかうような笑みで椿に答える。
「…ああ、お嬢~~!!ただ今帰ってきましたよ。
それにしても、そんなに身を乗り出しては危ないですよ~~!!」
「平気よ!! ずっと誠斗の帰りを待っていたのだから!! 早くこっちに来て~~!!」
「…………そんな事を言うなよ。襲ってほしいって言っているみたいじゃねぇ~か…。」
ぽつりとつぶやいた誠斗は、赤くなった顔を見られまいと、照れた表情が消えるまで顔を逸らす。頭を掻いて、気持ちのやりように困りながら。
そんな誠斗の様子に不思議に思いながらも、笑顔で誠斗を見つめ続ける椿は、無意識に男を虜にする天然さを生まれながらに持っているのだろうと、心の中でそう思う誠斗だった。
「……分かりました、俺が行くまで部屋で大人しく待っていてくださいよ~~。また暴れて物が吹っ飛んでは敵いませんので。」
「そ、そんな真似なんてしないからっ!!」
真っ赤な顔でぷいっと顔を逸らす椿の拗ねた顔を見て、思わず吹き出してしまう誠斗。更に椿が文句を言っているのを聞きながら、屋敷の中へ入る。
帰って早々、椿の笑顔と「お帰り」と言われた事で、すっかり元気になった誠斗。
”恋は万能薬”と聞いた事はあるが、まさに今の誠斗を表している。
超ご機嫌になり、鼻歌を歌いながら、廊下を歩く誠斗に同じく仕事から帰ってきた司と付き従っている若葉さんと、出くわす。
お互い笑顔を向ける。
「今日もご苦労様、誠斗。
これから椿の護衛…、頼むよ。」
「はい、お任せください。お嬢様は必ず護ります。」
「引き留めて悪かったね。それではよろしく。…ああ、それからこれからまた次の仕事に行かなければいけなくなった。今晩は遅くなるから、椿には申し訳ないが、夕食は先に食べておくように伝えておいてほしい。」
「畏まりました。そのように伝えておきます。」
必要事項を伝言し終えた司は、若葉さんを連れて、先を歩く。誠斗は脇に控えたまま一礼し、姿が見えなくなってから、椿の私室へと向かう。
再び鼻歌を歌いながら、今夜の警備は一段と警戒して務めないとな…と考えるのだった。
愛の力は絶大なのだ!!
誠斗も応援はしたいけど、事実上椿は、貴臣の嫁さんだからな~…。貴臣~~~!!♥