この三角関係をもっと掘り込んで~~~!!!
「椿ちゃんに会いたくて、逢引………に来たんだよ。」
月光が照らす貴臣の笑顔と再会の言葉の感動で、椿は顔を真っ赤にして、逆上せるくらいに幸せを感じるのだった。
椿はあまりにも突然で驚く。だけどそれ以上に嬉しさと愛しさで胸がいっぱいになる。顔もほころび、会いに来てくれた喜びを噛み締めて、思わず嬉し涙が流れる。
「貴臣…。私も逢いたかった……。」
「うん…。僕もだよ。」
互いに微笑み合いながら、視線を絡めるようにして見つめ合う。
その光景を傍から見届けている誠斗は、苦笑しながら二人の再会を喜ぶ。
(よかった…。椿のその嬉しそうな顔が見れて…。俺にはもう引き出す事も…、向けてもらう事もない表情…。
貴臣も、椿に逢えてよかったな。
お前と椿はお似合いだぜ…。 悔しいほどにな。
でも…、二人が幸せになってほしいと思うのも本心だ。
それを傍で見守り、支えるのが俺の使命だしな。
………本当によかった。)
そう思いながら、誠斗は椿の私室に隠しておいた縄を取りだし、窓に放り投げた。
無事に一階まで到達した縄が貴臣の前に下りてきた。
「そんな場所で話していたら、他の使用人たち…、ひいては司様に見つかってしまいます。貴臣様には申し訳ありませんが、この縄を伝って登って来てもらいませんか?」
「ははは…。誠斗、そんなに気を使ってくれなくてもいいのに。
僕はこのままでいいよ。」
「そうはいきませんよ、貴臣様。ここ最近夜は冷えてきましたから。そこで話し続ければ、間違いなく風邪をひきます。
そうなれば、お嬢が心配してしまいます。…・・それに未来のお嬢の夫になられる貴臣様の身を守るのも、当然でありますから。」
「…はぁ~。誠斗には敵わないな…。
分かりましたよ。僕がそちらに行きますから。」
貴臣は仕方ないという顔で縄を掴み、スラスラと登ってくる。
誠斗は縄を支えるために、窓から距離を取って、縄を身体に巻きつけて足を踏ん張る。
椿は徐々に近づいてくる貴臣を窓から見続け、小さな声で応援している。
誠斗はまたチクッと胸が痛む。
そして、ついに窓枠に貴臣の手が掴み、無事に椿の私室に辿り着いた。
貴臣が部屋に入った瞬間、椿が貴臣に抱きついて、涙を浮かべながらギュッと抱きしめる。
それほど経っていないのに、随分前から逢えていなかったかのように感じていた椿は、久しぶりの貴臣の温もりを感じていた。
「嘘…。これは夢ではないの…?」
「夢じゃないよ、椿ちゃん。 僕はここにいるよ。」
「……嬉しい。ずっと…、貴臣に会いたかったの…!」
「僕も、君に逢いたくて、ここに来たんだ。ずっと君の事を想っていた。」
「私も…!」
貴臣も椿を抱きしめて、抱きしめ合った。お互いの体温を感じる為に。
しばらくして、椿が貴臣の胸から顔を上げると、貴臣と視線がぶつかり、思わず恥ずかしくて視線を逸らす。
「……椿ちゃん、こっち向いてほしいな。
君の顔がもっと見たい……。」
貴臣の甘い声でそんな事言われたら……
椿は耳まで赤くなっている顔を自覚しながらも、貴臣を無視する事は出来ず、ゆっくりと振り向く。
「うん……、椿ちゃん、綺麗だよ。」
「……もう、貴臣ったら…。」
二人が顔を見合わせ、顔が徐々に近づいて………
「………では俺は、二人の邪魔してはいけませんので、外に出てますね。」
不意に自分たち以外の声が聞こえ、思わず二人の身体がはじけ、離れる。
「ま、誠斗!!いたの!?」
「……今まで傍に居ましたよ? お嬢はほんの少し前の記憶がなくなるほど、貴臣様に夢中になってたんですね~。」
「!!もう~~!!誠斗の馬鹿~~!!」
「お嬢、これは控えておいた方がいいですよ。他の使用人が来ちゃいますよ。」
「あ…。」
「……それでは失礼します。」
誠斗は二人に一礼して、開いていた窓から近くの木へと飛び移り、どこかへと行ってしまった。
それを見送った二人は、互いに見合わせて、すぐに顔を逸らし、頬を赤く染める。
((誠斗に見られてしまった……!!))
他人の目の前で、二人の世界に入っていた事を知り、恥ずかしさで頭が逆上せるのだった。
★★★
「ふぅ~…。全くあの二人は…。俺がいるってのによ…。
まぁ、出て来れてよかったぜ。 あのまま二人を見ているのは………辛かったしな。」
ため息を吐いて、独り言を口にする誠斗は、椿の私室がある真上の屋根裏に腰を下ろし、専属護衛の務めを果たし、警備をしていた。
腰のポーチから、警備用の夜食として、パンを取りだす。
それを食べながら、月を見上げる。
「覚悟していても、目の前で見ると、やっぱり辛いもんだな…。」
パンを持っていない手で胸に手を置き、先程から痛む胸を擦る。でもそうしてみても、胸の痛みが消える事はない。
それよりも前から抱いていた胸の痛みよりも激しく痛む。
二人が本格的に愛し合っている現場を目の前で見てしまったのだ。
自分の入る隙間がないほどに…。
誠斗は二人の世界を見て、それを痛感したのだった。
(俺は、これから…、今日みたいな二人を見ていく事になるのか…。
…いや、これはよかったと思え! これは予行だ!! 今の内に慣れてしまえば、二人の前でも笑顔でいる事が出来る…。
……慣れれば、……………こんな気持ちにならずに済むのか?)
儚いこの恋を持ち続ける限り、この苦しい思いとも付き合っていく事になる。
しかしそれは自分が選んだ道だ。
誠斗は、言葉にならない悲しみを抱えながら、それを口にせず、屋根裏に寝そべって、夜空に浮かぶ月を見続けるのだった。
好きな人が親友といい感じになっているのを、身近で見てしまった誠斗。
泣きたい気持ちを堪え、二人の幸せを願うその優しき心。
……感動ものだ!!!