ご注文はエロスですか? 作:ジキルとハイド
「……お、俺は朝倉勇樹だ」
よくは分からないが、とりあえず名前を名乗る。これが正解なのかは微妙だが、他に何て言えばいいか思い付かなかった。
「……私はリゼだ」
俺が名乗ったからか下着姿の不審者? が名乗り返してきた。律儀な性格をしているんだな。
警戒しているのか拳銃を構えたままだけど。この拳銃ってモデルガンだよな?
「こんなところで何をしている? 泥棒か?」
俺からしたらモデルガンを構えているリゼの方が泥棒に見えるんだが。
ていうか半裸で泥棒なんて馬鹿な真似をする奴がいるわけないだろ。……いや、下着泥棒なら分からないか。
まぁ、どっちにしろ俺は泥棒ではないけど。
「俺はラビットハウスの客で、服がコーヒーで濡れたから着替えようと思って更衣室を貸してもらったんだ」
「何だ、そうだったのか……。私はここでアルバイトをしているんだ」
リゼが安心したのか拳銃を下ろす。ふぅー、これで一先ずは助かった。
これで全ての問題が解決したわけではないが。
「ジロジロ見るな……!」
俺が次にどう対応していいか分からず固まっていると、リゼが恥ずかしそうに顔を赤らめながら自分の胸元を隠す。
半裸の男に下着姿の美少女、この組み合わせは色々とマズイ。犯罪の臭いがする。誰かに見られたら言い訳できる自信がない。
最悪の場合、通報される可能性まである。
それにしてもスタイル良いな……。全体的に引き締まっているのに、出るところはちゃんと出ている。しかも顔も可愛い。
ヤバい。最初はビックリしていたから何も思わなかったけど、改めて意識すると息子が反応してきた……。
何か言って誤魔化さないと。
「良い胸をしているな」
「なっ……!?」
…………俺は馬鹿か!? 何でこの場面で体を見た感想を言っているんだ!?
いや、確かに良い胸はしているけど。これじゃ完全なセクハラだ。言い訳の余地がない。自分で自分を追い込んでどうする!
ほら、みろ! 相手が顔を更に真っ赤にしてるじゃねぇか。これは完璧に怒っているな。
ここは誠心誠意、謝るしかない。それでも無理なら土下座だ。
「すみませ――へ?」
頭を下げようとした瞬間、いきなりリゼに腕を引っ張られた。
抵抗する間もなく俺はクローゼットに入れられ、すぐにリゼはクローゼットを閉めた。
え? どういうこと? これから何が起こるの?
俺が混乱していると更衣室の扉が開けられ誰かが入ってきた。
「ユウキくん、チノちゃんが……あれ、いない」
この声はココアか。
なるほど。ココアの気配を感じ取ったから俺をクローゼットに中に入れたのか。
この状況にパニックになっていたのはリゼも同じだったというわけだな。
第三者の声を聞いたからか、混乱し過ぎて一周したからは分からないが少し落ち着いてきた。
「……っ!?」
そして落ち着くと同時に気付く。
何やら大きくて柔らかい二つの感触が……! これって間違いなく女性のアレ……だよな?
視線が自然と感触の出所に向く。すると、そこには俺の体に押し付けられて強調されているリゼの豊満な胸が。
ヤバい! 今までに感じたことがないほどに気持ち良い!
しかも密室で抱き合うようにしているおかげで胸以外にも色々な女性的な感触を感じる。ああ……良い臭いだ。
「トイレにでも行ったのかな? チノちゃんが服を洗濯するって言っていたから教えに来たのに」
ああ、そういう理由で来たのか。
でも、それって今言いに来る必要があったか? 後でも充分に間に合う内容だと思うが。少なくとも俺が着替えているであろう時間に言いに来る必要はなかったはずだ。
……まさか邪魔だから適当な理由で追い出されたとか。……いや、さすがにそれはないか。
「それにリゼちゃんと鉢合って私の時みたいになったら大変だから様子を見に来たのに」
だったら、もっと早く来てほしかった。
ココアの時に何があったのかは知らないが、多分その時よりもマズイことになっている。
「……んっ、おい。息が当たってくすぐったいんだが……」
「仕方ないだろ。密室でくっ付いているんだから」
これに関しては文句を言うつもりはないけど。むしろ俺的には役得だ。
「大体、俺をクローゼットを引き込んだのはお前だ」
「それこそ仕方ないだろ。あのままだったらココアに変な誤解をされていたぞ」
「だったらクローゼットを閉めるだけで良かっただろ。そうしたら後は俺が適当に誤魔化していた」
「あ……」
どうやら言われて初めて気付いたらしい。
リゼは天然みたいだ……と言うつもりはない。俺も今気付いたからな。
俺が最初から気付いても何か出来たわけではないが。
それよりもココアは早く部屋から出てくれ! それでこの状況から解放される!
もうちょっとリゼの体の感触を楽しみたいところだが、そろそろ理性の方がマズイ。
「んー、待っているのも暇だし、トイレの方に様子を見に行ってみようかな」
ココアの引き返す足の音が聞こえた。よし、そのまま出ていってくれ。
「あれ?」
急にココアの足が止まった。どうしたんだ?
俺はクローゼットの隙間から外を見る。するとココアが床に放置されていた俺の脱いだばかりの服に近付いていた。
これは俺としたことがミスったな。困ったことになった。
「んあっ……。急に動くな」
リゼが艶かしい声を出してきた。頼むからやめてくれ。
「それに何かお腹あたりに硬いものが……」
そこまで言ったところでリゼの動きが急に止まった。ココアだけでも面倒臭いのに、今度は何だ?
俺もリゼの視線の先を見る。
「…………」
ズボンの上からでも丸分かりなぐらい股関が大きくなっていた。……うん、これは生理反応だから仕方ない。
対処の仕様がない。ここで抜けるならそれが一番だが、さすがに無理だし。
「おいんむっ!」
動揺したリゼが大声を出そうとしたので咄嗟に口を塞ぐ。……犯罪っぽさが増したような気がするが気にしないようにしよう。
そんなことより今のでココアに気付かれてないよな?
「やっぱりユウキくんの服だよね。紙袋の中にも服が入ったままだし。……これってどういうこと?」
音には気付いていないだが、脱ぎ捨てられた服が気になっているようで動く気配がない。
気付かれなかったのは助かったが、どっちにしろピンチには変わりない。リゼは口を塞がれたせいで余計に混乱しているし。
ていうか、力強いな。俺も結構鍛えている方なんだが長い間、抑えられる自信がない。
……よし。こういう時こそ落ち着け。そして冷静に対処法を考えるんだ。
……うん、完全に八方塞がりで、誰にも被害を出さないでどうにかする方法が思い付かない。間違いなく俺の今までの人生の中で最大のピンチだ。