※この作品はR-18です。

遊戯王ARC−V 幻影の魔術師   作:しょごりゅう

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今回からR18になります。
R18といってもぬるいどころか、あえて細かく表現しないようにしてますのでご了承ください。

モブゆや♀になりますので苦手な方は注意です。


第23話 忘却と想起

ーSide/ヨハン

 

「ん?なんだ?」

 

家で遊奈から借りたパソコンを使ってこの世界のデュエルの事を調べていた俺はふと気配を感じ椅子から立ち上がる

 

「「痛たた…!」」

 

「君達は…!?」

 

光ったと思ったら遊奈の友達である、柊柚子と紫雲院素良の2人がヨハンを見てびっくりしていた

 

「ヨハンさん!?遊奈が!遊奈が!」

 

「大変なんだよ!」

 

「落ち着け2人とも何があったんだ?」

 

柚子から慌てたように遊奈の名前が出た事と、柚子達をここに送ったのは遊奈の力だと分かった為、嫌な予感がしていたが2人を落ち着かせる。その間に騒ぎを聞き付けたのか遊斗達もこちらへ来てくれた。

しばらくして落ち着いてきたのか、何があったのか話してくれた

 

「…僕たちがいたのに何も出来なかった…。それどころか僕達だけ逃がしてくれたんだ…」

 

「ごめんなさい…」

 

「デュエルができない状態で中学生が大の大人…しかも拳銃を持っていたんだ、仕方ないさ。それよりも2人が無事で良かった」

 

落ち込む2人の頭を撫でてあげると遊斗達に向き直る

 

「遊斗、柚子ちゃん達の話を聞いて心当たりはあるか?」

 

「いや…。デュエルをしてカード化するなら兎も角、デュエル出来ない空間で殺そうとするのは奴らの動きじゃない。それに…」

 

チラっと遊斗は素良に視線を向ける。

遊斗が言いたいことは、アカデミアなら同じ仲間の素良まで襲うはず無いということだろう

 

「なら、別の次元の者の仕業か…」

 

「もしくは、この次元の者の仕業だろうな」

 

「お前は!?」

 

ヨハンの言葉に続くようにこの場には居ないはずの人物…赤馬零児が部屋に入りながらそう言う。

その後ろに遊戯さんとアテムさんも現れてリビングに入ってくる

 

「遊戯さんにアテムさん達まで…」

 

「失礼する。私の名前は赤馬零児。あなた達に話があってきた」

 

なんでいるの?ってみんながなっていると、チャイムを鳴らしても誰も出ず、玄関の鍵が空いていたから入ってきたらしい

 

「ごめんねヨハン君。零児君を止められなかったんだ…」

 

「すまないな。ああいうところはどこかの誰かを思い出すぜ…」

 

申し訳なさそうな2人にこちらも許すと、遊斗達と遊戯さん達にお互い自己紹介をしてもらう

 

「…事情は分かった。それで話っていうのは?」

 

「無論、彼女…遊奈の事だ」

 

「どうして遊奈の事を…」

 

「我々に敵対する気はない、寧ろ協力をお願いしたいのです。彼女からあなた達の事情は聞いている。今日私は彼女とお互いに協力関係になるという取引をした矢先に、私の方で彼女からの緊急信号をキャッチした」

 

「なんだと?!それは本当か!」

 

「ああ、これを見て頂こう」

 

零児がデュエルディスクを操作していくつか画像と動画を映し出す。

 

「これは、あの時の!」

 

「緊急信号の位置の近くにあった監視カメラの映像だ。見ての通り遊奈とそこにいる柊柚子と紫雲院素良がいる。そして…」

 

零児が操作して動画を再生させると柚子達が消えた後、遊奈が蹴られて吹っ飛ばされ、ぐったりした遊奈をどこかへ連れ去って映像は終了する。

 

「「遊奈…!」」

 

「「「「「「っ……」」」」」

 

悲痛な顔をするヨハン達を見ながら零児は更に襲ってきた男達を拡大させる

 

「こいつだよ!僕達を襲って、遊奈を攫ったのは!」

 

「この男はただ雇われただけに過ぎない。だが、1番彼女を攫った奴に近い存在だ。名前は餓狼」

 

「餓狼?二つ名か何かか?」

 

「ああ、本名は誰も知らないらしいが、飢えた狼の様に獲物に食らいつく様からそう言われているらしい。裏世界の何でも屋だ。恐らく周りの奴らも同類だろう」

 

「何でも屋…!」

 

「大丈夫だって!あいつらは遊奈を殺そうとせずに連れ去ったんだろ?なら絶対生かしてるはずさ」

 

「うん…」

 

何でも屋。名前の通り金さえ払えば何でもやる奴らなのだろう。

襲ってきた男達の正体を知り顔を青ざめさせる柚子に遊馬が安心させるように声をかける

 

「更に、この少し前に沢渡議員…沢渡シンゴの父親と言ったら分かるだろうか?」

 

「沢渡の?」

 

「確か前に遊奈が襲ってきたって難癖つけてきた奴だよね?」

 

「ああ、その沢渡議員が襲われて倒れていたのを発見したらしい」

 

「ええ!?」

 

「彼はLDS襲撃犯を遊奈だと疑っていて、ずっと遊奈の正体を探っていたのだ。我社にも度々遊奈を捕まえろと訴えて来ていて、今日も来ていたらしい」

 

「…まさか!」

 

「ああ、病院に運ばれた沢渡議員の話だとサングラスをかけた大男に榊遊奈について知ってる事全て話せと脅されて話してしまったらしい。もう分かるだろうが、餓狼の仕業だ」

 

「そんな…じゃあその沢渡の父親って奴から遊奈の事が漏れったってことか?!」

 

「そういえば…あいつら、主が遊奈を所望しているって言ってた。きっと遊奈の…精霊の力が目的なのかも…」

 

「!素良君それは本当か?あいつらは遊奈が精霊の力を使えることを知っていたのか?」

 

「う、うん…僕達も見たんだ。オッドアイズ・ファントム・ドラゴンの精霊が囚われたのを…」

 

「ファントムが!?…もしかして精霊狩りか…?」

 

学生時代にサファイア・ペガサスが狙われた事件を思い出しながら呟く

 

「いや…まさか奴が…?」

 

「零児君何か知っているのか?」

 

「…今から3年くらい前の話になる………」

 

零児から衝撃の事実が話される… 

 

──────────────────────

 

ーSide/遊奈

 

「……」

 

頭がボーとしてガンガンする…

 

何回か瞬きを繰り返しても目の前は真っ暗のままだった。体を起き上がらせようとするも動けない事に気づく

 

どうやら、視界と口を塞がれ、両手足胴体を拘束台かなにかによって拘束され、首には何やら首輪状のモノがつけられているのを感じた

 

そうだ私、攫われて…

 

 

拘束台の他に微かだが電子音を感じる。おそらくモニターがあり、その線の電極は私の体のあちこちに張り巡らされていた

 

ゾワッと本能的にこの場所から脱出した方がいいと感じた遊奈は力を込めて拘束から逃れようとする

 

「っ!」

 

おかしい、こんな拘束くらい本気を出せば壊せるはずなのに…!

 

焦る気持ちを抑えながら違和感の正体を自覚する

 

そういえば、ファントムの気配がほとんどない…。

 

まるで深い眠りに入って沈んでしまったかのように微かな気配しか感じる事が出来ない

 

『おや?目が覚めましたか。気分はどうです?』

 

「っんー!!んー!!」

 

ふざけるな!私をどうするつもり!

 

男の声に反射的に顔を上げてそう言おうとするが口が塞がれているため言葉にはならなかった

 

「心配しなくても貴女には協力して欲しいだけですよ」

 

男のパチンという音に合わせて口の拘束具だけ外される

 

「…協力だと…?」

 

気配を感じてその方向に顔を向ける。

どうやら私を連れてくるように言ってきた親玉が部屋に入ってきたらしい

 

「ええ!3年前のあの時のように…ね?」

 

「3年前…!?何の話だ!」

 

「おや?忘れてしまったのですか!あんなにいっぱい可愛がってあげたのに!?」

 

「っ…!…ああ、」

 

頭を思いっきり掴まれて引き寄せられると視界を塞いでいた布を外され、視界いっぱいに男の顔が現れる

 

嫌だ、嫌だ、嫌だ嫌だ嫌だイヤダイヤダ…!!

 

「忘れたとは言わせませんよ?遊奈ちゃん?」

 

ニタリと笑う男の顔を見て私は全てを思い出した…

 

──────────────────────

 

あれは3年前、私の今生の父である榊遊勝と、4つ子の兄達が行方不明になって、母が亡くなって間もない時だった。

 

あの時の周りの人たちは、私を逃げ出した臆病者の子や、家族に見捨てられた哀れな子としてただただ疎ましく、ヒソヒソと陰口や時には暴力を振るわれていた

 

大体は権現坂や柚子が私を助けてくれておじさんも、1人にはさせないように気を使ってくれていたのだが、その日はタイミング悪く、1人で家に帰る事になっていた

 

この時の私は、薄暗い夕暮れ時を1人で歩くリスクが高いのを分かっていて急いで帰っていたのを覚えている…

 

──────────────────────

 

ーSide/零児

 

 

当時私は15歳で、あの時、身代金の人質として攫われそうになっていたのを間一髪逃れて逃げていると曲がり角から誰かにぶつかりそのまま倒れ込んでしまう。

 

「す、すまない!っ…」

 

「だ、だいじょうぶ…あっ足が…!」

 

慌てて謝罪をして起き上がるが、顔を歪めて足首を抑える、どうやら足首を捻ってしまったようだった

 

「このくらい…くっ!」

 

「無理しちゃダメだよ!えっと…」

 

追われてる身で不味いと思い、無理に立ち上がろうとするが痛みが走る。

ぶつかった相手はフードで顔が分かりづらいが、小学生くらいの少女で、彼女は慌てて自分のバックから包帯を取り出すと私の足首を手早く固定してくれる。

よく見ると体のあちこちに包帯や絆創膏などが見える…どうやら良く怪我をするのかバックに応急処置が出来る程度に持ち歩いているようだ。

 

「…すまない」

 

「ううん。私も不注意だったし、おあいこって事で…はい!これでOK。でも無理は禁物だよ」

 

彼女に言われてゆっくり立ち上がってみると先程より痛みはマシになっていた。同じように立ち上がった少女をに礼を言う。

 

「ありがとう。今度お礼がしたい、私の名前は赤馬零児、君は?」

 

「私は…遊奈だよ」

 

「遊奈か…」

 

フルネームで聞きたかったがこれ以上は言いたくなさげだったのでこれ以上は聞かないことにした。恐らく怪我が多いのも訳があるのだろう

 

「クソっ!どこいった!?あのガキ!」

 

「いたぞ!」

 

「チッ!すまない!「待って!こっち!」お、おい!」

 

思ったより長居をしてしまったらしい、彼女に、一言告げてその場を去ろうとすると遊奈が私の手を引いて先行して走り出してしまう

 

仕方なく彼女について行くと抜け道(分岐点が多い)が続いている場所にたどり着く。

道なりに進んで2つ目の分岐点を右下に進み、次の曲がり道で左に進めば人通りが多い場所につけるらしい。

 

「君はどうするつもりだ?あいつらは君も見ていた。このままだと君も危ない」

 

「私なら大丈夫。君がここから逃げれるようにあいつらの気を引く」

 

「私の話を聞いていたのか!?」

 

「聞いてるよ。その足で2人で逃げるより私があいつらの気を引いて君が逃げた方が助かる確率が高い。だからこそ私が囮になる」

 

「なんでそこまで私を助けようとする。ぶつかった私が助けるなら分かるが、君にはなんの義理もないだろう」

 

「…なんでだろうね。でも人を助けるのに理由なんているのかな?」

 

「!」

 

そういう少女はちょっと困った様に眉を寄せて笑顔を浮かべていたが視線は真っ直ぐ私に向けられていた。

その言葉と真っ直ぐな瞳に彼女は本気で理由もなく人を助けられる子なんだと感じた。

初めてだった。大企業の次期社長やコネや見た目だけで近ずいてくる輩や、金目当てとしか見られた事がなかった私にとって、彼女の真っ直ぐな言葉と瞳は…

 

結局私は彼女の意を汲み、必ず助けると伝えると彼女から背を向けその場を離れ走り出した。

 

 

──────────────────────

 

ーSide/遊奈

 

零児と別れた後、零児を探しているであろう人物達の前に現れ零児とは逆方向へ走り出す。

 

明らかに男達が付いてくるのを感じながら私はこの後のことを考える

 

《もう!なんでこんな事になってるのさ!いくら赤馬零児が攫われそうになっていても今は関係ないじゃないか!》

 

確かに関係ないけど目の前で怪我をして逃げられない人を見ても無視なんて出来るわけない。生憎だけど性分だよ。こればっかりは

 

《君は…ううん。君のやりたいようにすればいいさ。僕は君さえ無事ならそれで構わない》

 

何か言いたそうにするが口を噤むとそういい不貞腐れたようにそっぽを向いてしまった

 

これは後で機嫌を取らないとなと思いながら赤馬零児からだいぶ離れたところで男達に捕まる

 

 

「…ちょっと待って嬢ちゃん」

 

「お兄さん達、誰…?」

 

「えっとね。お兄さん達、この子を探しているんだ。さっき一緒に居ただろう?」

 

「あ!その子なら途中の道で別れたよ?だから分かんないや」

 

赤馬零児の写真を見せてくるので、年相応の子らしく演技をする

 

「…どこに言ったとか知らないかい?」

 

「うーん…分かんない!」

 

「………そうか。ならしょうがない」

 

咄嗟に男達の脇をすり抜けようとするも手を掴まれ、背中に衝撃が走る

 

「っ!」

 

身体の自由が聞かなくなり膝から崩れ落ちる。

何とか視線だけ向けると男の手にはスタンガンが握られていた

 

「悪く思わないでくれよ。俺たちの顔を見られたのならこうするしかないのさ。運べ」

 

いや、理不尽過ぎませんかね…

 

そう心の中で思いながらも仕方なく車に引きずられて中に入れられると目、口を塞がれ、手を縛られて車が動き出すのを感じながら意識を失った。

 

──────────────────────

 

「…っ!…ゆ…!」

 

「…っ」

 

「遊奈!無事か!?」

 

「…あれ?零児何でここに……」

 

名前を呼ばれて意識が戻った私は目の前に縛られた赤馬零児がいるのを疑問にした

 

「すまない…後一歩って所で呆気なく捕まってしまった…。君がせっかく時間を稼いでくれたのに…」

 

「ううん…。私は気にしてない。それよりもまず、ここから逃げれるよう考えないと…」

 

「そうだな。君の言う通りだ」

 

何とか身体を起き上がらせると状況を確認する。

視界と口は塞がれておらず両手を後ろ手に縛られている状態だった。零児の方を見ても同じような姿だ。

見たところ、捻った足以外は怪我もしていなさそうだった。

おそらく、人質として手荒な真似をする奴らでは無いということだろう。

しかし、奴らは私は零児と違ってなんのコネも力もないただの子どもだと思ってるはず。正直手を拘束されてるだけで済んだのが幸いか…

 

次に部屋を見渡す。コンクリートとの部屋に鍵がかかった扉が1箇所と壁際には沢山の棚や物が見える

 

どこかの倉庫だろうか?

 

《遊奈…!》

 

ファントム無事?

 

《それはこっちのセリフ!全く無茶するんだから…》

 

ごめんごめん。力を貸してほしいんだ

 

《聞かなくても、僕の力は君の力でもある。みんな喜んで君に力を貸すよ》

 

ありがとう。クーちゃん来て欲しい

 

《クリクリー!》

 

ポケットのデッキケースから『EMクリボーダー』のクーちゃんが精霊姿で現れる

 

クーちゃん、この建物の間取りと場所がどうなっているのか、相手は何人いるか見てきて欲しい。それと目的も。

一応気づかれないようにね

 

《クリクリ!》

 

元気よく返事をするとクーちゃんは扉をすり抜けて部屋を出ていった

 

「…すまない。何もかも私のせいだ。私が君を巻き込まなければ…」

 

「それ以上言ったら怒るよ。君のせいじゃないのは分かってる。それよりもあいつらの目的が気になるところだけど、君は何か知らないのかな?」

 

「君は本当に小学生か…?まあ、確かに目的か…おそらくだが、父の会社の金目当てなんだろうな」

 

「…身代金目的ってこと?」

 

「おそらくだが…それか会社自体が目的なのかもしれないな。あくまで私の想像だけの話だが…」

 

「ううん。そこまで分かってるなら尚更、私の身の安全は保証されなそうだね…」

 

「何故だ?君にも両親がいるのだろう?」

 

「居ないよ。母は先月亡くなって、父は行方不明。心配してくれる人はいるけど親戚じゃないから身代金の請求は難しいだろうね」

 

「そうか…すまない」

 

「ううん。気にしてない」

 

──────────────────────

 

ーSide/零児

 

しばらくして、ガチャガチャと音が鳴りドアの鍵が開けられると先程私達を攫った男を含め4人が現れた

 

「いい子にしていたか?赤馬零児君。君の身柄は身代金が払われるまでは丁重に饗す。まあ、ママに懇願するこったな。連れて行け」

 

「待て!その子は関係ないだろう!私が目的ならその子は帰してあげてくれないか?…ぐっ!」

 

「零児!」

 

無理やり立たされそうになりながら遊奈だけでもと、男に懇願するも腹を殴られて跪く

 

「自分の立場が分かってないようだな?まあいい、別に殺しやしねぇよ」

 

《クリクリ…》

 

「クーちゃん!」

 

クーちゃんの声がしてよく見ると後ろにいた科学者らしき男の手にカプセルがあり、その中にクリボーダーが囚われていた

 

「んん?この子はもしかして君の精霊かな?ウロチョロしていたから捕まえたのですが、君の指示かな?」

 

「……」

 

「ん?この子ども、どこかで見たことあると思ったら榊遊勝の子どもじゃないか?」

 

「榊遊勝…?まさか…」

 

「あの臆病者の娘か!wこれは運がねぇなw確か母親にも死なれて天涯孤独みたいなもんだろ?wそれなのに赤の他人助けようとしてこんな目に合うとかwバカだなw」

 

「……」

 

「いい加減にしろ!お前達に彼女を馬鹿にする資格は無い!」

 

「零児…」

 

「このガキ…調子に「やめろ。そいつに手を出すのはまずい」…チッ、まあいい、家族がいねぇなら金は望めなそうだな」

 

「それでしたら、この子は私に下さいませんか?精霊が見えるみたいですので色々価値がありそうです」

 

「構わねぇよ。だけど俺達も後で混ぜろや」

 

「壊れない程度ならいいですよ」

 

「よし、連れて行け。せいぜい楽しませてくれよ?」

 

「遊奈!」

 

「零児!」

 

私は男三人に、彼女はあの白衣を着た男に別々にされてしまった。

 

 

──────────────────────

 

 

「その後、私は身代金を要求する動画を取らされ、しばらく監禁生活が続いたが、警察のお陰で私は無事に救出された」

 

「…遊奈はどうなったの?」

 

「遊奈も私と同じタイミングで救出されたと聞いた。あの時の私は彼女が無事だと知って心底安堵していた、そして彼女に謝罪する為に彼女が入院する病院に向かった。しかし、彼女は救われてなどいなかった…!」

 

「…それって!」

 

「…遊奈が見つかって、病院に駆け付けた時には昏睡状態になっていたわ。私とお父さんと権現坂が付きっきりで看病していたの。あの時の遊奈はいつ死んでしまうのか分からないくらい弱っていて、私は怖くてお父さんに泣きついてたのをよく覚えてる…。そして目が覚めた遊奈はお父さんを見てパニック発作を起こしたわ」

 

柚子が悲痛そうな顔で零児の話に続いて当時の事を語る

 

「PDSDか…」

 

「私もその場面を見てしまったのだ。家族みたいにしていた男性にもパニックを起こす彼女を…彼女に何があったのかは想像するしかないが、あの時の男達の発言で察した私は結構彼女に会わずにその場を後にした。私を見てもきっと彼女はあの時の事件を思い出してしまうと、私から彼女に接触しない方が彼女の為だと…分かってる。ただ私は逃げ出しただけだ」

 

「赤馬のせいでは無い。俺達兄妹が!俺が遊奈の傍に居ればこんな事にならなかったかもしれない…!!」

 

「遊斗…」

 

「…それは零児君のせいじゃない。もちろん遊斗もだ。今ここで自分を責めたって遊奈はそれを望まない」

 

「はい…」

 

「分かってます。あの子は優しい…再会した彼女は私の事を覚えていなかったが、心は変わっていなかった。だからこそ、今度は私が彼女を救いたい。あの時、私を助けようとしてくれたように」

 

「そうか、君の気持ちはよく分かった。しかし、この事件は解決したんだろう?」

 

「それが…捕まった犯人は三人…。ある男…遊奈をあの時連れていった白衣の男だけは未だに捕まっていない」

 

「なんだって!?」

 

「てめぇ!この3年間何やってたんだ!?」

 

「やめろ真月!彼を攻めた所で何の解決にもならない!」

 

「言い訳にしかならないが、私も奴をずっと追っていた。しかし、相手は警察も掻い潜る相手。なかなかしっぽを見せてはくれなかった。そして今回の遊奈の拉致…関係は多いにあると考えている」

 

真月に胸ぐらを掴まれ、遊斗が止めに入る中、息が詰まるがそう答えると舌打ちをしながら真月は乱暴に零児を離した

 

「そして、この3年で私も奴の身元を洗い出した。これを見てくれ」

 

零児が操作すると、監視カメラの映像からある男の履歴書に変わる

 

「奴の名は曰理(わたり)知之(ともゆき)。3年前、我社のライバル社にて、とある研究の責任者だったらしい」

 

「この男が遊奈を…」

 

「……」

 

「…とある研究とは一体なんなんだ?」

 

「…精霊に関する研究をしていたらしい」

 

「なるほど、だからピンと来たんだな」

 

「ああ。もう既に会社は倒産し、奴は姿を晦ましてしまっている。だが目星はいくつか着いている。後は時間の問題だ」

 

「どのくらいかかる?」

 

「…遅くても1週間…いや、5日で終わらせる」

 

「俺達にも協力させてくれ!仲間が連れ去られて待ってるだけなんて出来ねぇよ!」

 

「助かる。こちらも人出が多いに越したことは無い」

 

「わ、私達も!」

 

「いや、柚子ちゃんと素良君は待機して欲しい」

 

「「でも!」」

 

「頼む。君達にしか出来ないんだ。遊奈がいつ帰ってきてもいいように待っていてくれないか?」

 

「…分かったよ」

 

「……」

 

素良と柚子は悔しそうに渋々頷く

 

「話はついたな。必ず遊奈を救出するぞ!」

 

「「「「「「「ああ!」」」」」」」

 

ヨハンの掛け声に柚子と素良以外の全員が頷く。

ヨハン達7人はこのまま零児と共にL.Cにて作戦会議。柚子と素良はL.Cに事件解決まで保護される事になった。

 

 

──────────────────────

 

ーSide/遊奈

 

零児と別れた後、私はこの男に実験のモルモットにされ、更に陵辱される。この男だけじゃない、他の仲間達も加わって私の体と心がボロボロにされて行った。

 

追い詰められた時、この男は仲間を置いて私を連れて逃げ出そうとした。

だが、ファントムが姿を一瞬だけ現し、その男を引き離し私を助けてくれたお陰で私は救助隊に見つかり保護された。

 

しかしこいつらのせいで両親──十代とヨハン──によって回復していた前前世でのトラウマも蘇り、救出された後もある一定の大人と男性を見る度、その時の事を思い出しパニック発作を起こしてしまっていた。

それを見兼ねたファントムがこれ以上、私の心が傷つかないようにその時の記憶を封じたようだ。

 

全てを思い出した私は震える身体を誤魔化すようにただただ男を睨みつける

 

「はぁはぁ…」

 

「その様子だと思い出してくれたんですね!私嬉しいです!あの時は貴女を連れて行くことはできませんでしたが、代わりに確信しました!貴女がいれば私の研究は完成できると!もちろん、貴女の事は愛してますよ?貴女を迎える準備に3年かかってしまいましたが、ようやく準備が整ったので、迎えに来ました」

 

「…ふざけるな!研究の為に精霊を犠牲にするなんて許せない!それに相手の意志を無視して強要させるのは愛なんて呼ばない!私は、お前なんか愛してない…!」

 

「いけない子ですね?私の愛を理解出来ないなんて…これはお仕置が必要ですね」

 

「────っ!!?」

 

男がそう言った途端。首輪から電流が流れ出し体を駈け巡る。

その衝撃に声の無い叫びを上げた

しばらくして電流が止むと男が私にねっとりした声で囁く。

 

「オイタをしたら行けないですよ?遊奈ちゃん。でも大丈夫!私の愛が理解出来るようにこれからいっぱいアイシマスので!代わりと言っては何ですか私の研究の協力をお願いしますね?そうだ!君が来たのならこの子にも会わせないとね!」

 

「………会わしぇ…う…?」

 

電流のせいで呂律が回らず、身体もぐったりしたまま男の動向を伺う。

男はおもむろにスイッチを押すと部屋にタンクが現れる

 

「ク…ちゃん…?!」

 

タンクの中には液体が溜まっており、中には3年前、男に奪われたクリボーダーが眠っていた

 

「な、にした…!?」

 

「眠ってもらっているだけですよ。あのカプセルの中だと精霊は死んでしまいますからね。この液体は精霊にリンクしたカードを装置にセットすることによって、そのカードから精霊界の空気を取り込み、精霊を閉じ込めたまま保存が出来る代物なんです。素晴らしいでしょう?ああ、大丈夫。あなたの精霊とカードは大切に保管されてますよ。白き竜…ファントムと言ってましたっけ?あの子はちょっと特殊な方法で深い眠りに入ってもらってます。また、邪魔なんてされたくありませんからね」

 

「っ!」

 

「嗚呼…いいですねぇ、その目!ファントム…あの精霊が宿っている証拠!紅と翠のオッドアイ!ますます貴女のことが愛おしくなりました!さて、時間も惜しいですし始めましょうか?私、もう待ちきれません!」

 

はぁはぁと興奮しながら近寄ってくる男に為す術もなく、衣類を乱されていった…

 




回想シーンはちょっと納得行ってないところがあったりするんで、もしかしたら修正入るかもしれないですが、流れは変わらないと思いますので許してください。
しばらくデュエルシーンはお預けかなぁ
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