やっと、オリジナルが終わる…
ーSide/遊奈
「う…ううん…。ここは…?」
気づけば真っ暗な空間だった。
周りを見渡した後、記憶を辿ってみる
確か…Originが現れたのは覚えてるんだけど…。もしかしてここはOriginの中なのか?
そう推測するのは、先ず自分の身体が汚れておらず服を着ているのと、奴が現れた瞬間にまるで魂が引っ張られるような、なんとも言えない感覚が襲ったからだった。
「遊斗…?…っう!」
ふと似た気配を感じて呟くと、頭に痛みが走り蹲ってしまう。
そして、脳裏に何かが過ぎる。
「くっ…これは遊斗の記憶?」
頭が割れるような痛みに襲われながら、エクシーズ次元にいた頃の遊斗の記憶を全て見せられる。
平和なハートランドシティ、楽しそうにデュエルをする人々、次元は違うが友と笑い合う遊斗達…だが、突如その平和も侵略してきたアカデミアによって壊されていく。建物は破壊され瓦礫に変わっていき、人々は次々にゲーム感覚でカードにされていく。
もう、嘗ての面影は無くその場は戦場と化していた。
酷い…
遊斗の記憶を見た遊奈は涙を流していた。
場面は移り、生き残った人々でレジスタンスが出来上がる。そこには無論、遊斗、隼、そして柚子に似た少女-瑠璃だと思われる-も含まれてそこで遊馬達に出会ったようだ。
レジスタンスのメンバーは襲ってきたアカデミアを何とか撃退しながら遂に敵が使っていたデュエルディスクの機能を解析し、人をカードにする機能と1回きりだが他次元にワープする機能を手に入れる。その矢先、瑠璃がアカデミアに攫われたとの話を聞き、先行した黒咲の後を追ってここに来たようだ。
遊斗の記憶が終わると頭痛も収まっていく。すると今まで気づかなかったが誰かの泣き声が微かに聞こえてきた
…ごめ………い。…僕が君を………んだ。…僕…いな…れば…。
「…泣かないで」
何もいないはずなのに、思わず手を伸ばしそう声をかける。途切れ途切れだが自分自身を責めて泣いてる子に、もう自分を責めないで泣かないで欲しいと感じてしまう。
ああ…君は……
目の前が眩しくなっていき、気が遠くなる瞬間声の主を見た気がした……。
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「遊奈!気がついたか!」
「…零児?」
目を覚ますと零児が目の前にいた。
拘束されていた手は解放され零児に横抱きに下ろされていたようだ。
零児が手に持ったハンカチで汚れた顔を拭ってくれる
「ん…汚れちゃう…よ?」
「構わん。それより大丈夫ではないだろうが…具合はどうだ?」
「うん…大丈夫。零児達が来てくれたから…」
心配そうに聞いてくる零児に薄く笑う。
零児に嫌われるのが怖かったけど、そんな不安もさっき零児が言ってくれた言葉で無くなり、本当に嬉しかったのだ。その気持ちが伝わるように。
「遊奈、すまねぇ、俺達がもう少し早く気づいてれば…」
悲痛気な零に首を横に振ると零の背中にいた遊斗も目を覚ましたようだった
「…俺はいったい…」
「遊斗起きたのか!良かったぁ、二人して気を失った時はヒヤヒヤしたぜ。大丈夫か?」
「ああ…俺は大丈夫だ」
真月に下ろされながらも遊斗はしっかりした足取りで立つと、零児に支えられながら上体を起こしていた私を抱きしめてくる
「遊奈…無事でよかった」
「うん。…心配かけてごめん」
「いい、お前が無事ならな」
遊斗から離れると零から着ていたコートを渡される
「着とけ、無いよりマシだろ」
「……ありがと」
ほとんど裸だったのが今更になって恥ずかしくなって、立ち上がって零児達に背を向けてマントを脱ぐとコートを急いで着ると戻る。
そして、少し余裕が出来て周りの状況に目を向ける。
「これは…」
「ヨハンさんは闇の魔物って言っていた」
「なるほど、ね…お父さんは?」
「ヨハンさんなら…」
「遊奈!無事か!?」
零児が言おうとした瞬間、空から本人がダイブするように思いっきり抱きしめてくる
「く…くるしい…」
「ああ!悪ぃ!」
ヨハンは力を緩めると暖かい力が私の傷を癒していく。
「ありがと、お父さん。それよりOriginと…あいつらは…?」
「奴らはそこら中にいる魔物に呑まれたよ」
《あんなモノを呼び出し、闇のゲートを開いた代償です。貴女が気に病む必要はありませんよ》
「…うん」
「Originはあそこだ」
ヨハンが指差す方に全員が顔を向けると黒い塊が地面で蠢いていた
「レインの攻撃でだいぶ弱らせた。しばらくは動けないだろう。これ以上はこの空間が耐えられない、一旦脱出しよう」
「待って!……私にOriginの事任せてほしい」
「何を言ってるんだ!危険すぎる!」
「分かってる。でも行かないといけない」
Originの正体…私の感が正しければ、私以外救う事が出来ないだろう
「……はぁ…こういう所、俺達に似ちゃったんだなぁ」
「まあ、2人の娘だからね」
「分かった。だけど無理をしない事、危ないと思ったら直ぐに引き剥がすからな」
「うん。行ってきます」
みんなにそう告げるとゆっくりOriginに近づく。私が歩く度、魔物は私を避け道が出来ていく。
《グルル…》
「…帰ろう?
Originの目の前に来るとそう手を伸ばしながら語りかける。
威嚇するように唸っていたOriginは闇を伸ばし飲み込もうとするが構わず話しかける。
まるで小さい子を諭すように…
「ファントム、もう自分を責めるのはやめてよ。私は君と一緒になったのを1度も後悔したことない。例え同じ事が起きたとしても、私は君を恨んだりしないし呪ったりもしない。もし、あの日をやり直せると言われても私は同じ選択を取るよ。これは私の意思…例え君でも否定させない」
いつの間にか唸り声は止んでいた。顔に手を添えるとそっと抱きしめる
「…君がどんな考えで私を選んだのかは知らないけど、それでも私は君が必要だし大切なんだ。だからさ、帰ろう?君がいない人生なんて寂しいし、もう考えれないんだ」
私にとって、君はたった1人の
「だから…相棒は返してもらうよ」
遊奈から光が溢れ出し、闇が光に溶けていく。
《…君は本当に馬鹿だね…。そこまで分かってるのに何故僕を責めない?僕が君を巻き込んだのに…》
「例えそうだとしても私はこの世界に来て良かったよ。だって灰色の世界だったのが、いつの間にか色とりどりの世界に変わった。心を知った。私の事を大切に思ってくれる人も出来た、もちろんその逆も…。そして何より誰かを愛する事が出来るようになった」
《……理由は聞かないのかい?》
「今は知るべきじゃないんでしょ?なら聞かない。いつか君が話してくれるのを待つさ。巻き込んだって思うなら最後まで責任もって私を巻き込んでよ?相棒」
《…分かった、降参だよ。全く君には敵わないな》
「そもそも、自分を責める事がお門違いなんだよファントム」
《そう…だったね。うん、今はまだ言えないけどいつかちゃんと話すよ。だからそれまでは待ってほしい。》
「分かった、絶対だよ」
《約束は守るよ。もう迷わない、君の相棒として君の傍にいさせて欲しい》
「もちろんだよ。おかえりファントム」
ファントムが私の中に戻っていく。いつもの感覚が戻ると空間が崩壊し始める
「遊奈!」
「分かってる!」
急いでみんなに合流すると空間を脱出した。
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あれから3日たった。
どうやらあの場所を脱出した後、限界が来て倒れてしまいずっと寝込んでいたらしい。
目が覚めたら柚子に思いっきり抱きしめられて怒られた後、素良からもお説教を受けた。随分と心配をかけてしまったらしい。
権現坂や他の塾生達も次々にお見舞いに来てくれた。
修造おじさんも来てくれたけど、理由を聞いていたのだろう、初めは部屋には入らずに外から話しかけてきてくれた。それに申し訳なさと寂しさを感じながら入室を許可しても3年前とは違っておじさんには拒絶反応が出なくて安心した。急に頭を撫でられたりとかしなければ大丈夫だろう。おじさんもどこかほっとしたように表情を和らげていた。
みんなから体調はどうだと聞かれたが、身体の傷はヨハンのおかげでほぼ完治、心の方はまだ学校に復学は難しそうだが、大会までには何とかしたい。
更に数日たった後、零児が訪ねてきた。
「失礼する。遊奈、見舞いに来るのが遅くなってすまなかった」
「気にしないでよ。零児の事だから後処理をしてたんでしょ?こうして来てくれるだけで嬉しいからさ」
「そうか。ヨハンさんに見舞いの品を渡して置いたから、後で食べるといい」
「ありがとう。後で頂くね」
それっきり2人は沈黙する。気まずい沈黙では無く、どことなく擽ったい感じだ。
「あ、あのさ!あの後、何か進展はあった?」
「あ、ああ、そうだな…」
分かったことは曰理知之と餓狼は行方不明との事、奴がファントムを媒体にし生み出したモノは精霊なんかじゃなかった事、数十年前から何かに取り憑かれたかのように研究に没頭していた事、それと研究所から大量のカードが出てきたらしい、それもデュエルディスクに反応しないモノが…
一どれだけの精霊が犠牲になったのだろう…
「研究資料に関しては外に流出しないように完全に消去した。奴の部下達にも情報を吐かせた後、精霊に関する事だけを消去した。君が必要だと思うなら、私もあの日見た研究資料の記憶を消去する予定だ」
「…零児はその研究資料を見てどう思った?」
「…おぞましいと思った。人智を超えた存在に人が手を出すべきでは無いと改めて確信した。しかしその逆に、このまま全てを闇に葬ったとして犠牲になった者達の心は報われるのだろうかとも考える。研究を進めれば精霊と人間がより良い関係になる手助けが出来るのではないか、と…」
「そっか…零児らしいね。なら約束して、その研究資料を悪用しないって、やつと同じ道に行かないって」
言外にただの約束ではなく、人智を超えた存在との契約だと伝える。
それだけ精霊の事はただの人が扱うには危険すぎるからだ。
一でも、零児なら悪用しないって信じてる。だから託したのだ。
「……分かった。決闘者として、私自信に誓おう。私、赤馬零児は資料を悪用せず、やつとは違う方法で精霊と人がより良い関係になれるよう力を貸す事を」
「その誓、精霊を代表してこの私、榊遊奈がしかと聞き届けました。…はい!堅苦しいのはおしまい。私も協力出来ることはするから言ってよ」
「しかし…それは…」
「信用出来ない人に無理矢理されるのは嫌だけど、零児なら信じてるから…。それに、精霊と人間の架け橋になれるなら私も協力したいんだ。精霊の中には人によく思ってない子達もいるし、月日が経つにつれてその溝が深くなってきてる気がするんだ。だからさ」
「…分かった。その時はよろしく頼む」
「もちろん」
手を差し出されたので握り返す。
「ところで君の精霊…ファントムはどうだ?」
「…ファントムなら今はまだ眠ってる。ファントムが目覚めるまでは私も本調子には戻らないと思うけど、しばらく私の中で休んでれば回復するから安心してよ」
「そうか、それを聞いて安心した。……ああ、すまない。遊奈に渡したい物があったんだ」
「ん?」
そういうと零児はカードケースから1枚のカードを渡してきた。
「これって!」
《クリクリー!!!》
カードの絵柄を見た瞬間、そのカードから茶色い毛玉が思いっきり顔に向かってダイブしてきた為、勢いよくそのままベッドに戻る事になった。
でもそんなの気にならないくらい、嬉しい気持ちが溢れ出しその子を抱きしめる
「クーちゃん無事だったんだね。良かった…」
《クリー!クリー!》
3年前に失った時と変わらない感触に涙を流しながら、お互いに再会を喜び合う。
「…良かったな。2人とも」
落ち着いたのを見計らって零児が声をかけてくれる。それに返事を返すためにクーちゃんを抱きしめながら上体を起こす。
「うん。ありがとう零児。改めて助けてくれて」
「言ったはずだ、必ず曰理から君を救い出すと」
「…うん。本当に嬉しかったんだ。あの時、どんな私でも受け入れてくれるって言葉がさ。…私は普通じゃなかったし、何より私は…汚「くなんかない。君は綺麗なままだ」どうしてそんな事言えるの…?」
言葉尻が震える私の言葉を遮るように断言する零児に本気でよく分からなくて聞き返す。
「君の事が好きだからだ」
「…ふぇ??」
一瞬、零児の言葉が頭に入ってこなくてフリーズする。
訳も分からずああ…とかうーとか意味の無い言葉が口から溢れ出す
「少なくとも君の心は綺麗なままだ。それでも気になるなら、私がそれを上書きして君を幸せにしたい」
「…なんかプロポーズみたい…」
「そう捉えてもらっても構わない」
「!?///」
無意識に呟いた言葉にどこか苦笑いを含んだ零児の言葉に遂に耐えきれなくなって、クーちゃんの頭に顔を埋める。
絶対、今顔真っ赤だ。
「満更でもなさそうだな」
零児の言葉に顔を埋めながらも疑問が絶えない。零児の事は好きだし信じたい…でも、信じるのが怖い
「なんで?私、普通の人じゃないんだよ?」
「そんなの気にならないな」
ガバッと顔を上げで零児を睨みつける
「気にしてよ!それに私の身体は無理矢理犯されているのに関わらず歓喜してたんだ!まるで発情した獣の様に…好きでもなんでもない相手に腰を振るっていたんだよ!こんなに浅ましい身体になったのに…それでも同じことが言える?」
「言えるな。寧ろ上書きしてやりたいくらいだ」
「!?」
言葉尻が小さくなりながらも零児に全て暴露しても零児は即答するどころか、その瞳は獣のように鋭かった。それを見て思わず身体が竦むのと同じくらい心臓がドキッとする
「私は君だから好きになったんだ。あの日、私を助けてくれたあの時から…ずっと君を忘れたことは無かった…」
「零児…」
一もういいんじゃない?素直になりなよ。僕は君に幸せになって欲しい一
………そう…だね…ありがとう…
「…零児。私も零児の事好き。こんな私でもいいなら…」
「! ああ。君しかいない…」
そっと零児に抱きしめられる。身体が一瞬強張るが、背中を何度も撫でられていくにつれてそれも無くなっていく。
抱きしめられた衝撃で腕に抱えてたクーちゃんを離してしまったが、クーちゃんは空気を読んだのかカードに戻ったようだ。
おずおずと零児の背中に手を回して、胸に頭を乗せるように体重をゆっくりかけていくと、ドクドクと思ったより早い心臓の音が聞こえてきて、零児も同じ気持ちなんだとクスリと笑う。
「大丈夫か?」
「うん。零児は大丈夫。…信じられないや。零児と両想いなんて」
「それは私も同じだ。本当はこんなすぐ想いを告げるつもりは無かったのだがな…」
「…後悔してる?」
「それが残念な事に少しもしてない」
くつりと笑う零児を見て、彼でも冗談を言うんだなと新しい発見をして胸が暖かくなる。これが愛おしいって事なのかな?
いつの間にか不安は愛おしさと安心に変わっていた。
【おまけ】
「そういえば、よくこのカードが私のって分かったね」
「ああ、その子が教えてくれたんだ」
「え…!?」
「どうやらあの一件以来、私も精霊が見えるようになったようだな。こういう事はよくある事なのか?」
「そ、そうだったんだ。んー、私は生まれつきだったけど、零児みたいにきっかけがあって精霊が見聞き出来るようになったりって事はあったみたいだよ。お父さん達が学生の時の同級生なんかがそうだったって」
「そうなのか。なんだか不思議な感じだが、悪くはないな」
「にしても3年前から私を好きでいてくれたんだね?」
「一目惚れなんだろうな…って遊奈、もしかして記憶が!」
「うん。思い出させられたって言った方が正しいけどね…。まあ、零児と初めて会った時の事が思い出せたのは不幸中の幸いかな?」
「そうか…すまなかったな。あの後、君の見舞いにも行かなくて…」
「あの時は記憶も無くなってたし、大人や異性がダメになってたから仕方ないよ。謝らないで欲しい。変わりに今日来てくれたんだしさ」
「しかし…」
「そ、それにせっかく恋人同士になったんだからさ。過去の事で嫌な気持ちになりたくない」
「! そうだな。私も同感だ」
そう苦笑いしながら言うと零児はハッとしたようにした後、同じように苦笑いを返す。
それを見てなんだかおかしくなって笑うと零児も釣られるように笑いあった。