※この作品はR-18です。

刀剣乱舞SS集(BL・NL・友情主従ごった煮)   作:駒由李

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死ネタ、死体損壊描写があります
▼おかしい、最初は「鬼さに♀がいちゃついてるところが書きたいな~♪」と思ってネタ出しをしたんだ でも鬼丸の顔を思い浮かべている間にこうなった……鬼丸……あまりに「死」が似合いすぎる刀……
一応今作はifストーリーの予定。この審神者にはもう少し長生きしてもらいます



【鬼さに♀】もう、何も聞こえない

 それは「仕事」帰りのことだ。自身は、何気なく、主の背中に声をかけた。正確には、頭髪のないそのつるりとした頭に。

「あんた、髪は伸ばさないのか」

「……伸ばして欲しいのか」

 振り返る彼女――そう、彼「女」だ――の声は平板だ。まるで自身の言葉を意に介してない様子で。その左耳に赤いピアスが光っている。片耳だけのそれは、彼女によく似合っていた。それは頭髪がないからこそ際立っていたと言えるかも知れない。しかし、と自身は思うのだ。

「あんたは、はじめて逢ったときからずっとその坊主頭だからな」

「スキンヘッドと言ってくれ」

「同じだろう。……髪型を変える気はないのか」

「ないな」

 言いきる声が強い。体ごと振り返った彼女は、腕組みをする。

「生まれたときからロングヘアを強いられてきたからな。スキンヘッドに慣れた今はもう髪があった頃には戻れん」

「しかし……神職の女は髪が長い方がいいんだろう。霊力を貯めるためにも」

「まぁ、僧籍を取っているとはいえ、今は私は審神者だからそうするべきなんだろうが……特に霊力に不自由はしてないしな」

 そう言って、自身の向こう――たった今辞してきた「現場」を見遣る。まだゲートを潜り抜けていないので、ここはまだ「現場」の本丸だった。

 そこには、死因不明の審神者の死体が転がっている。不明だった。彼女が来るまでは。

「お陰で、余計なものまで聞こえる」

 そういって、彼女はゲートへと歩き出した。

 「聴耳」。彼女の耳が聴くのは生者の声だけではない、死者の声もだ。特に彼女は23世紀のイタコとも呼ばれるほどの才幹を持つ。こうして、ブラック本丸などで死因・身元不明の死体が出ると彼女が呼ばれることが専らだった。その性質ゆえに物騒な事件に関わることも多い。以前は霊的違法薬物の事件に関わったこともあった――閑話休題。

 ゲートを潜り、直接本丸に帰ってきた。いつもはすぐに来る出迎えが、今は忙しいのか誰も来ない。鳥が囀る。その中で、彼女は言った。

「それに、この頭の方が耳を削いでもらいやすい」

 

 その言葉の意味を、正確に理解したのは今。

「鬼丸! 主は――」

「死んだ」

 轟音が聞こえる。騒ぐ声が聞こえる。駆けつけてきた国広が叫ぶ。聴きたくもないものが聞こえる。聴きたいものは、聞こえなかった。主の声は、もう、聞こえない。彼女の首は掻き切られていた。敵短刀の残骸が、執務室の隅に転がっている。

 本丸が襲撃に遭った――それに気付いたのは、本丸の結界が大きく揺らいだからだ。それは本丸の主たる審神者に何かが起きたことに他ならなかった。国広が自身に「主の様子を見てきてくれ」と頼んだとき、彼はゲートの方へと走り出していた。自身は走った。嫌な予感が首を擡げてきて、それを振り払いながら執務室に駆けつけた。

 ――執務室の障子は開けっ放しだった。そして駆け込んだとき、彼女は畳の上に倒れていた。敵短刀が襲ってきて、それを斬り捨てた。そして倒れている彼女を見て、首から血を流しているのを見て――自身は、あることを思い出した。

「……鬼丸? 何をしているんだ」

「生前、主に言われていたことだ」

 そう言って、刀を取り出す。主の懐から懐紙を頂戴し、刀身を握った。そして、彼女の耳を削ぐ。

「――何を」

「主に言われていたことだ」

 止めようとしてきた国広に、自身は重ねて言った。その声が自分でも虚ろだと認識していた。

「『聴耳は死んだときに耳を削ぐ。次は聴耳に生まれないように』と」

 

『次の人生っていうのがあるとしたら、できればもう死人の声は聴きたくないな』

 そう言って、彼女は振り返って笑んだ。寂しそうな笑みだったと、今でも思う。

『生きている人の声だけ聞こえる人生っていうものを、歩んでみたい。あんたの声も、きっと今も純粋には聞こえてないと思うから。……あんたの声が聴きたいな』

 

 耳を削ぎきる。まだ、血が流れていた。左側の、ピアスが嵌った耳が重い。それは彼女の魂の重みを示しているようだった。手の中の耳から流れる血は、まだ温かい。掌から滴り落ちる血を眺めていた。国広が肩に手を置いてくる。

「鬼丸。俺たちにはまだやることがある。侵入してきた敵を殲滅することだ」

「……もう、意味はないんじゃないか」

 力なく答える自身に、国広は言う。

「俺たちが落ちれば、政府はこの空間を丸ごと取り潰さないといけない。そうなれば、主の遺体を誰が弔ってくれる? その耳を、別に埋めてくれる?」

「――」

「……刀を取れ、鬼丸国綱」

 国広は刀を振った。

「弔い合戦だ」

「……あぁ」

 耳をそっと畳に置き、懐紙で手の血を拭い、本体を携える。

 恐らく、これが最後の戦だ。たとえ敵を殲滅できても、政府に保護されても、自身はこの主以外に仕えまい。そう決めて、国広と共に駆けだした。

 

 

 

了

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