pixivより転載
いつもの朝は、初期刀に起こされることがはじまる。それが本丸に就任してから、ずっと続いていた慣習だった。
だから今、眼を覚ましたとき。自分の状況がすぐには理解できなかった。眼を覚ましても真っ暗だったので。
「……!? もがっ」
後ろ手に縛られて猿轡も噛まされて転がされていることはわかる。それはわかるのだ。ただ、縛っているものの正体がわからない。手錠にしては温かいし、縄にしては粘ついている気がする。そもそもなぜ縛られているのか。
『――、――――』
声がする。それはがちゃがちゃとした、金属が触れ合うような音だったが、自身はなぜかそれを「声」と認識した。たとえるなら耳慣れない外国語。そしてそれにまたがちゃがちゃと声がして、少なくとも拘束されている自分の傍に、そんな不気味な言語で会話する者達が2人いることに気付いた。それに、このエンジン音、独特な匂い、顔に伝わってくるシートの感触――車だ。自身は車で運ばれているらしい。今時は完全自動運転だから、免許を持ってない者でも乗ることはできる。そのため誘拐犯罪の温床になりがちとは聴いていたが、まさか自分がその被害に遭うとは――否、あり得る事態だ。自身は白刃隊を率いる審神者なのだから。自慢ではないが霊力が非常に豊富な家系に生まれた。それに眼をつけられたのかも知れない。
(眼をつける?)
自身の言葉に、自身で問う。
そう、眼をつけられた。霊力が豊富な自分が。なぜ? なぜそんな人間が攫われる?
嫌な予感が冷や汗となって背中を伝う中、車が止まる気配がした。目隠しをされているので外の様子は見えない。空調も効いているから温かい時間なのか冷える時間なのかもわからない。情報が足りなすぎる。そう思っていると、音がした。金属音。それが近付いてきて――目隠しが外された。
「ひっ……」
途端、自身は息を飲んだ。
運転席と助手席。そこには歴史遡航軍の打刀と太刀がいた。大きい図体なのにシートに収まっているのは恐らく空間操作技術だろう。青い発色と緑の発色だからさして強くはない。ただしそれは刀剣男士に相手取ってもらった場合だ。ただの霊力が強いだけの審神者には、1部の戦闘系審神者以外普通は太刀打ちできない。ましてや今は拘束されている身だ。自身はそもそも術なども使えない。本当に霊力が溢れるほどに強いだけなのだ。
目隠しが取れたところで、無理に起き上がり辺りを見渡す。窓の外は暗い。自分の服装は寝間着の浴衣のままで、下駄すら履いていない。幸い足は拘束されていなかったので、打刀と太刀がなにやら笑い合っている様子――推察するに恐らくろくでもないこと――を尻目に、後部座席のドアロックを外す。そしてドアを蹴破って外に出ようとした。
それを、外から割り込んできた「それ」に阻まれる。
「――っ」
息を飲む。それは歴史遡航軍の中脇差――あの、巨大な蜘蛛のような敵。
それに、後部座席に押し戻される。中脇差は器用に後ろ手でドアを閉めた。ロックもかける。用心の良いことだ、と感心している場合ではない。退路を塞がれた。
『――、――――――――――――――』
太刀がなにやらがちゃがちゃと言ってくる。どうせ意味はわからない。わからないが、やはり私にとって有益なことでないことは確かだ。
それに対し、発声器官を持っていると思えない中脇差が、答えた。
『――――。―――、“――――”―――――――――――』
“――――”。その言葉に、打刀と太刀が舌なめずりしたのを見た。舌があったのか、などと考えている余裕もない。私が反対側のドアまで躙り寄っていると――白い糸が伸びてきた。それが中脇差の放った糸だと気付いた瞬間には、私の寝間着は剥ぎ取られた。
「――っ!」
『――――――――――』
『――――――――――――――』
がちゃがちゃ、がちゃがちゃ喚いてくる。下卑た言葉を吐きかけられたことだけはわかった。私は寝るときブラジャーをつけない。キャミソールとパンツだけだ。それが脅威の粘度を誇る中脇差の糸で、その下着も剥ぎ取られてしまった。びりびりである。こんなのエロ漫画ぐらいでしか見たことがない。私が羞恥に耐えつつ現実逃避を図っていると、ぴたり、乳房に貼り付いてくる何かを感じる。それが糸だと気付いたときには、糸はまるで触手のように私の体をなぞっていっていた。剥き出しになった体は、空調の効いた車内で糸に嬲られていく。粘度の調整もできるのだろうか? それらは私の肌にくっつくことなく、ただなぞっていく。いくだけなのだが――私はもじ、と落ち着かなくなっていた。
気持ちいいのだ。気色悪いだけなのに、そのはずなのに、この糸になぞられていくと、堪らなくぞくぞくする。ふと視線を落とすと乳首も立ってしまっていた。恥ずかしい――そんな心の声を聴いたように、糸が乳首に近付いた。
そしてぴん、と強く弾かれる。
「っ!」
ぴりぴりとした快感。思わず仰け反ると、下卑た笑い声と思しきものが沸き立つ。そちらは腹立たしいが、攻め入るように何度も何度も乳首を弾かれては摘まれ、舐るようになぞられ、腰が揺れてくる。あぁ、こんなにも乳首が気持ちよかったなんて!
気が付くと、位置関係が変わっていた。最初のように私が後部座席の真ん中に座り、中脇差は私の真ん前に陣取る。私はどうやら乳首が弱かったらしい。すっかりびしょ濡れになった股間がシートを濡らしている自覚があった。私がぼんやりとしていると、中脇差がずい、と迫ってきた。私が途惑っていると、中脇差の脚が器用に私の腰を掴む――そして、私の股間に「それ」を宛がった。
途端、電流のように閃く。
私は種を付けられる。もしくは卵を産み付けられる。
「――っ!」
私は抵抗した。しかし私の足は中脇差に囚われているし、勿論太刀も打刀も私を助けることはない。そして、私の腰は抱え上げられ――「それ」が、私を貫いた。
どぶどぶと溢れてくる熱い泥。本当にそれは熱くて、私の子宮は過敏にそれを受け止めて。何度も何度も何度も注がれた結果、私は気をやって、意識を半ば手放した。
意識が薄れる中、私は会話を聞いていた。中脇差の「それ」を受け止めた結果だろうか。敵たちの会話が聞き取れるようになってきた。
『しかしおっぱいは形が良いしでかいし美人だし、なにより霊力がこんなに溢れてる女審神者を連れてこられるとは思わなかったな』
『中脇差も頑張って産み付けしてくれよ』
『お前ら良い戦力なんだからな。産卵のために引っ込まれると困る』
『そうそう。こういう女審神者を攫って孕ませて苗床にするのが1番だよ』
私はそれらの会話を聞いても、これからの自分の運命を悟っても、動くことすらできなかった。
そして、産み付けられたことで何かが生じたのか。私は、その「苗床」とやらの運命に甘んじることが私の最大の幸せだと感じてしまっていた。
その日、ある本丸が襲撃を受けた。
そこの、将来を嘱望されていた女審神者が攫われて、今もなお行方不明。
同時期より敵勢力の強化がなされたことから、同一人物の審神者が何らかの関連をしていると見られている。
了