▼書き手がリアルに見た夢が元ネタ お/て/さ/にクラスタなんだからそこは御/手/杵と言いなさいよと起きてから思った
pixivより転載
確かに、従兄のことは嫌いではない。
嫌いではないが、結婚しろと言われたら困る。
「待って、お姉ちゃんもいるじゃん。なんで私?!」
腕を掴まれて、困惑する。祖母がにこにこと笑っている。従兄の顔は暗くてよく見えない。私は腕を振り払おうとするが振り解けない。その中で従兄の声がする。
「お前がいいんだ」
それはともすれば情熱的な口説き文句だっただろう。しかし、それは恋愛的な意味で好意を持っている相手から言われたら嬉しいと言うだけだ。私は兄弟愛的な慕情は持っていても恋愛感情は到底持てなかった。ただただ困惑する中、従兄が段々近づいてきて――私は叫んだ。
「駄目だって! 私には笹貫がいるから!」
「は?」
気が付けば、布団。敷布団の上に寝ていた私は、掛布団を蹴飛ばしていた。外からは雀の囀り。障子からは朝日が差し込んでいた。海の細波の音も聞こえる。海の景趣にしているからだ。
そう、ここは本丸。審神者として着任して7年経つ、最早古巣と言っていい居場所だ。
要は夢を見ていたようだ。
体を起こしながら顔を両手で擦る。溜息を吐いた。
(なんでこんな夢を見たんだ……?)
夢に出て来たのは父方の祖母と従兄。審神者になってからもう何年も会っていない。なにせ審神者は軍人のようなもの。盆も暮れもない。法事にもろくに顔を出してない。家族の顔すら思い出すことはなかったのに。蹴飛ばしていた掛布団を引っ張りながら、とにもかくにも身支度を済ませることにした。時計はそろそろ朝食の時刻を示していたし、近侍の蜂須賀が起こしに来る頃だったので。案の定蜂須賀の足音が近付いてきたので、私は「今日はもう起きてるよ」と障子越しに声をかけるのだった。
そもそも、なぜ笹貫だったのだろうと思いながら。
その疑問を一緒に考えてもらうべく、彼に声をかけることにした。
「笹貫ー」
「なんだい」
現在行われている連隊戦。彼――笹貫はこのイベントの報酬でやって来た。やって来てすぐさま部隊長に据えて連隊戦で戦わせた結果、夜光貝が20万個貯まる頃にはカンストしていた。なので既に彼は極の修行まで隠居の身分である。そんな彼が縁側で涼んでいたのを、パピコを持ってやって来た私は彼に半分あげながら尋ねたのだ。
「もし私が無理矢理結婚させられるってなったら、笹貫は止めてくれる?」
笹貫は、パピコの蓋を開けてから、こてんと首を傾げた。
「……そもそも、オレ、主のことまだよく知らないんだけど」
「だよね。ウチの本丸に来て1か月も経ってないもんね。ごめんね~変なこと訊いて」
「なにかあったの?」
そう問うてくる彼は優しい。そもそも刀剣男士は皆審神者、と言うか人間に優しいのだ。その優しさが身に染みるのを感じながら、「単に夢を見ただけ」と苦笑する。
「夢?」
「従兄と無理矢理結婚させられる夢でさ。本当に嫌だったんだけど、なんでか咄嗟に口に出たのが『笹貫がいるから』だったんだよね。不思議」
「……不思議だね」
「そこで目が覚めたからその後どうなったかはよくわからないんだけどね。そもそも従兄とも何年も顔を合わせてないからどうしてこんな夢を見たんだか」
「心当たりは本当にないの?」
パピコを吸う笹貫が問うてくる。私は、考え込んで――ふと、思い出したことをそのまま口にした。
「ウチの父方、近親婚が普通でさ。祖母も再従弟と結婚して子どもをもうけたし。そもそも近親婚だったって知ったの中学生ぐらいのときでさ。それで個人的には私は親戚とは結婚したくないな~と思ったなぁ……ただ」
「ただ?」
「従兄が、私が中学生になった頃にセクハラしてきて。母が止めてくれたんだけど……それ以来従兄とは疎遠になったな。『あぁ、この人は妹のように接してきた相手を性的な目で見れるんだ』って忌避感が出て……」
口から出るに任せて話したことは、後半になるにつれて私が記憶に蓋をしていたことだった。そう言えばそんなこともあったな、とぼんやり思っていると――笹貫は、声をかけてきた。優しい声音だった。
「パピコ溶けるよ」
「おっと」
「……そうだね、主」
急いでパピコを吸う私に、笹貫は穏やかに微笑んだ。
「それならさ。主が嫌がることなら、助けることにするよ」
さて、それから私が政府の役人から無理難題を押し付けられたり現世の遠征先でナンパされたりすると笹貫が庇ってくれるようになるのだが、それはこの先の話である。
了