pixivより転載
それが大倶利伽羅が軽装のときに使うタスキだと知るのは、事が終わってからのことだ。
「なんだこれ」
火車切は、同室の大倶利伽羅の行李からはみ出した白い紐を引っ張った。先程行李の整理をしていた大倶利伽羅だったが、何某かに呼び出された彼は常になく慌ただしかったので、行李は中身がはみ出してしまっていたのだった。丁度雑誌を読み終え暇を持て余していた火車切は、その紐を引っ張る。意外に長い。
白い紐はそれなりに幅があり、結べば結び目が硬くなりそうだった。何かの用事に使うものだろうか……火車切は顕現した当初から洋服(中華服にも近い)で軽装も実装されていなかったので、タスキと言う概念を知らなかった。
思い当たったのは山姥切国広の鉢巻き――ここの彼はとうに極――だった。しかしそれがこんなところにあるのはおかしいだろう、とその思考を却下する。少なくとも大倶利伽羅は鉢巻きをするような性格ではない。短い付き合いながらそれはわかっていたので、では、と火車切は考える。
考えた末、目に当ててみた。
思ったより丁度視界が隠れる。火車切は暇だったものだから、そのまま後頭部で結んでみた。きっちりと覆った視界、結び目は硬い。そこで火車切は気付いた。目を覆っては鏡で見てもわからないではないか。この日の火車切のコンディションは少々悪かったかもしれない。とりあえず外そう……そう思った火車切は結び目を解こうと後頭部に手を伸ばし――
丁度その時、障子が開いた音がした。
「大倶利伽羅?」
「……」
障子を開いた人物は答えない。大倶利伽羅だろうか、火車切はそう思いながらも答えない彼に不安を覚える。火車切は目隠ししたまま謝罪する。
「ごめん、行李からはみ出してたから引っ張って取っちゃった。ところでこの紐なに?」
「……」
「……大倶利伽羅?」
障子が閉まる音がする。不意に、近寄られた気配がした。火車切が不思議に思っていると、――唇に柔らかいものが触れた。
恐らくそれは唇だ。
「んっ?!」
急になんだろう。火車切が戸惑う中、嚙みつかれるようなキスがされる。舌が捻じ込まれ、それに応えるために火車切も舌を絡ませる。大倶利伽羅はどうしたのだろう。息がうまくできない。火車切が薄くなっていく酸素を取り入れようと鼻で息を試みたところで、徐々に身体が押し倒された。畳の上に組み敷かれる。えっ、と驚く暇もなく火車切は服を脱がされる。上着を脱がされ、インナーのボタンを外され、それもずるりと脱がされる。あっと言う間に上半身裸だ。急に外気に晒されたことで乳首が硬くなるのを感じて、それに舌を転がされはじめて動転する。どうしたというのだ、まだ明るいのに。それでも火車切の開かれた身体は与えられる甘い刺激を拾ってしまう。
「ん……」
火車切は腰の線をなぞられ、薄い腹筋に舌を這わされ、腹に吸い付かれる。あ、キスマークつけられた、と思う間もなくボトムに手をかけられた気配がした。
そこで、不意に不安がよぎる。
(本当に、この手は大倶利伽羅なのだろうか)
「ちょ……待って」
不安のままに声を漏らすが、その手は止まらない。腰紐を解かれ、ベルトを外される。ボトムと一緒に下着も下ろされた。
「やっ……!」
身を捩るが、腰を掴まれた。そして火車切自身を扱かれる。少し乱暴で、それがいつもの大倶利伽羅とは思えない。彼は、優しい。時々肉食獣のような顔をするけども。そんなことを考えている間にも、その手によって段々と火車切自身から先走りが漏れてくる。火車切は焦る。本当にこの手の持ち主は大倶利伽羅なのかと。
不安は精神よりも体に先に出た。目元に涙が滲んでしまう。鼻もぐすぐすと鳴って来た。その間にも昂りはやって来る。ほとんど泣き声に近い嬌声をあげてしまう。火車切が混乱の中にも、手をふらふらとさせた。
「ね、ぇっ、本当に大倶利伽羅なの? っねぇっ、――!!」
火車切の涙声に一瞬手が止まったが、しかし相手の手は火車切の亀頭に指を埋めた。
「――っ!!」
火車切は果てた。目隠しは涙が滲んでいた。ティッシュを取る音が聞こえる。
それから、そっと目隠しを外された。涙で潤んだ目が、相手を――大倶利伽羅を見た。
大倶利伽羅は酷く複雑そうな顔で、弟分を見下ろしていた。
「……すまない。泣くほどだと思ってなかった」
そのひと言で、火車切の目から大粒の涙が零れた。どうやら慌てているらしい大倶利伽羅が、火車切を抱き締めて頭を撫でた。
「っ大倶利伽羅の、ばか……!」
「すまない。すまん。悪かった。……つい悪戯心が出てしまった」
「大倶利伽羅以外の人なんて嫌なんだからね……!」
鼻を鳴らしながら大倶利伽羅に抱き着く火車切の発言に、ぴたりと大倶利伽羅が一瞬動きを止めた。
そして、火車切の目を覗き込んでくる。
「火車切」
「な、なに」
「……入れていいか」
「…………もう目隠ししない状態なら、いいよ」
「……お前は俺に甘い」
「お互い様」
そして、どちらともなく口づけを交わした。
こうして2振りの間で目隠しプレイは禁じ手となるのだった。
了