※この作品はR-18です。

刀剣乱舞SS集(BL・NL・友情主従ごった煮)   作:駒由李

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※1部刀剣男士破壊・虐待をにおわす描写 御手杵の一人称語り。引継後の審神者が話し相手です。引継ぎ前の審神者は典型的なブラックズだった模様。
▼御手杵は武器という意識が強そうだからブラック本丸には案外適応するかな? とも思えましたが、ふとこの可能性に思い至ったので書き上げてみました。こわい御手杵キャンペーン中です。
▼「物を殴ると自分の手が痛い。つまり、物に当たると自分にそのまま跳ね返ってくる」がうちの母の言葉でした。つまりそういう話です


御手杵は刀剣男士である【ブラック本丸(引継済)】

 え、あぁ、うん。そうだよ。俺が前のここの主を殺したんだ。この槍で、首を刺したよ。検屍報告は政府にも行っただろ。

 

 ……そんなに怖がらなくてもいいって。あんたは普通にこの部隊を運営してくれる気なんだろ。他の奴らはまだあんたら政府関係者を警戒してるだろうけど、俺は期待してるからな。困った事があったらいえよ。何なら助けてやるし。

 え、何で主を殺した俺がここにいるのかって。そりゃ、あんたらが決めた事だろ。俺ら刀剣男士は神だ。人権がない。権利もなければ刑法も適用されないって。こんのすけがいってたぞ。――あぁ、でも大概、主を殺しちまう奴は精神的に駄目になっている場合が多いんだっけ。んー、俺は自分でいうのもなんだけど、多分刀剣男士として運用するには十分な精神状態なんじゃないか。飯は食えるし、あんたが手入れしてくれたお陰で全快だ。今すぐ出陣だって出来るぞ。あぁ、でもまだ他の連中が回復してないな。最低6振り揃わなきゃまともな戦闘も出来やしない。ま、それぐらいは待ってるよ。

 ……何でって。何が。あぁ、殺した理由。そりゃ、決まってるだろ。前の主が、まともな運営をしてなかったからだよ。見ただろ、この部隊の惨状。俺一振りじゃ出来ない真似を出来る筈の刀剣男士までボロボロだ。俺は装備を無視して相手を貫けるけど、岩融や大太刀みたいに攻撃範囲は広くない。夜戦には滅法弱いのに、短刀のちびどもは残ってる奴の方が少ないと来た。打刀の連中もひどいもんだ。1部の偏った連中ばかり愛でていた。

 全く、まともな戦闘ってもんを知らない主だったよ。だから殺したんだ。

 ……余所の俺は、あー、なんだっけ。所謂「ブラック本丸」か。そういうのに割と順応するみたいだな。まぁ、俺も最初はその口だったよ。だって、そうだろ。主がどんな人間だろうと、俺達は「物」だ。どういう扱いを受けようと、そんなの主次第だろ。「物」ってのは存在からしてあんたらと違って受動的なものなんだ。本来はな。はじめの頃は、そう思いながら過ごしてた。平気だったよ。他の刀剣達の悲鳴や泣き声が聞こえてくる事もあったし、俺も殴られた事がある。図体が気に入らないってな。けど、俺は気にならなかった。そんなもんだと思ってな。

 でも、それも俺がただの「物」だった頃の話だ。今は、ほら。こんな体があるだろう。あんたらと同じ形、「ヒト」の形だ。嘗て俺達刀剣を扱っていた、人間と同じ形をしている。

 この形ってさ、疲れるんだよな。疲れるって、苦しいし、つらいんだな。ただの槍だった頃は知らなかったけど、ヒトって消耗するし、不便な体をしてるな。終いには自分自身の、この長い槍すらふるう事もままならないって事もあった。そこではじめて、俺は今の事態に気付いた。疲れたら、俺達は休んで手入れをして貰わなきゃ、いけない。だって、動けなくなったらおしまいだ。

 だってそうだろ。俺達は戦う為にここにいるんだ。その動きが鈍るような事があっちゃいけない。歴史修正主義者だろうが検非違使だろうが、とにかく戦う為にいるんだから。

 繰り返すけど、俺は主はどんなだってよかったんだ。戦う事を妨げる事さえしなけりゃな。だから、俺の体にいい加減限界が来た時、手入れを申し出たんだよ。だって、そうだろ。その時の俺はあちこちぼろぼろで、何ていうんだっけ。「痛い」「疲れた」「眠い」ってひどい状態で、戦に出ても全然まともに武功を上げられなかったんだ。だから、前の主に申し出たんだ。

 3回。そう、3回だ。仏の顔、っていう言葉があるだろ。3回いっても、前の主は手入れをさせてくれなかったんだ。その間、俺は敗北続きだったよ。

 だから殺したんだ。こう、ぶっすり刺してな。暫く手入れしてなかったから、なまくら気味でな。腕力で無理矢理射し込んだよ。俺は突く事しかできないのになぁ。

 ……わかるだろ。戦がわからない主だった。だから殺したんだ。だって、そうだろ。ここにいる以上、俺達もあんたらも、戦う為にいる。それなのに、前の主は、俺達を「道具」としてすら使えなかったんだ。忘れてないか。俺達「付喪神」は、まともに使われなかった道具が化けて出るのが本来だ。

 武器として戦えない自分に意味はない。でもここにいる以上、刀剣男士っていうのは戦う為の道具だろ。その為の手入れを怠る主は、果たして主に相応しいのか。その答えが「否」だった。だから、殺したんだ。

 ……あぁ、長谷部は怒鳴り散らしていたな。俺はそれまでは最も従順な刀剣の一振りって思われていたから。まさか、目の前の主を殺すと思わなかったんだろうな。でも、これをいって聴かせたら納得してくれたみたいだ。今の主のあんたにも良くしてくれているみたいだし。あいつは良い刀だ。味方につけておいて損はないぞ。

 ? どうしたんだよ、顔色が悪いな。飯は食ったか。あんたと燭台切達が作ってくれた飯、旨かったぞ。あんた自身もちゃんと喰って貰わないと困るぞ。ちゃんと喰って、それで、ちゃんと戦の采配をしてくれ。俺達を十全に扱ってくれよ。俺達は戦う為にここにいるんだから。そうそう、手入れは怠るなよ。ちょっとの傷なら錆のうちに入らないが、それでも定期的にはしてくれないと戦えないからな。

 あぁ、それにしても残念だったよ。前の主も、「主」には相応しくなかった。戦には向かない奴だった。……あんたは、違うよな。――あーよかった。政府も、俺がちゃんと「戦える」から現場に置いておいてくれたし、あんたもそういってくれると思っていたよ。……さて。

 今度こそは、出番かな。

 

 

御手杵は刀剣男士(ぶき)である

 

「あの槍に無闇に近付いてはなりません、新しき主」

「あの槍は、感情というものに今なお無縁なのです」

「……本音をいえば、俺もまだ、貴方を信じている訳ではありません。しかし、同じ事を繰り返してはならない。そう思っています。だから、敢えていいます。あの槍に、簡単に心を許してはなりません」

 

「武器として論理的に考えて、論理的に主を■す。ここの御手杵とは、そういう付喪神なのです」

 

 

End.

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