※この作品はR-18です。

刀剣乱舞SS集(BL・NL・友情主従ごった煮)   作:駒由李

74 / 87
粟田口の架空(完全創作)の刀剣男士と、生前「彼」の縁者だった土地神男審神者
▼金髪碧眼なのは妻が刀鍛冶(鍛冶師はイッポンダタラ≒鬼と同一視されることもある→鬼は髪や肌が派手)の娘だからという理屈
pixivより転載


【創作刀剣男士+創作男審神者】「そうあれ」と望まれたから

 新しい刀剣男士が来るとは聞いていた。

 それがこのところは珍しい粟田口らしいと聞いて、審神者は意外に思ったものだ。

(今新しく粟田口が来るとすれば一竿子忠綱とかかな)

 審神者は歴史を思い起こしながら考える。自身の死後、江戸時代は太平の世と言われながらも結構血腥い。田沼意知暗殺事件などもそのひとつだろう。その暗殺に使われたのが一竿子忠綱、粟田口の後継を名乗る刀工による大脇差だ。

 ただ、次にどうやら短刀男士らしいと聞いて、ますます特定が困難になった。粟田口の短刀などどれだけいることか。自身の生前も、妻に贈った懐刀が粟田口の短刀だった。しかし自身はあまり有名な大名ではない。あの短刀に纏わる逸話など、地元民が歴史書で知るぐらいだろう。

 

 だから、よもやその「妻に贈った短刀」が来ると思っていなかったのだ。

 それも――だいぶ衝撃的な姿で。

 

「オレは小鞠藤四郎。え? 知らないって? うるせーなマイナーなんだよ!」

 ――アッシュブロンドの短髪。切れ長の青い目。きつめの美貌。

 審神者は「彼」を見て硬直してしまった。

「主? いかがなさいました」

 近侍の一期一振が、新たな「弟」を歓迎していた中、審神者の様子に気付いた。審神者は口元に手を添えつつ、「なんでもない」と誤魔化した。

 一方、新たな短刀男士――小鞠は、審神者を見つめていた。青い目で、じっと。

 その目が、辛かった。

 似ていた。あまりに似ていた。「彼女」に。それはそうだろう、と審神者は思う。

 「そうあれ」と望んだのは自分だ。

 

「審神者をやっていたなんてな。――●●●様?」

 その日の晩。審神者の私室に小鞠はやって来た。審神者の真名を呼んで。

 正確にはそれは生前の通り名。例えるなら伊達藤次郎政宗の「藤次郎」がそれに当たる。それを知っている者はやはり地元民とごく1部の歴史マニアだろう。そして、それが小鞠がまさしく「あの短刀」であることを示していた。布団を敷いていた審神者は、嘆息する。

「……とりあえず入ったら」

「邪魔する」

 小鞠は後ろ手に障子を閉める。布団の上に座る審神者に対し、彼は畳の上に直に胡坐をかいた。

 まだ茶道が普及しておらず正座の習慣が薄かった頃の刀だ。胡坐をかくのも当然だろう。そう思いながら審神者は言う。

「……なんでお前が刀剣男士になったんだ」

「平たく言うとオレを受け継いだ子孫が金に困ったんだ。政府に鑑定してもらって、顕現できるってなったから実装されることになった」

「……俺の子孫は皆金に困っているな」

「何? 他の刀も売られたのか?」

「『あるじ切り』とその写しが政府に売られた。『あるじ切り』は刀剣女士として審神者をやっているらしいが」

「マジウケる」

「ウケるな。……はあまったく。本当に、なぜお前は……」

 審神者は自分の前髪を掴む。誰に八つ当たりしたものかもわからない。強いて言えば小鞠を実装した政府だろうか。

 違う。責めるべきは己なのだ。審神者は終いには顔を手で覆う。

 そんな彼を、哀れんだのだろう。小鞠は彼の肩に手を置いた。

「大丈夫だ、●●●様。――主。オレはあんたの妻じゃない。そうだろう?」

 小鞠は囁いた。

「たとえあんたが、妻亡きあと悲しみのあまりにオレに妻の名を与えたとしても」

 

 粟田口の無銘の短刀。とある大名は、嫁入りしてきた正室にその短刀を懐刀として与えた。

 曰く、「俺が道を誤ったらその短刀で殺してくれ」。

 妻は頷いた。

 しかし、妻は2番目の子どもを産むと産後の肥立ちが悪く亡くなってしまう。

 残されたのは一振りの短刀。

 夫は、その短刀に妻の名を銘として与えて刻ませた。

 ――産み落とされた娘は、伊達政宗の側室として嫁ぐ際にこの短刀を贈られている。

 そしてその子孫に受け継がれていった。

 

「俺はお前に残酷なことをしてしまった」

 審神者は顔を手で覆って頭を伏せる。

「付喪神が『そうあれ』と望まれたらそうなることを、あの頃の俺は知らなかったんだ……」

 審神者は小さく嗚咽を漏らす。

「妻に――小鞠に生き写しじゃないか……」

「だって、オレは、『小鞠藤四郎』だからな」

 小鞠は言った。慈悲深い笑みすら浮かべて。――今の審神者にそれを見る余裕などないことなどわかっていながら。

「『忘れ形見』なんだろ?」

 

 

 その後、小鞠は順調に練度を上げていく。

 しかし、審神者はろくに彼の顔を見ることなく過ごしていくことになる。

 

 

 

 

 

了

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。